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46.事情説明 Side.バド
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城に戻った俺は皆に無事を喜ばれた。
約一名を除いて。
「兄上。お元気そうで何よりです」
そう言いながらも全く目が笑っていない弟、ビージー。
まあ俺が帰ってこなかったら確実に次期王だったのだから、当然気に入らないのだろう。
ちなみに俺より二つ年下だからあのマリオン王子と同い年になる。
「親切な天才魔法使いが送り返してくれてな」
「そうですか。それは良かった。ですが…戻らない方が良かったかもしれないですね」
「どういう意味だ?」
「どういうも何も、ご自分が責任を問われないとでも?」
ビージー曰くあの時、辺りは騒然となったらしい。
国に恩恵を与える異世界人を召喚できなかったばかりか、第一王子の姿が消えたのだ。
『神がお怒りに?!』
『そんな馬鹿な!』
結局『第一王子は神に愛されたが故に神の元へ連れ去られたのだ』ということで事態の収拾がつけられたのだとか。
それが数か月経った今になって戻ってきたからと言って、『はい、そうですか』とはならないのではと弟は言う。
何かしらの沙汰はあるはずとのこと。
(困ったな)
となるとすぐには動くに動けないということだろうか?
なんとか上手く事を運んでルースが来た際に備えたいのにと焦燥感が込み上げる。
「どうせこの後事情説明などもあるのでしょう?精々哀れっぽく語ることですね」
まるで挑発するかのようにそう言ってくる弟。
(そう言えばこいつはこういう奴だったな)
何かと俺とぶつかっては去っていく、そんな弟だった。
以前はそれに対して俺は毎回上から目線で言い返していたものだ。
けれど、今は全くそんな気持ちにはならなかった。
そればかりではなく、なんだか馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
そんな子供じみた言い合いなんて時間の無駄とさえ思えてしまう自分がいた。
(どうせ言い合いをするならルースとやりたいな)
ルースとの言い合いは何故か弟との言い合いのように嫌な気持ちになったりしないし、なんとなく本音でのやり取りができていて嬉しいのだ。
「何か言うことはないんですか?」
「別に。お前と言い合うのは馬鹿馬鹿しいなと思っただけだ」
「…っな?!」
そして俺はさっさとその場を後にして、父の元へと向かったのだった。
***
「なるほど。ではお前はあちらから有用な情報を持ち帰ったと」
「はい。あちらはここよりも進んだ技術を多々持っておりましたので、書けるだけここに書き記し持ち帰りました」
「ふむ」
父王は持ち帰った紙束へと目を走らせ、その内容が多岐に渡ることを確認すると満足げに息を吐いた。
「素晴らしい。お前がいなくなった時はどうしたものかと思ったが、これほどの成果を持ち帰ってくるとは…。流石私の息子だ」
「恐れ入ります」
「お前に対して召喚失敗の責任をという者も中にはいるが、これだけのものを持ち帰ったのであればすぐに黙るだろう」
「ありがとうございます」
そして無事に納得してもらえたところで、俺は向こうであった出来事を事細かに説明し始める。
ルルナスという王子が俺をこちらに帰すために新たに魔法を作ってくれたこと。
魔素摂取障害になった俺を気にかけ親切に面倒を見てくれたこと。
ついでに好きになってしまったことまで伝えておいた。
これは余計な婚約を回避するためにも必要と判断してのことだったのだが、父王はそれだけ世話になったのなら好きになってもおかしくはないなと理解を示してくれた。
「それで、もしかしたらルルナス王子は俺を心配してこちらに様子を見に来てくれるかもしれなくて…」
ここが大事だと気合を入れてそう切り出すと、父は嬉々として目を輝かせた。
「なんと!そんな優秀な魔法使いが我が国に?!こうしてはおれん!すぐに最高の待遇をすべく準備をせねば!」
どうやら物凄く乗り気になってくれたらしい。
「バドよ。良いか?決して逃がすなよ?」
「え?」
「お前はその者を好いているのだろう?」
「ええ、はい」
「そしてその者はわざわざこちらに来てくれる、と」
「はい」
「では逃げられぬよう、なし崩し的に婚約を結んでしまおう。向こうの身分も王子なら申し分はないしな。あちらに帰る気にならなくなるほど優遇すれば問題もなかろうて」
「父上?!」
「なあに。上手くやればいい。最悪薬でも盛ってひと月も滞在させられれば、あとは結婚式まで一直線だ。跡継ぎはその後側妃を娶ればいいしな。全て手筈は整えてやる。大船に乗ったつもりでこの私に任せておけ!」
「さ、流石にそれはおやめください!恩を仇で返すようなものです!」
「何を躊躇している。お前からしても願ったり叶ったりの話であろう?まさか幸せにする自信がないとでも言うつもりではないだろうな?」
「いえ。それは…っ」
「では構わぬだろう。さてでは早速動くとするか」
そう言うと父王はあっという間に各所へと指示を出し、ルースが滞在する部屋や人員を手配してしまった。
(だ、大丈夫なのか?)
