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第一部 アストラス編~王の落胤~
113.作戦開始
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「おはよう。ロイド」
ロイドは目覚めてすぐにクレイの声がすぐ傍から聞こえて慌てて飛び起きた。
「クレイ」
そう言えば一緒に寝たんだったと思いだし、そっと至福の時を味わう。
「おはよう。気分はどうだ?」
「悪くはない」
「そうか。魔力交流をしても?」
「ああ、別にいいぞ?」
そんな言葉と共にすぐに封印を解いて交流してくれるクレイに嬉しさが込み上げてくる。
「んんっ…」
本当に最高の朝だとうっとり浸っているとそこへ勢いよくリーネとシリィが乱入してきた。
「ロイド!朝から抜け駆けは許さないわよ!」
「煩いな。クレイとの魔力交流は私の特権だ。邪魔をするな」
「ずるいわ!クレイ!私にも後でしてちょうだい!」
「え?いや……」
「え?ダメなの?」
「…別にいいんだが、この後ロイドにちょっとお願いがあったからまた今度にしてもらえると助かる」
そんな言葉にロイドは首を傾げた。
一体どういうことだろう?
「私にはできないことなの?」
リーネも訝しげに言ってきたので、クレイは言い難そうにこちらを見つめ口を開いた。
「いや…実は昨日魔力が暴走しそうになっただろう?それでちょっとまだ不安定みたいだから、封印した状態で魔力の乱れを整えてもらえないかと思って…」
それが無理ならずっと紫の瞳でいないといけないから困るのだとクレイは言う。
流石に各国の魔道士達が集まる場でそんなことをする気はないらしい。
そうなったらそれだけで騒ぎになってしまうのは必至だからだ。
「そう言うことなら大歓迎だ。任せておけ」
ここに居るメンバーの中でクレイの魔力を整えてやれるのは魔力の高い自分だけだ。
「私がお前を癒してやる」
そんな自分にリーネが悔しそうに唇を噛むがこればかりは仕方がないだろう。
思わず優越感たっぷりにそちらへと視線を向けてしまった。
「クレイ!ロイドとばかりイチャイチャしないで私とも後で遊んでちょうだい!」
そんな自分に対抗意識を燃やしてリーネが言うが、クレイは全くその言葉の意味をわかっていないようだ。
「…?別にイチャイチャはしていないが?」
心底不思議そうに首を傾げているクレイが面白くて仕方がない。
これにはシリィも呆れたようで思わずと言うように口を挟んできた。
「クレイ…。昨日も思ったけど、正直ロックウェル様と一緒の時よりもロイドと一緒の時の方が恋人っぽいわよ?」
「…?さすがにそれはないだろう」
「大有りよ。だってロイドっていつだってクレイを口説きまくってるじゃない」
「?そんなことはないぞ?こいつとはただのじゃれあいだし他意はない」
そんな風に思っているのはクレイだけだと思わず笑いたくなって、ロイドはそのまま二人の前でクレイを押し倒す。
「お望みなら今すぐ口説いてやろうか?」
ここまでしてもクレイはただのじゃれ合いとしか認識しないのだから、隙だらけとしか言いようがない。
「ロイド…。重いだろう?さっさとどけ」
「つれないな、クレイ。一緒に寄り添いながら寝た仲なのに」
「それはお前が抱き締めてくるからだろう?」
「そうだな。違いない」
こんな言葉のやり取りだけでも勘違いを招くとわかっていないクレイが可愛すぎる。
今日ロックウェルの前でも口にしてやろうか?
もしかしたら上手く嫉妬心を煽ってやれるかもしれない。
そんな風に楽しげにしていると、クレイが腕の中でクッと楽しげに笑った。
「また何か企んでいるだろう?」
「わかるか?」
「わかるに決まっている。お前のことだからどうせ今日の件だろう?」
「ばれたか」
そう言って体を起こすとそのままクレイを引き上げ軽く口づけを落とす。
「ロックウェルの嫉妬を煽るのが今から楽しみだ」
「お前は本当にいい性格をしているな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
そうして二人で寝台を降りて、まるで何もなかったかのようにまた魔力交流をし始めたので、そこにいたリーネとシリィは何も口を挟むことができなかった。
(どれだけラブラブなのよ!)
