【完結】第二王子の失恋〜傷心旅行先で出会ったのはイケメン王子でした〜

オレンジペコ

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第五章 レイクウッド王国編(只今愛の試練中)

118.Sランクを目指すことにした俺

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翌朝早速「今日はフォルクナーに戻ってダンジョンで念願の湖デートを堪能してくる」と口にしたら、レターニアには攫われた翌日にもうそれかと驚かれたけど、それはそれ、これはこれだと思う。
俺がおとなしく寝込んだりするわけがない。
そこまで繊細じゃないと言ったら、お兄様に抱き潰されたかと心配しましたのにとかよくわからないことを言われた。
メイビスは寝相いいから間違っても俺を潰すことはないけど?
寧ろ大事に包み込むように腕の中に閉じ込めて寝てくれるから世界一安全な場所だと思う。

そんな話をした後レターニアにリュクスも心配していたと教えてもらったから、報告がてら無事に戻ってきたぞと顔を見せに行ったら滅茶苦茶噛みつかれた。
でもあれって心配の裏返しなんだよな。多分恐らくきっと。

「お前がこれで死んだらお前をフォルクナーまで迎えに行った俺のせいになるだろう?!」
「いや、ならないから」
「ふざけるな!お前はその男の隣でヘラヘラしている方がお似合いだ!勝手に攫われるな!」
「好きで攫われたわけじゃ……」
「煩い!いいからもう…さっさとフォルクナーに帰れッ……」
「え?泣いてる?」
「泣いてない!」

どう見てもうっすら目に涙が見えるんだけどな。いや見なかったことにしよう。
嫌いな俺を心配してくれるなんて、実はいい兄なのかも…。
そんなリュクスをレターニアがしょうがないなという顔で見守って、最終的に回収してってくれた。
それから両親や祖父にも改めて挨拶をしてフォルクナーへと戻った。




そしてやってきました!ダンジョン!
初めて見るリヴァイアサンはすごく大きくて大迫力だった。
ちょっとクラーケンを思い出したけど、ケインとバルド、メイビスと俺の二手に分かれて攪乱してなんとか倒すことに成功した。
そして思わぬ誤算だったんだけど、このリヴァイアサンがどうもギルドでドラゴンカテゴリに入っていたらしく、晴れて他の三人もAランク冒険者になる事ができた。これには皆も大喜び。
いつの間にか全員レベル70超えてたんだな。
やっぱりあの魔石の効果は絶大だ。アンラックよりラックが勝ってる!…はず。

俺もだいぶレベルが上がったし、もっと頑張ってSランクになれるように頑張ろう!
ヒースが魔石を持ってたらすぐなれると太鼓判を押してくれたから、このままどんどんダンジョン攻略して最年少Sランク保持者でも狙ってみようかなと密かに考え中。
早く一人でドラゴンを倒せるようになりたいな。

「ルマンド…」

リヴァイアサンを倒してマジックバッグに仕舞ったら幻想的な鍾乳洞をバックに湖のほとりでメイビスとデート。
剣を片手に手を繋いで微笑み合いながら散歩してるんだからデートであってるよな。
時折襲ってくる他の邪魔な魔物はもちろんどちらかの剣で一閃だ。
俺的にはこれでも十分イチャイチャしてるつもりなんだけど、ケインとバルドはこっそり呆れている模様。
俺の感覚がおかしいんだってさ。そんなことないと思うんだけど。
でも「ルマンド様は人を育てるのが凄くお上手ですよね」ってバルドが褒めてくれたのは素直に嬉しかった。

今はダンジョンに居ても皆表情が柔らかくて、索敵してても自然体を保ててるんだけど、これって本当に凄いことなんだ。油断してないのにリラックスしてるから咄嗟にすぐ動ける。
これはダンジョンに潜る前にはできなかったことの一つ。
俺はこうして四人揃って成長できたことがすごく嬉しい。
もっともっと成長して最強パーティーになって、ダンジョンの最下層まで挑戦してみるのも楽しいかも。




それからの日々は特に妨害が入ることはなく粛々と誕生祭に向けての準備が終わり、メイビスの誕生日は二人で別荘でお祝いをした。
その日はワイバーンだけじゃなくクラーケン料理も大盤振る舞いで、メイビスにもいっぱい喜んでもらえて俺も満足。
なんか予想以上に喜んでもらえたみたいで、夜はかなり濃厚に愛された気がする。
そう言えばその時に探知の練度を上げるコツはやっぱり使用頻度の多さなんだなとしみじみ言われたっけ。
好きだからつい離れてる時はルマンドを探す癖がついたとか甘い声で言われて、なんだか恥ずかしくなった。


