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【英雄トルセンの弟子】
26.英雄トルセンの弟子②
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選手の控室に入ると俺達は格好の噂の的だった。
まああくまでも噂の二人という感じで、積極的に近づいてくる者達がいたわけではないけど…。
ちなみに今日は別に王子からセクハラをされてはいない。
俺がウキウキしているのを察した王子が気を削がれたくないだろうと言って、珍しく気遣ってくれたからだ。
これは意外だったけど、凄く有難かった。
待っている間他の選手の戦いも見れたし、なかなかの名勝負も見れて心が弾む。
早く早くと自分の出番を待っているとそのうち名を呼ばれたのですぐに飛んでいった。
相手は割と強そうな筋肉マッチョ。
(楽しそう!)
どんな剣筋でどんな攻め方をしてくるんだろう?
スピードは?パワーは?
そんな風に考えながら『始め!』の言葉と共に小手調べに剣を合わせてみる。
ガァンッ!!
(あれ?)
思ったよりも手ごたえがなくて調子が狂う。
これじゃあうちの騎士達の方がまだマシかもしれない。
本気でやってくれないのかとちょっと悲しくなったが、対するマッチョはその一撃で腕が痺れたのか舌打ちして後ろに飛びずさった。
でもそれじゃあ隙だらけだぞと一気に距離を詰め剣を振るう。
ビュッ!!
剣が風を凪ぐように男に迫るが全く反応できていない。
ピタリとその首筋で止めてやると真っ青になりながら参りましたと言われてしまった。
「勝者、アルフレッド!」
その言葉にワァッ!と会場が湧いて側妃コールが巻き起こるが正直俺はちょっとがっかりしてしまう。
(はぁ…見掛け倒しだったか……)
残念と思いながら控室に戻ると、次の出番だった王子がクシャッと頭を撫でてきた。
「そう残念がるな。後で思う存分戦ってやる」
そんな風に笑って言ってきてくれたから一瞬ちょっとだけドキッとして見惚れてしまいそうになった。
単純?でも、この時は本気でちょっといいなと思ったんだ。
落ち込んでる時に強い相手から声を掛けてもらえると嬉しくなるもんなんだなと初めて知った。
何と言うか、やる気が出る。
俺はそのまま王子の試合も観戦することにして闘技場の上を見ていたが、ちょうどそのタイミングでドアをくぐって入ってくる者がいた。
飛び入り参加者だろうか?
(おっ…?)
ちょっと手応えがありそうな相手が来た気配にちらりとそちらを見遣ると、十代後半くらいの背の高いがっしりした体躯の男が王子の方をじっと見ていた。
どうやら王子に興味津々のようだ。
そして皆が見守る中、勝負はやっぱり一瞬でついてしまった。
隣で見ていた男も「つえ~…」と言いながら絶句している。
(そうそう。王子は強いんだよ)
他にも強い相手はいるだろうけど、この分なら二人で決勝かなと何となく思った。
そんな俺とは違い、先程入ってきた男はすぐにでも強敵とみなした王子と戦いたくなったのだろう。
ニヤッと笑うと勝負を終えてこちらに戻ろうとしていた王子の前へと躍り出た。
「おぉっと~!このタイミングでまさかの飛び入りだ~!セドリック王子に挑むのは~…エントリーナンバー34番、カッツェ~~!!」
その姿にちょっとだけ自分もやればよかったと羨ましく思ってしまう。
でもまだ他の選手もいるし我慢我慢と勝負の行く末を見守ることにした。
ここで王子に勝てる相手だったなら決勝戦まで勝ち上がってくるのは確実だからだ。
カッツェはスッと剣先を王子へと向けると不敵に笑いながら言い放つ。
「強いと噂の王子の力量を見定めに来た。いざ、尋常に勝負!」
そして揃って闘技場へと上ると、始めの合図と共に結構な速さで王子へと向かっていった。
けれどその剣戟はあっさりと王子にいなされ弾き飛ばされる。
「くっ…!」
そこからはスピード勝負とばかりに連撃を繰り出すが、俺との勝負に慣れている王子からすれば十分反応できる速さで、全て綺麗に捌ききられていた。
でもそれなりに力の乗ったいい剣戟だ。ブレもないし急所を的確に狙っているし無駄もない。
並の相手なら瞬殺だろう。
もうちょっと鍛錬したら結構いい線いくのではないだろうか?
