rose of silver

春野いちご

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「ギルバート様、こんな形で退席するのはシャルル様に失礼なのではありませんか」
 僕の言葉に、ギルバート様は返事をくれない。
「サイラス様もギルバート様のことを心配しておいででした」
 サイラス様のことは禁句だったのか、ギルバート様は振り返って僕を睨んだ。
 でも、何も言わずに、また車椅子を動かす。
「ギルバート様、ギルバート様」
 声を掛けるも、ギルバート様は止まってくれない。
 一気に自分の部屋まで戻ると、僕の目の前でドアが閉まった。
 鍵を掛けられない内にと、僕は慌ててドアを開く。
 ギルバート様はキッと僕に鋭い視線を向けたけど、中へ入ることは許してくれた。
 けど、僕が入ると鍵をかけてしまった。
「ギルバート様、僕、よくは知らないですけど、これだけは言えます。ギルバート様の足は僕のせいだから……サイラス様に罪はないと思います」
「随分と親しそうでしたが、前から僕を騙していたのですか」
 問われて、首を振る。
「騙したつもりはないです。言い出せなかったんです。大した話でもなかったですし……」
 キースさんから、サイラス様のことはギルバート様に言うなと釘を刺されたことは言えない。
 キースさんが立場を悪くしてしまう。
「隠していたということは疚しいことでもあるんじゃないですか」
 問われて、僕は強く首を振った。
 でも、ギルバート様は疑わしそうな目で僕を見ている。
「実は……黒い貴婦人を探しに行った夜、騙されて乱暴されそうになったところを助けて頂いたのです」
「それは、ディランさんのことなのでは?」
「サイラス様もその場にいました」
「わかりました。君はその夜、父とふしだらな関係を持ったから、僕に隠しておこうと思ったんですね」
「違いますっ!」
 とんでもないと否定した。
「そんな関係じゃないです。ここに送り届けてもらっただけなんです」
 必死に訴えるも、ギルバート様の表情は冷たいままだ。
 好きになってもらえなくてもいい。
 ただ、嫌われるのは嫌だった。
「信じてください」
 僕はギルバート様の前に跪き、懇願した。
「……父は母が亡くなる前から浮気を繰り返していました。今でも、その癖は治らないようです。気丈だった母が、父の浮気が原因で崖から身を投げました。それなのに……あの人は、同じことを繰り返している」
 気さくで優しそうな紳士という、サイラス様の印象が崩れていく。
 恋を遊びだとでも思っているんだろうか。
 こんなにも胸が苦しくて、泣きだしたくなるほどの想いを、彼は知らないんだろうか。
 ギルバート様がお可哀想だ。
 ギルバート様が仰る通りなのかもしれない。
 自由に動けないのはサイラス様のせい。
 身体のことだけじゃない。
 心に深い傷を負わされたんだ。
「……ギルバート様、僕はサイラス様とはなんでもないです。サイラス様も僕を揶揄っているだけですよ」
「証明できますか?」
 問われて、僕は困ってしまう。
 証明なんて、どうやってすればいいのだろう。
 本当にサイラス様とは何もないのに……
 あっ、そうだ。
「銀の薔薇が……彼なら僕が初めてだったと知っているはずです」
 言ってから、銀の薔薇なんてどうやって探すんだと自分で突っ込みを入れてしまう。
 全然、証明になんかならないんじゃないか。
「それは、君が銀の薔薇に抱かれたということですか?」
 問われて、恥ずかしさに全身の血が騒ぐ。
 言葉にするのは憚られ、僕は小さく頷いた。
「僕を助けるために?」
 そう訊かれて、僕は眼を見開く。

