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第四章 思わぬ誤解とライバル出現に焦る俺
76.心が動かされた日 Side.パーシバル
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ディオとの勝負が思いの外楽しくて、ついつい毎日城へと赴いてしまった。
当然だがその際ガヴァムの警備状況のチェックも欠かさない。
時にはにこやかに挨拶をしてこちらへの反応も確認する。
警備は────報告では緩いと評されていたものの、存外しっかりしている。
一見緩そうに見えるのに、道を逸れようとしたらすぐに案内役がやってきてそっちじゃないですよと言われるし、撒こうにも毎回隙が見られない。
案内役は毎回違うが、恐らくどいつも凄腕の暗部だ。
会話も試みてみたが、ガヴァムの事や城のことなどを聞いても噂の域を出ない一般に出回っている話しか返ってこなかった。
かなり徹底した警戒具合だ。
なのに敵意を微塵も感じさせないところが流石あのディオの部下だなと思えた。
騎士達の腕は正直よくわからない。
警備に立っている騎士達はピシッと真っ直ぐ立ち、周囲にも警戒しているように見えるし、ちゃんと鍛えられた身体をしているから鍛錬はしているだろう。
試しに軽く殺気を放ったら反応するだろうか?
チラリとそう思ったが、それで出禁にされたら困ると思って考え直した。
戦力を知りたくてディオにも雑談ついでに聞いてみたが、変態騎士達については一切話したくないから聞くなと物凄く嫌そうな顔をされた。
変態じゃない騎士はと尋ねたらルーセウス王子に更生してもらったのが若干いるだけで、他は全部変態なんだそうだ。
全く戦力が測れないんだが?
でも誤魔化してるようには全く見えなくて、本当にウンザリしてるっぽかったから思わず『お前も苦労しているな』と慰めてしまった。
全く俺らしくもない。
でも薄ら微笑み返したディオの表情は悪くなかった。
美人は得だな。
思わずもっと見たいなと思ったくらいだ。
そうしてチェスを通してガヴァムとディオについての情報を集める日々の中、ディア王女らしき相手から連絡が入った。
ディア王女と言うと従兄弟叔父が手を出そうとした相手だ。
ディオが可愛がってる妹のはず。
なのに彼女と話すディオからは何故かそれが感じられなかった。
喧嘩でもしてるんだろうか?
(いや。よく考えたら一人の相手を二人で共有してるんだし、思うところもあるよな)
方やまだ結婚していないとは言え、ゴッドハルトでずっとルーセウスと一緒に居られる妹。
そして方や王配として迎えたにもかかわらず、時折しか会えない自分だ。
政略ではなく好きで結婚したなら嫉妬だってするだろうし、離れている分だけ不満や不安を抱える羽目になる。
隣国ならまだしも、ゴッドハルトはここからずっと遠い国だ。
余計にだろう。
(ちょっと助けてやるか)
そう思ったから声を掛けた。
他意はない。
でもちょっと声を掛けるのが遅くなったからか、その後の対局でディオはあっさり俺に負けた。
(つまらん)
さっきまであんなに楽しかったのに、本当に台無しだ。
イラッとしたから、忙しいディオの時間を奪ってやることにした。
確か第二都市はディオが整備した街だと聞いたし、半日ガイドをさせてやろう。
きっと屈辱に思うに違いない。
そう思ったのに、ディオは全く気にした様子もなく快く引き受けた。
(お前に王としてのプライドはないのか?!)
思った通りの反応が返ってこないのが悔しくて、思わず舌打ちしてしまう。
(街案内の中で、絶対にその余裕ぶった表情を崩してやる)
どこかモヤモヤした気分になりながらそう心に誓い、当日を迎えたわけだが────。
(気のせいか?元気がないな)
「ディオ。過労か?」
半日空けろと言ったから、無理に仕事を詰め込んで体調でも崩したんだろうか?
