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第一部 アストラス編~王の落胤~
111.カードゲーム
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晩餐会後、シュバルツは一体どういうことだとフローリアへと詰め寄っていた。
「フローリア!」
「怖いわね、シュバルツ」
「遊びのつもりじゃなかったのか?!」
怒りに満ちた眼差しで責めるシュバルツにフローリアはつれなくクスリと笑う。
「そうね。私も最初は遊びのつもりだったわ。でも…ロックウェル様は思っていた以上に大人で、あっという間に私を虜にしてしまわれたの…」
「…あいつに抱かれたのか?」
「ええ。そうよ」
クレイ達の元から共に立ち去り、歩きながら少し話してその会話のセンスの良さにうっとりとさせられた。
洗練されたエスコートで別室へと案内されお茶をしながら話を弾ませていると、気づけばそっと唇が重なっていた。
まるでそうなるのが自然だと言わんばかりに流れるような動作で甘く絡め取られてしまう。
その眼差しも口づけもどこまでも優しくて、あっという間に夢中になった。
気が付けば抱きついていたのは仕方がないだろう。
その口づけだけで腰が抜けて力が入らなくなってしまったのだから。
そこからはまさに至福の時間────。
「私…女の幸せを知ってしまった気がするわ…」
閨があんなに蕩ける程気持ちがいいものだとは思いもしなかったとフローリアがうっとりと頬を染める。
「あれに比べたら貴方との行為の方が遊びだったとしか思えないくらいよ」
バッサリと言い切ったフローリアの言葉にシュバルツがふるふると震える。
「ふざけるな!」
「嫌だわ。悔しかったら貴方もロックウェル様のようにもっと大人になって、私を自力で取り返すくらいの気概を見せてくれたらいいのに…」
フローリアはくすくすと笑ってそっと自室へと向かってしまった。
後に残されたシュバルツのプライドはズタズタだ。
(ロックウェル…!)
昼間はロイドに馬鹿にされ、夜はフローリアに馬鹿にされる。
正直怒りの感情でいっぱいだ。
「くそっ…!」
このまま大人しく引き下がる自分ではない。
なんとか二人の仲を引き裂くすべはないものか────。
「そうだ!」
アベルはフローリアに甘いから相談するだけ無駄だが、相手側はどうだろう?
ロックウェルと言う切り札をこちらは持っているのだ。
その切り札を自分だって使ってみてもよいのではないか?
自分ならロックウェルを助ける事ができるぞと囁けば案外あっさりと協力を得られて、あの二人を上手く引き離せるかもしれない。
最終的にクレイをトルテッティに引き入れられればアベルも渋々だろうとなんだろうと納得してくれるだろう。
(早速明日、接触してみるか…)
今夜はもう遅い。
明日朝一番でクレイ達に接触してみることにして、シュバルツはゆっくりと寝床でほくそ笑んだ。
***
「う……」
クレイが目を覚ますと、そこはドルトが用意してくれた例の自室のベッドの上だった。
頭がクラクラするためそっと寝台を降りて水を飲んだのだが、胃がキリキリと痛むのを感じて思わず蹲ってしまう。
「はぁ…っ」
そんな姿に眷属達が心配そうに声を掛けてきた。
【クレイ様。今はお休みになられた方が宜しいのでは?】
【そうですよ。ご無理はなさらないでください】
【何か胃に優しいものをすぐにご用意いたしますから】
けれどそんな優しい言葉も今のクレイには空しく感じられて仕方がなかった。
「…悪いがすぐにでも何か対策を…」
そう言って黒衣を纏おうとするクレイを皆が全力で引きとめる。
【本日の交流会は閉会しております!】
【そうです!必要でしたら我々がすぐにでも動きますので、クレイ様はお休みください!】
「…そんなことを言っても、今こうしている間にもロックウェルは…!」
【ロックウェル様にはヒュースが付いております。何かあればすぐに知らせが参りますから!】
眷属がそこまで言ったところでコンコンと扉をノックする音が聞こえ、シリィ達が部屋へと入ってきた。
「クレイ。起きた?」
「…シリィ」
「ロックウェル様はちゃんとお部屋に戻ったみたいだから心配しないで」
「…そうか」
憂うように項垂れるクレイを励ますようにシリィが明るく声を掛ける。
「ほら!いつまでもウジウジしてても始まらないわ!こっちで軽く食事でもとりながら皆で今後の対策を考えましょう?」