そんな風に見ていると、隣から別の男が声を掛けてきた。
「側妃様。この勝負、どう見ます?」
どうやらこの勝負の行く末が気になって声を掛けてきたらしい。
「ん?王子の勝ちだろ」
「やっぱり!あっちの挑戦者も強いですけど、王子は圧倒的ですもんね」
「うん、まあ王子は俺とほぼ毎日手合わせしてるしな~」
なんて呑気に話しながら見ていると、そんな俺達に気づいたのか王子の方から物凄く嫉妬まじりの威圧と殺気が飛んできた。
「ひっ…!」
可哀想に、俺と話していた男は腰を抜かしてしまう。戦士とは言えあのダブルは相当恐ろしかったのだろう。
「あ~あ…しようがないな」
せめて殺気だけにしておけよと思いながら男に手を貸して立ち上がらせようとしたらまた殺気が飛んできた。
(ダメなのか?!お前のせいなのに…!)
凄く理不尽を感じたが、こればかりは仕方がないかと他の者に目配せをして手伝ってもらいなんとか男を移動させることに成功した。
「側妃様…すみません!どうか殺されないよう王子に取り成してください!」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっと焼きもちやいてるだけだって。すぐ忘れるから。……多分」
自信はないけどな。
そうこうしているうちに王子の殺気が対戦相手へと向かい、相手が一瞬怯んだ隙に勝負をあっさりと決めてしまった。
しかも「勝者、セドリック王子!」と名を呼ばれてすぐに俺へと剣を向けてきたから、もう帰る気満々だなと溜め息が出てしまう。
きっと俺が男と親し気に話していたのが気に入らなかったんだろうな~と思いながら俺も諦めて剣を手に闘技場の上へと向かった。
「アル。ちょっと目を離した隙に浮気か?」
「いやいやいや?!どっちが勝つかって話してただけだろ?!言い掛かりも大概にしろ!」
「正直お前以上に強い奴はここにはいない。さっさとやって、帰ってヤルぞ!」
「それはおかしいから!間違ってるから!」
いくら嫉妬したからってこんな場所でなんてことを言い出すんだと俺は真っ赤になりながら王子の言葉を遮り、構えを取って息を整える。
その隙にカッツェは舞台から降ろされて、俺と王子の突然の対戦が始まった。
これには会場も大盛り上がりだ。
まさに場は事実上の決勝戦とでも言いたそうな雰囲気に包まれている。
「はじめ!」
審判もどことなく興奮したようにそう声を掛け、二人の剣が激しくぶつかり合った。
ガキィンッ!!と先程と同じように打ち合わせても王子は力負けしてくることはない。
それどころかその力を利用して反撃に転じてくる。
それを受けて俺も受け流し下段から切り上げ、それを受けた王子がまた返すといったように流れるようにキンッキンッと次々剣の打ち合いが続いて行く。
(これこれ、これだよ…!)
「あぁ…やっぱいいなぁ。セド」
気分の高揚と共にスイッチが入った俺は嬉しげに笑いながら王子に全力で向かっていく。
「アル…興奮しすぎてヤッてる最中みたいな蕩けた顔になっているぞ?たまにはそんな嬉しそうで満足げな顔で抱かれてみないか?」
ククッと笑いながら王子が挑発してくるがそんなもの、この楽しい時間の妨げには全くならない。
「煩い。そっちは後で好きなだけ付き合ってやるから、今は俺に付き合え!」
どこか嗜虐的な気分であれもこれもと試したかった技を次々試していく。
先日王子に負けてから考えたバリエーションの連撃技だ。
それがどれだけ通用するのかを俺は知りたかった。
「くっ…!」
「ははッ!!しっかり受け止めろよ?セドッ!」
右上、左上からの素早い攻撃で慣らしたところからの下からの斬り上げ。そこでとどまらず横凪ぎ一閃から上段。力の乗った打ち下ろしに王子が受け止めに掛かるが、そこから旋回しての鋭い回し斬り。
「チッ…!」
そこで王子が悔しそうに一歩下がったのを見て俺はにんまり笑って素早く勝負を決めた。
「はぁ…今日は俺の…勝ちだ」
恍惚とした顔で王子に勝ちを宣言すると、一際大きく歓声が上がる。
「「「側妃様!!」」」
「「「凄かったです!」」」
そんな言葉と共に何故か「王子とお幸せに~!」とか叫ばれてるがそこは無視だ無視!!
