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9.ランスロットの行き先 Side.アルバーニ侯爵
我が家の次男が突然いなくなった。
あれは娘が求婚されたという報告を受けた日だった。
折角のめでたい話に水を差すようなことを言ってきたから叱ったら、不貞腐れて家出したのだ。
最初は昔からの友人であるバーリッジ公爵家のシリウス様に愚痴をこぼしに行ったのだと思ったから気にもかけなかった。
シリウス様は隣国の筆頭公爵家の次男で、昔からランスロットと仲良くしてくれていた。
逆にうちの長男であるラウルとエヴァンジェリンとは親しくしてくれなくて、ヤキモキしたものだ。
仲が良ければエヴァンジェリンをシリウス様の嫁にと考えていただけに残念でならない。
バーリッジ公爵は隣国の宰相でもありとても博識だった。
昔から家族ぐるみで交流があったため、困った時は色々相談に乗ってもらったりもしていて、国境を挟んでいるとはいえ親しくしてもらっている。
だからこそシリウス様がランスロットとしか仲良くしてくれないことが不満だった。
シリウス様の兄、レグルス様はとても友好的なのに……。
『シリウスはまだ子供なので、ランスロット殿の事しか見えていないだけですよ』
バーリッジ公爵家の方々に、にこやかに何度そう言われたことか。
まあ今はそれは置いておいて構わない。
問題はランスロットの事。これに尽きる。
ランスロットは元々風魔法の適正持ちだった。
なのにある日突然聖魔法が顕現したとか言い出したのだ。
どうせ家族の皆にあまり構ってもらえないから、浅はかな嘘を吐いたんだろうと思った。
それはそうだ。普通は魔法の適正は一人にひとつなんだから。
それこそ聖女様でもない限り二つも適性を持つはずがない。
ここはこの馬鹿にきっちり教えてやらないとと思った。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
大怪我が治ったなんて白々しい嘘を吐くランスロット。
こいつにそんな力があるはずがない。
あるとしたら美しく成長し、これ以上ないほど可愛い娘の方だろう。
そう考えたところでハッと閃いた。
もしランスロットの言うことが本当だったとしたら────。
(こいつっ…!母親の腹の中で双子の姉の力を奪ったんじゃないだろうな?)
元々エヴァンジェリンが聖女だったとしたら、その可能性は十分に考えられた。
(あり得ない!!)
生まれる前から性根の腐った奴だったのかと思うと、それだけで怒りが増してしまう。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
確かめるために思いついたことを口に出すと、バレたとでも思ったんだろう。
ランスロットは蒼白になりながら言い掛かりだと言い出した。
そんなランスロットを目にして確信した。それが真実なのだと。
(なんて酷い奴だ!)
とは言え盗んだものなら本来の持ち主に返せるはず。
そう思い『返せ』と言ったがランスロットは頑として返そうとはしなかった。
性根が腐っているから仕方がないのか?
あまりにも腹が立ったから他の家族にもそのことを伝えたら全員怒っていた。
返せ返せと皆で責めるがランスロットは言い訳ばかりで、挙句の果てにできるはずがないと言い出す始末。
(そこまで言うなら無理矢理エヴァンジェリンのために力を使わせてやる)
そう考え、聖輝石という高価な石を一つ取り寄せた。
少々痛い出費だったが、馬鹿な息子の力を可愛い娘のために使わせるにはこれが一番だと判断。
「返せないならその力はエヴァのために使え」
冷たくそう言い放ち、以降その力を強制的に石に込めさせることに。
どうせ嫌になったら自分からエヴァンジェリンに力を返すと言い出すだろう。
そう思って、国への追加報告はランスロットではなくエヴァンジェリンに聖魔法が顕現したと報告を入れておいた。
いずれそうなるのだから別に構わないだろう。
それなのに────。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
力はいつまで経っても返すことはなく、挙句婚約を祝福する家族にそんなことを言い放って家を飛び出していったランスロット。
あんな奴。もう息子でもなければ身内ですらない。
見つけたら監禁して力だけ毎日搾り取ってやると思った。
それにしても一体どこに行ったのか…。
領地にも帰っていなかったし、領地の方のバーリッジ公爵家へも遣いを出したが『本邸には滞在しておりません』と言われた。
これでは八方塞がりだ。
(あいつに他の友人なんていたか?)
性格が悪いランスロットにシリウス様以外の友人がいるなんて聞いたこともない。
宿などに泊っている可能性はなくはないが、それも一週間以上泊る金など持ち合わせていないだろう。
こちらにも請求書は回ってきていないから、きっと宿には泊っていないはず。
「全く、家族に心配をかけるなんて…あのクズが!!」
見つからない苛立ちをぶつけるように壁を殴り、歯ぎしりをする。
エヴァンジェリンが持つ聖輝石へ早く魔力を補充する必要があるというのに、どこをほっつき歩いているのか。
そんな風にイライラを募らせていた時、思いがけないところからランスロットの居所を教えられた。
「ランスロットとシリウス様が…結婚?」
だが領地の方の本邸にはいないと言われたのに……。
(嘘だったのか?!)