そんな言葉にクレイがほんの僅か微笑みを浮かべた。
「シリィ…ありがとう」
「いいのよ。大体、ロックウェル様がこれまで浮気しなかった方がおかしいわ!あの人は仕事はきっちりこなすけど、女性関係は元々派手だったし!」
そう言いながらクレイをソファへと座らせる。
目の前のテーブルには所狭しと料理の数々が並べられて、美味しそうな匂いが立ち上がっていた。
どうやら皆もちょうど食事時だったらしい。
自分は一体どれだけ眠っていたのだろうか────。
「兎に角元気がなきゃ何もできないわよ?」
食べて食べてと勧めてくれるシリィにそっと感謝していると、リーネもそうよと励ますように口を開いた。
「気に病んでも始まらないわ。そもそも私が知る限り、ロックウェル様はクレイと付き合うまで相当色んな人と付き合って寝てるわよ?」
今更だとバッサリ言ってくる。
確かに言われてみればその通りだ。
なんだか段々気にするだけ無駄なような気がしてきた。
そう考えると、やはり自分と付き合っていた時の方がおかしな状況だったのだろう。
「…そんなにあいつは派手だったのか?」
ロイドが不思議そうに言ってくるのでシリィとリーネは深く頷き肯定する。
「…まあそれでも昔ほどじゃなかったんじゃないか?あいつとは長い付き合いだが、凄い時は一日5人の女と寝ていたぞ?」
出会ってものの数分で口説いて物陰に連れ込んですぐに体の関係を持つなんて、それこそ山のようにやっていた時期がある。
クレイも何度か目にしたことがあって、その度に居た堪れない気持ちで逃げ出したものだ。
「あいつの百戦錬磨は伊達じゃない」
「……そんなに女に不自由しないならクレイは私に譲ってほしいものだな」
呆れたようにため息を吐くロイドにシリィも同感だと言葉を重ねる。
「そうよね。私もそう思うわ。あんな人やめておけばいいのよ。クレイがロックウェル様にベタ惚れじゃなかったら私が恋人に立候補したいくらいだわ」
「ロックウェルと別れたらクレイは私と付き合う予定だが?」
「あら、私だってクレイとなら結婚まで考えてもいいわ」
シリィとロイドに加えてリーネまで参戦して言いたい放題だ。
「大体あのロックウェル様がクレイ一筋なんて、最初に聞いた時は信じられなかったもの」
リーネがつまみと共に酒を傾け始める。
「それは私もよ。振る時は優しく振ってあげてくださいって言ったら物凄く睨まれたけど、これまでのことから考えるに仕方がないと思うのよね」
シリィももぐもぐと口を動かしながらそっと果実水を手に取った。
どうやら夕餉兼酒盛りがこの部屋で開催されるようだ。
「クレイはあいつのセフレじゃなく恋人なんだろう?」
ロイドも酒を飲みながらそっとクレイへと尋ねてくる。
「ああ。セフレにはなりたくないから最初は断ったんだ。そしたら恋人だって言ってくれて…」
それからずっと自分だけを見てくれていたのにとクレイは思わずまた落ち込んでしまった。
そんなクレイにロイドがそっと酒を勧めてくれる。
「飲むか?」
「悪いな…。胃が痛いから少しだけにさせてくれ」
思わずそう言うと、すぐさまシリィが回復魔法を掛けてくれた。
「クレイ!辛い症状が出たら私が全部癒してあげるからちゃんと言ってちょうだい!」
「…ありがとう。シリィはいつも優しいな」
「えぇっ?!そ、そんなことないわよ…?!」
「いや。シリィは割と最初の頃から俺に優しかっただろう?本当に感謝している」
そんな言葉にシリィが真っ赤になって俯いてしまう。
「そ、そうだったかしら?」
「ああ。そう言えばロックウェルに最初にヤラれた時も助けてもらったな。あの時は本当に助かったんだ」
初めてだったのにこれでもかという程激しくヤラれたんだとグイッと酒を煽ったクレイに、リーネが驚きに目を見開いた。
「嘘…あのロックウェル様が?」
「嘘じゃない。あの時は熱まで出て動くのもやっとで逃げられないし、ゆっくり部屋を抜け出したところでシリィがちょうどやって来て、回復魔法を掛けてくれたから逃げられたんだ」
「え?嘘っ!あの時?!」
まさかそんな事情だったとは思ってもみなかったとシリィもそれには言葉を失ってしまう。
「あいつは男に対する時と女に対する時で態度が違うんじゃないかと思ったくらいだ」
最初からドSだったと言って酒を煽るクレイに、三人はため息を吐く。
それならどうして付き合うことになったのだろう?
