【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

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52.トラブルメーカー

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晩餐の席で大人しい王子の振りをしてみた。
案外何とかなるもんだなと思いながら一先ずバレないように食事を鑑定。
うん。どうやらワイングラスだけ媚薬入りらしい。
後は普通に食べて問題はなさそうだ。
そう思いながら和やかに話しながら食事を楽しむ。
別にワインくらい飲まなくてもいいし。

そう思ってたらバドの弟がやたらと突っかかってきた。
反抗期かな?
俺は気にしないけど、どうやら俺を取りこみたい国王は物凄くお怒りの様子。
確かこの弟ってリオと同い年だったっけ?
ぷんすこ怒ってて可愛いと思うんだけどな。

そんなことを考えてたら叱られたことに腹を立てたのか俺のワイングラスに魔法をぶつけてきた。
本人的に嫌がらせのつもりだったんだろうけど、俺からすればファインプレー以外の何物でもない。
媚薬入りのワインを飲まなくて済んだんだから。
ついでにワインが服に飛んだのを理由に部屋に下がる口実だってできたし、食事も部屋に持ってきてもらえることになったから一人でゆっくり食べられる。
ある意味最高の展開だ。
だから俺はご機嫌で部屋へと引っ込んだんだ。
でもそれはあくまでも俺目線での話であって、バドからしたら怒り心頭だったらしく、部屋に戻ってきてから物凄く怒っていた。

「ビージーめ!ルースにあんなことを言ってくるなんて!」
「まあまあ。そんなに怒らなくても。可愛いもんじゃないか」
「ルースは年下に甘すぎる!どうしてそんなに甘いんだ!」
「年下は可愛いもんだろう?兄上達も良く言ってたし」

何かおかしかったかと首を傾げたら思い切り脱力して溜息を吐かれた。

「ルースはある意味器が大き過ぎる気がする」
「そうか?普通だと思うけど」
「……マリオン王子に対しては初恋相手だからかと思っていたが、ビージーにまで甘々じゃないか!もしかして年下なら誰にでもそうなのか?!」
「いや。流石に誰にでもそうとは言わないけど…」
「本当か?お前なら襲われても『しょうがないな』と言って受け入れてしまいそうな気がしてならないぞ?」
「そんなことはないぞ?それを許してもいいなと思ったのは俺大好きで暴走してるリオくらいのものだろう?」
「…………っ。ルース。俺の嫉妬を煽るのが上手いな?」
「え?」

急にバドの雰囲気が物騒になる。
でも別に刺々しい空気と言うわけじゃなくて、どことなく甘い気がするのはどうしてだろう?

「ルース。今日は夜通し話したい」
「…え?」
「俺がいなくなってからのお前の話を沢山聞かせてほしい」

どうやらバド的にリオとのことが気になっているらしい。

「しょうがないな」

こういうところが可愛いよなと思いながらキスをして、俺は一緒に風呂に行こうと誘ったのだった。


***


【Side.サレーヌ国第二王子 ジードリオ】

その音が響き渡ったのは突然だった。
城の中庭付近でドォンッと爆発するような音が轟いたのだ。

「何事だ?!」

当然だが城内はたちまち緊迫感に包まれ、兵達がバタバタと現場へと駆けつけていく。
それを追うように俺もそちらへと走った。

辿り着いた先では黒い炎を迸らせたマリオン王子が立ち尽くしていて、周囲が激しく燃え上がっている状況で、誰もがどうしていいのか分からず困惑していた。
魔力が暴走しているのは明らかだ。
そしてこんな状況なのにもかかわらず、あの魔法大好きな弟の姿がないことに嫌な予感がした。
それはつまりこの状況は弟であるルルナスが居なくなった等の要因が考えられるのではないかと。
そしてそれを裏付けるように妹の声が耳へと飛び込んでくる。

「お兄様!お助けください!」
「ヴァーリア。ルルナスを見なかったか?」
「ルルナスは…私に後を任せると言って異世界へ」

その言葉にヴァーリアは知っていたのかと苦い気持ちになる。

「手紙を渡すくらいならと引き受けましたが、流石に私にはこの状況をどうにかできるような気がしないのです!どうかご助力を!」

泣きながら訴えてくる妹に、確かにこれは妹には荷が重すぎると判断した。
妹の第一魔法は水で、第二魔法は風だ。
ただの火災であればできることはあるが、この場合今ここでできることなどないに等しい。
それに対して自分の第一魔法は光で、第二魔法は水だ。
何とかしようと思えばできるとは思う。

「ちなみにルルナスの手紙の中身は知っているか?」
「いいえ。ですがマリオン王子に宛てられたものですし、これを読んでもらえれば恐らくは…」
「貸せ」

内容が落ち着かせる類のものであればそれを有効に使えるとは思ったが、書いたのが恋愛音痴の弟だから全く信用はならない。
火に油を注いでこれ以上の惨事は御免だった。

「お兄様?!勝手に他者宛の手紙を開封なさっては…っ!」
「今は城の一大事だ。後でいくらでも謝罪するから、黙って見逃がせ」

そう言ってマリオン王子宛の弟の手紙を開封し、ざっと内容に目を通す。

「…………先に見てよかった」

(トラブルメーカーか!!)