隠されていた事実に腸が煮えくり返るような怒りを感じた。
「ランスロット……!!」
きっとシリウス様はランスロットの悪知恵に唆されたのだ。
「どこまでも腐った奴だ」
とても許せるはずがない。
「すぐにバーリッジ公爵領へ向かう!」
「私も行きますわ!」
妻がすぐに賛同してくれたから、準備を速やかに整えさせ、長男に後を任せて二人で馬車へと乗り込んだ。
あれは娘が求婚されたという報告を受けた日だった。
折角のめでたい話に水を差すようなことを言ってきたから叱ったら、不貞腐れて家出したのだ。
最初は昔からの友人であるバーリッジ公爵家のシリウス様に愚痴をこぼしに行ったのだと思ったから気にもかけなかった。
シリウス様は隣国の筆頭公爵家の次男で、昔からランスロットと仲良くしてくれていた。
逆にうちの長男であるラウルとエヴァンジェリンとは親しくしてくれなくて、ヤキモキしたものだ。
仲が良ければエヴァンジェリンをシリウス様の嫁にと考えていただけに残念でならない。
バーリッジ公爵は隣国の宰相でもありとても博識だった。
昔から家族ぐるみで交流があったため、困った時は色々相談に乗ってもらったりもしていて、国境を挟んでいるとはいえ親しくしてもらっている。
だからこそシリウス様がランスロットとしか仲良くしてくれないことが不満だった。
シリウス様の兄、レグルス様はとても友好的なのに……。
『シリウスはまだ子供なので、ランスロット殿の事しか見えていないだけですよ』
バーリッジ公爵家の方々に、にこやかに何度そう言われたことか。
まあ今はそれは置いておいて構わない。
問題はランスロットの事。これに尽きる。
ランスロットは元々風魔法の適正持ちだった。
なのにある日突然聖魔法が顕現したとか言い出したのだ。
どうせ家族の皆にあまり構ってもらえないから、浅はかな嘘を吐いたんだろうと思った。
それはそうだ。普通は魔法の適正は一人にひとつなんだから。
それこそ聖女様でもない限り二つも適性を持つはずがない。
ここはこの馬鹿にきっちり教えてやらないとと思った。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
大怪我が治ったなんて白々しい嘘を吐くランスロット。
こいつにそんな力があるはずがない。
あるとしたら美しく成長し、これ以上ないほど可愛い娘の方だろう。
そう考えたところでハッと閃いた。
もしランスロットの言うことが本当だったとしたら────。
(こいつっ…!母親の腹の中で双子の姉の力を奪ったんじゃないだろうな?)
元々エヴァンジェリンが聖女だったとしたら、その可能性は十分に考えられた。
(あり得ない!!)
生まれる前から性根の腐った奴だったのかと思うと、それだけで怒りが増してしまう。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
確かめるために思いついたことを口に出すと、バレたとでも思ったんだろう。
ランスロットは蒼白になりながら言い掛かりだと言い出した。
そんなランスロットを目にして確信した。それが真実なのだと。
(なんて酷い奴だ!)
とは言え盗んだものなら本来の持ち主に返せるはず。
そう思い『返せ』と言ったがランスロットは頑として返そうとはしなかった。
性根が腐っているから仕方がないのか?
あまりにも腹が立ったから他の家族にもそのことを伝えたら全員怒っていた。
返せ返せと皆で責めるがランスロットは言い訳ばかりで、挙句の果てにできるはずがないと言い出す始末。
(そこまで言うなら無理矢理エヴァンジェリンのために力を使わせてやる)
そう考え、聖輝石という高価な石を一つ取り寄せた。
少々痛い出費だったが、馬鹿な息子の力を可愛い娘のために使わせるにはこれが一番だと判断。
「返せないならその力はエヴァのために使え」
冷たくそう言い放ち、以降その力を強制的に石に込めさせることに。
どうせ嫌になったら自分からエヴァンジェリンに力を返すと言い出すだろう。
そう思って、国への追加報告はランスロットではなくエヴァンジェリンに聖魔法が顕現したと報告を入れておいた。
いずれそうなるのだから別に構わないだろう。
それなのに────。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
力はいつまで経っても返すことはなく、挙句婚約を祝福する家族にそんなことを言い放って家を飛び出していったランスロット。
あんな奴。もう息子でもなければ身内ですらない。
見つけたら監禁して力だけ毎日搾り取ってやると思った。
それにしても一体どこに行ったのか…。
領地にも帰っていなかったし、領地の方のバーリッジ公爵家へも遣いを出したが『本邸には滞在しておりません』と言われた。
これでは八方塞がりだ。
(あいつに他の友人なんていたか?)
性格が悪いランスロットにシリウス様以外の友人がいるなんて聞いたこともない。
宿などに泊っている可能性はなくはないが、それも一週間以上泊る金など持ち合わせていないだろう。
こちらにも請求書は回ってきていないから、きっと宿には泊っていないはず。
「全く、家族に心配をかけるなんて…あのクズが!!」
見つからない苛立ちをぶつけるように壁を殴り、歯ぎしりをする。
エヴァンジェリンが持つ聖輝石へ早く魔力を補充する必要があるというのに、どこをほっつき歩いているのか。
そんな風にイライラを募らせていた時、思いがけないところからランスロットの居所を教えられた。
「ランスロットとシリウス様が…結婚?」
だが領地の方の本邸にはいないと言われたのに……。
(嘘だったのか?!)
隠されていた事実に腸が煮えくり返るような怒りを感じた。
「ランスロット……!!」
きっとシリウス様はランスロットの悪知恵に唆されたのだ。
「どこまでも腐った奴だ」
とても許せるはずがない。
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妻がすぐに賛同してくれたから、準備を速やかに整えさせ、長男に後を任せて二人で馬車へと乗り込んだ。
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