そこが不思議でならない。
「やっぱり以前言っていたようにお前的には身体の相性か?」
ロイドがそっと酒を勧めながらクレイへと尋ねてくるが、クレイはフルリと首を振る。
「前はそうかなと思ったんだが、ちょっと違うなと思い直した」
「へぇ?じゃあお前はロックウェルのどこが好きになったんだ?」
興味があると言ってロイドが楽しげに尋ねてきたので、クレイは暫し考えてどこか自嘲するように笑った。
「…………俺の事が好きすぎて、ドSになるところ」
思えば最初からロックウェルは自分の事を真っ直ぐに見てくれていた。
そもそも遊びの女に酷いことをするような男ではない。
もちろん付き合ってきた相手にも同様だ。
恋人にも部下にも誰にでも優しいロックウェル。
そんなロックウェルが何故か自分に対してだけあんな態度を取ってきたのは衝撃的だった。
けれどあの時はきっと逃げられたくなくて必死だっただけなのだろう。
そんな風に思い至って、なんだか愛されていると感じてたまらなく嬉しかった。
だからそう言ったのに────。
「……ドSが好きなの?」
シリィから悲しげにそんな風に言われてしまって驚いた。
そんなつもりはなかったのだが…。
「いや、別にドSが好きな訳じゃない。あいつは普段部下思いの優しい奴だろう?」
「え?ええ。まあそうね」
シリィが戸惑うように肯定するのを満足げに見遣り、クレイはそのまま言葉を続けていく。
「そんな奴が俺に関してだけは嫉妬に狂ってドSになるんだ。だから愛されてるなと思ってたまらなくなる」
けれどそれはシリィには理解不能だったようで────。
「…クレイ。歪んでるわよ?」
そんな風に言われてしまった。
「そこはほら、ロックウェル様の大きな愛で包み込まれて幸せ♡とかそういうんじゃないの?」
シリィが突っ込みを入れるように言ってくるが、自分にはそれイコール、ドSだったのだが…。
(ああ、そうか……)
何となくシリィが言わんとしていることがわかったのでわかりやすく答えてやることにする。
「シリィが言いたいのは優しい言葉と態度と言うことか?確かに言われれば嬉しくもあるが、俺はそんなものに然程興味はないな」
あいつは誰にでも甘い言葉を囁いているだろうしと言ってやるとどうやら納得がいったようだった。
「う…それは確かにそうかもしれないけど…」
「いいんだ。俺はロックウェルが愛してくれて幸せだったんだから」
わかってもらえなくても構わないと言ってグラスを傾けるクレイにリーネがため息を吐く。
「なるほどね。御馳走様」
「…本気で妬けるな」
そんなにクレイの心を占めているなんてと悔しそうにロイドが酒を煽った。
「まあいい。取りあえずまずはどう正気に返すかだな」
これ以上惚気は聞かないとばかりにロイドはあっさりと話を切り替え、その言葉を口にする。
「私としては嫉妬を煽るのが一番手っ取り早いと思うんだが?」
確かにロックウェルの嫉妬は尋常ではなかった。
それは一番効果が出そうな気がする。
「でも今はあの姫に夢中なんじゃないかしら?」
洗脳されていたら当然そうなって然るべきではないだろうかとシリィが言うが、それに対してリーネはそうとも限らないんじゃないかと言ってきた。
「記憶操作もそうだけど、心まではそうそう簡単に操れないわよ?」
嗜好や思考を変える等は比較的簡単だが、想いが強ければ強いほどその心を変えるのは容易にはいかないものだ。
それは黒魔道士の元にやってくる仕事の中で多々出会って痛感した事実。
本命がいる相手には記憶操作は難しい────。
だからこそ嫉妬を煽れば元通りとまではいかなくても戻ってきてくれる可能性は高いのではないだろうか?
「それこそお前があの姫から寝取ってしまうのもありかもしれないぞ?」
ロイドが名案だとばかりに口にしたが、それに対してクレイはそれは嫌だと言い出した。
「悪いがお断りだ」
「何故だ?」
「俺は『恋人のロックウェル』とは寝るが『友人のロックウェル』と寝る気はない」
「…?同じだろう?」
ロックウェルはロックウェルではないのだろうか?
けれどクレイは嫌だの一点張りだ。
「全然違う。絶対嫌だ」
クレイが強く断言してまたグイッと酒を煽ったので三人は戸惑いを隠せなかった。
どうしてそんなに拘るのだろう?