二人に何もなかったことは自分達が一番よくわかっているが、いちいち言動が誤解を招くものばかり。
これはロックウェルがやきもきしていたのもよくわかる。
友人の領域を大きく超えている。
「ほら、クレイ。私はもう満足させてもらったし、そろそろ瞳を封印しろ」
「ああ」
そう言って目の前でクレイがその瞳を封印し直しそっとロイドへと向き直る。
「乱れるお前の相手も悪くはないが、いつものお前の方が好きだからな」
「いちいち誤解を招く言い方をするな」
『そこは封印した自分との魔力交流より紫の瞳との魔力交流の方が好きだと素直に言え』と言うクレイにロイドが笑った。
「この方が意味深で楽しいだろう?」
「そう言うところがロックウェルを怒らせるんだろう?」
「誤解する方が悪い」
そして甘く口づけゆっくりとクレイの乱れた魔力を整えていく。
「んっ…んんっ…」
うっとりとした眼差しでロイドを見つめるクレイを見ると、シリィの胸がドキッと跳ねた。
こうやって見ると本当に二人は恋人同士そのものだ。
「うぅ…男の人にばっかり負ける自分が悔しい…!」
思わず瞳を潤ませる自分にリーネがポンと肩を叩いてくる。
「たまたまよ!私達には女の武器もあるわ」
「リーネ…」
何故かここに来て仲良くしてくれる気になったらしいリーネにシリィも励まされるのを感じた。
「そうよね!いっそロイドの業でも盗んで、私もクレイに迫ってロックウェル様をやきもきさせてみようかしら」
「その意気よ!」
そんな二人にクレイが吹き出した。
「はっ…はははっ!」
「クレイ…」
「だって面白いじゃないか!シリィ…ロイドを見習うと誑しスキルが上がってしまうぞ?」
「の、望むところよ!」
自分にもできると気合いを入れるシリィに、クレイが楽しそうに近づいてスッと顎を持ち上げる。
「シリィはそのままが一番可愛い。無理をするな」
「な、えぇっ?!」
狼狽えるシリィにクレイが更に薄く笑って言葉を重ねる。
「俺は癒し系のシリィが好きだから、ロイドみたいにはなって欲しくないな」
ボフッ!!
クレイの言葉に頭から湯気が出そうになりながら、シリィはその場にしゃがみ込んだ。
(うぅ…なんて罪作りな人なの?!)
クレイの事は大好きだが、これを間に受ける訳にはいかない。
「クレイ…心臓が破裂しそう…」
「?」
「…クレイがそう言うなら私は私らしくいるわ」
辛うじてそう答えると、クレイが花のように笑ってくれた。
心を許した相手にだけ向ける、クレイのこの優しい笑顔が好きでしようがない。
そんな自分にロイドがため息をついた。
「クレイは本当に天然だな。私のこともそんな風に口説いて欲しいものだ」
「どうやったらそんな話になるんだ?そんなことより昨日の罰ゲームも忘れるなよ?」
その言葉にやはり先程の言葉に他意はなかったとガックリ肩を落とす。
けれど落ち込んでばかりもいられない。
何にせよクレイから好意は寄せられているのだから、ロイドに負けないように自分も頑張ればいいのだ。
万が一ロックウェルを取り戻せなかった場合は自分がクレイを癒してあげよう。
そう心に誓って、シリィは対策を話し合う為にロイド達に向き直った。
「取りあえず食事にして広間に行きましょう。ロックウェル様の様子も確認したいし」
「そうだな。嫉妬を煽るのは私が上手くやってみる。シリィとリーネはクレイについていてやってくれないか?」
「いいの?」
ロイドの方こそクレイの傍に居たいのではないかとシリィは言うが、ロイドはその問いにフッと笑った。
「あの王族達が相手だぞ?相手の出方だけを待っていたらロックウェルを取り戻すことなど不可能だ」
そのためには攻める必要がある。
ただそれをするにはシリィ達には荷が重いから自分が引き受けるのだとロイドは言った。
「精々成果を楽しみにしているといい」
「…ものすっごく楽しそうね、ロイド」
「本当に頼もしい限りだな」
「褒め言葉は有難く受け取っておく」
そんな三人にシリィはドキドキと胸を弾ませるばかりだ。
(だ、大丈夫かしら?)