ルースからは召喚された者達を全員帰すということを悟られないようある程度嘘を吐いて誤魔化しておいてくれと指示されているが、流石にこれは想定外だ。
まさかここまで父がルースを問答無用で囲い込みに走るなんて思いもよらなかった。
(いや。いざとなったら俺が盾になってでもルースを逃がせばいいか)
ルースと結婚できるのならそれはそれで嬉しいが、ルースが望んでもいないのに罠にかけるようなことはしたくなかった。
それこそそんなことになったらマリオン王子と同じ括りになってしまう。
こうなったらルースが来た時に全部暴露した上で一緒にどうするかを考えよう。
何はともあれこちらでのルース受け入れは可能となった。
(ルース。お前を信じて待ってるからな)
できれば自分がいない間にマリオン王子に心奪われていませんようにと願いながら、俺はそっとルースを想ったのだった。
約一名を除いて。
「兄上。お元気そうで何よりです」
そう言いながらも全く目が笑っていない弟、ビージー。
まあ俺が帰ってこなかったら確実に次期王だったのだから、当然気に入らないのだろう。
ちなみに俺より二つ年下だからあのマリオン王子と同い年になる。
「親切な天才魔法使いが送り返してくれてな」
「そうですか。それは良かった。ですが…戻らない方が良かったかもしれないですね」
「どういう意味だ?」
「どういうも何も、ご自分が責任を問われないとでも?」
ビージー曰くあの時、辺りは騒然となったらしい。
国に恩恵を与える異世界人を召喚できなかったばかりか、第一王子の姿が消えたのだ。
『神がお怒りに?!』
『そんな馬鹿な!』
結局『第一王子は神に愛されたが故に神の元へ連れ去られたのだ』ということで事態の収拾がつけられたのだとか。
それが数か月経った今になって戻ってきたからと言って、『はい、そうですか』とはならないのではと弟は言う。
何かしらの沙汰はあるはずとのこと。
(困ったな)
となるとすぐには動くに動けないということだろうか?
