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第五章 油断大敵
88.嫁には勝てない
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ヴィオレッタ王女と打ち合わせを終え、各所に連絡を入れて調整を頼み、騎士や文官達への指導を再開して、今日もビシビシ鍛え終わったところでシグからタオルが差し出される。
「ルーセウス陛下!お疲れ様っす!」
「お。ありがとう」
「どういたしまして。早速なんですけど、ちょっとディオ様を叱ってほしくてお願いしにきました!」
シグ曰く、ディオを叱れるのは俺しかいないらしい。
「あのディオ様を叱りつつ、言い聞かせられるのはルーセウス陛下だけっすよ。頼みますからよろしくお願いしまっす!」
そしてあり得ない迂闊な話を聞かされて、俺は頭が痛くなった。
(ディオぉおおおっ!)
俺の結婚式当日夜にパーシバルと二人きりで飲む?
俺とディア王女の初夜でモヤモヤするからって、相手は選べ!
絶対喰われるぞ?!
「取り敢えず、その飲みはキャンセルさせよう」
「上手く丸め込んでください!」
シグも言うように、丸め込んででも絶対キャンセルさせないと。
「ちなみにディオは酒は強いのか?」
「そこら辺は不明っすね。いつもワイングラス二杯くらいしか嗜まないんで。ただ、ガヴァムの王族は総じて酒に弱い傾向があるっぽいんで、期待はしない方がいいっすよ?」
「……それならディオの酒量限界をちゃんと把握しておいた方が良さそうだな」
今後のためにもそれはちゃんとしておいた方がいい気がする。
今回上手くパーシバルとの飲み会を阻止できたとしても、そう簡単に諦めるとは思えないからだ。
「そうっすね。今日の晩餐の時にでも試します?ワインでいいっすか?」
「ブランデーとかウイスキーみたいな度数の高い酒をロックで飲ませてみるか。もし弱かったら一口で酔うだろうし、わかりやすい」
「了解っす。じゃあ用意しておきますね!」
そんなこんなで迎えた晩餐。
ディオに早速とばかりにパーシバルとの飲み会キャンセルを頼んだら、物凄く不本意そうな顔をされた。
善処するって、キャンセルする気ゼロだろ?!
仕方がないから結婚式の件を持ち出して、強制キャンセルに持ち込んだ。
後でちゃんとじっくり話す気だったのに、片手間になってしまったじゃないか。
とは言えこれでパーシバルとの飲み会話は確実になくなる。
早速ツンナガールで連絡させよう。
そうじゃないと安心できない。
渋るディオを促し、ツンナガールでパーシバルへと断りを入れてもらう。
『どうした?ディオ。俺の声がもう恋しくなったのか?』
誰がお前の声を恋しく思ってるって?
もうこの時点でイラッとなる。
「冗談。実はちょっと事情が変わって、結婚式を俺のとルーセウスのを合同で行う事になったらしいんだ」
『へぇ?じゃあ場所はガヴァムに変更か?』
「そう。だから夜は飲めそうにないかなって」
よしよし。
ちゃんと断れて偉いぞ。
『そうか。なら前日に飲めばいい。どうせパーティーも開かれるんだろう?』
「パーティーは前日じゃなく当日かな」
『それじゃあ思う存分祝い酒が楽しめないだろうに』
「まあそれはしょうがない」
パーシバルはさっさと諦めろ。
結婚式の前日も当日もお前の出番なんて一切ない。
そう思ったところで話が飛んだ。
『ふん。じゃあ別日にゆっくり飲むか。実は資材の目処がまだ立ちそうにないんだ。どこかディオに紹介してもらえたら嬉しいんだが?勿論ぼったくられないところで』
「それなら日程調整するから近日中に会おうか。いくつか良さげなところに話を通して見積もりを用意しておくよ」
(…………は?)
『助かる。礼は激甘のアイスワインでいいか?』
「子供扱いはしないでほしい」
『ハハハッ!じゃあ日が決まったら連絡をくれ』
「わかった。じゃあまた」
ピッ。
「キャンセルできたよ」
「違うぅうっ!!」
色々ツッコミどころが満載なんだが?!