普段ロックウェルとばかり行動しているため、黒魔道士達のやり取りは刺激的すぎてついて行けない。
一体何が起こるのかとやや不安になりながら、兎に角丸く事が治まりますようにと願った。
***
「ロックウェル様」
「姫」
「嫌ですわ。是非フローリアとお呼びくださいませ」
そっと寄り添う自分をロックウェルが優しく受け止め包み込む。
「昨夜はよく眠れましたか?」
「ええ。お陰様で」
「それは良かった。何か不自由があれば何でも言って下さい」
「助かりますわ」
そんな風に言ってくれるロックウェルにうっとりと見惚れながら、フローリアはロックウェルと共に歩き出した。
銀の髪がキラキラと朝陽を浴び光り輝いて、その綺麗な顔をより一層魅力的に輝かせる。
(なんて素敵なのかしら…)
こんなに素敵なのにどうして男などと付き合っていたのかと不思議で仕方がなかった。
確かに相手も綺麗な男ではあるのだが、黒魔道士と言う時点で理解ができない。
(大体黒魔道士は性格が悪いし、貞操観念がおかしい者が多いと聞くわ。どうせロックウェル様とも遊びだったに違いないわ)
それなら自分が奪い取っても問題は何一つないはずだ。
フローリアの頭の中にはこれからのロックウェルとの甘い生活が渦巻いていた。
(早く結婚して毎日この腕の中で幸せに過ごしたいわ…)
ロックウェルの為ならトルテッティを出てアストラスで暮らしても全然構わない。
アストラス王はロックウェルが国を出るのが問題だと言っていた。
そう言うことなら父王を説得してこの国に嫁ぐことができれば何の問題もないだろう。
「ロックウェル様…。私と結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか?」
断られるわけがないと、思い切ってそう口にしてみると、ロックウェルが艶やかに笑いながらサラリと答えを返した。
「姫…そう言うお話はもっと私が貴女のことを深く知った時にお聞かせいただければと思います」
「え…?」
「勿体ないではありませんか。まだ二人の時間は始まったばかりでしょう?」
そんな言葉と共に甘い口づけがそっと落ちてくる。
「私が姫を深く愛した時に…お受けできればと思うのですが?」
甘やかに微笑まれそんな風に言われると腰が抜けそうなほど身が火照るのを感じた。
「は…はい」
そんなフローリアの手をロックウェルがそっと優雅な手つきで手に取り、ゆっくりと広間へと誘導する。
「では、本日も姫にとって有意義な一日となりますように」
そんな二人の様子を遠目に見てしまい、シリィはげっそりとした顔をしながらそっとクレイの方へと視線を向けた。
(大丈夫かしら?)
落ち込んでいないかなと窺ったのだが、何故かクレイはあんなロックウェルに楽しげな笑みを浮かべていた。
「クレイ?」
「…ああ、大丈夫だ。今のを見て安心しただけだから」
「え?」
「シリィも知っているだろう?あれは本来のロックウェルだ」
それはわかっているが、それを見て落ち込まないのが不思議で仕方がなかった。
それはリーネも同感だったようで、不思議そうに口を開く。
「クレイ…。目の前で恋人が他の女性を甘く口説いていても平気なの?」
けれどクレイは再度平気だと答えた。
「別に何でもない。あいつが友人だった頃に見慣れているし、結婚を迫られてサラッと躱すのもよく見たからな」
あれが普通だとクレイはホッとしたように断言してくる。
「基準がおかしいわよ?クレイ」
「そうか?俺の恋人のロックウェルはあんな感じじゃないからな。寧ろ今のを見ると安心しかしなかったが?」
ここで自分に向けるような熱い眼差しやドSな表情をあの姫に向けていたらショック倍増だったが、あれなら全然平気だとクレイは踵を返した。
「ほら、ロイドが先に広間で待っているぞ?」
「あ、待ってちょうだい!」
リーネとシリィは慌ててクレイの後を追う。
元気になってきたのは良かったが、どうロックウェルを取り戻すのか…それが問題だ。
「ロイド!」
「クレイ」
来たなと笑顔で迎えてくれたロイドに笑顔で応える。
「どうだ?ハインツやショーンと接触できたか?」
「ああ。事情は話しておいた。一先ず陛下にもショーンの方から話は通しておいてくれるらしいから心配はいらないだろう」
「…それはどうかな」
あの王は今一頼りにならないからとため息を吐くクレイにロイドはクスリと笑った。
「そう言ってやるな。ショーンの話だと、昨日ロックウェルと姫の婚姻は認めないと言ってくれたらしいぞ?」
事情を何も知らなくともそうやってクレイとロックウェルの仲を認めてくれているのだから、少しは歩み寄ればいいのにと楽しげに口にする。
「まあ私としてはロックウェルなんてどこに行ってくれようと構わないが…」
「お前は本当にロックウェルが嫌いだな」
「当然だろう?恋敵を好きな奴なんていない」
「まあそうだな。俺だってあの姫は嫌いだ」
そうやって軽口を叩いて皆でそっとロックウェルの方へと視線を向けた。
「どう思う?」
「誑しだな」
クレイの問いかけにロイドはあっさりと答えるが、クレイは憮然としてしまった。
「そういう意味じゃない」
「クッ…わかっている。どうも何も、今は姫一筋という感じで他に目は向いていなさそうだな」
「……」
「自分で聞いたくせにそう落ち込むな。私はあんな姫よりもお前の方が魅力的だと思っているぞ?」