そして勝者宣言を受けた後で王子がここで棄権しろと言ったので、まあいいかと審判の男に申し出るとあっさりと受理されて、この後のデートも楽しんでくださいねと笑顔で送り出された。
いいのかこれで?とは思ったものの、どうやらここでは日常茶飯事のことらしく、客からの文句も特には出ないようだった。
「ここでは普段から普通にデート途中の男性が飛び入り参加していくんですよ。彼女にいいとこ見せたいってね」
受付の男性がそう教えてくれつつ賞金目当ての男だけが最後まで残るんですよとも言っていたのできっと何も問題はないのだろう。
ある意味自由な闘技場で良かった。
「あ~楽しかった!」
そして俺は大満足で伸びをして満面の笑みで歩いていたのだが、王子が笑顔で口にした言葉に一気に固まってしまう。
「それは良かった。では約束通りこの後は好きなだけ付き合ってもらおうか」
「…………えっ?!」
『勝ったのにどうして?!』と目を丸くしたら、王子がククッと笑って悪魔の言葉を紡いできた。
「お前は本当に脳筋だな。先程の言葉忘れたわけではあるまい?今日は俺が満足するまで付き合ってもらうぞ?」
「えっ?そっ、それは…ッ!」
「言質は取ったぞ、アル」
(俺の馬鹿────ッ!!)
後悔先に立たず。俺は過去に戻れるならさっきの自分にそれだけは言うなと言ってやりたかった。
そしてズルズルと馬車まで連れ去られ、城に戻るや否やベッドに直行された。
『いい加減学習しろ俺!』と内心ツッコミを入れながら王子の好きなように抱かれて、しかも王子のものまで口に含まされて散々な目にあったのだった。
****************
※次回はR-18です。お気を付けください。
まああくまでも噂の二人という感じで、積極的に近づいてくる者達がいたわけではないけど…。
ちなみに今日は別に王子からセクハラをされてはいない。
俺がウキウキしているのを察した王子が気を削がれたくないだろうと言って、珍しく気遣ってくれたからだ。
これは意外だったけど、凄く有難かった。
待っている間他の選手の戦いも見れたし、なかなかの名勝負も見れて心が弾む。
早く早くと自分の出番を待っているとそのうち名を呼ばれたのですぐに飛んでいった。
相手は割と強そうな筋肉マッチョ。
(楽しそう!)
どんな剣筋でどんな攻め方をしてくるんだろう?
スピードは?パワーは?
そんな風に考えながら『始め!』の言葉と共に小手調べに剣を合わせてみる。
ガァンッ!!
(あれ?)
思ったよりも手ごたえがなくて調子が狂う。
これじゃあうちの騎士達の方がまだマシかもしれない。
本気でやってくれないのかとちょっと悲しくなったが、対するマッチョはその一撃で腕が痺れたのか舌打ちして後ろに飛びずさった。
でもそれじゃあ隙だらけだぞと一気に距離を詰め剣を振るう。
ビュッ!!
剣が風を凪ぐように男に迫るが全く反応できていない。
ピタリとその首筋で止めてやると真っ青になりながら参りましたと言われてしまった。
「勝者、アルフレッド!」
その言葉にワァッ!と会場が湧いて側妃コールが巻き起こるが正直俺はちょっとがっかりしてしまう。
(はぁ…見掛け倒しだったか……)
残念と思いながら控室に戻ると、次の出番だった王子がクシャッと頭を撫でてきた。
「そう残念がるな。後で思う存分戦ってやる」
そんな風に笑って言ってきてくれたから一瞬ちょっとだけドキッとして見惚れてしまいそうになった。
単純?でも、この時は本気でちょっといいなと思ったんだ。
落ち込んでる時に強い相手から声を掛けてもらえると嬉しくなるもんなんだなと初めて知った。
何と言うか、やる気が出る。
俺はそのまま王子の試合も観戦することにして闘技場の上を見ていたが、ちょうどそのタイミングでドアをくぐって入ってくる者がいた。
飛び入り参加者だろうか?
