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64.甘く囲ってあげますよ?―フィン目線―
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※ジフリートの末路的なお話。ヤンデレっぽいのが苦手な方は読み飛ばし推奨です。
よろしくお願いします↓↓
「本当に…あと少しだったのに、詰めの甘い人ですね」
そう言いながら腕の中にいるジフリートの髪をそっと撫でてやる。
この男は自分のことをこれまで天敵のように決して油断せず見ていたはずだった。
だから…今回の件で少しでも油断してくれればいい、そう思っていたのだが…。
思っていた以上に上手く事が運んで自画自賛したい気分だった。
「ねえ、ジフリート殿?私は結構本気で貴方のことを気に入ってたんですよ?」
クスクスと静かな部屋にその声が響く。
「できれば【魅了】なんて無粋なことはしたくなかったんですが、仕方がないですよね?貴方のあの執着もまた、貴方の面白い持ち味の一つですし」
それによって随分長い時間楽しませてもらった。
王の影はその代替わり時期にしか引退は許されてはいない。
自分はあの王が大嫌いだった。
けれどそれでも自分の仕える主だ。
どれだけ嫌だろうと命令されれば心を殺して淡々と仕事をこなさなければならない。
同僚は言った。
お前が40を超える頃には代替わりがあるだろう。それまで我慢すればいい────と。
その言葉は胸に深く刺さって、自分の人生についてを改めて考えさせられた。
そんな日々を過ごす反面、極たまに兄に連れられて兄の友人の元へ遊びに行く機会があった。
王の影である自分であるが、この時ばかりは普通の貴族としてふるまうことが出来た。
そこで顔を合わせていたのがジフリートだった。
彼は面白い人物で、自分の兄にまでヴェルガーを好きだと言うのを隠そうとはしていなかった。
それはある種病的なまでで、もはや崇拝しているのではないかとさえ思えるほどだった。
まあ普通は崇拝している相手をグチャグチャに犯しつくしたいとは思わないだろうし、厳密には崇拝というより執着愛というものなのだろう。
けれど自分の目にはジフリートの「欲しいものを欲しいと言って何が悪い。本当に欲しいなら何が何でも手に入れて見せればいい」という姿勢が物凄く好ましく映った。
だから…そんな彼をいつか手に入れられればいいなと思ったのだ。
欲望に忠実なジフリートは見ているだけで面白かった。
王の影として働く自分に自由などないけれど、たった一つ手に入れることが出来るのなら、それは自分をいつの間にか魅了していた彼がいい─────。
そんな思いを抱えながら数年…。
ある日思いもしなかったことが起こった。
任務を受けて隣国へ調査へと出向き、戻ってきた頃には全てが終わっていた。
王及び重鎮達が揃って広間で氷漬けになっていたのだ。
その光景は一種異様ではあったが、自分にとっては革命的な出来事でもあった。
これで……自分は自由なのだという思いが込み上げてくる。
一体誰がこんなことをしたのかはわからなかったが、思い切り笑い出したい気持ちでいっぱいだった。
いや。実際笑っていたのだと思う。
王は死んだ─────。
代替わりをしようが王族が滅ぼうが関係ない。
引退するか無条件で自由になるかの違いだ。
自分が自由になったことに変わりはなかった。
それから暫く王宮に留まり、何が起こったのかをさり気なく探ってみるとすぐに犯人はジフリートなのだということが分かった。
ジフリートはその欲望のままにヴェルガーを王宮におびき寄せ、自分の傍に於いて手に入れようとしていた。
(本当にわかりやすい…)
誰よりも貪欲で、自分の欲と国を天秤にかけ欲を選んだ愚かな男。
けれど…誰よりも愛しい男だった。
意図せずとも自分に自由を与えてくれたことでもっと手に入れたいと思うようになった。
けれどここで無理矢理手に入れようともその執着心を断てるとは思えなかった。
だから好きなようにさせることにしたのだ。
満足できるまで思うがままに好きに動けばいい。
そして最後の最後に────もうこれ以上ないほどどうしようもなくなったところで彼を手に入れればいい。
悔いが残らないくらいがちょうどいいが、全くなくならないまでも少なければ少ないほど【魅了】は効きやすくなる。
その執着心が鳴りを潜めたタイミングで使うのがもっとも効果的だから、タイミングを見計らって思い切り刺し貫いた。
「人は目の前にある脅威を前にして、そこから更に別の角度から脅威にさらされたらほぼ100%の確率で一時的に思考が停止するんですよ」
そこでまで執着心を全開に出来る者はそうはいないと思う。
「さて…と。そろそろマリウス様とお話し合いの時間ですね。いい子で待っていてくださいね?」
そしてサラリと髪を梳き、脱力しているジフリートへと甘く微笑みかける。
チャリッと鳴る細い鎖をそっと引き寄せそのまま愛しい唇を優しく塞ぐと、焦点の合わない目がゆっくりと自分へと向けられた。
「今夜【魅了】を解いたらまた違った形で私を楽しませてくれますかね?」
それに応える声はないけれど……もう二度とここから逃げられないとわからせてやりたい。
甘い甘い檻に閉じ込められながら、手に入らなかった愛しい男を想い啼けばいい。
手に入れた側の自分は、それを見ながらこれ以上ないほど愛を注いでやろう。
「これからは私と一緒に、新しく楽しい時間を紡いでいきましょうね?ジフリート殿」
────去り際の…そんなどこか楽し気な声だけが、静かに室内へと吸い込まれていった。
────────────────
実はヤンデレキャラだったフィンのお話。
本当にこの話、裏はこんな感じで平和から程遠いんですよ…。
表はコント並みなんですけどね。
本当に極端で申し訳ないですm(_ _)m
続きは主人公目線、宰相目線と続くので平和ですので~!