「クレイ…?」
シリィが気遣わしげに声を掛けるとクレイの瞳がうるりと潤む。
「あいつが言ったんだ。『恋人』の自分以外と寝るなって。だから俺は絶対に『友人』とは寝ない!」
そんなクレイにロイドがなるほどなと納得したように頷いた。
「そう言うことなら今のあいつは私と同列と言うことか」
「…そうだ」
フイッと横を向いたクレイにロイドがどこか嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「わかった。それならそれで別の案でも考えるか。明日様子を見て考えてもいいしな」
「…ロイド」
「今日は一先ずお前の気晴らしでもしてやるとしよう。もしよかったらこれから以前言っていたカードゲームでもしないか?」
「え?」
「例の罰ゲーム…やってくれるんだろう?」
「……お前はこんな時に」
「こんな時だからこそスリリングで楽しいんじゃないか。その方が気も紛れるだろう?」
そう言ってカードを取り出したロイドにクレイがクスリと笑う。
「まあいいか。確かに遊んでいる内に気も紛れるかもしれない」
そんな二人のやり取りを聞いてリーネが何のことだと尋ねてきた。
「クレイとスリリングな罰ゲーム付きカードゲームをしようとこの間話したところでな」
そしてサラサラと紙にそれを書きこんでいく。
「魔力交流、手淫、口淫?」
勝者は敗者にこれを求めることができる────ロイドは笑いながらそう言った。
「これなら浮気には当たらないだろう?」
けれどそれを目にしてリーネは目が点になり、シリィに至っては顔を真っ赤にして叫びを上げる有様だった。
「なっ…なななななっ…!!何を言い出すのよ────!!」
「ああ、二人でするから別にお前達は帰ってくれていいぞ?」
ロイドが妖しく笑いながらそんな風に言ってくるのでシリィは冗談ではないと慌てて止めに入る。
二人でやったらそのままの流れでクレイが手籠めにされるのは必然ではないか。
そんなことを見過ごせるはずがない。
それはリーネも同感だったのか、ゲームには自分も加わると言い出した。
「その罰ゲームは一人三枚好きに書けることにしない?」
それなら12枚の紙をくじ引きで引けばいいからと提案してくる。
「別に構わないぞ?」
「面白そうだな」
ロイドとクレイはあっさり承諾するが、シリィとしてはロイドのくじに当たったらと思うと気が気でなかった。
「シリィ、無理に参加しなくてもいいぞ?」
「そうよ。自室に帰ったらいいわ」
そう言ってリーネが早速と言うように楽しげに罰ゲームを書き始める。
「何にしようかしら…。ああ、敗者は勝者達からキスマークをつけてもらうって言うのでも構わないかしら?」
「実に楽しいな」
「そうよね♪あとは勝者は敗者を全力で口説く!と、押し倒してキス!これで決まりね♡」
これならいいでしょうと笑うリーネにクレイも楽しげに笑った。
「遊びだしそれくらいがいいかもな」
「絶対クレイに口説かれたいわ♡」
「同感だな」
ロイドもノリノリだ。
そんな二人にシリィはダラダラと背中に汗をかく。
(絶対にこんな二人の所にクレイを置いておけないわ…!)
下手をしたら三人で乱れまくって大変なことになってしまうかもしれない。
今のクレイはどこか自暴自棄な気がして心配だ。
(え~い!女は度胸よ!)
自分がクレイを守らなければという使命感が湧き始め、シリィはキュッと唇を噛むと自分も参加する!と声を上げた。
「私も参加するわ!」
「そうこなくっちゃ」
「シリィの罰ゲームか…楽しみだな」
ロイドがクッと笑ってくるので何かぎゃふんと言わせる罰ゲームはないものかとグルグル考える。
「罰ゲームよね?」
「ああ」
「何でもいいのね?」
「勿論」
じゃあこれよと言ってシリィは勢いよく書き始めた。
「敗者は勝者にぶたれる?」
「敗者は勝者に贈り物を用意する?」
「敗者は嫌いな相手にキスをしに行く…ねぇ」
これが精一杯の罰ゲームだと言うシリィに可愛いなと思いながら三人はそっと微笑みを浮かべた。
どれもシリィらしいと言えばシリィらしい控えめな罰だ。
「俺も書いたぞ」
三者の案を読んだ後でクレイも楽しげにその札を見せる。
「勝者は敗者を使って魔法のお試しをする!こんな魔法があったら楽しいと言う提案をする!そして最後は…勝者は敗者に魔法で悪戯をするだ!」
これならシリィも楽しいだろう?とクレイが言うとシリィもそれはいいわねと楽しげに顔を輝かせて同意したが、残りの二人はそっとほくそ笑んだ。
(クレイ…やってくれるわね。魔法のお試し…何にしようかしら?)