「いや。平気だ。行こうか」
また少しモヤッとしたが、本人がそう言うなら行くしかない。
とは言え体調が悪いわけじゃないのはすぐにわかったし、ウロウロしている方が気分転換になっているようだったから遠慮なく連れ回した。
ディオとの街歩きは会話もテンポ良く弾むし、とても楽しかった。
博識だから聞けば何でも返ってくるし、多少突っ込んだ質問も答えられるものならちゃんと答えてもらえる。
父王暗殺の件や従兄弟叔父の件さえなければ良い友人になれただろうに。
残念だ。
そうこうしているうちに目的である果物屋へと辿り着く。
「こっちが桃で、こっちの黒くて小玉スイカくらいのサイズの果物が輸出したいと思ってる『悪魔の実』だ」
「悪魔の実?!」
そう言えば名前を聞いていなかった。
随分物騒な名前の実だ。
「見るからに毒々しいが、大丈夫なのか?」
「ああ、それは大丈夫。これは俺の母が作った新種の果実なんだ」
ディオの説明によると、元々前王ロキの側妃であるアンヌ妃がしつこく夜をねだり続け、何度断っても全然諦めないから、ロキ陛下が無理難題を口にしたのが発端だったのだとか。
果実の口当たりは滑らかで甘味が強く、けれど後に引かない甘さであるべし。
且つスイカのように大きく、種はあっても一つまで。
ついでに日持ちがしつつ大量生産が可能でなければならない。
もうこの段階で無理だろうと誰もが思う。
なのにアンヌ妃は諦めなかった。
何度も研究に研究を重ね、農家と連携し、試作品を持ち込んではダメ出しをくらい、それでも諦めずにとうとうこの果物を作り上げたらしい。
ど根性にも程がある。
そこまでしたのにロキ陛下は『誰も抱くなんて約束してない』と言い放って、場を凍らせたんだとか。
まあ元々諦めさせるために出した条件なんだから、気持ちはわからなくはない。
でもそこまでやらせておいて酷いぞとカリン陛下がとりなして、渋々玩具で誤魔化したんだとか。
結構酷いな。
で、悪魔のような要求を乗り越え作られたため『悪魔の実』と名付けられたらしい。
「食べてみる?」
そう聞かれてふと思った。
「手が汚れそうだな」
これからまだ他にも行きたい場所や見たい場所が沢山あるのに、手がベタつくのは嫌だ。
せめて手洗いが近くにあるなら別だが、ザッと見る限りそんな場所がありそうには見えない。
「うん、まあ。しょうがないんじゃないかな?」
「……フォークはないか?」
「こんな場所にあるわけないよ。指で摘まんでパクッとどうぞ」
「嫌だ。素手で持って食べたら手が汚れる。ちょっとその辺でフォークを買ってこい」
「潔癖症だな」
「違う!俺はまだ見たい場所がいっぱいあるんだ!手がベタついてたら楽しめないだろう?!」
「なるほど?うーん。しょうがないな。爪楊枝もフォークもないし。そうだ!吹き矢の針で刺して食べたらどうかな?」
名案を思いついたって顔だが、どう見ても無邪気を装って罠に掛けようとしているようにしか見えない。
「ふざけるな!誰がそんな危ない橋を渡るか!」
全く油断も隙もあったもんじゃない。
ナチュラルに殺す気満々じゃないか。
「名案だと思ったのに」
「却下だ!」
「それなら店で食べようか。────おじさん、ここの果物を卸してるカフェかどこかないかな?」
「ありますよ。ここから三つ目の通りを右に曲がってまっすぐ歩くと右手に『ハーゼの森』っていう店がありまして、そこでこの悪魔の実を使ったフルーツパフェが食べられます」
「へぇ。パフェ」
「じゃあそこに決定だな」
店主に情報をもらい、それなら大丈夫だと移動することに。
まだ然程混んでいなくて助かった。
店はすぐに見つかったし、席も余裕があるから護衛の者達も一緒に入りやすい。
いや。もしかしたらディオの優秀な暗部が先に店に話を通して、席の確保をしたのかもしれないな。
早速注文をし、悪魔の実が乗ったパフェが届けられる。
が、これは『悪魔の実パフェ』ではなく『フルーツパフェ』なのだ。
全部カットされてるせいで、どれがその悪魔の実なのかがわからない。
「ディオ。どれが悪魔の実だ?」
「そのオレンジ色っぽいのが悪魔の実で、それよりちょっと色が薄いこっちが黄桃っていう桃。挿さってる白っぽいのも白桃っていう桃だよ。他のはわかるかな?」
「こっちの赤いのは?」
「苺だけど?」
「……俺が知ってる苺はもっと小さくて丸っとしてるぞ?色は同じだが完全に別物だろう」
「苺は品種が多いから。まあ食べてみて」
そう勧められるが、なにせどれも初見の未知の食べ物。
毒見が必要だ。
そこで閃いた。
さっきのディオに対する仕返しだ。
嫌な事を勧められる気持ちを思い知れとスプーンに一つ悪魔の実を乗せ口元へ持っていってやる。
「食え」
「どうして俺が」
「毒見だ。さっき俺に吹き矢の針で食えなんて言ったんだ。これくらい許容できるな?」
ディオはそれを聞き、渋々口を開けた。
(やった!)
