【完結】お役御免?なら好きにしてやる!

オレンジペコ

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8.全部が順調だったはずなのに… Side.エヴァンジェリン

無事に王子の婚約者へと収まり、さあこれから幸せになるわよと気合を入れたものの、不安要素が付き纏う。
何故かと言うと、憎たらしい双子の弟、ランスロットが家に帰ってこないからだ。

てっきりバーリッジ公爵家所有の屋敷へ行っているものとばかり思い込んでいたから、最初は問い合わせすらしなかった。
でも一日経ち、二日経ってもランスロットは帰ってこない。
これはおかしいぞと思った三日目の事。
バーリッジ公爵家に『うちのランスロットがお邪魔していませんか?』と問い合わせをしたところ、『こちらに滞在はしておりませんが?』との返事が返ってきて焦りに焦った。
じゃあどこに?!
そうなった時、真っ先に思い浮かんだのが馬車で三日の場所にあるアルバーニ侯爵領だった。
そこから『早急にランスロットに帰るよう伝えるように』としっかり書き、領地に手紙を送ったのだが、帰ってきた手紙には『こちらには来ておりません』との返答。
どうやら他の友人のところに身を寄せているか、どこかの宿屋にでも泊っている様子。
これには家族一同大激怒。

「ランスロットはどこに行ったのよ?!」
「行き先くらい言ってから行かんか!あの馬鹿者が!」
「全く…。人の迷惑も考えられん馬鹿はこれだから困る」
「本当よ!聖輝石に聖なる力が補給されないのは本当に困るわ」

城からは早めに王子妃教育を受けに来るようにと連絡が来ており、今は家からの通いでなんとか凌いではいるものの、身を入れてもらうためにも居を移した方がいいと王子からまでせっつかれている始末。
仕方がないから『来週から参ります』と言ってランスロットが帰ってくるのをイライラしながら待ち続けたのだけど…。

「エヴァンジェリン!やっと共に過ごせる時間が増えるな」

結局城住まいの日が訪れてもランスロットは家に帰っては来なかった。

(もしかしてどこかで野垂れ死んでるんじゃないでしょうね?)

もしそうだったら物凄く困る。
だってこれまで通りの聖なる力が補給できなくなってしまうのだから。

(いいえ。大丈夫。だって王子妃になったら力を使う機会なんてそうそう訪れないはずだもの)

この間の王妃ほど偉い方なら兎も角、他の貴族達なら突っぱねても問題はないはず。
そう思ったのも束の間。
王子がニコニコしながら私に言ってきた。

「エヴァンジェリン。すまないんだが、父上が書類の書き過ぎで腱鞘炎になってしまったらしくてな。今日これから治してはもらえないか?」

仕事が思うように捗らなくて困っているらしいんだと王子が申し訳なさそうに言ってくるから、断ろうにも断れない。

「わ、わかりましたわ」

幸い聖輝石の残り魔力はまだ腱鞘炎を治す程度はあるはず。
そう思い了承し、王子に連れて行かれるままに私は王の執務室へと足を運び、残る聖なる力を使って腱鞘炎を治してあげた。

「おお!噂通り素晴らしい力だ!痛みが消えたぞ!」

王はとても喜んでいたからここまでは何も問題はなかったものの、問題はその次の王子の言葉だった。

「これからはエヴァンジェリンが治してくれますから、いつでもお呼びください」
「有難い。頼りにさせてもらうぞ」

満面の笑みでそんなことを言ってくる王に、私は頬を引き攣らせながら『勿体ないお言葉です』と返すしかない。

(何を勝手なことを!!マズいマズい、マズいわ?!)

こうしてはいられない。
何としてでもランスロットを探さなくては。
もし死んでしまっていたら誰か他の聖なる力の持ち主に頼んで聖輝石に力を補給してもらわないといけない。
こうなったら使えるものはなんでも使おう。

「陛下。申し訳ありませんが、お願いがあるのです」
「ん?願いとは?」
「はい。こんなことをお願いするのも恐縮なのですが、私の弟が現在行方不明で…そのせいで心配が絶えず、家族一同夜も眠れない日々を送っております。どうか捜索にお力をお借りできないでしょうか?」

ウルッと涙目になりながら渾身の演技で王へと嘆願する私。
そんな私に王子は同情するように優しい言葉をかけてくれる。

「弟というとランスロット殿か。それは心配だろう。可哀想に…」

そっと抱き寄せ慰めてくれる王子。
でもそんな私達に王が不思議そうに言ってきた。

「ん?おかしいな。ランスロットはついこの間結婚しただろう?」
「……え?」

その言葉に目が点になる。
そんな話は聞いていなかったからだ。

「ええと…ど、どなたとでしょう?」
「隣国のバーリッジ公爵家のシリウス殿と」
「はいぃっ?!」
「いやぁ。もう何年前だったか…。『うちの息子がランスロットのことが好き過ぎて、学園を卒業したらすぐ一緒に住むんだって言って家まで建て始めて、ドン引きですよ』とパーティーの席で公爵から笑いながら話を聞いてな。本当に上手くやったのかと微笑ましく思いながら国籍変更届にサインしたんだ。間違いない」
「そ、それはいつの事でしょう?」
「もう一週間以上前ではなかったかな?」

逆算すると家を出たタイミングとそう変わらないということになるのではないだろうか?

(あのポンコツ弟が…!!何を勝手なことを!!)

家の誰にも相談せず隣国に嫁ぐなど前代未聞の話だ。
ましてや相手は引く手あまたの公爵家。
どう考えてもあり得ないだろう。

「私共は何もランスロットから聞いてはおりません。何か事件にでも巻き込まれたのかと悩んでおりましたのに…」
「そうか。それは知らなかったとはいえすまなかったな。だが心配はいらん。シリウス殿はランスロットを溺愛していて、そのために法まで変えた男だからな。きっと幸せにしてくれるだろう」

にこやかに王は言うが、そういう問題じゃないのよと地団駄を踏みたくなる。
でもここで短慮を起こすわけにもいかない。

「で、では今は領地の方に?」
「ああ。確か領地の方に居を構えたはずだ。代官の仕事をシリウス殿がそのうち引き継ぐとも聞いたし、間違いはないだろう」
「そうですか。では一度元気な姿を確認しに行ってみます」

こうなったらすぐに動くべきだろう。
何が何でも連れ戻さねば。

(家族が把握していない時点で結婚なんて無効よ!)

だから笑顔で退出し、すぐさま両親へ知らせに帰ろうと思ったのに────。

「エヴァンジェリン。どこに行く」
「あ…弟のことを知らせにアルバーニ侯爵家へ帰ろうかと」
「そんなもの使いの者に任せておけばいい。さあ。もう心配事もなくなったことだし、一緒にお茶にしよう」

笑顔で誘われ、渋々王子に従う私。
ここで無理を通して悪印象は与えたくはない。

「愛しいエヴァ」

そう言って微笑む王子に笑みを返し、私は両親がランスロットを連れ帰ってくれる日を待たざるを得なくなったのだった。

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