思わずテーブルに突っ伏しそうな勢いで俺は叫んでしまった。
「どうして会う予定が早まってるんだ?!」
「え?仕事だから?」
「パーシバルめ…!」
「???」
なんて策士な奴なんだ!
キャンセルを受け付けて安心させたところで、大幅に前倒しで会おうとしてくるなんて!
本気で何が悪かったのかがわかっていない様子のディオにもヤキモキしてしまう。
「ディオもディオだ!パーシバルは敵なのに、仲が良過ぎる!」
凄く親しげに話すのが気に食わない。
嫉妬するなと言う方が無理だ。
「パーシバルは確かに敵ではあるけど、完全に敵対しているわけじゃなくて、国交ができたからある程度持ちつ持たれつ互いに利用し合っていく感じなんだ。駆け引きしながら牽制し合う間柄って言うのかな?ルーセウスはそういうのは苦手だろうし、俺が窓口になるから気にしなくていいよ」
(だからそうじゃない!)
ディオは本当にどうしてこんなにパーシバルに対して警戒心が薄いんだろう?
普段はもうちょっと相手に警戒しているだろう?
ディオの心にスルリと入り込まれているのを感じてモヤモヤする。
「気にするに決まってるだろう?!ディオに何かあったら…っ」
「大丈夫。そう簡単にやられる気はないから。ちゃんと毒にも注意しておくし」
「だからそうじゃなくて!ディオの貞操を心配してるんだ、俺は!」
もうハッキリ言わないとディオには伝わらないとばかりに言ってみた。
「ルーセウス。嫉妬してくれるのは嬉しいけど、流石にパーシバルにまでは…」
「いや、絶対狙われてるから!」
重ねて言うがディオは『そんなこと、あるはずがない』と言わんばかりに困った顔になるばかり。
(パーシバルめ…!)
悔しい。
今後は絶対に目を光らせておかないと。
そう思ってたらいつの間にかディオがブランデーへと口をつけていた。
そっと様子を窺うが、一口程度なら大丈夫そうだ。
どうやらそこまで弱いわけでもなさそうだと判断し、釘刺しに全力を注ぐことに。
「兎に角!パーシバルと会う時は俺も絶対同席するから!」
「うんうん」
「他に何か思わせぶりな事は言われてないか?言われたら全部俺に教えてくれ!」
「大丈夫大丈夫。ふぅ…」
ちゃんと相槌が返ってくるからと、フォークとナイフを動かし、食べ進めながら小言を言っていた俺が悪かった。
パッと顔を上げた時には薄っすら頬をピンクに染め、タイを外し、色気増し増しのディオが気怠げにボタンをプチプチと上から順に外している真っ最中で驚いた。
「ディ、ディオ?!」
「ん?どうかした?ルーセウス」
「ストップ!ストップ!」
「え?」
「ボタン三つは開け過ぎだ!」
「んー…でもなんだか暑くて」
その言葉にグラスへと目を走らせると、最初に入っていた量から1/4くらいまで減っている。
いつの間にそこまで飲み進めたのか。
「ディオ。酔ってるな?」
「酔ってないよ?暑いだけ」
いや。絶対酔ってるだろう?
結構なハイペースで減ってるぞ?
「はい。ディオ様。ブランデーはもうやめておきましょうね」
「ん…じゃあ代わりにワインでも」
シグがササッとグラスを下げるけど、代わりにワインでもと言ってる時点で本人に自覚がない。
これは危険だ。
「ディオ?まずは水を飲もうな?」
「え?」
「多分ディオは酒に弱い方だと思う。酒は俺と一緒にちょっとずつ慣らしていこう」
「弱くはないと思うけど?」
下戸とまでは言わないが、決して強くはない。
でもここで言っても聞きはしないだろう。
「本当に?……じゃあ試しにもう少しだけ飲んでみるか?」
「ん。飲む」
こう答えてくるのがその証拠だ。
取り敢えず手始めに、酔い始めの感覚だけは知っておいてもらわないと。
「……ディオ。今の状態は酔い始めだ。その状態になったら絶対に飲むのはやめるように」
「酔ってないよ?」
「うんうん。酔ってないな。でも酔い始めてるから、この状態になったらまず水を飲め。量で判断するんじゃなくて、状態で判断するんだ。わかるか?」
わかりやすく伝えると、ちゃんと『わかった』と返ってきはしたものの、フニャッと不意打ちのように可愛く笑うから身悶えるかと思った。
(可愛い過ぎるぅうっ!)