******


そしていよいよ誕生祭の日がやってきた。
今日は帝国の友好国からも大勢お祝いに駆け付けてくれている。
その中には先日のアリューシャ王国の王子と王女の姿もあって、王子には怯えた目で見られたけど、王女にはちょっと照れ臭そうに手を振られた。
どうやら俺には怯えていなさそう。あの対比を見てしまうと女性って逞しいなって思う。

「ルマンド、余所見しない」
「ゴメン、ゴメン。あっちにミンフィア王女がいたから大丈夫かなって気にしてただけ」
「酷い目に合わされたのにどうして心配するんだ?」
「え?う~ん…酷い目に合わせたのは俺も同じだし。それに彼女は女性だしやっぱり心配くらいはするだろ?」
「…………ライバルは男が多くても、やっぱり一番の敵は女ということか」
「ん?」
「なんでもない」
「変なメイビス。男でも女でもお前に勝てる相手なんていないのに」

どうしてそんなに周囲を気にするんだろう?
もう婚約者になって結構経つのにな。
前に聞いた不安要素はできるだけ排除するようにしたし、結婚準備も進めてるのにおかしいな。

(俺、もしかして信用されてないとか?)

愛情表現足りてないのかな?婚約者を不安にさせるなんて男が廃るな。何か考えとこ。
そんなことを考えてると、厳かな開会の鐘が鳴り響いた。

今日のメイビスは皇太子として立太子するということもあり衣装も物凄く豪華絢爛。
黒の軍服に金糸で華やかな刺繍が施され、沢山の装飾品を身に纏っている。
重厚なマントの色は白銀色でコバルトブルーの髪色が映えてとってもカッコいい。
俺も今日は婚約者としての各国に対する正式なお披露目だからいつも以上に豪華な服を着ているけど、特に軍服という訳ではない。
女性ならゴージャスなドレスを着てたらしいんだけど、俺男だからどうしようかって話になって、折角だからメイビスの色を取り入れた正装にしてみた。
コーリックでは相手の色を衣装に取り入れると『もう貴方以外目に入りません。末永く宜しく』って意味になる。
他にも白は『貴方の好きなように染めてください』、黒は『貴方を盲目的なまでに愛してます』とか色々あるんだけど、俺は相手の色に込められた意味がやっぱり夢があって好き。

ちょっと深い色合いのコバルトブルーの布地は光が当たると光沢があってすごく綺麗で、ところどころに縫い付けられたブルーダイアが豪華さをより際立たせている。
普通だったら後は装飾品をつけて終わりなんだけど、今日は片側の肩にメイビスとお揃いの白銀色のマントをつけている。
今日という日に皇太子の隣に立つのに相応しい衣裳はこれしかないとか皆から猛プッシュされたからきっとこれが婚約者に必須のアイテムってことなんだろう。
並んだらちょっと夫婦っぽく見えるから恥ずかしいんだけど…似たようなものだし気にしない方がいいのかな?
ちなみに髪もいつもみたいに適当じゃなくきっちり後ろに流してみた。ちょっとは男前に見えるといいな。
各国の面々にメイビスの隣に相応しくないとか思われたら嫌だから、きっちりお仕事しないと。

そうこうしているうちに皇帝からメイビスが呼ばれて、皇太子として寿ぎの言葉を受け、宝剣を授けられた。
そして続いて俺のお披露目。
なんでもこれまでは簡略化されていたらしいんだけど、皇妃の提案で昔のしきたりに則って、皇太子の前に婚約者候補をずらりと並べその中からただ一人の愛する人を選ぶという儀式を復活させることにしたとか。
これは勿論形式だけのことで、メイビスが俺を選ぶのは自明の理だった。
要するに数多の女性よりも男である俺をメイビスが選んだのだと内外に広く知らしめたいというパフォーマンスなのだ。
今回は貴族女性達にも趣旨を伝えた上で声を掛けて協力してもらっているので、華やかなドレス姿の女性の中に混じって俺もそっとその場に跪く。
何も問題など起こるはずもないと俺は思っていたし、それは多分メイビスもだろう。
けれどここで他国の姫達で我こそはという数名が名乗りを上げてきた。

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