(これは拘束魔法で縛って悪戯してもいいと言うことか…?是非とも責め立ててみたいな)
さすがドSに調教されてきただけのことはある。
美味しすぎて笑いが止まらない────。
「実に楽しそうだな」
「そうね。楽しみだわ」
そう言って賛同した面々にクレイはにこやかに宣言した。
「じゃあ今日から三日間、これで楽しもう」
「…え?」
一回ではないのかと呆けたシリィをよそに、三人は喜び勇んでカードを配り始めたのだった。
「フローリア!」
「怖いわね、シュバルツ」
「遊びのつもりじゃなかったのか?!」
怒りに満ちた眼差しで責めるシュバルツにフローリアはつれなくクスリと笑う。
「そうね。私も最初は遊びのつもりだったわ。でも…ロックウェル様は思っていた以上に大人で、あっという間に私を虜にしてしまわれたの…」
「…あいつに抱かれたのか?」
「ええ。そうよ」
クレイ達の元から共に立ち去り、歩きながら少し話してその会話のセンスの良さにうっとりとさせられた。
洗練されたエスコートで別室へと案内されお茶をしながら話を弾ませていると、気づけばそっと唇が重なっていた。
まるでそうなるのが自然だと言わんばかりに流れるような動作で甘く絡め取られてしまう。
その眼差しも口づけもどこまでも優しくて、あっという間に夢中になった。
気が付けば抱きついていたのは仕方がないだろう。
その口づけだけで腰が抜けて力が入らなくなってしまったのだから。
そこからはまさに至福の時間────。
「私…女の幸せを知ってしまった気がするわ…」
閨があんなに蕩ける程気持ちがいいものだとは思いもしなかったとフローリアがうっとりと頬を染める。
「あれに比べたら貴方との行為の方が遊びだったとしか思えないくらいよ」
バッサリと言い切ったフローリアの言葉にシュバルツがふるふると震える。
「ふざけるな!」
「嫌だわ。悔しかったら貴方もロックウェル様のようにもっと大人になって、私を自力で取り返すくらいの気概を見せてくれたらいいのに…」
フローリアはくすくすと笑ってそっと自室へと向かってしまった。
後に残されたシュバルツのプライドはズタズタだ。
(ロックウェル…!)
昼間はロイドに馬鹿にされ、夜はフローリアに馬鹿にされる。
正直怒りの感情でいっぱいだ。
「くそっ…!」
このまま大人しく引き下がる自分ではない。
なんとか二人の仲を引き裂くすべはないものか────。
「そうだ!」
アベルはフローリアに甘いから相談するだけ無駄だが、相手側はどうだろう?
ロックウェルと言う切り札をこちらは持っているのだ。
その切り札を自分だって使ってみてもよいのではないか?
自分ならロックウェルを助ける事ができるぞと囁けば案外あっさりと協力を得られて、あの二人を上手く引き離せるかもしれない。
最終的にクレイをトルテッティに引き入れられればアベルも渋々だろうとなんだろうと納得してくれるだろう。
(早速明日、接触してみるか…)
今夜はもう遅い。
明日朝一番でクレイ達に接触してみることにして、シュバルツはゆっくりと寝床でほくそ笑んだ。
***
「う……」
クレイが目を覚ますと、そこはドルトが用意してくれた例の自室のベッドの上だった。
頭がクラクラするためそっと寝台を降りて水を飲んだのだが、胃がキリキリと痛むのを感じて思わず蹲ってしまう。
「はぁ…っ」
そんな姿に眷属達が心配そうに声を掛けてきた。
【クレイ様。今はお休みになられた方が宜しいのでは?】
【そうですよ。ご無理はなさらないでください】
【何か胃に優しいものをすぐにご用意いたしますから】
けれどそんな優しい言葉も今のクレイには空しく感じられて仕方がなかった。
「…悪いがすぐにでも何か対策を…」
そう言って黒衣を纏おうとするクレイを皆が全力で引きとめる。
【本日の交流会は閉会しております!】
【そうです!必要でしたら我々がすぐにでも動きますので、クレイ様はお休みください!】
「…そんなことを言っても、今こうしている間にもロックウェルは…!」
【ロックウェル様にはヒュースが付いております。何かあればすぐに知らせが参りますから!】
眷属がそこまで言ったところでコンコンと扉をノックする音が聞こえ、シリィ達が部屋へと入ってきた。
「クレイ。起きた?」
「…シリィ」
「ロックウェル様はちゃんとお部屋に戻ったみたいだから心配しないで」
「…そうか」
憂うように項垂れるクレイを励ますようにシリィが明るく声を掛ける。