俺の嫁はどうやら酔うと可愛いさに輪がかかるらしい。
非常に危険だ。
絶対パーシバルと二人きりになんてさせられない。
仮にパーシバルがノンケだったとしてもパクッといきたくなるんじゃないだろうか?
しかもその後、俺をジッと見つめてきて、どうかしたのかと尋ねたら、誘い文句を口にしてくるし、おまけに愛おしそうに見つめてきながら『大好き』なんて言ってこられた。
(うぉおおおおっ!)
もう襲いたいっ!
これ以上は理性が崩壊する!
「ディオ。もう部屋に下がろうか。俺はそろそろ限界だ」
なんとか理性を総動員すべく天を仰ぎながら部屋に戻ろうと言ってみるが、ディオは無自覚だった。
「でもまだデザートが…」
ここで天然の焦らしを入れてくるなんて、なんて罪作りな嫁だ。
「俺のデザートはディオだ」
「え?」
諦めて俺に美味しく食べられてくれ。
俺を煽った責任は取ってもらわないと。
「ディオ。抱いていこうか?」
「そこまで酔ってないから平気だ」
「そうか」
相変わらずの酔ってない発言だけど…。
「でも手は繋ぎたい」
「素直…!可愛い」
これは反則だろう。
今すぐ持ち帰りたい!
結局俺はディオには勝てないってことだな。
俺は小悪魔になってしまったディオの手を引きながら、お酒もたまにはいいものだと、緩み切った顔でちょっとだけ思ったのだった。
「ルーセウス陛下!お疲れ様っす!」
「お。ありがとう」
「どういたしまして。早速なんですけど、ちょっとディオ様を叱ってほしくてお願いしにきました!」
シグ曰く、ディオを叱れるのは俺しかいないらしい。
「あのディオ様を叱りつつ、言い聞かせられるのはルーセウス陛下だけっすよ。頼みますからよろしくお願いしまっす!」
そしてあり得ない迂闊な話を聞かされて、俺は頭が痛くなった。
(ディオぉおおおっ!)
俺の結婚式当日夜にパーシバルと二人きりで飲む?
俺とディア王女の初夜でモヤモヤするからって、相手は選べ!
絶対喰われるぞ?!
「取り敢えず、その飲みはキャンセルさせよう」
「上手く丸め込んでください!」
シグも言うように、丸め込んででも絶対キャンセルさせないと。
「ちなみにディオは酒は強いのか?」
「そこら辺は不明っすね。いつもワイングラス二杯くらいしか嗜まないんで。ただ、ガヴァムの王族は総じて酒に弱い傾向があるっぽいんで、期待はしない方がいいっすよ?」
「……それならディオの酒量限界をちゃんと把握しておいた方が良さそうだな」
今後のためにもそれはちゃんとしておいた方がいい気がする。
今回上手くパーシバルとの飲み会を阻止できたとしても、そう簡単に諦めるとは思えないからだ。
「そうっすね。今日の晩餐の時にでも試します?ワインでいいっすか?」
「ブランデーとかウイスキーみたいな度数の高い酒をロックで飲ませてみるか。もし弱かったら一口で酔うだろうし、わかりやすい」
「了解っす。じゃあ用意しておきますね!」
そんなこんなで迎えた晩餐。
ディオに早速とばかりにパーシバルとの飲み会キャンセルを頼んだら、物凄く不本意そうな顔をされた。
善処するって、キャンセルする気ゼロだろ?!