いつも飄々とこちらをあしらってくるディオをやり込めることに成功して気分が上がる。
顰めっ面も美人がやると絵になるものだ。
そう思った矢先、突然乱入者がやってきて、目の前でディオの唇を強引に奪ってきた。
ゴッドハルトのルーセウスだ。
(来てたのか)
人目も憚らずディープキスとは、なかなか熱烈だなと冷めた目で見るが、ディオの表情が蕩けていくのをみて思わず目を奪われた。
しかもその後は真っ赤になって挙動不審になる始末。
(くっそ可愛いな)
初めてそう思った。
俺にはまだ見せたことのない表情を次々見せるディオに、心が動かされる。
この男はベッドではどんな風に啼くのだろうか?
もっと色んな顔を見てみたい。
素直にそう思う。
それにしても、ディオはこんな直情型の無神経な男のどこが気に入ったんだ?
強引なところか?
それとも自分と真逆の性格に興味を持ったとかか?
どちらもあり得そうだ。
でもその後のやり取りで二人の仲が上手くいっていないのだと確信して、今なら付け入る隙がありそうだとほくそ笑む。
敵国に戦争を仕掛けず、且つ国及びルーセウスとディア王女に手は出さないという契約も守りながら復讐するにはいいんじゃないだろうか?
これが────俺がディオを落としたくなった切っ掛けだった。
当然だがその際ガヴァムの警備状況のチェックも欠かさない。
時にはにこやかに挨拶をしてこちらへの反応も確認する。
警備は────報告では緩いと評されていたものの、存外しっかりしている。
一見緩そうに見えるのに、道を逸れようとしたらすぐに案内役がやってきてそっちじゃないですよと言われるし、撒こうにも毎回隙が見られない。
案内役は毎回違うが、恐らくどいつも凄腕の暗部だ。
会話も試みてみたが、ガヴァムの事や城のことなどを聞いても噂の域を出ない一般に出回っている話しか返ってこなかった。
かなり徹底した警戒具合だ。
なのに敵意を微塵も感じさせないところが流石あのディオの部下だなと思えた。
騎士達の腕は正直よくわからない。
警備に立っている騎士達はピシッと真っ直ぐ立ち、周囲にも警戒しているように見えるし、ちゃんと鍛えられた身体をしているから鍛錬はしているだろう。
試しに軽く殺気を放ったら反応するだろうか?
チラリとそう思ったが、それで出禁にされたら困ると思って考え直した。
戦力を知りたくてディオにも雑談ついでに聞いてみたが、変態騎士達については一切話したくないから聞くなと物凄く嫌そうな顔をされた。
変態じゃない騎士はと尋ねたらルーセウス王子に更生してもらったのが若干いるだけで、他は全部変態なんだそうだ。
全く戦力が測れないんだが?
でも誤魔化してるようには全く見えなくて、本当にウンザリしてるっぽかったから思わず『お前も苦労しているな』と慰めてしまった。
全く俺らしくもない。
でも薄ら微笑み返したディオの表情は悪くなかった。
美人は得だな。
思わずもっと見たいなと思ったくらいだ。
そうしてチェスを通してガヴァムとディオについての情報を集める日々の中、ディア王女らしき相手から連絡が入った。
ディア王女と言うと従兄弟叔父が手を出そうとした相手だ。
ディオが可愛がってる妹のはず。
なのに彼女と話すディオからは何故かそれが感じられなかった。
喧嘩でもしてるんだろうか?