「ほら!いつまでもウジウジしてても始まらないわ!こっちで軽く食事でもとりながら皆で今後の対策を考えましょう?」
そんな言葉にクレイがほんの僅か微笑みを浮かべた。
「シリィ…ありがとう」
「いいのよ。大体、ロックウェル様がこれまで浮気しなかった方がおかしいわ!あの人は仕事はきっちりこなすけど、女性関係は元々派手だったし!」
そう言いながらクレイをソファへと座らせる。
目の前のテーブルには所狭しと料理の数々が並べられて、美味しそうな匂いが立ち上がっていた。
どうやら皆もちょうど食事時だったらしい。
自分は一体どれだけ眠っていたのだろうか────。
「兎に角元気がなきゃ何もできないわよ?」
食べて食べてと勧めてくれるシリィにそっと感謝していると、リーネもそうよと励ますように口を開いた。
「気に病んでも始まらないわ。そもそも私が知る限り、ロックウェル様はクレイと付き合うまで相当色んな人と付き合って寝てるわよ?」
今更だとバッサリ言ってくる。
確かに言われてみればその通りだ。
なんだか段々気にするだけ無駄なような気がしてきた。
そう考えると、やはり自分と付き合っていた時の方がおかしな状況だったのだろう。
「…そんなにあいつは派手だったのか?」
ロイドが不思議そうに言ってくるのでシリィとリーネは深く頷き肯定する。
「…まあそれでも昔ほどじゃなかったんじゃないか?あいつとは長い付き合いだが、凄い時は一日5人の女と寝ていたぞ?」
出会ってものの数分で口説いて物陰に連れ込んですぐに体の関係を持つなんて、それこそ山のようにやっていた時期がある。
クレイも何度か目にしたことがあって、その度に居た堪れない気持ちで逃げ出したものだ。
「あいつの百戦錬磨は伊達じゃない」
「……そんなに女に不自由しないならクレイは私に譲ってほしいものだな」
呆れたようにため息を吐くロイドにシリィも同感だと言葉を重ねる。
「そうよね。私もそう思うわ。あんな人やめておけばいいのよ。クレイがロックウェル様にベタ惚れじゃなかったら私が恋人に立候補したいくらいだわ」
「ロックウェルと別れたらクレイは私と付き合う予定だが?」
「あら、私だってクレイとなら結婚まで考えてもいいわ」
シリィとロイドに加えてリーネまで参戦して言いたい放題だ。
「大体あのロックウェル様がクレイ一筋なんて、最初に聞いた時は信じられなかったもの」
リーネがつまみと共に酒を傾け始める。
「それは私もよ。振る時は優しく振ってあげてくださいって言ったら物凄く睨まれたけど、これまでのことから考えるに仕方がないと思うのよね」
シリィももぐもぐと口を動かしながらそっと果実水を手に取った。
どうやら夕餉兼酒盛りがこの部屋で開催されるようだ。
「クレイはあいつのセフレじゃなく恋人なんだろう?」
ロイドも酒を飲みながらそっとクレイへと尋ねてくる。
「ああ。セフレにはなりたくないから最初は断ったんだ。そしたら恋人だって言ってくれて…」
それからずっと自分だけを見てくれていたのにとクレイは思わずまた落ち込んでしまった。
そんなクレイにロイドがそっと酒を勧めてくれる。
「飲むか?」
「悪いな…。胃が痛いから少しだけにさせてくれ」
思わずそう言うと、すぐさまシリィが回復魔法を掛けてくれた。
「クレイ!辛い症状が出たら私が全部癒してあげるからちゃんと言ってちょうだい!」
「…ありがとう。シリィはいつも優しいな」
「えぇっ?!そ、そんなことないわよ…?!」
「いや。シリィは割と最初の頃から俺に優しかっただろう?本当に感謝している」
そんな言葉にシリィが真っ赤になって俯いてしまう。
「そ、そうだったかしら?」
「ああ。そう言えばロックウェルに最初にヤラれた時も助けてもらったな。あの時は本当に助かったんだ」
初めてだったのにこれでもかという程激しくヤラれたんだとグイッと酒を煽ったクレイに、リーネが驚きに目を見開いた。
「嘘…あのロックウェル様が?」
「嘘じゃない。あの時は熱まで出て動くのもやっとで逃げられないし、ゆっくり部屋を抜け出したところでシリィがちょうどやって来て、回復魔法を掛けてくれたから逃げられたんだ」
「え?嘘っ!あの時?!」
まさかそんな事情だったとは思ってもみなかったとシリィもそれには言葉を失ってしまう。
「あいつは男に対する時と女に対する時で態度が違うんじゃないかと思ったくらいだ」
最初からドSだったと言って酒を煽るクレイに、三人はため息を吐く。
それならどうして付き合うことになったのだろう?
