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25.ライバル Side.リオ
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引く気がない俺をどう思ったのか、ルルは物凄く言い難そうに口を開いた。
「その…ちょっと言い難いんだけど、さっきのバドの面倒を見るのに忙しくて、正直あまり時間が取れないと思うんだ」
バドというのはあの異世界人の事だろう。
あんな人攫いのことを気にかけてやるなんてルルは優しいんだなと益々惚れてしまう。
あんな奴、放っておけばいいのに。
俺なら迷わず放置してやるのに。
「放って置いたらダメなのか?」
「それが、実は魔素摂取障害を患ってて、魔力型が合うのが俺しかいないんだ」
どうやら安易に放っておけない理由があるらしい。
「定期的に輸血が必要ということか。でもそれなら…」
「いや。その、どうも輸血っていうのは向こうにないらしくて、どうしても無理だって言われて…」
それを聞いて俺は驚きに息が止まるかと思った。
輸血以外での魔素摂取障害の治療法は俺も聞いたことがあったからだ。
「まさか……」
(ルルはあの男と……?)
聞きたくない。
でもどうしても聞いておかなければならないだろう。
「その…魔力欠乏になったら、寝てるんだ」
(あの男……!ぶっ殺してやる!)
だから、あの余裕の笑みだったのだろうか?
きっと『俺はルルナスと寝てるんだぞ』という根底にある自信があの態度に反映されていたんだろう。
悔しい、腹立たしいと激しい怒りが俺の中で渦を巻く。
(いや。待て。落ち着くんだ)
ここで醜態を晒すわけにはいかない。
ルルに幻滅でもされたらそれこそ一貫の終わりだ。
ここは冷静に事にあたって、できる男をアピールすべき状況だろう。
寛容なところを見せなければ。
(冷静に。冷静に)
そうだ。状況的にルルは抱く側のはず。
初めてはまだ奪われていないはずだ。
「確認させてほしいんだが、ルルは抱く側だな?」
「ああ。魔力を注がないと治療にならないし」
案の定ルルからは即肯定の言葉が返ってきた。
(よし!)
「そうか」
なら俺は焦らずゆっくりとルルを振り向かせればいい。
ホッとしたら凄くルルを抱きしめたくなった。
「それなら問題ない。ゆっくりルルを落とさせてくれ」
そう言いながら抱き寄せるとルルは驚いた顔で俺を見てきた。
どうやらこれで俺に嫌われるとでも思っていたらしい。
そんなこと、あるはずがないのに。
嫌うとしたらあのバドとかいう異世界人に対してだろう。
俺がルルを嫌うなんてあり得ないのだから。
だから安心させるようにギュッとルルを抱きしめていたのだが、段々恥ずかしくなってきたのかルルは可愛らしく頬を染めて一旦中へ戻ると言い出した。
「あ~…えっと、そろそろバドも心配になってきたし、一旦戻るよ」
「じゃあ一緒に戻ろう。俺も改めて彼と話してみたいし」
「そ、そうか」
ここはやはり再度あの男と向かい合って、宣戦布告をしておきたいところだ。
だからルルと共にあの男を探したのだが、肝心の男の姿がどこにも見えない。
どうやら魔力の補給をしないといけない時期のようなのに、馬鹿な男は魔力を使うドリンクサーバーを使い魔力欠乏状態に陥った可能性まで出てきた。
なんて間抜けな男なのだろう?