まるで口説くようにスイッと顔を近づけるロイドにクレイはそっとため息を吐き、からかうなと短く告げる。
「取りあえず最初は目立たないよう他の魔道士達と交流していてくれ。ロックウェル達が近くにいる時に嫉妬を煽るように絡んでやるから」
「…そうか」
どうやら今日のところはそれで動くことになったようだ。
「できればお前にも積極的になってほしいが、難しいか?」
ロイドからそう尋ねられ、どういう意味だとクレイは首を傾げたが、そのままの意味だとロイドは言う。
「私を口説けとは言わないが、嫉妬を煽るためにも思わせぶりな態度くらいは取ってもらいたいと思ってな」
「ああ、なるほど。それくらい別に構わないぞ?」
そんな言葉にシリィが驚きに目を見開いた。
「え?クレイ。いつもの態度じゃダメなの?」
それでも十分効果的なのではないかと言ってみるが、クレイはそれに対して首を傾げてしまう。
「俺はいつもはそんな態度はとってないだろう?思わせぶりって言うのはこういうのだぞ?」
そう言うや否や、クレイはそっとロイドへと寄り添うように肩に手を置き、そのまま耳元でクスリと微笑んだ。
「何それ!私にもしてほしいわ!」
リーネが嬉々として言うとクレイはそっと身を離してそっとリーネの腰を浚った。
「リーネならこっちだろう?」
グイッと引き寄せクイッと顎を上げ甘やかに視線を絡ませてくるクレイにリーネは嬉しそうに笑う。
「クレイ…やっぱり貴方とまた遊びたいわ」
「嬉しい誘いだな。リーネは好みのタイプだから誘われると断り辛い」
そう言いながら髪を一房手に取り弄ぶ。
「今日も俺が送った香水をつけてくれているんだろう?」
「わかる?あれから愛用してるのよ」
「…よく似合っている。そう言えばあのペンの礼も十分じゃなかったな。今度服でも贈らせてくれないか?」
「いいわよ。クレイが脱がしたくなる服を贈ってもらえたら嬉しいわ♡」
そんなやり取りにシリィは思わず真っ赤になってしまう。
こんな会話を聞いてロイドは平気なのだろうかとそっと視線をやるが、ロイドは思いがけず涼しい顔をしていた。
クレイの事が好きなはずなのに平気なのだろうか?
シリィにはロイドが今一つ良くわからない。
「クレイ。どちらと絡むのでもいいが、シリィだけはからかうなよ?」
「わかっている。シリィは純情だからな。こんな遊びに巻き込みたくはない」
どうやらクレイ的には遊び感覚のようだった。
それを受けてやっと納得がいった。
ロイドが涼しい顔をしていたのは、コレ自体が黒魔道士の遊びだからなのだ。
きっと彼らにとってはよくあることなのだろう。
(うぅう…刺激的すぎてついて行けない…)
なんだかクレイの裏の顔を知ってしまった気がする。
そんな自分にクレイが心配そうに顔を覗きこんできた。
「シリィ、大丈夫か?無理に俺達に合わせる必要はないから、居辛かったらショーンやハインツの所に行ってもいいからな?」
(クレイ…優しい)
やはり黒魔道士なのにクレイは優しい。
そして自分は自分を気に掛けてくれるそんなクレイが大好きだ。
ここはロイドやリーネに負けないよう自分もアピールしていきたい。
ロックウェルがクレイを傷つけるなら自分がクレイを癒してあげたい。
そこだけは白魔道士である自分の強みのような気がした。
「クレイ、大丈夫よ!私、ロイドとリーネと三人でクレイを守る会を結成するわ!」
「え?」
「クレイが元気になるようにみんなで協力して、絶対に元気にしてあげる!」
だから逃げたりなんかしないと力強く言った自分にクレイがふわりと微笑んだ。
「ありがとう」
そんなクレイに一気に顔が熱くなる。
「もうっ!クレイの罪作り!」
「?」
「クレイの笑顔に弱いんだから、これ以上好きにさせないで!」
馬鹿馬鹿っ!と胸を叩いてやるがクレイは不思議そうにしながらも楽しげに笑ってきた。
こんな笑顔は非常に珍しい。
「シリィは本当に可愛いな」
どうやらクレイにじゃれ合いのように思われてしまったらしいが、今笑えるだけの元気が出るのはいいことだ。
「もうもうっ!クレイの意地悪!」
「ははっ…!」
そんな自分達にロイド達もため息を吐く。
「本当に仲良しね」
「意外とシリィはダークホースだな」
そうやってじゃれ合う面々をロックウェルが遠目に見ているとは知らず、四人は交流会へとゆっくりと紛れていった。
ロイドは目覚めてすぐにクレイの声がすぐ傍から聞こえて慌てて飛び起きた。
「クレイ」
そう言えば一緒に寝たんだったと思いだし、そっと至福の時を味わう。
「おはよう。気分はどうだ?」
「悪くはない」
「そうか。魔力交流をしても?」
「ああ、別にいいぞ?」
そんな言葉と共にすぐに封印を解いて交流してくれるクレイに嬉しさが込み上げてくる。
「んんっ…」
本当に最高の朝だとうっとり浸っているとそこへ勢いよくリーネとシリィが乱入してきた。
「ロイド!朝から抜け駆けは許さないわよ!」
「煩いな。クレイとの魔力交流は私の特権だ。邪魔をするな」
「ずるいわ!クレイ!私にも後でしてちょうだい!」
「え?いや……」
「え?ダメなの?」
「…別にいいんだが、この後ロイドにちょっとお願いがあったからまた今度にしてもらえると助かる」
そんな言葉にロイドは首を傾げた。
一体どういうことだろう?