これはダメだ。
とてもマリオン王子を落ち着かせるなんてできる代物ではなかった。
中途半端に期待を抱かせて更に胸を焦がせることになるのは必至な内容で、生殺しもいいところだ。
下手をしたら戻った途端無理矢理隣国に連れ去られるんじゃないだろうか?
その後はきっと監禁コースまっしぐらだ。
どちらにとっても不幸せな結果にしかならないから、絶対に見せない方がいい。

「ヴァーリア。これは絶対に見せたらダメだ。燃やすなりなんなりして処分しておいてくれ」

そう言って手渡すと、内容が気になったのかチラリとさりげなく目を通すヴァーリア。
そしてその後は物凄く残念そうな顔になった後、無言で燃やした。
ヴァーリア的にもダメだと判断したのだろう。
弟のあまりの不出来さに情けなくなってしまう。
さて、どう収拾をつけようか。

「取り敢えず、魔力暴走を落ち着かせるのが先決だな」
「できますか?」
「できるかできないかじゃなくやらないとマズいだろう」

弟や妹が手に負えないものは兄が率先して解決しなければならない。
後始末は父や兄がしてくれるだろうし、ここはやはり自分がやるべきだろう。

「可愛い妹と弟のためだ。一肌脱ごう」

そして俺は思い切ってルルナスの身代わりになって誤魔化そうと考えた。
真面な状態のマリオン王子なら絶対に騙されないだろうが、今のこの魔力暴走を起こすほどの混乱具合なら誤魔化せるんじゃないかと思ったのだ。
光魔法と水魔法を使えば幻影魔法で姿形を弟に見せるくらい容易い。
そう思い、俺はすぐさま魔法でルルナスそっくりに擬態し、問題はないかとヴァーリアに確認を取った。

「流石お兄様ですわ!そっくりです!」
「よし。行ってくる」

そしてなんとか魔法を打ち消しながらマリオン王子へと近づき、それっとばかりに抱き着いた。

「リオ。俺はどこにも行かないから落ち着け」

(これで合ってるよな?)

確かルルナスはマリオン王子をこう呼んでいたはずだ。

「ル…ル?」
「ああ」

どこか焦点が合っていなかったマリオン王子が反応を示したことにホッとしながら更にギュッと抱きしめてやりながら肯定してやる。

「ほら。ここに居るだろう?」
「ルル…っ、ルル…!」

必死になって抱き着いてくるマリオン王子は俺より背は高いけど年相応に幼くて、つい慰めてやりたくなった。

「(弟が)ゴメンな。急にいなくなってびっくりしたよな」
「ルル…」

グスッと泣きながら抱き着いてきたが、それと共に魔力の方も落ち着きを取り戻し、なんとかこれ以上の被害を食い止めることに成功する。
そのこと自体はホッとしたけれど、次いでマリオン王子の口から飛び出した言葉には焦りを感じた。

「もう二度と離さないっ」

そう言って思い切り口づけて、こちらを見つめてきたその目にはちょっとした狂気を感じて『あ、これはマズいな』と冷や汗をかく。
このままいけば俺はマリオン王子に部屋へと連れ込まれ抱き潰される一択な気がしてならない。
騎士達と遠征に出ることが多い自分は一応どっちも経験済みではあるけれど、流石に弟の婚約者と寝るのはNGだろう。
マリオン王子だって後から後悔するだろうし、ここは逃げるに限る。
問題はどう逃げるかだが…。

俺は頭の中でサッと対策を考え、即座に実行へと移すことにした。

(多分ルルナスなら絶対にしないだろうけど…)

包み込むような形で両手をマリオン王子の頬へと優しく添えて、そのままその唇を塞ぎ、驚いたのを確認後そっと離して恥じらうように目を逸らす。
そしてしっかり聞こえるように滑舌良くゆっくりと言葉を紡いだ。

「俺、リオとはもっと婚約者らしく過ごしたい」
「え…?」
「その…肌を重ねるだけが愛を深めるわけじゃないだろう?」

騎士達と寝ても、団結力は上がっても愛なんて深まった試しはないしな。
寝たら確実に相手が落ちるというのはただの幻想だ。
そこは勘違いしないでもらいたい。

「だから…これからはもっとお互いのことを知っていけたらと思って…」

これならルルナスが戻ってきても抱き潰されることはないだろうし、マリオン王子の暴走も抑えられるだろう。
我ながらナイスな提案だ。

「ルル…」

ほら。マリオン王子も最初は戸惑ってたけど、ジワジワ嬉しさが込み上げてきたのか泣き笑いみたいになってる。

「ルル。嬉しい。嬉しいよ」

そう言いながらさっきとは全然違う優しく慈しむようなキスをしてくる。

(…え?!凄っ…)

不覚にもそのキスで胸が鷲掴みされるような気持ちになって、勝手に頬が染まってしまう。

(な、なるほど。愛されてるって、こんな感じなのか)

俺はこんな風に誰かと愛し愛されるような関係になったことなんてないから、初めての感覚に戸惑ってしまった。
愛おしいと嫌でも伝わってくるキスなんて初めて経験した。
こんなに愛してもらっているルルナスは、どうして落ちないんだろう?
不思議で仕方がない。
俺だったらきっとすぐにでも落ちただろうに。

こうして一先ずこの騒動は落ち着いたのだけど、俺がおかしな身代わりであり得ない恋に身を焦がす羽目になるなんてこの時は全く考えもしなかったのだった。


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