こんなに優しいルルを心配させるなんてどこまで腹立たしい男なんだとイライラしてしまった。
ルルは俺にパーティーを楽しんで欲しいと言ってくれたが、俺はルルと一緒に居たいから当然それを断る。
あんな男とルルを二人きりになんてしたくないという気持ちも大きい。
だから一緒について行ったのだが、そこでルルの予想通り魔力欠乏状態になったあの男を発見した。
「バド!」
「ルース」
「大丈夫か?」
「ああ。まだちょっと痺れるくらいだ」
心配げに声を掛けるルルとそんなルルに嬉しそうに笑いかける男。
確かに顔色は悪く呼吸も乱れて苦しそうではある。
冷や汗も出ているし魔力欠乏状態には違いないのだろう。
早急な処置が必要なのは一目瞭然だった。
でも……。
「無理するなよ」
そう言って迷うことなくキスで魔力を補給するルルの姿を見て心が痛まないはずもない。
そこにあるのはただの義務だとわかっていても、好きな男が他の男にキスする姿は好んで見たいものではない。
「ん…」
しかもどこからどう見てもこの男はルルに惚れているだろう。
吊り橋効果なのか何だか知らないが、異世界で自分のために献身的に魔力を補給してくれる相手を好きにならないはずがない。
熱っぽい眼差しでルルを見つめている姿は恋する男そのものだ。
「取り敢えずこれで動けるようになっただろう。後でしっかり補給してやるから、この後は俺の横にいろ」
「いいのか?」
「いいも何もないだろう?お前のことは俺が一任されているんだから、倒れないよう見ておくのも俺の役目だ」
「そうか」
どこまでも義務的なルルの態度には安心したが、それが不満だったのか男は微妙そうな顔になった。
そんな姿に流石のルルも怒りたくなったのだろう。
ルルからすれば助けてやったのになんだその態度はといったところか。
文句を言いたくなる気持ちもわからなくはない。
「お前な。嫌なら嫌って言えばいいだろう?!」
「誰も嫌なんて言ってない!」
「じゃあなんだよ?!いい加減はっきり言え!」
「俺は…!」
「俺は?」
「義務感で言われるのが嫌なだけだ!」
そして────。
「俺はお前が好きなんだよ!」
「…は?」
売り言葉に買い言葉で言い合いをしていた二人だったが、男の方もいい加減限界だったのか、唐突に俺の目の前で告白をし始めた。
言われた方のルルは当然目が点になっている。
きっと考えもしなかったのだろう。
この男が自分に惚れていることを。
完全に脈なし。
そのこと自体は嬉しかったが、次いで口から飛び出した言葉は到底看過できそうになかった。
「ええと、取り敢えずショタスキー伯爵家の次男の顔見て落ち着きたいから、その件はまた後日」
「誰だそれは?!元彼か?!」
「それは俺も気になるな。ルル、教えてくれないか?」
ショタスキー伯爵家の次男?
どんな奴だ?
ルルが今好きな相手なんだろうか?
もしそうだとすれば一番のライバルになるはずだ。
ここはしっかりと聞いておかないといけない。
「えっと…友人の弟?」
「つまり元彼の弟か!どうせお前好みの可愛い弟系なんだろう?!バレバレだ!」
元カレ。
つまりルルにはこの男を抱く前に既に経験があったということなんだろう。
そして可愛い弟系というからにはやはり抱く側だったに違いない。
ルルはその言葉を否定してはいないし、きっと正しい情報に違いない。
「可愛い弟系の男?それがルルの好みなのか?」
けれど念のために本人に確認はしておこう。
そう思って尋ねたら物凄くバツが悪そうに目を逸らされた。
なるほど。
どうやら本当の事らしい。
つまり今の俺はタイプからは外れているということらしい。
「なるほど。それなら先程プロポーズに頷いてもらえなかったのも納得だ」
その言葉にバドという男が噛みつくような勢いで聞き咎めてくるが、お前は脈なしなんだから諦めろと言ってやりたい。