「私にはできないことなの?」
リーネも訝しげに言ってきたので、クレイは言い難そうにこちらを見つめ口を開いた。
「いや…実は昨日魔力が暴走しそうになっただろう?それでちょっとまだ不安定みたいだから、封印した状態で魔力の乱れを整えてもらえないかと思って…」
それが無理ならずっと紫の瞳でいないといけないから困るのだとクレイは言う。
流石に各国の魔道士達が集まる場でそんなことをする気はないらしい。
そうなったらそれだけで騒ぎになってしまうのは必至だからだ。
「そう言うことなら大歓迎だ。任せておけ」
ここに居るメンバーの中でクレイの魔力を整えてやれるのは魔力の高い自分だけだ。
「私がお前を癒してやる」
そんな自分にリーネが悔しそうに唇を噛むがこればかりは仕方がないだろう。
思わず優越感たっぷりにそちらへと視線を向けてしまった。
「クレイ!ロイドとばかりイチャイチャしないで私とも後で遊んでちょうだい!」
そんな自分に対抗意識を燃やしてリーネが言うが、クレイは全くその言葉の意味をわかっていないようだ。
「…?別にイチャイチャはしていないが?」
心底不思議そうに首を傾げているクレイが面白くて仕方がない。
これにはシリィも呆れたようで思わずと言うように口を挟んできた。
「クレイ…。昨日も思ったけど、正直ロックウェル様と一緒の時よりもロイドと一緒の時の方が恋人っぽいわよ?」
「…?さすがにそれはないだろう」
「大有りよ。だってロイドっていつだってクレイを口説きまくってるじゃない」
「?そんなことはないぞ?こいつとはただのじゃれあいだし他意はない」
そんな風に思っているのはクレイだけだと思わず笑いたくなって、ロイドはそのまま二人の前でクレイを押し倒す。
「お望みなら今すぐ口説いてやろうか?」
ここまでしてもクレイはただのじゃれ合いとしか認識しないのだから、隙だらけとしか言いようがない。
「ロイド…。重いだろう?さっさとどけ」
「つれないな、クレイ。一緒に寄り添いながら寝た仲なのに」
「それはお前が抱き締めてくるからだろう?」
「そうだな。違いない」
こんな言葉のやり取りだけでも勘違いを招くとわかっていないクレイが可愛すぎる。
今日ロックウェルの前でも口にしてやろうか?
もしかしたら上手く嫉妬心を煽ってやれるかもしれない。
そんな風に楽しげにしていると、クレイが腕の中でクッと楽しげに笑った。
「また何か企んでいるだろう?」
「わかるか?」
「わかるに決まっている。お前のことだからどうせ今日の件だろう?」
「ばれたか」
そう言って体を起こすとそのままクレイを引き上げ軽く口づけを落とす。
「ロックウェルの嫉妬を煽るのが今から楽しみだ」
「お前は本当にいい性格をしているな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
そうして二人で寝台を降りて、まるで何もなかったかのようにまた魔力交流をし始めたので、そこにいたリーネとシリィは何も口を挟むことができなかった。
(どれだけラブラブなのよ!)
