【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

文字の大きさ
31 / 77

30.意思表示

しおりを挟む
居た堪れない空気の中、さてどうやってこの雰囲気を回避しようかと思っていると、何故か視界の端でバドが魔法を使うのを感じた。
使っている魔法自体はとても単純な手を綺麗にする洗浄魔法【クリーン】だ。
普通なら誰も気にも留めないものでしかないし、その証拠にバドの側に居る者の中でそれを気にするものは誰一人いなかった。
でも俺からしたらそれはただの自虐行為としか思えないもので…。

「あのバカ…!」

何でいきなりこの場で必要もないのにそんな魔法を使ったんだと沸々と怒りが湧いてきてしまう。
だから俺は軽く舌打ちしてすぐさま席を立つと、ズンズンとバドの傍まで行き、顔色が悪くなったバドの胸倉を掴み上げて勢いよく口づけた。

「ん……」

魔力の乗った唾液を流し込むようにしっかり口づけ、さっさと呑み込めと言わんばかりにグイッと顔を上向けてやる。
周りは突然の俺の行為に驚き、唖然としているようだったがそんなものは関係ない。
雰囲気よりも人命優先だ。

(全く、何考えてんだよ?!)

前回魔力を補給してから結構経っているこのタイミングで魔法を使うなんて自殺行為もいいところだ。
下手をすれば一気に枯渇状態になってもおかしくはない。
症状はだいぶ改善されているからと言っても完治したわけではないから、魔法なんて使ったらあっという間に病状は進むし、馬鹿も大概にしてほしい。

そしてしっかりと顔色が戻ったのを確認して説教をしにかかる。

「まだ魔素摂取障害は治りきってないんだぞ?!あんな些細な魔法でも下手をしたら命取りだ!わかってるのか?!」
「う……す、すまなかった」
「謝るくらいなら最初からするな!大体いつもいつも心配ばかり掛けて!本当に俺より年上か?!」
「…………」

しょんぼり肩を落としているから少しは反省してくれているだろうけど、本当に何を考えているのかさっぱりわからない。

そんな怒り心頭の俺にリオが困ったように声を掛けてくる。

「ルル。落ち着いてくれ」
「これが落ち着いていられるか!折角のリオのお茶会だって台無しにされたようなものだろう?!」
「……まあそうだが、取り敢えずその手を離して部屋で休ませてやったらどうだ?」

『体調が悪いんだろう?』とリオは心配して言ってくれるけど、今やったのはただの応急処置でしかないし、部屋に行って横になっているだけでは全く治らないだろう。

「はぁ…。悪い。リオには申し訳ないけど、補給してくる」
「……っ。ルル…」

リオが悲しそうに俺を見てくるけど、このまま放っておくなんてできるはずがない。
それが分かっているからリオは口を噤んだ。
でもそれを良しとしなかったのは茶会の出席者達だ。

「ルルナス王子!それは流石にマリオン王子が可哀想なのでは?」
「そうですよ!こんなにルルナス王子のことを想ってくださってるのにあんまりです!」

皆俺がこれからバドに魔力を補給する方法をそれとなく理解しているんだろう。
口々にそんなことを言いながらバドに非難の目を向け始めた。
でも申し訳ないが正直言って俺はそれは見当違いの意見としか思えなかった。
だってリオとは別に婚約者という関係でも恋人同士というわけでも何でもないのだから。

(はぁ…この際はっきりさせておくか)

黙って流されていた自分も悪いし、ここは皆の非難の目をバドから自分へと向けさせて、それを甘んじて受けようと腹を決める。

「リオと俺は別に婚約が決まっているわけでも恋人同士だというわけでもない。その上で言うけど、バドを助けるの俺の義務だ。だからここで一番優先させるのはリオじゃなくバドだと思っている」

きっぱりとそう主張して────。

「リオ。はっきりしない俺も悪かった。一緒に居て全然嫌じゃなかったからつい流されて勘違いさせて悪かったと思ってる」
「ルルッ!」
「ごめんな?俺はこう言う優柔不断で気遣いもできない酷い奴だから、もっとリオを大事にしてくれるしっかりした可愛くて優しい相手を見つけて幸せになってほしいと思う」

心は痛むけど、ここで言わないときっとリオは諦めないと思ったから、ちゃんと真摯に目を見て『諦めてほしい』と告げた。
俺の言葉に傷ついたようにリオの顔が歪む。
期待を持たせてしまっていた分、きっとショックは大きかったんだと思う。
一途に想いを伝えてくれていただけに罪悪感が湧いてしまうし、本当に申し訳ないと思った。
でもこのままズルズルこんな中途半端な状態を続けるのはリオにとっても良くないと思うんだ。
恨まれても仕方がないし、嫌われて当然の酷い言葉を投げつけた俺なんて忘れて幸せになってほしい。

「俺のことは忘れてほしい」

最初でこそせめて友達に慣れたらとも思ったけど、半端に付き合ったらリオが辛いだけだし仕方がない。

周囲は重くなった空気にどうしていいのかわからず固まっているけど、俺は言うだけ言うとそのまま踵を返してバドの腕を取った。

「バド。行くぞ」
「ルース…」
「歩けるか?」
「……ああ」

そう答えは返ってきたもののちっとも歩き出す様子が見られなかったから、やっぱり辛いんじゃないかと思って俺は重さ軽減の魔法をかけてやって、そのままグイッと引き寄せすくい上げる様に横抱きにした。

「?!?!?!」

バドが突然のその行為に驚いて暴れそうになったから、病人は大人しくしてろと叱りつけスタスタと部屋へと歩いていく。
正直俺は後ろでリオがどんな顔をしているのかを見る勇気はなかった。

(ごめんな。リオ)

そうして俺は複雑な心境で茶会から脱出したのだった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...