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8.勇者は気を遣えるらしい
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それから『剣の鍛錬に行くがついてくるか』とヒロから尋ねられたが、宰相の手伝いをしたいからと断った。
すると『じゃあ昼食を一緒に食べよう』と誘われたので少し考えてから了承の返事を返した。
勇者とも意見交換はした方がいいだろうと思ってのことだったのだが、それに対してジフリートが小さく舌打ちしたのを俺は聞き逃さなかった。
どうやら相当俺のことが気に入らないらしい。
恐らくヒロと約束していなければ昼食も用意してもらえなかったことだろう。
それならそれで早めに手を打っておくに越したことはないと判断する。
このままでは夕飯を用意してもらえないのは確実だ。
「宰相。あの、お願いがあるんですが」
勇者を見送った後、すぐさま執務室へと移動し仕事を始めた宰相に俺は仕事を手伝いながら思い切ってその話を口にした。
「ん?お願い?」
「はい。こうして仕事を手伝うのは別にいいんですが、見たところ仕事量がかなり多そうですし、夕飯をのんびり食べるわけにもいかないと思うので、自分で作って持ってきたいと思っているんですよ」
そう。用意してもらえないなら自分で作ればいいだけの話だ。
「なので、調理道具や調味料、食材等をなんとかわけて貰えないか厨房の方に交渉してもらえないかと」
その言葉を聞いて、宰相は渋るかと思いきやすぐさま大きく頷いてくれる。
「構わないぞ。マナは料理もできるんだな。異世界の料理には私も興味があるから、是非一緒に食べたいものだ」
そして笑顔で部下へと目を向け、すぐさま俺の要望を叶えるようにと指示を出してくれた。
本当にどこかの部下とは違って良い人だと思う。
「じゃあ少し手を早めてサクサク仕事を片付けますか」
そして計算はできるだけこちらに回してもらい、後の決裁書類は宰相が片付けることにして、それを部下達が手分けして仕分け各部署へと持っていく流れを作った。
そうした一連の流れで随分仕事が捗り、昼は時間通りに食べに行くことができたのだった。
***
「サトル!」
昼になって、ヒロの使いだという男に連れられて辿り着いた部屋にはすでにヒロの姿があり、にこやかにこちらへと手を振ってくる。
「早く来いよ!」
そして促されるままに向かいの席へと座ると、早速と言うように料理が運ばれすぐさま食事が始まった。
今日のメニューはサーモンソテーに似た料理だ。
これに小さな丸いパンとポタージュスープ、小さなサラダがついている。
「なんか今日はちょっとメニューがしょぼい気がするけど、気にするな。多分夕飯は豪勢だと思うから」
そうしてヒロがどこか苦々しい顔をするが、これもきっと王宮の者達の嫌がらせの一端なのだろうなと呆れてしまった。
この王宮の者達は本当に馬鹿ばかりなのではないだろうか?
たとえ自分が聖女ではなかったとしても、こんな同じ轍を踏むようなことがよくできるなと思ってしまう。
正直もしも自分にこの国を助けるような力が備わっていたとしても、これでは助けたいという気持ちには一切なれないだろう。
(あ~…でも宰相だけは助けてやりたいなぁ)
他の者達はどうでもいいが、一生懸命頑張るあの宰相の姿だけは何故か心に引っ掛かって仕方がないのだ。
そんなことをぼんやり考えていると、ヒロから大きな声で呼びかけられて慌てて顔を上げた。
「おいってば!サトル!」
「…なんだ?」
どうやら何度か呼び掛けられていたらしい。
「全く!ちゃんと話を聞いてくれよ」
そしてヒロは呆れたように手と口を動かしながらも、再度話を振ってくれた。
「だからさ、どうしてさっき国境に行く話蹴ったんだよ?」
ヒロは、この王宮は居心地が悪いだろうにどうして旅を口実にして外に出なかったのだと気にしているようだった。
「なんかあの文官の態度も悪かったしさ、もしかして既に虐められてないか?」
「…………」
意外にもヒロは鋭くそんなことを口にしてくる。
「俺はアスカの、あ、これ聖女ね?アスカの時は全然気にしてやってなかったから、今回はちょっと注意して見てたんだよ」
どうやらそれなりに学習機能は備わっているらしい。
「そしたら、なんかあの宰相以外のサトルを見る目がやたら冷たいことに気づいたわけ」
「…………」
やっぱりそうなのか。
わかってはいたが、やはりと言う感じだ。
「だから、今回はここに留まるよりも外に出た方がいいと思ってさ、さっきわざわざ話に乗ってやったのに…」
どうやら俺のためにヒロはわざとあの流れに乗ってくれていたらしい。
そうやって聞くと、なんだかかえって悪かったなと思ってしまうではないか。
心の中とは言え悪態を吐いて悪かったかなと少し反省する。
「…まあ、この国のことを学んでからなら積極的に外に出るのはいいかもしれないな」