仕方がないから結婚式の件を持ち出して、強制キャンセルに持ち込んだ。
後でちゃんとじっくり話す気だったのに、片手間になってしまったじゃないか。
とは言えこれでパーシバルとの飲み会話は確実になくなる。
早速ツンナガールで連絡させよう。
そうじゃないと安心できない。
渋るディオを促し、ツンナガールでパーシバルへと断りを入れてもらう。
『どうした?ディオ。俺の声がもう恋しくなったのか?』
誰がお前の声を恋しく思ってるって?
もうこの時点でイラッとなる。
「冗談。実はちょっと事情が変わって、結婚式を俺のとルーセウスのを合同で行う事になったらしいんだ」
『へぇ?じゃあ場所はガヴァムに変更か?』
「そう。だから夜は飲めそうにないかなって」
よしよし。
ちゃんと断れて偉いぞ。
『そうか。なら前日に飲めばいい。どうせパーティーも開かれるんだろう?』
「パーティーは前日じゃなく当日かな」
『それじゃあ思う存分祝い酒が楽しめないだろうに』
「まあそれはしょうがない」
パーシバルはさっさと諦めろ。
結婚式の前日も当日もお前の出番なんて一切ない。
そう思ったところで話が飛んだ。
『ふん。じゃあ別日にゆっくり飲むか。実は資材の目処がまだ立ちそうにないんだ。どこかディオに紹介してもらえたら嬉しいんだが?勿論ぼったくられないところで』
「それなら日程調整するから近日中に会おうか。いくつか良さげなところに話を通して見積もりを用意しておくよ」
(…………は?)
『助かる。礼は激甘のアイスワインでいいか?』
「子供扱いはしないでほしい」
『ハハハッ!じゃあ日が決まったら連絡をくれ』
「わかった。じゃあまた」
ピッ。
「キャンセルできたよ」
「違うぅうっ!!」
色々ツッコミどころが満載なんだが?!
思わずテーブルに突っ伏しそうな勢いで俺は叫んでしまった。
「どうして会う予定が早まってるんだ?!」
「え?仕事だから?」
「パーシバルめ…!」
「???」
なんて策士な奴なんだ!
キャンセルを受け付けて安心させたところで、大幅に前倒しで会おうとしてくるなんて!
本気で何が悪かったのかがわかっていない様子のディオにもヤキモキしてしまう。
「ディオもディオだ!パーシバルは敵なのに、仲が良過ぎる!」
凄く親しげに話すのが気に食わない。
嫉妬するなと言う方が無理だ。
「パーシバルは確かに敵ではあるけど、完全に敵対しているわけじゃなくて、国交ができたからある程度持ちつ持たれつ互いに利用し合っていく感じなんだ。駆け引きしながら牽制し合う間柄って言うのかな?ルーセウスはそういうのは苦手だろうし、俺が窓口になるから気にしなくていいよ」
(だからそうじゃない!)
ディオは本当にどうしてこんなにパーシバルに対して警戒心が薄いんだろう?
普段はもうちょっと相手に警戒しているだろう?
ディオの心にスルリと入り込まれているのを感じてモヤモヤする。
「気にするに決まってるだろう?!ディオに何かあったら…っ」
「大丈夫。そう簡単にやられる気はないから。ちゃんと毒にも注意しておくし」
「だからそうじゃなくて!ディオの貞操を心配してるんだ、俺は!」
もうハッキリ言わないとディオには伝わらないとばかりに言ってみた。
「ルーセウス。嫉妬してくれるのは嬉しいけど、流石にパーシバルにまでは…」
「いや、絶対狙われてるから!」
重ねて言うがディオは『そんなこと、あるはずがない』と言わんばかりに困った顔になるばかり。
(パーシバルめ…!)