『どうして、僕を助けたんですか?』

 そう以前にも訊かれたけど、僕が何をしたのかまではご存じじゃないみたいだった。
 だから、ホッとしていたんだ。
 それなのに……

「僕のためにそこまでする必要があったんですか?」
 問われて、僕は思わずギルバート様の手を取った。
「そんなこと言わないでください。ギルバート様は僕の大切な人です。ギルバート様の為ならなんでもします。最初に申し上げました。なんでもしますと」
 つい力が入ってしまって、僕は慌ててギルバート様の手を離す。
「……君は僕のことが好きなんですか」
 ああ、これも前に訊かれたぞ。
 興味なさそうに返されたけど……
 でも、同じ答えはもうできない。
 使用人が抱いていい感情じゃないことは、シャルル様を見て充分すぎるほど気づいた。
 僕が想いを口にするなんて、恐れ多いことだ。
 もちろん、ギルバート様は僕が本気で恋をしてるとお知りになっても、虫が止まったくらいにしか思わないだろう。
「ギルバート様の怪我は僕のせいなんです。だから、僕はどんなことをしても償おうと思っているだけです」
「責任感ですか」
 なんだか寂しそうな声だと感じたのは気のせいだろうか。
「ご主人様として慕っております」
 そう口にするとギルバート様は冷たく笑った。
 笑ってくれたのはいいけど、僕が欲しかった笑顔じゃない。
「そうですか。君はそれほど、僕の足のことを気にしていたんですね」
 怖いくらい冷たい笑みを、ギルバート様は口許に刻んでいる。
 こんなギルバート様を見たことがない。
 ぞくりと背筋が凍った。
「アレク、君が望む通り、君の罪悪感を少しでも減らす手伝いをしてあげましょう」
 どういう意味かわからずぞ茫然とする僕を残して、ギルバート様は車椅子を動かした。
「あっ、ギルバート様」
 声を掛けると、「ついて来てください」と言われた。
 よくわからないまま、後をついていくと、ギルバート様はベッドの脇で車椅子を止めた。
 ベッドに乗ろうとするギルバート様に気づいて、僕は手を貸す。
 疲れちゃったのかな。
 なんて思っていると、ギルバート様は耳を疑うようなことを口にした。
「君に僕の性欲処理を命じます」
「せっ、性欲って……」
 カーッと身体が熱くなる。
 まさか、冗談?
 けど、ギルバート様はベッドに仰向けになると、ジッと僕のことを見ている。
「あの……ギルバート様…」
「意味がわかりませんか。銀の薔薇に抱かれたのでしょう。やり方はわかっていると思いますが」
 淡々と言われて、僕は羞恥に身体を火照らせた。
「でも、こういうことは本来、好きな相手とするものですよ」
 だから、シャルル様とした方がいいんじゃないか……とまでは、言えなかったけれど……
 あまりに突然のことで、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
 でも、ギルバート様はベッドに寝たまま動こうとしない。
「君は使用人でしょう。貴族が使用人をどう扱おうと罪にはならないんですよ」
 そんな怖いことまで言われた。
 まさか、本気?
 僕がなんでもするって言ったから?
 サイラス様への恨みを、全部僕にぶつけるつもりだろうか。
 もし、それでギルバート様をお救いできるのなら……