それと共にそう言うことなら現状の問題点くらいは言っておいた方がいいのかもしれないと思い直し、少しだけ話しておくことにした。
すると『じゃあ昼食を一緒に食べよう』と誘われたので少し考えてから了承の返事を返した。
勇者とも意見交換はした方がいいだろうと思ってのことだったのだが、それに対してジフリートが小さく舌打ちしたのを俺は聞き逃さなかった。
どうやら相当俺のことが気に入らないらしい。
恐らくヒロと約束していなければ昼食も用意してもらえなかったことだろう。
それならそれで早めに手を打っておくに越したことはないと判断する。
このままでは夕飯を用意してもらえないのは確実だ。
「宰相。あの、お願いがあるんですが」
勇者を見送った後、すぐさま執務室へと移動し仕事を始めた宰相に俺は仕事を手伝いながら思い切ってその話を口にした。
「ん?お願い?」
「はい。こうして仕事を手伝うのは別にいいんですが、見たところ仕事量がかなり多そうですし、夕飯をのんびり食べるわけにもいかないと思うので、自分で作って持ってきたいと思っているんですよ」
そう。用意してもらえないなら自分で作ればいいだけの話だ。
「なので、調理道具や調味料、食材等をなんとかわけて貰えないか厨房の方に交渉してもらえないかと」
その言葉を聞いて、宰相は渋るかと思いきやすぐさま大きく頷いてくれる。
「構わないぞ。マナは料理もできるんだな。異世界の料理には私も興味があるから、是非一緒に食べたいものだ」
そして笑顔で部下へと目を向け、すぐさま俺の要望を叶えるようにと指示を出してくれた。
本当にどこかの部下とは違って良い人だと思う。
「じゃあ少し手を早めてサクサク仕事を片付けますか」
そして計算はできるだけこちらに回してもらい、後の決裁書類は宰相が片付けることにして、それを部下達が手分けして仕分け各部署へと持っていく流れを作った。
そうした一連の流れで随分仕事が捗り、昼は時間通りに食べに行くことができたのだった。
***
「サトル!」
昼になって、ヒロの使いだという男に連れられて辿り着いた部屋にはすでにヒロの姿があり、にこやかにこちらへと手を振ってくる。
「早く来いよ!」
そして促されるままに向かいの席へと座ると、早速と言うように料理が運ばれすぐさま食事が始まった。
今日のメニューはサーモンソテーに似た料理だ。
これに小さな丸いパンとポタージュスープ、小さなサラダがついている。
「なんか今日はちょっとメニューがしょぼい気がするけど、気にするな。多分夕飯は豪勢だと思うから」
そうしてヒロがどこか苦々しい顔をするが、これもきっと王宮の者達の嫌がらせの一端なのだろうなと呆れてしまった。
この王宮の者達は本当に馬鹿ばかりなのではないだろうか?
たとえ自分が聖女ではなかったとしても、こんな同じ轍を踏むようなことがよくできるなと思ってしまう。
正直もしも自分にこの国を助けるような力が備わっていたとしても、これでは助けたいという気持ちには一切なれないだろう。
(あ~…でも宰相だけは助けてやりたいなぁ)
他の者達はどうでもいいが、一生懸命頑張るあの宰相の姿だけは何故か心に引っ掛かって仕方がないのだ。
そんなことをぼんやり考えていると、ヒロから大きな声で呼びかけられて慌てて顔を上げた。
「おいってば!サトル!」
「…なんだ?」
どうやら何度か呼び掛けられていたらしい。
「全く!ちゃんと話を聞いてくれよ」
そしてヒロは呆れたように手と口を動かしながらも、再度話を振ってくれた。
「だからさ、どうしてさっき国境に行く話蹴ったんだよ?」
ヒロは、この王宮は居心地が悪いだろうにどうして旅を口実にして外に出なかったのだと気にしているようだった。
「なんかあの文官の態度も悪かったしさ、もしかして既に虐められてないか?」
「…………」
意外にもヒロは鋭くそんなことを口にしてくる。
「俺はアスカの、あ、これ聖女ね?アスカの時は全然気にしてやってなかったから、今回はちょっと注意して見てたんだよ」
どうやらそれなりに学習機能は備わっているらしい。
「そしたら、なんかあの宰相以外のサトルを見る目がやたら冷たいことに気づいたわけ」
「…………」
やっぱりそうなのか。
わかってはいたが、やはりと言う感じだ。
「だから、今回はここに留まるよりも外に出た方がいいと思ってさ、さっきわざわざ話に乗ってやったのに…」
どうやら俺のためにヒロはわざとあの流れに乗ってくれていたらしい。
そうやって聞くと、なんだかかえって悪かったなと思ってしまうではないか。
心の中とは言え悪態を吐いて悪かったかなと少し反省する。
「…まあ、この国のことを学んでからなら積極的に外に出るのはいいかもしれないな」
それと共にそう言うことなら現状の問題点くらいは言っておいた方がいいのかもしれないと思い直し、少しだけ話しておくことにした。
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