なんとか上手く事を運んでルースが来た際に備えたいのにと焦燥感が込み上げる。
「どうせこの後事情説明などもあるのでしょう?精々哀れっぽく語ることですね」
まるで挑発するかのようにそう言ってくる弟。
(そう言えばこいつはこういう奴だったな)
何かと俺とぶつかっては去っていく、そんな弟だった。
以前はそれに対して俺は毎回上から目線で言い返していたものだ。
けれど、今は全くそんな気持ちにはならなかった。
そればかりではなく、なんだか馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
そんな子供じみた言い合いなんて時間の無駄とさえ思えてしまう自分がいた。
(どうせ言い合いをするならルースとやりたいな)
ルースとの言い合いは何故か弟との言い合いのように嫌な気持ちになったりしないし、なんとなく本音でのやり取りができていて嬉しいのだ。
「何か言うことはないんですか?」
「別に。お前と言い合うのは馬鹿馬鹿しいなと思っただけだ」
「…っな?!」
そして俺はさっさとその場を後にして、父の元へと向かったのだった。
***
「なるほど。ではお前はあちらから有用な情報を持ち帰ったと」
「はい。あちらはここよりも進んだ技術を多々持っておりましたので、書けるだけここに書き記し持ち帰りました」
「ふむ」
父王は持ち帰った紙束へと目を走らせ、その内容が多岐に渡ることを確認すると満足げに息を吐いた。
「素晴らしい。お前がいなくなった時はどうしたものかと思ったが、これほどの成果を持ち帰ってくるとは…。流石私の息子だ」
「恐れ入ります」
「お前に対して召喚失敗の責任をという者も中にはいるが、これだけのものを持ち帰ったのであればすぐに黙るだろう」
「ありがとうございます」
そして無事に納得してもらえたところで、俺は向こうであった出来事を事細かに説明し始める。
ルルナスという王子が俺をこちらに帰すために新たに魔法を作ってくれたこと。
魔素摂取障害になった俺を気にかけ親切に面倒を見てくれたこと。
ついでに好きになってしまったことまで伝えておいた。
これは余計な婚約を回避するためにも必要と判断してのことだったのだが、父王はそれだけ世話になったのなら好きになってもおかしくはないなと理解を示してくれた。
「それで、もしかしたらルルナス王子は俺を心配してこちらに様子を見に来てくれるかもしれなくて…」
ここが大事だと気合を入れてそう切り出すと、父は嬉々として目を輝かせた。
「なんと!そんな優秀な魔法使いが我が国に?!こうしてはおれん!すぐに最高の待遇をすべく準備をせねば!」
どうやら物凄く乗り気になってくれたらしい。
「バドよ。良いか?決して逃がすなよ?」
「え?」
「お前はその者を好いているのだろう?」
「ええ、はい」
「そしてその者はわざわざこちらに来てくれる、と」
「はい」
「では逃げられぬよう、なし崩し的に婚約を結んでしまおう。向こうの身分も王子なら申し分はないしな。あちらに帰る気にならなくなるほど優遇すれば問題もなかろうて」
「父上?!」
「なあに。上手くやればいい。最悪薬でも盛ってひと月も滞在させられれば、あとは結婚式まで一直線だ。跡継ぎはその後側妃を娶ればいいしな。全て手筈は整えてやる。大船に乗ったつもりでこの私に任せておけ!」
「さ、流石にそれはおやめください!恩を仇で返すようなものです!」
「何を躊躇している。お前からしても願ったり叶ったりの話であろう?まさか幸せにする自信がないとでも言うつもりではないだろうな?」
「いえ。それは…っ」
「では構わぬだろう。さてでは早速動くとするか」
そう言うと父王はあっという間に各所へと指示を出し、ルースが滞在する部屋や人員を手配してしまった。
(だ、大丈夫なのか?)
ルースからは召喚された者達を全員帰すということを悟られないようある程度嘘を吐いて誤魔化しておいてくれと指示されているが、流石にこれは想定外だ。
まさかここまで父がルースを問答無用で囲い込みに走るなんて思いもよらなかった。
(いや。いざとなったら俺が盾になってでもルースを逃がせばいいか)
ルースと結婚できるのならそれはそれで嬉しいが、ルースが望んでもいないのに罠にかけるようなことはしたくなかった。
それこそそんなことになったらマリオン王子と同じ括りになってしまう。
こうなったらルースが来た時に全部暴露した上で一緒にどうするかを考えよう。
何はともあれこちらでのルース受け入れは可能となった。
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できれば自分がいない間にマリオン王子に心奪われていませんようにと願いながら、俺はそっとルースを想ったのだった。
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