「……わかりました」

 僕は辛い気持ちは隠して、お仕えすることを決意した。
 ギシッとベッドが軋む音を聞くと、ここで銀の薔薇に犯されたときのことを思い出す。
 あの時は、薬が効いていたけど、今は違う。
 けど、これから起きることを想像するだけで、胸の鼓動は高まった。
 ただの性欲処理だとしても、ギルバート様に触れられる。
 そんな浅ましい自分がひどく汚いものに思えたけど、欲情は止められなかった。
「失礼します」
 僕はギルバート様に断ってから、シャツの釦を外していった。
 弾力のある胸が現れて、ドキドキする。
 ちらとギルバート様の顔を見ると、食い入るように僕を見ていた。
 そんなに見つめられると、どうにかなってしまいそう。
「君は好きでもない相手でも構わないんですね」
 掛けられた言葉に傷つく。
 大好き。
 好きな人はギルバート様だけだ。
 だけど、そえを言っても仕方ない。
「ギルバート様は僕の大切なご主人様です」
 前をはだけ、脚衣にも手をかけた。
 釦を外すときに、大きなギルバート様の性器に触れてドキッとした。
 興奮する自分を押さえつつ、僕は下着も脱がせた。
「綺麗な脚ですね」
 筋肉をなぞるように、指を這わせる。
 このしなやかな脚が動かないなんて信じられないくらいに、躍動感の溢れる脚だった。
「いつまで脚を触っているんですか」
 叱咤されて、僕は脚から手をどけた。
 それから、どうしようと暫し悩む。
 いきなり性器を口に含んだ方がいいんだろうか。
 欲望処理なら、そうなのかな。
「どうしました?」
 問われて、僕は正直に答えた。
「何からどうやればいいのかわからなくて……」
「役に立たない性欲処理ですね」
 そんな言い方されると落ち込む。
 一生懸命にご奉仕しようと思っているのだけど……
「君も服を脱いで僕の上に乗ってください」
 そう命令されて、僕はノロノロと服を脱ぎ始めた。
 見られている。
 それがわかるから、恥ずかしくて手元が狂う。
「不器用ですね。萎えてしまいますよ」
 言われて、僕はギルバート様の性器を見る。
 そこはまだ兆しを見せてはいなかった。
 なえる以前の問題だ。
「……すみません」
 一応、謝ってから、僕は四苦八苦しながら全裸になった。
「あの……その……」
 やっぱりじーっと見られているから、思わず股間を隠す。
「隠すほどのものですか」
 嘲るように言われて、シュンとなる。
 なんだか虐められているみたいだ。
「申し訳ありません」
「それから、何をするのかわかりますか?」
 これ以上、機嫌を損ねるのはよくないとばかりに、僕は脇から失礼して、そっとギルバート様の性器に口をつけた。
 ちゅっとキスすると、生々しいまでの肉の感触が伝わる。
 欲望処理に使われるのだとしても構わない。
 好きな人にこんな風に触られるのなら……
「んっ」
 亀頭を口に含もうとしたら、ギルバート様が声を掛けてきた。
「少しは僕を興奮させてください」
「あっ、はいっ」
 慌てて、僕は性器を擦り上げる。
「そうじゃなくて……君の貧相な淫らな部分を僕によく見えるようにしてください」
 言われて、貧相な部分に眼を落とす。
 ピンク色で小さいけど、いやらしく震えている。
 これをギルバート様にお見せするには、どうしたらいいんだろう。
 膝立ちになって、僕はギルバート様に見えるようにしてみた。
「……それで、どうやって僕に奉仕するのですか」
 問われて、僕は首を傾げた。
「足を開いて、僕の顔を跨いでください」
「えっ、でも、そんなの不敬に当たります」
「構いませんよ。僕の命令ですからね」
 言われて、僕は恐る恐る足を開いてギルバート様の顔を跨いだ。
「ああ、恥ずかしい部分がよく見えますね」
 覗き込まれて、羞恥心が増す。
「見られると感じるのですか。大きくなりましたよ」
「あぁ、すみません」
 謝ったけど、勃起しちゃったのは直ぐには戻せない。
 タラリと先走りまで垂れてきて、ギルバート様の顔に雫が落ちる。
「わわっ、すみませんっ、すみませんっ」
「構いません。続けてください」
 促されて、僕は前屈みになってギルバート様の股間に顔を寄せた。
 あれ?
 ちょっと待てよ。
 この格好は、とても恥ずかしいんじゃ……
「また先走りが垂れてきましたね」
「ああぁ……すみませんっ」
「一々謝らなくてもいいです。君みたいな淫乱だと、何度謝っても足りないでしょうから」
 ひどい言われ方をした。
 悲しくて、堪らない。
 けど、ギルバート様の雄々しい性器を見てるとドキドキしてしまう。
 僕はギルバート様の言うように、淫乱なんだろうか。
「んっ……ふうぅ…っ」
 愛しさをこめて、僕はギルバート様の性器に口づけた。
「孔までヒクつかせて、いやらしいですね」
 言葉に反応して、僕のお尻の孔がヒクンと蠢いた。
「んぁ……はぁ…んんっ」
 微かに鼻をくすぐるのは、銀の薔薇と同じ香りだ。
 忘れたい行為を思い出してしまう。
 陰茎に舌を這わせると、あの時と同じ弾力を感じる。
 男性器なんて、どれも似てるってことかな。
 僕のとは、色も形も全然違うけど……
「んっ……んんっ…っ」
「下手ですね」
 不満げに口にされて、僕は指も使って性器を扱いた。
 先の方を舌でちろちろと舐めると、ほんのり苦い液体が出てきた。
 少しは感じてくれているのがわかって、嬉しくなる。
「んっ……んんっ…」
「舐めるだけですか」
 舐める以外に、何をすればいいんだろう。
 取り合えず、唇を開いて咥えてみた。
 ズッと口に中に大きな性器が入ってくる。
「んぐぅ…ふぅ…んんっ」
 喉に当たって苦しい。
「やっぱり不器用ですね」
 呆れたように言われて、涙が零れてくる。
 ギルバート様のこと、気持ちよくしてさしあげたいのに……
「んっ…ふうぅ…んはぁ…っ」
 一度、口から出して、舌で張り出した部分を舐めた。
 さっきより苦い味が舌先に広がる。
「うっ…んんっ……んっ」
 竿や先端をいっぱい舐めてみる。
 袋まで舌を伸ばして、舐めてみた。
 また違った味がする。
「ふぅ……んんっ」
 少しづつ硬度を増す性器が愛しい。
 僕はまたそっと先端を咥えた。
 両手を添えて固定してから、少しづつ性器を咥えこむ。
「君の方が先に達しそうですね」
 ギルバート様の声がして、ピンと張り詰めた性器を指で弾かれた。
「ひぃ…ひゃあぁっ」
 予期していなかった刺激に腰がブルルと震えた。
「軽くイッたみたいですね」
 イッた?
 でも、まだ射精してない。
 同じような快感は下半身に渦巻いているけど……
「んんっ…んぁっ…」
 ダラリと唾液が垂れて、ギルバート様の勃起した性器に垂れる。
 いやらしい形に胸がドキドキする。
 後ろまで疼いてきて、変な感じがする。
「ああぁ…はぁ……」
「君だけ感じないでくださいと言ったでしょう」
「ごめんなさい」
 慌てて、僕は咥えなおそうと唇を寄せた。
 けど、ギルバート様が僕のお尻の孔をつついて言う。
「口はもういいです。こっちの方がマシかもしれません」
 言われて、求められていることを知る。
 お尻に中にこれを挿れる。
 ゴクッと喉が鳴った。
 ゆっくりと起き上がると、僕は向きを変えた。
 ギルバート様は脚が不自由だから、僕が上に乗らないといけない。
 初めてだけど、大丈夫かな。
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