悔しい。
今後は絶対に目を光らせておかないと。
そう思ってたらいつの間にかディオがブランデーへと口をつけていた。
そっと様子を窺うが、一口程度なら大丈夫そうだ。
どうやらそこまで弱いわけでもなさそうだと判断し、釘刺しに全力を注ぐことに。
「兎に角!パーシバルと会う時は俺も絶対同席するから!」
「うんうん」
「他に何か思わせぶりな事は言われてないか?言われたら全部俺に教えてくれ!」
「大丈夫大丈夫。ふぅ…」
ちゃんと相槌が返ってくるからと、フォークとナイフを動かし、食べ進めながら小言を言っていた俺が悪かった。
パッと顔を上げた時には薄っすら頬をピンクに染め、タイを外し、色気増し増しのディオが気怠げにボタンをプチプチと上から順に外している真っ最中で驚いた。
「ディ、ディオ?!」
「ん?どうかした?ルーセウス」
「ストップ!ストップ!」
「え?」
「ボタン三つは開け過ぎだ!」
「んー…でもなんだか暑くて」
その言葉にグラスへと目を走らせると、最初に入っていた量から1/4くらいまで減っている。
いつの間にそこまで飲み進めたのか。
「ディオ。酔ってるな?」
「酔ってないよ?暑いだけ」
いや。絶対酔ってるだろう?
結構なハイペースで減ってるぞ?
「はい。ディオ様。ブランデーはもうやめておきましょうね」
「ん…じゃあ代わりにワインでも」
シグがササッとグラスを下げるけど、代わりにワインでもと言ってる時点で本人に自覚がない。
これは危険だ。
「ディオ?まずは水を飲もうな?」
「え?」
「多分ディオは酒に弱い方だと思う。酒は俺と一緒にちょっとずつ慣らしていこう」
「弱くはないと思うけど?」
下戸とまでは言わないが、決して強くはない。
でもここで言っても聞きはしないだろう。
「本当に?……じゃあ試しにもう少しだけ飲んでみるか?」
「ん。飲む」
こう答えてくるのがその証拠だ。
取り敢えず手始めに、酔い始めの感覚だけは知っておいてもらわないと。
「……ディオ。今の状態は酔い始めだ。その状態になったら絶対に飲むのはやめるように」
「酔ってないよ?」
「うんうん。酔ってないな。でも酔い始めてるから、この状態になったらまず水を飲め。量で判断するんじゃなくて、状態で判断するんだ。わかるか?」
わかりやすく伝えると、ちゃんと『わかった』と返ってきはしたものの、フニャッと不意打ちのように可愛く笑うから身悶えるかと思った。
(可愛い過ぎるぅうっ!)
俺の嫁はどうやら酔うと可愛いさに輪がかかるらしい。
非常に危険だ。
絶対パーシバルと二人きりになんてさせられない。
仮にパーシバルがノンケだったとしてもパクッといきたくなるんじゃないだろうか?
しかもその後、俺をジッと見つめてきて、どうかしたのかと尋ねたら、誘い文句を口にしてくるし、おまけに愛おしそうに見つめてきながら『大好き』なんて言ってこられた。
(うぉおおおおっ!)
もう襲いたいっ!
これ以上は理性が崩壊する!
「ディオ。もう部屋に下がろうか。俺はそろそろ限界だ」
なんとか理性を総動員すべく天を仰ぎながら部屋に戻ろうと言ってみるが、ディオは無自覚だった。
「でもまだデザートが…」
ここで天然の焦らしを入れてくるなんて、なんて罪作りな嫁だ。
「俺のデザートはディオだ」
「え?」
諦めて俺に美味しく食べられてくれ。
俺を煽った責任は取ってもらわないと。
「ディオ。抱いていこうか?」
「そこまで酔ってないから平気だ」
「そうか」
相変わらずの酔ってない発言だけど…。
「でも手は繋ぎたい」
「素直…!可愛い」
これは反則だろう。
今すぐ持ち帰りたい!
結局俺はディオには勝てないってことだな。
俺は小悪魔になってしまったディオの手を引きながら、お酒もたまにはいいものだと、緩み切った顔でちょっとだけ思ったのだった。
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