二人に何もなかったことは自分達が一番よくわかっているが、いちいち言動が誤解を招くものばかり。
これはロックウェルがやきもきしていたのもよくわかる。
友人の領域を大きく超えている。
「ほら、クレイ。私はもう満足させてもらったし、そろそろ瞳を封印しろ」
「ああ」
そう言って目の前でクレイがその瞳を封印し直しそっとロイドへと向き直る。
「乱れるお前の相手も悪くはないが、いつものお前の方が好きだからな」
「いちいち誤解を招く言い方をするな」
『そこは封印した自分との魔力交流より紫の瞳との魔力交流の方が好きだと素直に言え』と言うクレイにロイドが笑った。
「この方が意味深で楽しいだろう?」
「そう言うところがロックウェルを怒らせるんだろう?」
「誤解する方が悪い」
そして甘く口づけゆっくりとクレイの乱れた魔力を整えていく。
「んっ…んんっ…」
うっとりとした眼差しでロイドを見つめるクレイを見ると、シリィの胸がドキッと跳ねた。
こうやって見ると本当に二人は恋人同士そのものだ。
「うぅ…男の人にばっかり負ける自分が悔しい…!」
思わず瞳を潤ませる自分にリーネがポンと肩を叩いてくる。
「たまたまよ!私達には女の武器もあるわ」
「リーネ…」
何故かここに来て仲良くしてくれる気になったらしいリーネにシリィも励まされるのを感じた。
「そうよね!いっそロイドの業でも盗んで、私もクレイに迫ってロックウェル様をやきもきさせてみようかしら」
「その意気よ!」
そんな二人にクレイが吹き出した。
「はっ…はははっ!」
「クレイ…」
「だって面白いじゃないか!シリィ…ロイドを見習うと誑しスキルが上がってしまうぞ?」
「の、望むところよ!」
自分にもできると気合いを入れるシリィに、クレイが楽しそうに近づいてスッと顎を持ち上げる。
「シリィはそのままが一番可愛い。無理をするな」
「な、えぇっ?!」
狼狽えるシリィにクレイが更に薄く笑って言葉を重ねる。
「俺は癒し系のシリィが好きだから、ロイドみたいにはなって欲しくないな」
ボフッ!!
クレイの言葉に頭から湯気が出そうになりながら、シリィはその場にしゃがみ込んだ。
(うぅ…なんて罪作りな人なの?!)
クレイの事は大好きだが、これを間に受ける訳にはいかない。
「クレイ…心臓が破裂しそう…」
「?」
「…クレイがそう言うなら私は私らしくいるわ」
辛うじてそう答えると、クレイが花のように笑ってくれた。
心を許した相手にだけ向ける、クレイのこの優しい笑顔が好きでしようがない。
そんな自分にロイドがため息をついた。
「クレイは本当に天然だな。私のこともそんな風に口説いて欲しいものだ」
「どうやったらそんな話になるんだ?そんなことより昨日の罰ゲームも忘れるなよ?」
その言葉にやはり先程の言葉に他意はなかったとガックリ肩を落とす。
けれど落ち込んでばかりもいられない。
何にせよクレイから好意は寄せられているのだから、ロイドに負けないように自分も頑張ればいいのだ。
万が一ロックウェルを取り戻せなかった場合は自分がクレイを癒してあげよう。
そう心に誓って、シリィは対策を話し合う為にロイド達に向き直った。
「取りあえず食事にして広間に行きましょう。ロックウェル様の様子も確認したいし」
「そうだな。嫉妬を煽るのは私が上手くやってみる。シリィとリーネはクレイについていてやってくれないか?」
「いいの?」
ロイドの方こそクレイの傍に居たいのではないかとシリィは言うが、ロイドはその問いにフッと笑った。
「あの王族達が相手だぞ?相手の出方だけを待っていたらロックウェルを取り戻すことなど不可能だ」
そのためには攻める必要がある。
ただそれをするにはシリィ達には荷が重いから自分が引き受けるのだとロイドは言った。
「精々成果を楽しみにしているといい」
「…ものすっごく楽しそうね、ロイド」
「本当に頼もしい限りだな」
「褒め言葉は有難く受け取っておく」
そんな三人にシリィはドキドキと胸を弾ませるばかりだ。
(だ、大丈夫かしら?)