(おっ…?)
ちょっと手応えがありそうな相手が来た気配にちらりとそちらを見遣ると、十代後半くらいの背の高いがっしりした体躯の男が王子の方をじっと見ていた。
どうやら王子に興味津々のようだ。
そして皆が見守る中、勝負はやっぱり一瞬でついてしまった。
隣で見ていた男も「つえ~…」と言いながら絶句している。
(そうそう。王子は強いんだよ)
他にも強い相手はいるだろうけど、この分なら二人で決勝かなと何となく思った。
そんな俺とは違い、先程入ってきた男はすぐにでも強敵とみなした王子と戦いたくなったのだろう。
ニヤッと笑うと勝負を終えてこちらに戻ろうとしていた王子の前へと躍り出た。
「おぉっと~!このタイミングでまさかの飛び入りだ~!セドリック王子に挑むのは~…エントリーナンバー34番、カッツェ~~!!」
その姿にちょっとだけ自分もやればよかったと羨ましく思ってしまう。
でもまだ他の選手もいるし我慢我慢と勝負の行く末を見守ることにした。
ここで王子に勝てる相手だったなら決勝戦まで勝ち上がってくるのは確実だからだ。
カッツェはスッと剣先を王子へと向けると不敵に笑いながら言い放つ。
「強いと噂の王子の力量を見定めに来た。いざ、尋常に勝負!」
そして揃って闘技場へと上ると、始めの合図と共に結構な速さで王子へと向かっていった。
けれどその剣戟はあっさりと王子にいなされ弾き飛ばされる。
「くっ…!」
そこからはスピード勝負とばかりに連撃を繰り出すが、俺との勝負に慣れている王子からすれば十分反応できる速さで、全て綺麗に捌ききられていた。
でもそれなりに力の乗ったいい剣戟だ。ブレもないし急所を的確に狙っているし無駄もない。
並の相手なら瞬殺だろう。
もうちょっと鍛錬したら結構いい線いくのではないだろうか?
そんな風に見ていると、隣から別の男が声を掛けてきた。
「側妃様。この勝負、どう見ます?」
どうやらこの勝負の行く末が気になって声を掛けてきたらしい。
「ん?王子の勝ちだろ」
「やっぱり!あっちの挑戦者も強いですけど、王子は圧倒的ですもんね」
「うん、まあ王子は俺とほぼ毎日手合わせしてるしな~」
なんて呑気に話しながら見ていると、そんな俺達に気づいたのか王子の方から物凄く嫉妬まじりの威圧と殺気が飛んできた。
「ひっ…!」
可哀想に、俺と話していた男は腰を抜かしてしまう。戦士とは言えあのダブルは相当恐ろしかったのだろう。
「あ~あ…しようがないな」
せめて殺気だけにしておけよと思いながら男に手を貸して立ち上がらせようとしたらまた殺気が飛んできた。
(ダメなのか?!お前のせいなのに…!)
凄く理不尽を感じたが、こればかりは仕方がないかと他の者に目配せをして手伝ってもらいなんとか男を移動させることに成功した。
「側妃様…すみません!どうか殺されないよう王子に取り成してください!」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっと焼きもちやいてるだけだって。すぐ忘れるから。……多分」
自信はないけどな。
そうこうしているうちに王子の殺気が対戦相手へと向かい、相手が一瞬怯んだ隙に勝負をあっさりと決めてしまった。
しかも「勝者、セドリック王子!」と名を呼ばれてすぐに俺へと剣を向けてきたから、もう帰る気満々だなと溜め息が出てしまう。
きっと俺が男と親し気に話していたのが気に入らなかったんだろうな~と思いながら俺も諦めて剣を手に闘技場の上へと向かった。
「アル。ちょっと目を離した隙に浮気か?」
「いやいやいや?!どっちが勝つかって話してただけだろ?!言い掛かりも大概にしろ!」
「正直お前以上に強い奴はここにはいない。さっさとやって、帰ってヤルぞ!」
「それはおかしいから!間違ってるから!」
いくら嫉妬したからってこんな場所でなんてことを言い出すんだと俺は真っ赤になりながら王子の言葉を遮り、構えを取って息を整える。
その隙にカッツェは舞台から降ろされて、俺と王子の突然の対戦が始まった。
これには会場も大盛り上がりだ。
まさに場は事実上の決勝戦とでも言いたそうな雰囲気に包まれている。
「はじめ!」
審判もどことなく興奮したようにそう声を掛け、二人の剣が激しくぶつかり合った。
ガキィンッ!!と先程と同じように打ち合わせても王子は力負けしてくることはない。
それどころかその力を利用して反撃に転じてくる。
それを受けて俺も受け流し下段から切り上げ、それを受けた王子がまた返すといったように流れるようにキンッキンッと次々剣の打ち合いが続いて行く。
(これこれ、これだよ…!)