(いや。よく考えたら一人の相手を二人で共有してるんだし、思うところもあるよな)
方やまだ結婚していないとは言え、ゴッドハルトでずっとルーセウスと一緒に居られる妹。
そして方や王配として迎えたにもかかわらず、時折しか会えない自分だ。
政略ではなく好きで結婚したなら嫉妬だってするだろうし、離れている分だけ不満や不安を抱える羽目になる。
隣国ならまだしも、ゴッドハルトはここからずっと遠い国だ。
余計にだろう。
(ちょっと助けてやるか)
そう思ったから声を掛けた。
他意はない。
でもちょっと声を掛けるのが遅くなったからか、その後の対局でディオはあっさり俺に負けた。
(つまらん)
さっきまであんなに楽しかったのに、本当に台無しだ。
イラッとしたから、忙しいディオの時間を奪ってやることにした。
確か第二都市はディオが整備した街だと聞いたし、半日ガイドをさせてやろう。
きっと屈辱に思うに違いない。
そう思ったのに、ディオは全く気にした様子もなく快く引き受けた。
(お前に王としてのプライドはないのか?!)
思った通りの反応が返ってこないのが悔しくて、思わず舌打ちしてしまう。
(街案内の中で、絶対にその余裕ぶった表情を崩してやる)
どこかモヤモヤした気分になりながらそう心に誓い、当日を迎えたわけだが────。
(気のせいか?元気がないな)
「ディオ。過労か?」
半日空けろと言ったから、無理に仕事を詰め込んで体調でも崩したんだろうか?
「いや。平気だ。行こうか」
また少しモヤッとしたが、本人がそう言うなら行くしかない。
とは言え体調が悪いわけじゃないのはすぐにわかったし、ウロウロしている方が気分転換になっているようだったから遠慮なく連れ回した。
ディオとの街歩きは会話もテンポ良く弾むし、とても楽しかった。
博識だから聞けば何でも返ってくるし、多少突っ込んだ質問も答えられるものならちゃんと答えてもらえる。
父王暗殺の件や従兄弟叔父の件さえなければ良い友人になれただろうに。
残念だ。
そうこうしているうちに目的である果物屋へと辿り着く。
「こっちが桃で、こっちの黒くて小玉スイカくらいのサイズの果物が輸出したいと思ってる『悪魔の実』だ」
「悪魔の実?!」
そう言えば名前を聞いていなかった。
随分物騒な名前の実だ。
「見るからに毒々しいが、大丈夫なのか?」
「ああ、それは大丈夫。これは俺の母が作った新種の果実なんだ」
ディオの説明によると、元々前王ロキの側妃であるアンヌ妃がしつこく夜をねだり続け、何度断っても全然諦めないから、ロキ陛下が無理難題を口にしたのが発端だったのだとか。
果実の口当たりは滑らかで甘味が強く、けれど後に引かない甘さであるべし。
且つスイカのように大きく、種はあっても一つまで。
ついでに日持ちがしつつ大量生産が可能でなければならない。
もうこの段階で無理だろうと誰もが思う。
なのにアンヌ妃は諦めなかった。
何度も研究に研究を重ね、農家と連携し、試作品を持ち込んではダメ出しをくらい、それでも諦めずにとうとうこの果物を作り上げたらしい。
ど根性にも程がある。
そこまでしたのにロキ陛下は『誰も抱くなんて約束してない』と言い放って、場を凍らせたんだとか。
まあ元々諦めさせるために出した条件なんだから、気持ちはわからなくはない。
でもそこまでやらせておいて酷いぞとカリン陛下がとりなして、渋々玩具で誤魔化したんだとか。
結構酷いな。
で、悪魔のような要求を乗り越え作られたため『悪魔の実』と名付けられたらしい。
「食べてみる?」
そう聞かれてふと思った。
「手が汚れそうだな」
これからまだ他にも行きたい場所や見たい場所が沢山あるのに、手がベタつくのは嫌だ。
せめて手洗いが近くにあるなら別だが、ザッと見る限りそんな場所がありそうには見えない。
「うん、まあ。しょうがないんじゃないかな?」
「……フォークはないか?」