「プ、プロポーズだと?!」
「そうだ。ルルは俺がもらい受ける」
そう口にするけれど、ルルの方は困ったように結婚する気はないと言ってきた。
「いや。俺、今のところ誰とも結婚する気はないんだけど…」
「……!そうか。ルースはこう言ってるぞ?押しが強すぎて嫌われる前にさっさと隣国に帰るんだな!」
「お前の方こそ諸悪の根源のくせにルルに惚れてもらえると思っているのか?さっさと諦めて異世界へ帰るんだな!」
『俺と』ではなく『誰とも』結婚する気はないとルルは言った。
それなら結婚したくなるくらい惚れさせてしまえばいい。
この男もきっとルルを振り向かせるために頑張るのだろうが、今一番のライバルはそのショタスキー伯爵家の次男だ。
どんな相手なのか早速調べなければならない。
非常に業腹だが今夜はルルはバドという男を抱いて魔力補給をするはず。
だがそれはあくまでも治療の一環だ。
ここは割り切ってギリギリまでルルに自分をアピールし、席を外したところで外堀を埋めにかかろう。
幸いルルの兄弟達は俺に協力的だし、ショタスキー伯爵家の兄弟についても訊けば教えてもらえるはず。
兄の方がルルの元カレで、今は弟の方に気持ちがいっているのならルルはきっと年下の面倒を見るのが好きなんだと思う。
優しい性格だし、あのふざけた男に親切にしているのだって根底には面倒見が良過ぎるというその優しさが影響しているんだろう。
そこに付け入っているあの男は腹立たしいが、命が掛かっているのなら仕方がない。
俺も妥協しよう。
そんなことよりもルルへのアピールだ。
俺はここぞとばかりにルルをエスコートする。
年下の可愛い男よりもできる男と一緒の方が楽だぞとわからせたい。
してもらう喜びを知ればきっと俺へと目を向けてくれるだろう。
どれが食べたい?と言いながら尋ね、ルルが料理を示せばそれを皿へとどんどん取っていく。
(なるほど。ルルはさっぱりした物が好きなのか)
時間的なものかもしれないが、ルルが示したのは肉、魚、海鮮物と幅広かったが、どれもこれもあっさりとした味つけの物が多かった。
この辺りは一緒に食事をしていく中できっともっとわかっていけるだろう。
そしてついでにルルに食べさせてあげながら、自然と恋人同士っぽい雰囲気へと持ち込んでいく。
俺と居て『これが普通』と思ってもらえるようにまずは頑張ろう。
そう思ったのに、側をうろつく男が気になるのかルルはそちらをチラチラ見るばかり。
本当にあの異世界人は目障りこの上ない。
挙句に俺の真似なのか、ルルがあの男の口へと『あ~ん』としたからいただけない。
それは俺にこそしてほしかった。
(ルルと食べさせ合いか。是非やりたいな)
そう思ったからすぐさま実行へと移した。
俺のお願いに戸惑って固まったルルだったけど、ジッと見ていたらちゃんと俺へとフォークを差し出してくれたから、俺は嬉しくなってそれをパクリと口へと入れた。
なんて幸せなんだろう?
嬉しすぎてつい笑顔になった。
そんな俺にルルが一瞬目を丸くしていたが、こんな俺が意外だったんだろうか?
俺だって好きな人との時間は普通に幸せを感じるんだが。
だから素直に『嬉しすぎて夢に見そうだ』と口にしたのだけど、そんな俺を子供っぽく感じたのかルルがクスッと笑って口にソースがついていると指摘してきた。
「リオ。ここ、付いてる」
キュッと指の腹でソースを拭ってくれるルル。
優しい。
でも子供扱いはやめてほしい。
俺はルルに恋する男なんだから。
ちゃんと恋愛対象として俺を見てほしかった。
だからそっとその手を掴んで、ぺろりとソースを舐め、俺を意識してもらえるように抱き寄せて耳元で囁いたんだ。
「ルル。ありがとう」
それはどうやら功を奏したようで、カアッとルルの頬に朱が上る。
なんて可愛いんだろう?
これで少しは俺を意識してもらえただろうか?