そこが不思議でならない。
「やっぱり以前言っていたようにお前的には身体の相性か?」
ロイドがそっと酒を勧めながらクレイへと尋ねてくるが、クレイはフルリと首を振る。
「前はそうかなと思ったんだが、ちょっと違うなと思い直した」
「へぇ?じゃあお前はロックウェルのどこが好きになったんだ?」
興味があると言ってロイドが楽しげに尋ねてきたので、クレイは暫し考えてどこか自嘲するように笑った。
「…………俺の事が好きすぎて、ドSになるところ」
思えば最初からロックウェルは自分の事を真っ直ぐに見てくれていた。
そもそも遊びの女に酷いことをするような男ではない。
もちろん付き合ってきた相手にも同様だ。
恋人にも部下にも誰にでも優しいロックウェル。
そんなロックウェルが何故か自分に対してだけあんな態度を取ってきたのは衝撃的だった。
けれどあの時はきっと逃げられたくなくて必死だっただけなのだろう。
そんな風に思い至って、なんだか愛されていると感じてたまらなく嬉しかった。
だからそう言ったのに────。
「……ドSが好きなの?」
シリィから悲しげにそんな風に言われてしまって驚いた。
そんなつもりはなかったのだが…。
「いや、別にドSが好きな訳じゃない。あいつは普段部下思いの優しい奴だろう?」
「え?ええ。まあそうね」
シリィが戸惑うように肯定するのを満足げに見遣り、クレイはそのまま言葉を続けていく。
「そんな奴が俺に関してだけは嫉妬に狂ってドSになるんだ。だから愛されてるなと思ってたまらなくなる」
けれどそれはシリィには理解不能だったようで────。
「…クレイ。歪んでるわよ?」
そんな風に言われてしまった。
「そこはほら、ロックウェル様の大きな愛で包み込まれて幸せ♡とかそういうんじゃないの?」
シリィが突っ込みを入れるように言ってくるが、自分にはそれイコール、ドSだったのだが…。
(ああ、そうか……)
何となくシリィが言わんとしていることがわかったのでわかりやすく答えてやることにする。
「シリィが言いたいのは優しい言葉と態度と言うことか?確かに言われれば嬉しくもあるが、俺はそんなものに然程興味はないな」
あいつは誰にでも甘い言葉を囁いているだろうしと言ってやるとどうやら納得がいったようだった。
「う…それは確かにそうかもしれないけど…」
「いいんだ。俺はロックウェルが愛してくれて幸せだったんだから」
わかってもらえなくても構わないと言ってグラスを傾けるクレイにリーネがため息を吐く。
「なるほどね。御馳走様」
「…本気で妬けるな」
そんなにクレイの心を占めているなんてと悔しそうにロイドが酒を煽った。
「まあいい。取りあえずまずはどう正気に返すかだな」
これ以上惚気は聞かないとばかりにロイドはあっさりと話を切り替え、その言葉を口にする。
「私としては嫉妬を煽るのが一番手っ取り早いと思うんだが?」
確かにロックウェルの嫉妬は尋常ではなかった。
それは一番効果が出そうな気がする。
「でも今はあの姫に夢中なんじゃないかしら?」
洗脳されていたら当然そうなって然るべきではないだろうかとシリィが言うが、それに対してリーネはそうとも限らないんじゃないかと言ってきた。
「記憶操作もそうだけど、心まではそうそう簡単に操れないわよ?」
嗜好や思考を変える等は比較的簡単だが、想いが強ければ強いほどその心を変えるのは容易にはいかないものだ。
それは黒魔道士の元にやってくる仕事の中で多々出会って痛感した事実。
本命がいる相手には記憶操作は難しい────。
だからこそ嫉妬を煽れば元通りとまではいかなくても戻ってきてくれる可能性は高いのではないだろうか?
「それこそお前があの姫から寝取ってしまうのもありかもしれないぞ?」
ロイドが名案だとばかりに口にしたが、それに対してクレイはそれは嫌だと言い出した。
「悪いがお断りだ」
「何故だ?」
「俺は『恋人のロックウェル』とは寝るが『友人のロックウェル』と寝る気はない」
「…?同じだろう?」
ロックウェルはロックウェルではないのだろうか?
けれどクレイは嫌だの一点張りだ。
「全然違う。絶対嫌だ」
クレイが強く断言してまたグイッと酒を煽ったので三人は戸惑いを隠せなかった。
どうしてそんなに拘るのだろう?
