【完結】お役御免?なら好きにしてやる!

オレンジペコ

文字の大きさ
10 / 48

9.ランスロットの行き先 Side.アルバーニ侯爵

我が家の次男が突然いなくなった。

あれは娘が求婚されたという報告を受けた日だった。
折角のめでたい話に水を差すようなことを言ってきたから叱ったら、不貞腐れて家出したのだ。
最初は昔からの友人であるバーリッジ公爵家のシリウス様に愚痴をこぼしに行ったのだと思ったから気にもかけなかった。

シリウス様は隣国の筆頭公爵家の次男で、昔からランスロットと仲良くしてくれていた。
逆にうちの長男であるラウルとエヴァンジェリンとは親しくしてくれなくて、ヤキモキしたものだ。
仲が良ければエヴァンジェリンをシリウス様の嫁にと考えていただけに残念でならない。

バーリッジ公爵は隣国の宰相でもありとても博識だった。
昔から家族ぐるみで交流があったため、困った時は色々相談に乗ってもらったりもしていて、国境を挟んでいるとはいえ親しくしてもらっている。
だからこそシリウス様がランスロットとしか仲良くしてくれないことが不満だった。
シリウス様の兄、レグルス様はとても友好的なのに……。

『シリウスはまだ子供なので、ランスロット殿の事しか見えていないだけですよ』

バーリッジ公爵家の方々に、にこやかに何度そう言われたことか。
まあ今はそれは置いておいて構わない。

問題はランスロットの事。これに尽きる。

ランスロットは元々風魔法の適正持ちだった。
なのにある日突然聖魔法が顕現したとか言い出したのだ。
どうせ家族の皆にあまり構ってもらえないから、浅はかな嘘を吐いたんだろうと思った。
それはそうだ。普通は魔法の適正は一人にひとつなんだから。
それこそ聖女様でもない限り二つも適性を持つはずがない。
ここはこの馬鹿にきっちり教えてやらないとと思った。

「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」

大怪我が治ったなんて白々しい嘘を吐くランスロット。
こいつにそんな力があるはずがない。
あるとしたら美しく成長し、これ以上ないほど可愛い娘の方だろう。
そう考えたところでハッと閃いた。
もしランスロットの言うことが本当だったとしたら────。

(こいつっ…!母親の腹の中で双子の姉の力を奪ったんじゃないだろうな?)

元々エヴァンジェリンが聖女だったとしたら、その可能性は十分に考えられた。

(あり得ない!!)

生まれる前から性根の腐った奴だったのかと思うと、それだけで怒りが増してしまう。

「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」

確かめるために思いついたことを口に出すと、バレたとでも思ったんだろう。
ランスロットは蒼白になりながら言い掛かりだと言い出した。
そんなランスロットを目にして確信した。それが真実なのだと。

(なんて酷い奴だ!)

とは言え盗んだものなら本来の持ち主に返せるはず。
そう思い『返せ』と言ったがランスロットは頑として返そうとはしなかった。
性根が腐っているから仕方がないのか?

あまりにも腹が立ったから他の家族にもそのことを伝えたら全員怒っていた。
返せ返せと皆で責めるがランスロットは言い訳ばかりで、挙句の果てにできるはずがないと言い出す始末。

(そこまで言うなら無理矢理エヴァンジェリンのために力を使わせてやる)

そう考え、聖輝石という高価な石を一つ取り寄せた。
少々痛い出費だったが、馬鹿な息子の力を可愛い娘のために使わせるにはこれが一番だと判断。

「返せないならその力はエヴァのために使え」

冷たくそう言い放ち、以降その力を強制的に石に込めさせることに。
どうせ嫌になったら自分からエヴァンジェリンに力を返すと言い出すだろう。
そう思って、国への追加報告はランスロットではなくエヴァンジェリンに聖魔法が顕現したと報告を入れておいた。
いずれそうなるのだから別に構わないだろう。

それなのに────。

「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」

力はいつまで経っても返すことはなく、挙句婚約を祝福する家族にそんなことを言い放って家を飛び出していったランスロット。
あんな奴。もう息子でもなければ身内ですらない。
見つけたら監禁して力だけ毎日搾り取ってやると思った。

それにしても一体どこに行ったのか…。
領地にも帰っていなかったし、領地の方のバーリッジ公爵家へも遣いを出したが『本邸には滞在しておりません』と言われた。
これでは八方塞がりだ。

(あいつに他の友人なんていたか?)

性格が悪いランスロットにシリウス様以外の友人がいるなんて聞いたこともない。
宿などに泊っている可能性はなくはないが、それも一週間以上泊る金など持ち合わせていないだろう。
こちらにも請求書は回ってきていないから、きっと宿には泊っていないはず。

「全く、家族に心配をかけるなんて…あのクズが!!」

見つからない苛立ちをぶつけるように壁を殴り、歯ぎしりをする。
エヴァンジェリンが持つ聖輝石へ早く魔力を補充する必要があるというのに、どこをほっつき歩いているのか。

そんな風にイライラを募らせていた時、思いがけないところからランスロットの居所を教えられた。

「ランスロットとシリウス様が…結婚?」

だが領地の方の本邸にはいないと言われたのに……。

(嘘だったのか?!)

隠されていた事実に腸が煮えくり返るような怒りを感じた。

「ランスロット……!!」

きっとシリウス様はランスロットの悪知恵に唆されたのだ。

「どこまでも腐った奴だ」

とても許せるはずがない。

「すぐにバーリッジ公爵領へ向かう!」
「私も行きますわ!」

妻がすぐに賛同してくれたから、準備を速やかに整えさせ、長男に後を任せて二人で馬車へと乗り込んだ。


感想 135

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──