その後恥ずかしがったルルに逃げられてしまったけど、今日はまだ初日だ。
これからジワジワと俺を意識してもらいたい。
そんな気持ちで俺は慌てて会場から去っていくルルの背を見送ったのだった。
「その…ちょっと言い難いんだけど、さっきのバドの面倒を見るのに忙しくて、正直あまり時間が取れないと思うんだ」
バドというのはあの異世界人の事だろう。
あんな人攫いのことを気にかけてやるなんてルルは優しいんだなと益々惚れてしまう。
あんな奴、放っておけばいいのに。
俺なら迷わず放置してやるのに。
「放って置いたらダメなのか?」
「それが、実は魔素摂取障害を患ってて、魔力型が合うのが俺しかいないんだ」
どうやら安易に放っておけない理由があるらしい。
「定期的に輸血が必要ということか。でもそれなら…」
「いや。その、どうも輸血っていうのは向こうにないらしくて、どうしても無理だって言われて…」
それを聞いて俺は驚きに息が止まるかと思った。
輸血以外での魔素摂取障害の治療法は俺も聞いたことがあったからだ。
「まさか……」
(ルルはあの男と……?)
聞きたくない。
でもどうしても聞いておかなければならないだろう。
「その…魔力欠乏になったら、寝てるんだ」
(あの男……!ぶっ殺してやる!)
だから、あの余裕の笑みだったのだろうか?
きっと『俺はルルナスと寝てるんだぞ』という根底にある自信があの態度に反映されていたんだろう。
悔しい、腹立たしいと激しい怒りが俺の中で渦を巻く。
(いや。待て。落ち着くんだ)
ここで醜態を晒すわけにはいかない。
ルルに幻滅でもされたらそれこそ一貫の終わりだ。
ここは冷静に事にあたって、できる男をアピールすべき状況だろう。
寛容なところを見せなければ。
(冷静に。冷静に)
そうだ。状況的にルルは抱く側のはず。
初めてはまだ奪われていないはずだ。
「確認させてほしいんだが、ルルは抱く側だな?」
「ああ。魔力を注がないと治療にならないし」
案の定ルルからは即肯定の言葉が返ってきた。
(よし!)
「そうか」
なら俺は焦らずゆっくりとルルを振り向かせればいい。
ホッとしたら凄くルルを抱きしめたくなった。
「それなら問題ない。ゆっくりルルを落とさせてくれ」
そう言いながら抱き寄せるとルルは驚いた顔で俺を見てきた。
どうやらこれで俺に嫌われるとでも思っていたらしい。
そんなこと、あるはずがないのに。
嫌うとしたらあのバドとかいう異世界人に対してだろう。
俺がルルを嫌うなんてあり得ないのだから。
だから安心させるようにギュッとルルを抱きしめていたのだが、段々恥ずかしくなってきたのかルルは可愛らしく頬を染めて一旦中へ戻ると言い出した。
「あ~…えっと、そろそろバドも心配になってきたし、一旦戻るよ」
「じゃあ一緒に戻ろう。俺も改めて彼と話してみたいし」
「そ、そうか」
ここはやはり再度あの男と向かい合って、宣戦布告をしておきたいところだ。
だからルルと共にあの男を探したのだが、肝心の男の姿がどこにも見えない。
どうやら魔力の補給をしないといけない時期のようなのに、馬鹿な男は魔力を使うドリンクサーバーを使い魔力欠乏状態に陥った可能性まで出てきた。
なんて間抜けな男なのだろう?