普段ロックウェルとばかり行動しているため、黒魔道士達のやり取りは刺激的すぎてついて行けない。
一体何が起こるのかとやや不安になりながら、兎に角丸く事が治まりますようにと願った。
***
「ロックウェル様」
「姫」
「嫌ですわ。是非フローリアとお呼びくださいませ」
そっと寄り添う自分をロックウェルが優しく受け止め包み込む。
「昨夜はよく眠れましたか?」
「ええ。お陰様で」
「それは良かった。何か不自由があれば何でも言って下さい」
「助かりますわ」
そんな風に言ってくれるロックウェルにうっとりと見惚れながら、フローリアはロックウェルと共に歩き出した。
銀の髪がキラキラと朝陽を浴び光り輝いて、その綺麗な顔をより一層魅力的に輝かせる。
(なんて素敵なのかしら…)
こんなに素敵なのにどうして男などと付き合っていたのかと不思議で仕方がなかった。
確かに相手も綺麗な男ではあるのだが、黒魔道士と言う時点で理解ができない。
(大体黒魔道士は性格が悪いし、貞操観念がおかしい者が多いと聞くわ。どうせロックウェル様とも遊びだったに違いないわ)
それなら自分が奪い取っても問題は何一つないはずだ。
フローリアの頭の中にはこれからのロックウェルとの甘い生活が渦巻いていた。
(早く結婚して毎日この腕の中で幸せに過ごしたいわ…)
ロックウェルの為ならトルテッティを出てアストラスで暮らしても全然構わない。
アストラス王はロックウェルが国を出るのが問題だと言っていた。
そう言うことなら父王を説得してこの国に嫁ぐことができれば何の問題もないだろう。
「ロックウェル様…。私と結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか?」
断られるわけがないと、思い切ってそう口にしてみると、ロックウェルが艶やかに笑いながらサラリと答えを返した。
「姫…そう言うお話はもっと私が貴女のことを深く知った時にお聞かせいただければと思います」
「え…?」
「勿体ないではありませんか。まだ二人の時間は始まったばかりでしょう?」
そんな言葉と共に甘い口づけがそっと落ちてくる。
「私が姫を深く愛した時に…お受けできればと思うのですが?」
甘やかに微笑まれそんな風に言われると腰が抜けそうなほど身が火照るのを感じた。
「は…はい」
そんなフローリアの手をロックウェルがそっと優雅な手つきで手に取り、ゆっくりと広間へと誘導する。
「では、本日も姫にとって有意義な一日となりますように」
そんな二人の様子を遠目に見てしまい、シリィはげっそりとした顔をしながらそっとクレイの方へと視線を向けた。
(大丈夫かしら?)
落ち込んでいないかなと窺ったのだが、何故かクレイはあんなロックウェルに楽しげな笑みを浮かべていた。
「クレイ?」
「…ああ、大丈夫だ。今のを見て安心しただけだから」
「え?」
「シリィも知っているだろう?あれは本来のロックウェルだ」
それはわかっているが、それを見て落ち込まないのが不思議で仕方がなかった。
それはリーネも同感だったようで、不思議そうに口を開く。
「クレイ…。目の前で恋人が他の女性を甘く口説いていても平気なの?」
けれどクレイは再度平気だと答えた。
「別に何でもない。あいつが友人だった頃に見慣れているし、結婚を迫られてサラッと躱すのもよく見たからな」
あれが普通だとクレイはホッとしたように断言してくる。
「基準がおかしいわよ?クレイ」
「そうか?俺の恋人のロックウェルはあんな感じじゃないからな。寧ろ今のを見ると安心しかしなかったが?」
ここで自分に向けるような熱い眼差しやドSな表情をあの姫に向けていたらショック倍増だったが、あれなら全然平気だとクレイは踵を返した。
「ほら、ロイドが先に広間で待っているぞ?」
「あ、待ってちょうだい!」
リーネとシリィは慌ててクレイの後を追う。
元気になってきたのは良かったが、どうロックウェルを取り戻すのか…それが問題だ。
「ロイド!」
「クレイ」
来たなと笑顔で迎えてくれたロイドに笑顔で応える。
「どうだ?ハインツやショーンと接触できたか?」
「ああ。事情は話しておいた。一先ず陛下にもショーンの方から話は通しておいてくれるらしいから心配はいらないだろう」
「…それはどうかな」
あの王は今一頼りにならないからとため息を吐くクレイにロイドはクスリと笑った。
「そう言ってやるな。ショーンの話だと、昨日ロックウェルと姫の婚姻は認めないと言ってくれたらしいぞ?」
事情を何も知らなくともそうやってクレイとロックウェルの仲を認めてくれているのだから、少しは歩み寄ればいいのにと楽しげに口にする。
「まあ私としてはロックウェルなんてどこに行ってくれようと構わないが…」
「お前は本当にロックウェルが嫌いだな」
「当然だろう?恋敵を好きな奴なんていない」
「まあそうだな。俺だってあの姫は嫌いだ」