「あぁ…やっぱいいなぁ。セド」
気分の高揚と共にスイッチが入った俺は嬉しげに笑いながら王子に全力で向かっていく。
「アル…興奮しすぎてヤッてる最中みたいな蕩けた顔になっているぞ?たまにはそんな嬉しそうで満足げな顔で抱かれてみないか?」
ククッと笑いながら王子が挑発してくるがそんなもの、この楽しい時間の妨げには全くならない。
「煩い。そっちは後で好きなだけ付き合ってやるから、今は俺に付き合え!」
どこか嗜虐的な気分であれもこれもと試したかった技を次々試していく。
先日王子に負けてから考えたバリエーションの連撃技だ。
それがどれだけ通用するのかを俺は知りたかった。
「くっ…!」
「ははッ!!しっかり受け止めろよ?セドッ!」
右上、左上からの素早い攻撃で慣らしたところからの下からの斬り上げ。そこでとどまらず横凪ぎ一閃から上段。力の乗った打ち下ろしに王子が受け止めに掛かるが、そこから旋回しての鋭い回し斬り。
「チッ…!」
そこで王子が悔しそうに一歩下がったのを見て俺はにんまり笑って素早く勝負を決めた。
「はぁ…今日は俺の…勝ちだ」
恍惚とした顔で王子に勝ちを宣言すると、一際大きく歓声が上がる。
「「「側妃様!!」」」
「「「凄かったです!」」」
そんな言葉と共に何故か「王子とお幸せに~!」とか叫ばれてるがそこは無視だ無視!!
そして勝者宣言を受けた後で王子がここで棄権しろと言ったので、まあいいかと審判の男に申し出るとあっさりと受理されて、この後のデートも楽しんでくださいねと笑顔で送り出された。
いいのかこれで?とは思ったものの、どうやらここでは日常茶飯事のことらしく、客からの文句も特には出ないようだった。
「ここでは普段から普通にデート途中の男性が飛び入り参加していくんですよ。彼女にいいとこ見せたいってね」
受付の男性がそう教えてくれつつ賞金目当ての男だけが最後まで残るんですよとも言っていたのできっと何も問題はないのだろう。
ある意味自由な闘技場で良かった。
「あ~楽しかった!」
そして俺は大満足で伸びをして満面の笑みで歩いていたのだが、王子が笑顔で口にした言葉に一気に固まってしまう。
「それは良かった。では約束通りこの後は好きなだけ付き合ってもらおうか」
「…………えっ?!」
『勝ったのにどうして?!』と目を丸くしたら、王子がククッと笑って悪魔の言葉を紡いできた。
「お前は本当に脳筋だな。先程の言葉忘れたわけではあるまい?今日は俺が満足するまで付き合ってもらうぞ?」
「えっ?そっ、それは…ッ!」
「言質は取ったぞ、アル」
(俺の馬鹿────ッ!!)
後悔先に立たず。俺は過去に戻れるならさっきの自分にそれだけは言うなと言ってやりたかった。
そしてズルズルと馬車まで連れ去られ、城に戻るや否やベッドに直行された。
『いい加減学習しろ俺!』と内心ツッコミを入れながら王子の好きなように抱かれて、しかも王子のものまで口に含まされて散々な目にあったのだった。
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