「こんな場所にあるわけないよ。指で摘まんでパクッとどうぞ」
「嫌だ。素手で持って食べたら手が汚れる。ちょっとその辺でフォークを買ってこい」
「潔癖症だな」
「違う!俺はまだ見たい場所がいっぱいあるんだ!手がベタついてたら楽しめないだろう?!」
「なるほど?うーん。しょうがないな。爪楊枝もフォークもないし。そうだ!吹き矢の針で刺して食べたらどうかな?」
名案を思いついたって顔だが、どう見ても無邪気を装って罠に掛けようとしているようにしか見えない。
「ふざけるな!誰がそんな危ない橋を渡るか!」
全く油断も隙もあったもんじゃない。
ナチュラルに殺す気満々じゃないか。
「名案だと思ったのに」
「却下だ!」
「それなら店で食べようか。────おじさん、ここの果物を卸してるカフェかどこかないかな?」
「ありますよ。ここから三つ目の通りを右に曲がってまっすぐ歩くと右手に『ハーゼの森』っていう店がありまして、そこでこの悪魔の実を使ったフルーツパフェが食べられます」
「へぇ。パフェ」
「じゃあそこに決定だな」
店主に情報をもらい、それなら大丈夫だと移動することに。
まだ然程混んでいなくて助かった。
店はすぐに見つかったし、席も余裕があるから護衛の者達も一緒に入りやすい。
いや。もしかしたらディオの優秀な暗部が先に店に話を通して、席の確保をしたのかもしれないな。
早速注文をし、悪魔の実が乗ったパフェが届けられる。
が、これは『悪魔の実パフェ』ではなく『フルーツパフェ』なのだ。
全部カットされてるせいで、どれがその悪魔の実なのかがわからない。
「ディオ。どれが悪魔の実だ?」
「そのオレンジ色っぽいのが悪魔の実で、それよりちょっと色が薄いこっちが黄桃っていう桃。挿さってる白っぽいのも白桃っていう桃だよ。他のはわかるかな?」
「こっちの赤いのは?」
「苺だけど?」
「……俺が知ってる苺はもっと小さくて丸っとしてるぞ?色は同じだが完全に別物だろう」
「苺は品種が多いから。まあ食べてみて」
そう勧められるが、なにせどれも初見の未知の食べ物。
毒見が必要だ。
そこで閃いた。
さっきのディオに対する仕返しだ。
嫌な事を勧められる気持ちを思い知れとスプーンに一つ悪魔の実を乗せ口元へ持っていってやる。
「食え」
「どうして俺が」
「毒見だ。さっき俺に吹き矢の針で食えなんて言ったんだ。これくらい許容できるな?」
ディオはそれを聞き、渋々口を開けた。
(やった!)
いつも飄々とこちらをあしらってくるディオをやり込めることに成功して気分が上がる。
顰めっ面も美人がやると絵になるものだ。
そう思った矢先、突然乱入者がやってきて、目の前でディオの唇を強引に奪ってきた。
ゴッドハルトのルーセウスだ。
(来てたのか)
人目も憚らずディープキスとは、なかなか熱烈だなと冷めた目で見るが、ディオの表情が蕩けていくのをみて思わず目を奪われた。
しかもその後は真っ赤になって挙動不審になる始末。
(くっそ可愛いな)
初めてそう思った。
俺にはまだ見せたことのない表情を次々見せるディオに、心が動かされる。
この男はベッドではどんな風に啼くのだろうか?
もっと色んな顔を見てみたい。
素直にそう思う。
それにしても、ディオはこんな直情型の無神経な男のどこが気に入ったんだ?
強引なところか?
それとも自分と真逆の性格に興味を持ったとかか?
どちらもあり得そうだ。
でもその後のやり取りで二人の仲が上手くいっていないのだと確信して、今なら付け入る隙がありそうだとほくそ笑む。
敵国に戦争を仕掛けず、且つ国及びルーセウスとディア王女に手は出さないという契約も守りながら復讐するにはいいんじゃないだろうか?
これが────俺がディオを落としたくなった切っ掛けだった。
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