【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

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8.比較的平穏な日々

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一時は危なかったバドだが、例の医療行為のお陰で一先ず危機は脱出し、状態は安定したらしい。
やっぱりキスよりも含まれる魔力が多い分効果は絶大だったようだ。
それでもやっぱり輸血よりは効果は低いから、定期的にしないといけないだろうけど。

(ま、取り敢えず暫くは持つだろう)

状態さえ落ち着いたらまたキスでもいいしなと思いながら、俺は帰還魔法の研究の続きへと取り掛かる。
助手は三人いるがそのうち二人は女性で一人は男性。
当然だが全員年上だ。
皆25、6才で、過去に魔法学校を優秀な成績で卒業した者達ばかりだから、ちょっと指示を出すだけでサッとこちらの意図を察してくれて動きやすい。

「ルルナス王子。流石ですね。もうここまで形になさるなんて」
「本当に凄いですよ!その頭の中がどうなってるのか、一度覗いてみたいです!」

そんなことを言われながら和気藹々と休憩を挟み、研究を続ける俺達。
早くこの研究を完成させて、異世界に召喚されてしまった皆をこちらに戻してやりたい。
そう思いながら実験を続ける。

「ん~…こっちに戻すのは可能そうだが、残りたい者もいるかもしれないし、どうそこを分けて戻すかだよな」
「そうですね。それにあのロードクルス殿の話だと、方法を探しに旅に出た者も多いとか」
「それだと各地に散っているから、なかなか一度に戻すのは難しそうですよね」

皆でう~んと唸りながらあれこれ考える。
そこで一人がこんなことを言いだした。

「そうだ!折角こちらにロードクルス殿がいるのですし、彼に向こうでしてほしいことを伝えて、向こうに送り返してから動いてもらうというのはどうです?幸い立場は王子ですし、国中に触れを出すことだってできるでしょうし、他国にだってお願いできるかもしれません!それで皆を毎年、それこそ例の召喚日のように指定した日に集めてもらって、集まった者だけをこちらに戻す、なんてどうでしょう?」
「おお!それなら帰りたい者だけ帰れそうだな」

これは名案ではないだろうか?
となると、先にバドを国に帰す魔法を考えた方がいいのかもしれない。

「なんかできそうな気がしてきた!」

これなら条件の指定も難しくはないし、案外今年中になんとかなるかもしれない。
そう言ったら『流石ルルナス王子!』と皆の顔も明るくなって、気合十分に再度俺と一緒に魔法を試行錯誤し始めた。


***


そんな風に順調に研究を進めている最中、急遽父王から呼び出しを受けた。
一体何の用だろう?
そう思って足を向けると、話の内容は婚約者についてだった。
これまで俺は周囲から散々天才と褒めそやされてきたが、それ故に18才を超えたら召喚されるのではないかと言われ、婚約者を悲しませる可能性があるとして決まった相手を作ることはなかったという経緯がある。
それが今回の逆召喚魔法の成功により、心配がなくなったと判断され、もう決めてもいいんじゃないかということになったらしい。

「ルルナス。さあ、ここから好きなご令嬢を選ぶがいい!!」

ズラッと目の前に広げられるご令嬢達のブロマイド。
それこそ年上から年下までより取り見取りではあった。

(でもなぁ…)

「父上。申し訳ないのですが、俺の好みは年下の可愛らしい弟系男子なんです」
「……ん?」
「第三王子だし、問題はないですよね?」

女に興味はありませんと笑顔で言い切ったら、何故かあれは遊びじゃなかったのかと驚かれた。
失礼な。
俺は別に将来を悲観してそっちに走ったわけじゃない。
純粋に可愛い男が好きなだけだ。

「俺は男にしか興味はないですよ?」

はっきりキッパリそう伝えた俺に、父は驚愕の表情になって『全部あの男の国が悪いんだ!』とバドへ怒りを向け始めた。
そこは別に関係ないのに、とんだとばっちりだ。

「お前は昔から才能に溢れていたから、絶対に将来召喚されてしまうと思い、女性を早めに遠ざけたのが間違いだった。すまない…本当にすまない…」

(いや。泣かなくても…)

別に俺は気にしたことなんてないんだけどな。

「こうなっては今からでも遅くはない。早速パーティーの準備をしよう!待っていろルルナス!私が必ずお前の人生を明るく素晴らしいものにしてやるからな!」
「いえ。結構です」

一応ちゃんとそう言ったのに、父は全く聞いてはくれなかった。
仕方がない。
当日は逃げよう。

そんなことを考えながら廊下を歩いていたら珍しくバドに遭遇した。
呼び出し以外で顔を合わせるのは非常に珍しい。
向こうもなんだか驚いたように目を丸くしていた。

「ルース」

バドだけが呼ぶ俺の愛称。
なんだか聞き慣れないけど、不思議と嫌ではない。

「バド。体調は大丈夫か?」
「ああ。今のところは」
「そうか。ちょっと悪い時ならまだキスで対処できるが、あまり無理し過ぎないようにな。また俺に嫌々抱かれる羽目になるぞ?」

一応忠告しておいてやろうと思いそう言ってやったら、思い出して恥ずかしくなったのか『大丈夫だ!』と真っ赤になって怒鳴ってきた。

「そうか」
「そうだ!それにあの時は…流石にフェラは無理だと思って…」

なるほど。そのせいでギリギリまで言い出せなかったと。

「それはすまなかった。今度からはちゃんとキスで対応してやるから無理はするな」

別に頻繁に呼び出されなければそれでいい。
そんな気持ちで軽く言ってやったら何故か憮然とした顔をされてしまった。

(変な奴)

素直にそう思う。
この国では見たことのない濃紺色の髪色に薄い水色の瞳。
耳には小さな穴を空けていて、男のくせにジャラジャラといつも耳飾りをぶら下げている変わった奴だ。
剣を使うことからある程度察しはついていたが、細身なのに身体にはしなやかな筋肉がついていて、抱いても全く違和感なんて抱かなかった。
普段は生意気な切れ長の目もあの時ばかりは涙を滲ませて何故か可愛く見えたし、不思議なものだ。
ちなみに容姿はかなり整っている方だと思う。
怜悧な印象を受ける美形って感じだ。
黙ってたらクールビューティーでモテるんじゃないだろうか?
まあこの国では誘拐犯の一味として見られているから難しいだろうけど。

「これからまた研究か?」

そんなことを考えていたらバドから思わぬ質問が飛んできた。
やっぱり帰りたいから進捗が気になるんだろうか?

「今日はもう終わった。お前は?」
「俺は図書室へ行く途中だ」
「そうか。勉強熱心だな」
「まあな。こっちでしか得られない知識をせめて沢山持ち帰りたいと思っている」

なるほど。
どうやらこちらの方が文明は進んでいるようだし、召喚できないならせめて知識だけでもと思ったんだろう。

「じゃあノートとペンも用意してやるし、必要だと思ったものはそれに書き留めておいたらどうだ?本は持ち帰れなくてもそれなら持ち帰れるだろうし」

だからそう言ってやったんだけど、何故か物凄く驚かれてしまった。

「……いいのか?」
「寧ろ俺がダメだと言うとでも思ったのか?」
「思った」

(なんでだよ?!)

俺はそこまでケチではないつもりなのに、本当に腹の立つ奴だな。
ちょっとあの時に可愛いかもと思ったのは気のせいだったに違いない。

「嫌ならいい。好きにしろ」

全く持って不愉快にもほどがある。
そう思って俺はフンッと顔を背け、話は終わりだとその場を去ろうとしたのだが、何故か気づけば腕を引かれて唇を塞がれていた。

(…………ん?)


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