そうやって軽口を叩いて皆でそっとロックウェルの方へと視線を向けた。
「どう思う?」
「誑しだな」
クレイの問いかけにロイドはあっさりと答えるが、クレイは憮然としてしまった。
「そういう意味じゃない」
「クッ…わかっている。どうも何も、今は姫一筋という感じで他に目は向いていなさそうだな」
「……」
「自分で聞いたくせにそう落ち込むな。私はあんな姫よりもお前の方が魅力的だと思っているぞ?」
まるで口説くようにスイッと顔を近づけるロイドにクレイはそっとため息を吐き、からかうなと短く告げる。
「取りあえず最初は目立たないよう他の魔道士達と交流していてくれ。ロックウェル達が近くにいる時に嫉妬を煽るように絡んでやるから」
「…そうか」
どうやら今日のところはそれで動くことになったようだ。
「できればお前にも積極的になってほしいが、難しいか?」
ロイドからそう尋ねられ、どういう意味だとクレイは首を傾げたが、そのままの意味だとロイドは言う。
「私を口説けとは言わないが、嫉妬を煽るためにも思わせぶりな態度くらいは取ってもらいたいと思ってな」
「ああ、なるほど。それくらい別に構わないぞ?」
そんな言葉にシリィが驚きに目を見開いた。
「え?クレイ。いつもの態度じゃダメなの?」
それでも十分効果的なのではないかと言ってみるが、クレイはそれに対して首を傾げてしまう。
「俺はいつもはそんな態度はとってないだろう?思わせぶりって言うのはこういうのだぞ?」
そう言うや否や、クレイはそっとロイドへと寄り添うように肩に手を置き、そのまま耳元でクスリと微笑んだ。
「何それ!私にもしてほしいわ!」
リーネが嬉々として言うとクレイはそっと身を離してそっとリーネの腰を浚った。
「リーネならこっちだろう?」
グイッと引き寄せクイッと顎を上げ甘やかに視線を絡ませてくるクレイにリーネは嬉しそうに笑う。
「クレイ…やっぱり貴方とまた遊びたいわ」
「嬉しい誘いだな。リーネは好みのタイプだから誘われると断り辛い」
そう言いながら髪を一房手に取り弄ぶ。
「今日も俺が送った香水をつけてくれているんだろう?」
「わかる?あれから愛用してるのよ」
「…よく似合っている。そう言えばあのペンの礼も十分じゃなかったな。今度服でも贈らせてくれないか?」
「いいわよ。クレイが脱がしたくなる服を贈ってもらえたら嬉しいわ♡」
そんなやり取りにシリィは思わず真っ赤になってしまう。
こんな会話を聞いてロイドは平気なのだろうかとそっと視線をやるが、ロイドは思いがけず涼しい顔をしていた。
クレイの事が好きなはずなのに平気なのだろうか?
シリィにはロイドが今一つ良くわからない。
「クレイ。どちらと絡むのでもいいが、シリィだけはからかうなよ?」
「わかっている。シリィは純情だからな。こんな遊びに巻き込みたくはない」
どうやらクレイ的には遊び感覚のようだった。
それを受けてやっと納得がいった。
ロイドが涼しい顔をしていたのは、コレ自体が黒魔道士の遊びだからなのだ。
きっと彼らにとってはよくあることなのだろう。
(うぅう…刺激的すぎてついて行けない…)
なんだかクレイの裏の顔を知ってしまった気がする。
そんな自分にクレイが心配そうに顔を覗きこんできた。
「シリィ、大丈夫か?無理に俺達に合わせる必要はないから、居辛かったらショーンやハインツの所に行ってもいいからな?」
(クレイ…優しい)
やはり黒魔道士なのにクレイは優しい。
そして自分は自分を気に掛けてくれるそんなクレイが大好きだ。
ここはロイドやリーネに負けないよう自分もアピールしていきたい。
ロックウェルがクレイを傷つけるなら自分がクレイを癒してあげたい。
そこだけは白魔道士である自分の強みのような気がした。
「クレイ、大丈夫よ!私、ロイドとリーネと三人でクレイを守る会を結成するわ!」
「え?」
「クレイが元気になるようにみんなで協力して、絶対に元気にしてあげる!」
だから逃げたりなんかしないと力強く言った自分にクレイがふわりと微笑んだ。
「ありがとう」
そんなクレイに一気に顔が熱くなる。
「もうっ!クレイの罪作り!」
「?」
「クレイの笑顔に弱いんだから、これ以上好きにさせないで!」
馬鹿馬鹿っ!と胸を叩いてやるがクレイは不思議そうにしながらも楽しげに笑ってきた。
こんな笑顔は非常に珍しい。
「シリィは本当に可愛いな」
どうやらクレイにじゃれ合いのように思われてしまったらしいが、今笑えるだけの元気が出るのはいいことだ。
「もうもうっ!クレイの意地悪!」
「ははっ…!」
そんな自分達にロイド達もため息を吐く。
「本当に仲良しね」
「意外とシリィはダークホースだな」
そうやってじゃれ合う面々をロックウェルが遠目に見ているとは知らず、四人は交流会へとゆっくりと紛れていった。
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