こんなに優しいルルを心配させるなんてどこまで腹立たしい男なんだとイライラしてしまった。
ルルは俺にパーティーを楽しんで欲しいと言ってくれたが、俺はルルと一緒に居たいから当然それを断る。
あんな男とルルを二人きりになんてしたくないという気持ちも大きい。
だから一緒について行ったのだが、そこでルルの予想通り魔力欠乏状態になったあの男を発見した。
「バド!」
「ルース」
「大丈夫か?」
「ああ。まだちょっと痺れるくらいだ」
心配げに声を掛けるルルとそんなルルに嬉しそうに笑いかける男。
確かに顔色は悪く呼吸も乱れて苦しそうではある。
冷や汗も出ているし魔力欠乏状態には違いないのだろう。
早急な処置が必要なのは一目瞭然だった。
でも……。
「無理するなよ」
そう言って迷うことなくキスで魔力を補給するルルの姿を見て心が痛まないはずもない。
そこにあるのはただの義務だとわかっていても、好きな男が他の男にキスする姿は好んで見たいものではない。
「ん…」
しかもどこからどう見てもこの男はルルに惚れているだろう。
吊り橋効果なのか何だか知らないが、異世界で自分のために献身的に魔力を補給してくれる相手を好きにならないはずがない。
熱っぽい眼差しでルルを見つめている姿は恋する男そのものだ。
「取り敢えずこれで動けるようになっただろう。後でしっかり補給してやるから、この後は俺の横にいろ」
「いいのか?」
「いいも何もないだろう?お前のことは俺が一任されているんだから、倒れないよう見ておくのも俺の役目だ」
「そうか」
どこまでも義務的なルルの態度には安心したが、それが不満だったのか男は微妙そうな顔になった。
そんな姿に流石のルルも怒りたくなったのだろう。
ルルからすれば助けてやったのになんだその態度はといったところか。
文句を言いたくなる気持ちもわからなくはない。
「お前な。嫌なら嫌って言えばいいだろう?!」
「誰も嫌なんて言ってない!」
「じゃあなんだよ?!いい加減はっきり言え!」
「俺は…!」
「俺は?」
「義務感で言われるのが嫌なだけだ!」
そして────。
「俺はお前が好きなんだよ!」
「…は?」
売り言葉に買い言葉で言い合いをしていた二人だったが、男の方もいい加減限界だったのか、唐突に俺の目の前で告白をし始めた。
言われた方のルルは当然目が点になっている。
きっと考えもしなかったのだろう。
この男が自分に惚れていることを。
完全に脈なし。
そのこと自体は嬉しかったが、次いで口から飛び出した言葉は到底看過できそうになかった。
「ええと、取り敢えずショタスキー伯爵家の次男の顔見て落ち着きたいから、その件はまた後日」
「誰だそれは?!元彼か?!」
「それは俺も気になるな。ルル、教えてくれないか?」
ショタスキー伯爵家の次男?
どんな奴だ?
ルルが今好きな相手なんだろうか?
もしそうだとすれば一番のライバルになるはずだ。
ここはしっかりと聞いておかないといけない。
「えっと…友人の弟?」
「つまり元彼の弟か!どうせお前好みの可愛い弟系なんだろう?!バレバレだ!」
元カレ。
つまりルルにはこの男を抱く前に既に経験があったということなんだろう。
そして可愛い弟系というからにはやはり抱く側だったに違いない。
ルルはその言葉を否定してはいないし、きっと正しい情報に違いない。
「可愛い弟系の男?それがルルの好みなのか?」
けれど念のために本人に確認はしておこう。
そう思って尋ねたら物凄くバツが悪そうに目を逸らされた。
なるほど。
どうやら本当の事らしい。
つまり今の俺はタイプからは外れているということらしい。
「なるほど。それなら先程プロポーズに頷いてもらえなかったのも納得だ」
その言葉にバドという男が噛みつくような勢いで聞き咎めてくるが、お前は脈なしなんだから諦めろと言ってやりたい。
「プ、プロポーズだと?!」
「そうだ。ルルは俺がもらい受ける」
そう口にするけれど、ルルの方は困ったように結婚する気はないと言ってきた。
