たった五分のお仕事です?

オレンジペコ

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Ⅰ.ファースト・コンタクト

3.庭でイケメンに会いました。

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走る、走る、走る────。
兎に角走って走って庭へと飛び出した。
物凄く立派で広々とした庭だ。
ここなら隠れるのも容易だろう。
そう思って取り敢えず壁を背にして息を整え、エレンドスに見つからないようザッと周囲を窺い隠れ場所を探す。

ちょうどその時だ。突然空が陰ったと思うといきなり上から誰かが降ってきた。
一瞬エレンドスかと思ったが、よく見ると物凄いイケメンだった。
背は俺より頭一つ分高い。
髪は金茶で、瞳は黄金色。
色白ではあるが、すらりとした姿態は剣が似合いそうなカッコ良さ。
如何にも高そうな服を着て髪を掻き上げこちらを見遣る姿に思わずため息が出そうになる。
上から降ってきたことを考えると窓から飛び降りてきたのだろうか?
物凄い運動神経だ。
スパイとかの人なんだろうか?
でもこんなに美形なら違うかもしれない。
飛び降りてくるくらいだし王子ってことはまずないだろうし、騎士とか兵士の人だったりするんだろうか?
でもそういう人達って鎧を着ているイメージだし、やっぱり違う気がする。
となると全くどう言った人物なのか想像がつかない。
王宮に遊びに来ていた貴族の坊ちゃんとかなのだろうか?

「えっと…誰?」

ここで騒がれるのも嫌だし、取り敢えず本人に聞いてみるのが一番かもしれないと思い声を掛けてみると、彼は俺を見て一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔で名乗ってくれた。

「俺はラフィンシア。気軽にラフィと呼んでくれ。お前は?」
「え?あ、俺は優次。ユウジだ」

宜しくと言って握手をすると、ラフィは笑顔で「誰かから逃げているのか?」と尋ねてくれたので、王子の側近に追われてるとは言うに言えず、隠れ場所を探しているとだけ口にした。
すると深く追及はせずにそれならこっちだと言って、いい隠れ場所へと案内してくれた。

そこは剪定された生垣の裏にあるいい感じの日陰で、隠れるのにはもってこいの場所だった。

「本当にさ、俺も仕事仕事で嫌になるから逃げだしてきたんだ」

そんな愚痴をこぼすラフィはどうやら息抜きに抜け出したようだったので一緒に隠れようかと二人で笑い合った。

「俺も…なんか急に呼び出されたんだけど、案内してくれた人が目的をはっきり言わないからなんか怪しいと思って逃げ出してきたんだ」
「へぇ…。案内役の奴ってそんなに怪しそうだったのか?」
「ああ。なんか手伝ってほしいって言う話だったのに、具体的な手伝いを考えてなかったっぽくて、挙句におバカな王子にちょっと会うだけの簡単なお仕事ですなんて言い出したんだよ。物凄く怪しくないか?側近って言ってたのに王子にバカって言うのも変だし、会うだけのために呼び出すって絶対におかしいだろ?だからそのまま付いて行ったら手籠めにでもされるんじゃないかって急に不安になってさ、気づいたら走って逃げてた。あれ絶対偽物だよ」
「…………そうか。わかった。そいつは探してきっちり減給処分にするよう言っておくから」
「え?いや、でもさ、嘘でも王子の側近とか言ってたし、ラフィに迷惑が掛かっても嫌だから何もしなくていいよ」

ここで愚痴をこぼすのはいいけれど、それでラフィに迷惑が掛かるのは嫌だった。
なんせ自分は五日間しかここにはいないのだ。
平穏に終わるならその方がいいに決まっている。

「気にするな。ユウジはいい奴だな」
「え?」
「俺さ、こうやって話せる奴ってなかなかいなかったんだ。だから、良かったら友達になってくれないか?」
そしてキラキラした笑顔で言ってくるラフィに俺はなんだか感動してしまって、気づけば笑顔で承諾していた。
「喜んで!」

こちらでの初めての友達ができたことでちょっとだけ安心する。
とは言え五日間も一体どうしたらいいんだろう?
そう思ってラフィに相談してみると、それなら使用人に紛れてしまったらどうだと言われた。
何かできることはあるかと聞かれたので、料理や洗濯とか雑用ならできると答えると、じゃあ担当者に頼んでやると言ってもらえた。
これなら安心だ。

「あ、でも俺五日間しかここにはいないんだ。短期でできる仕事じゃないと迷惑になっちゃうから、そこだけは言っておいて欲しい」

その言葉に五日かと呟き少しだけ寂しそうな顔をされてしまう。
でもこればかりは仕方がないので許してほしいところだ。

「ごめんな。でもここにいる間はラフィの友達だ。できるだけ一緒にいるから、時間があったら色々話そう?」

そうやって笑顔で励ますように言うとラフィは少しだけ元気が出たのか笑顔で頷いてくれる。

「わかった。じゃあちょっと行ってくる。ユウジは俺が戻ってくるまでその案内役に見つからないようにな」
「ああ。ありがとう」

親切な友人に感謝してそっと手を振り見送ったところで俺は改めてエレンドスについて考えることにした。
魔術師の人は何も言っていなかったが、多分エレンドスが召喚をあの人に頼んだのは間違いないだろう。
裏にいるのはエレンドス曰くのおバカな王子。
となると王子の命令で召喚したのはまず間違いはない…はず。
話を聞く前に逃げ出したから王子の目的というのが全くわからないが、エレンドスのあの様子から察するにいい話でないのは確かだろう。

「はぁ…せめて王子が変態じゃなくてラフィみたいな好青年だったらいいのになぁ…」

そんな風に溜息を吐きながら、俺はその場でラフィが戻ってくるのを待ったのだった。



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