「クレイ…?」
シリィが気遣わしげに声を掛けるとクレイの瞳がうるりと潤む。
「あいつが言ったんだ。『恋人』の自分以外と寝るなって。だから俺は絶対に『友人』とは寝ない!」
そんなクレイにロイドがなるほどなと納得したように頷いた。
「そう言うことなら今のあいつは私と同列と言うことか」
「…そうだ」
フイッと横を向いたクレイにロイドがどこか嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「わかった。それならそれで別の案でも考えるか。明日様子を見て考えてもいいしな」
「…ロイド」
「今日は一先ずお前の気晴らしでもしてやるとしよう。もしよかったらこれから以前言っていたカードゲームでもしないか?」
「え?」
「例の罰ゲーム…やってくれるんだろう?」
「……お前はこんな時に」
「こんな時だからこそスリリングで楽しいんじゃないか。その方が気も紛れるだろう?」
そう言ってカードを取り出したロイドにクレイがクスリと笑う。
「まあいいか。確かに遊んでいる内に気も紛れるかもしれない」
そんな二人のやり取りを聞いてリーネが何のことだと尋ねてきた。
「クレイとスリリングな罰ゲーム付きカードゲームをしようとこの間話したところでな」
そしてサラサラと紙にそれを書きこんでいく。
「魔力交流、手淫、口淫?」
勝者は敗者にこれを求めることができる────ロイドは笑いながらそう言った。
「これなら浮気には当たらないだろう?」
けれどそれを目にしてリーネは目が点になり、シリィに至っては顔を真っ赤にして叫びを上げる有様だった。
「なっ…なななななっ…!!何を言い出すのよ────!!」
「ああ、二人でするから別にお前達は帰ってくれていいぞ?」
ロイドが妖しく笑いながらそんな風に言ってくるのでシリィは冗談ではないと慌てて止めに入る。
二人でやったらそのままの流れでクレイが手籠めにされるのは必然ではないか。
そんなことを見過ごせるはずがない。
それはリーネも同感だったのか、ゲームには自分も加わると言い出した。
「その罰ゲームは一人三枚好きに書けることにしない?」
それなら12枚の紙をくじ引きで引けばいいからと提案してくる。
「別に構わないぞ?」
「面白そうだな」
ロイドとクレイはあっさり承諾するが、シリィとしてはロイドのくじに当たったらと思うと気が気でなかった。
「シリィ、無理に参加しなくてもいいぞ?」
「そうよ。自室に帰ったらいいわ」
そう言ってリーネが早速と言うように楽しげに罰ゲームを書き始める。
「何にしようかしら…。ああ、敗者は勝者達からキスマークをつけてもらうって言うのでも構わないかしら?」
「実に楽しいな」
「そうよね♪あとは勝者は敗者を全力で口説く!と、押し倒してキス!これで決まりね♡」
これならいいでしょうと笑うリーネにクレイも楽しげに笑った。
「遊びだしそれくらいがいいかもな」
「絶対クレイに口説かれたいわ♡」
「同感だな」
ロイドもノリノリだ。
そんな二人にシリィはダラダラと背中に汗をかく。
(絶対にこんな二人の所にクレイを置いておけないわ…!)
下手をしたら三人で乱れまくって大変なことになってしまうかもしれない。
今のクレイはどこか自暴自棄な気がして心配だ。
(え~い!女は度胸よ!)
自分がクレイを守らなければという使命感が湧き始め、シリィはキュッと唇を噛むと自分も参加する!と声を上げた。
「私も参加するわ!」
「そうこなくっちゃ」
「シリィの罰ゲームか…楽しみだな」
ロイドがクッと笑ってくるので何かぎゃふんと言わせる罰ゲームはないものかとグルグル考える。
「罰ゲームよね?」
「ああ」
「何でもいいのね?」
「勿論」
じゃあこれよと言ってシリィは勢いよく書き始めた。
「敗者は勝者にぶたれる?」
「敗者は勝者に贈り物を用意する?」
「敗者は嫌いな相手にキスをしに行く…ねぇ」
これが精一杯の罰ゲームだと言うシリィに可愛いなと思いながら三人はそっと微笑みを浮かべた。
どれもシリィらしいと言えばシリィらしい控えめな罰だ。
「俺も書いたぞ」
三者の案を読んだ後でクレイも楽しげにその札を見せる。
「勝者は敗者を使って魔法のお試しをする!こんな魔法があったら楽しいと言う提案をする!そして最後は…勝者は敗者に魔法で悪戯をするだ!」
これならシリィも楽しいだろう?とクレイが言うとシリィもそれはいいわねと楽しげに顔を輝かせて同意したが、残りの二人はそっとほくそ笑んだ。
(クレイ…やってくれるわね。魔法のお試し…何にしようかしら?)
(これは拘束魔法で縛って悪戯してもいいと言うことか…?是非とも責め立ててみたいな)
さすがドSに調教されてきただけのことはある。
美味しすぎて笑いが止まらない────。
「実に楽しそうだな」
「そうね。楽しみだわ」
そう言って賛同した面々にクレイはにこやかに宣言した。
「じゃあ今日から三日間、これで楽しもう」
「…え?」
一回ではないのかと呆けたシリィをよそに、三人は喜び勇んでカードを配り始めたのだった。
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