「いや。俺、今のところ誰とも結婚する気はないんだけど…」
「……!そうか。ルースはこう言ってるぞ?押しが強すぎて嫌われる前にさっさと隣国に帰るんだな!」
「お前の方こそ諸悪の根源のくせにルルに惚れてもらえると思っているのか?さっさと諦めて異世界へ帰るんだな!」
『俺と』ではなく『誰とも』結婚する気はないとルルは言った。
それなら結婚したくなるくらい惚れさせてしまえばいい。
この男もきっとルルを振り向かせるために頑張るのだろうが、今一番のライバルはそのショタスキー伯爵家の次男だ。
どんな相手なのか早速調べなければならない。
非常に業腹だが今夜はルルはバドという男を抱いて魔力補給をするはず。
だがそれはあくまでも治療の一環だ。
ここは割り切ってギリギリまでルルに自分をアピールし、席を外したところで外堀を埋めにかかろう。
幸いルルの兄弟達は俺に協力的だし、ショタスキー伯爵家の兄弟についても訊けば教えてもらえるはず。
兄の方がルルの元カレで、今は弟の方に気持ちがいっているのならルルはきっと年下の面倒を見るのが好きなんだと思う。
優しい性格だし、あのふざけた男に親切にしているのだって根底には面倒見が良過ぎるというその優しさが影響しているんだろう。
そこに付け入っているあの男は腹立たしいが、命が掛かっているのなら仕方がない。
俺も妥協しよう。
そんなことよりもルルへのアピールだ。
俺はここぞとばかりにルルをエスコートする。
年下の可愛い男よりもできる男と一緒の方が楽だぞとわからせたい。
してもらう喜びを知ればきっと俺へと目を向けてくれるだろう。
どれが食べたい?と言いながら尋ね、ルルが料理を示せばそれを皿へとどんどん取っていく。
(なるほど。ルルはさっぱりした物が好きなのか)
時間的なものかもしれないが、ルルが示したのは肉、魚、海鮮物と幅広かったが、どれもこれもあっさりとした味つけの物が多かった。
この辺りは一緒に食事をしていく中できっともっとわかっていけるだろう。
そしてついでにルルに食べさせてあげながら、自然と恋人同士っぽい雰囲気へと持ち込んでいく。
俺と居て『これが普通』と思ってもらえるようにまずは頑張ろう。
そう思ったのに、側をうろつく男が気になるのかルルはそちらをチラチラ見るばかり。
本当にあの異世界人は目障りこの上ない。
挙句に俺の真似なのか、ルルがあの男の口へと『あ~ん』としたからいただけない。
それは俺にこそしてほしかった。
(ルルと食べさせ合いか。是非やりたいな)
そう思ったからすぐさま実行へと移した。
俺のお願いに戸惑って固まったルルだったけど、ジッと見ていたらちゃんと俺へとフォークを差し出してくれたから、俺は嬉しくなってそれをパクリと口へと入れた。
なんて幸せなんだろう?
嬉しすぎてつい笑顔になった。
そんな俺にルルが一瞬目を丸くしていたが、こんな俺が意外だったんだろうか?
俺だって好きな人との時間は普通に幸せを感じるんだが。
だから素直に『嬉しすぎて夢に見そうだ』と口にしたのだけど、そんな俺を子供っぽく感じたのかルルがクスッと笑って口にソースがついていると指摘してきた。
「リオ。ここ、付いてる」
キュッと指の腹でソースを拭ってくれるルル。
優しい。
でも子供扱いはやめてほしい。
俺はルルに恋する男なんだから。
ちゃんと恋愛対象として俺を見てほしかった。
だからそっとその手を掴んで、ぺろりとソースを舐め、俺を意識してもらえるように抱き寄せて耳元で囁いたんだ。
「ルル。ありがとう」
それはどうやら功を奏したようで、カアッとルルの頬に朱が上る。
なんて可愛いんだろう?
これで少しは俺を意識してもらえただろうか?
その後恥ずかしがったルルに逃げられてしまったけど、今日はまだ初日だ。
これからジワジワと俺を意識してもらいたい。
そんな気持ちで俺は慌てて会場から去っていくルルの背を見送ったのだった。
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