よろしくお願いします↓↓
「本当に…あと少しだったのに、詰めの甘い人ですね」
そう言いながら腕の中にいるジフリートの髪をそっと撫でてやる。
この男は自分のことをこれまで天敵のように決して油断せず見ていたはずだった。
だから…今回の件で少しでも油断してくれればいい、そう思っていたのだが…。
思っていた以上に上手く事が運んで自画自賛したい気分だった。
「ねえ、ジフリート殿?私は結構本気で貴方のことを気に入ってたんですよ?」
クスクスと静かな部屋にその声が響く。
「できれば【魅了】なんて無粋なことはしたくなかったんですが、仕方がないですよね?貴方のあの執着もまた、貴方の面白い持ち味の一つですし」
それによって随分長い時間楽しませてもらった。
王の影はその代替わり時期にしか引退は許されてはいない。
自分はあの王が大嫌いだった。
けれどそれでも自分の仕える主だ。
どれだけ嫌だろうと命令されれば心を殺して淡々と仕事をこなさなければならない。
同僚は言った。
お前が40を超える頃には代替わりがあるだろう。それまで我慢すればいい────と。
その言葉は胸に深く刺さって、自分の人生についてを改めて考えさせられた。
そんな日々を過ごす反面、極たまに兄に連れられて兄の友人の元へ遊びに行く機会があった。
王の影である自分であるが、この時ばかりは普通の貴族としてふるまうことが出来た。
そこで顔を合わせていたのがジフリートだった。
彼は面白い人物で、自分の兄にまでヴェルガーを好きだと言うのを隠そうとはしていなかった。
それはある種病的なまでで、もはや崇拝しているのではないかとさえ思えるほどだった。
まあ普通は崇拝している相手をグチャグチャに犯しつくしたいとは思わないだろうし、厳密には崇拝というより執着愛というものなのだろう。
けれど自分の目にはジフリートの「欲しいものを欲しいと言って何が悪い。本当に欲しいなら何が何でも手に入れて見せればいい」という姿勢が物凄く好ましく映った。
だから…そんな彼をいつか手に入れられればいいなと思ったのだ。
欲望に忠実なジフリートは見ているだけで面白かった。
王の影として働く自分に自由などないけれど、たった一つ手に入れることが出来るのなら、それは自分をいつの間にか魅了していた彼がいい─────。
そんな思いを抱えながら数年…。
ある日思いもしなかったことが起こった。
任務を受けて隣国へ調査へと出向き、戻ってきた頃には全てが終わっていた。
王及び重鎮達が揃って広間で氷漬けになっていたのだ。
その光景は一種異様ではあったが、自分にとっては革命的な出来事でもあった。
これで……自分は自由なのだという思いが込み上げてくる。
一体誰がこんなことをしたのかはわからなかったが、思い切り笑い出したい気持ちでいっぱいだった。
いや。実際笑っていたのだと思う。
王は死んだ─────。
代替わりをしようが王族が滅ぼうが関係ない。
引退するか無条件で自由になるかの違いだ。
自分が自由になったことに変わりはなかった。
それから暫く王宮に留まり、何が起こったのかをさり気なく探ってみるとすぐに犯人はジフリートなのだということが分かった。
ジフリートはその欲望のままにヴェルガーを王宮におびき寄せ、自分の傍に於いて手に入れようとしていた。
(本当にわかりやすい…)
誰よりも貪欲で、自分の欲と国を天秤にかけ欲を選んだ愚かな男。
けれど…誰よりも愛しい男だった。
意図せずとも自分に自由を与えてくれたことでもっと手に入れたいと思うようになった。
けれどここで無理矢理手に入れようともその執着心を断てるとは思えなかった。
だから好きなようにさせることにしたのだ。
満足できるまで思うがままに好きに動けばいい。
そして最後の最後に────もうこれ以上ないほどどうしようもなくなったところで彼を手に入れればいい。
悔いが残らないくらいがちょうどいいが、全くなくならないまでも少なければ少ないほど【魅了】は効きやすくなる。
その執着心が鳴りを潜めたタイミングで使うのがもっとも効果的だから、タイミングを見計らって思い切り刺し貫いた。
「人は目の前にある脅威を前にして、そこから更に別の角度から脅威にさらされたらほぼ100%の確率で一時的に思考が停止するんですよ」
そこでまで執着心を全開に出来る者はそうはいないと思う。
「さて…と。そろそろマリウス様とお話し合いの時間ですね。いい子で待っていてくださいね?」
そしてサラリと髪を梳き、脱力しているジフリートへと甘く微笑みかける。
チャリッと鳴る細い鎖をそっと引き寄せそのまま愛しい唇を優しく塞ぐと、焦点の合わない目がゆっくりと自分へと向けられた。
「今夜【魅了】を解いたらまた違った形で私を楽しませてくれますかね?」
それに応える声はないけれど……もう二度とここから逃げられないとわからせてやりたい。
甘い甘い檻に閉じ込められながら、手に入らなかった愛しい男を想い啼けばいい。
手に入れた側の自分は、それを見ながらこれ以上ないほど愛を注いでやろう。
「これからは私と一緒に、新しく楽しい時間を紡いでいきましょうね?ジフリート殿」
────去り際の…そんなどこか楽し気な声だけが、静かに室内へと吸い込まれていった。
────────────────
実はヤンデレキャラだったフィンのお話。
本当にこの話、裏はこんな感じで平和から程遠いんですよ…。
表はコント並みなんですけどね。
本当に極端で申し訳ないですm(_ _)m
続きは主人公目線、宰相目線と続くので平和ですので~!
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