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第一部 アストラス編~王の落胤~
118.勝負
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「ちょっとロイド!どうしてラブ度が上がってるのよ?!」
「仕方がないだろう?クレイがアベルのせいで不安になったんだから」
リーネとシリィがクレイの部屋に入ると、そこにはソファで寄り添いながら嬉しそうにクレイに口づけるロイドの姿があり、思わず叫んでしまった。
クレイが全く抵抗していないばかりか、何故かされるがままなのが心配で仕方がない。
「クレイ!アベル王子に何かまた傷つくようなことを言われたの?!」
シリィが心配そうに尋ねるとすぐさま聞いてやるなとロイドは牽制してくる。
どうやら思い出させたくないほど酷いことを言われたらしい。
「あんな最悪な白魔道士にクレイを渡す気はないから追い払った。問題ない」
「ロイド……」
「ほら、クレイ。まだ暫く寄り添っておけ」
「……すまない」
そんな風に大人しくロイドに従うクレイの姿に余計に心配が募る。
「クレイ…大丈夫?ちょっと待ってね。すぐに魔法を掛けるから」
そう言ってそっと精神安定の魔法を掛けてみると、どこかホッとしたように安堵の笑みを浮かべてくれた。
「シリィ…ありがとう」
「いいのよ。そんなことより、ロックウェル様の嫉妬、かなり煽れたみたいよ」
「え?」
「実は交流会の終わり頃に私の所まで慌ててやってきて、今日のカードゲームに参加させてほしいって言いに来たのよ」
事情を眷属から聞いたらしいと口にするとクレイは急に表情を引き締めた。
「…ヒュース」
クレイがそっと呼びかけると、暫くしてすぐにその眷属が姿を現す。
【お呼びでしょうか?】
「ロックウェルに…余計なことを言ったのはお前か?」
どこか冷たいその声にその場にいる誰もが口を出すことができない。
【そうでございます】
「ロックウェルがあちらで下手な動きをしたらどうする!」
【私は嫉妬を煽るお手伝いをしたまででございます】
「本当にそれだけだと?」
【ええ。そこの…ロイドが傷心のクレイ様をお支えしてくれているようなので、これ以上勘違いさせるのも申し訳ないですし早めに決着をつけようと思っただけにございます】
その言葉にクレイは気まずげにしたが、ロイドの方は壮絶な笑みを浮かべた。
「さすが優秀な眷属だな。傷心のクレイを支えるのは私の好きでやっていることだ。気にする必要はないぞ?」
そう言いながらクレイは自分の物だと言わんばかりに自分の方へと引き寄せる。
【…今回の件において早期解決は重要事項ですしね。一刻も早くクレイ様のお心に平穏を取り戻すべく、眷属一同尽力させていただきますよ】
けれど眷属の方が一枚上手のようで、飄々と答えたヒュースにロイドが苦々しげに顔を歪めた。
どうやら優位に立てると思っていたのに失敗したらしい。
(さすが、クレイがわざわざロックウェル様につけているだけある眷属ね)
そんな風にシリィが思っていると、クレイもどこかホッとしたようにヒュースへと声を掛けた。
「すまない。頼りにしている」
【あちらはお任せください。悪いようには致しません】
その言葉にクレイがコクリと頷くと同時にヒュースは満足げに下がっていく。
それはまさに信頼関係のある主従そのものの姿だった。
けれどそんな眷属にロイドは不満げだ。
掌で転がされたようなものだから仕方がない。
「クレイは私が守ってやると言ったのに……」
「お前は守ってくれているだろう?お前が傍に居てくれて本当に助かった。感謝している」
「クレイ……」
笑顔でそう言われ、ロイドの怒りはあっさりと治まったらしい。
この辺りのクレイの天然っぷりはさすがだと思う。
眷属の牽制がほぼ台無しだ。
「ヒュース達は優秀だからな。きっとあっちは任せても大丈夫だ。後は明日、どう動くかにかかっているが……」
シュバルツは既にこちらの味方だが、どう動くのがベストだろうかとクレイが思案し始める。
ロイドを喜ばせるのはいただけないが、どうやら気持ちの切り替えはできたようだ。
眷属の仕事も無駄ではなかった。
お蔭で少し元気が出たようで良かったと、シリィは安堵の息を吐く。
「じゃあ作戦会議をしながら夕飯にしましょう!」
そんな言葉と共にリーネも動いた。
「いいわね。ほら、準備準備!」
そう言ってクレイとロイドをバリッと引き離す。
「クレイ!何が食べたい?」
「え?」
「今日はクレイが食べたいものにしようってリーネと二人で話してたの」
「元気出してもらわないと困るしね」
そう言って笑う二人にクレイも柔らかく笑ってくれた。
「…本当に皆優しいな」
「そうでしょう?ロイドだけじゃないのよ?もっと周りにも目を向けてちょうだい!」
「そうよ?クレイはモテるんだから、ロイドで妥協なんてしないで!」
「……酷い言われようだな」
「抜け駆けするような人に優しくできる程私達は大人じゃないのよ」
ふふんと笑うリーネにクレイが楽しげに笑う。
「ははっ…!言われたな、ロイド」
「笑うな。本当に腹が立つ…!」
「そう言うな。好きなだけ口づけてやっただろう?」
「まあな」
「ちょっと!またイチャついて!」
「別にイチャついてはいないが?」
リーネの指摘にクレイはわかっていないのか、きょとんと返すだけだ。
「ク…クレイ…」
「どうした?シリィ」
「どうしてそんなにロイドと口づけしてたの?」
どうしてもそこが引っ掛かる。
もしやロイドに何か弱みでも握られたのだろうか?
それともロックウェルのいない隙を突かれ、欲求不満を解消してやるとでも言われたのだろうか?
そう思って尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。
「ああ、シュバルツを垂らしこむのにロイドが魔力交流をしてくれたんだが、あいつはどうも口づけが下手だったそうでな」
「え?」
「口直しに俺に口づけたいって言うから…」
「そ、そんな理由で?!」
「そうだが?」
「うぅ…黒魔道士の人って良くわからないわ…」
どうやらクレイの心の隙をついたというよりは、黒魔道士にしかわからない理屈の方だったらしい。
それならそれで安心(?)したが、自分には理解不能だと溢すとロイドから馬鹿だなと言われてしまった。
「どうせシリィはクレイとの魔力交流の時にディープキスをしなかったんだろう?クレイの口づけは本当に最高だぞ?」
「……っ!た、確かにクレイとの口づけは甘くて気持ち良くてとっても素敵だったけど……!あの時はただ翻弄されてたし…っ!」
真っ赤になってそう言い始めた自分にリーネがまあまあと止めに入ってくれる。
「ロイド、初心なシリィをからかったら可哀想よ?」
「そうだぞ?ロイド。シリィは純情なんだ。酷いことを言うな」
「うぅ…クレイ…」
泣きそうな気分になっていると、クレイがそっとロイドから庇うように抱き寄せて優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫だ。それより、悪かったな。何度も唇を奪って…」
そんな言葉に確かに自分は何度もクレイと口づけをしていると思い至って真っ赤になってしまった。
けれどこれはチャンスとも言えるのではないだろうか?
正直昨日今日で二人の仲を見せつけられて悔しいと思う自分がいた。
作戦だけなら仕方がないが、こうして作戦が関係ない時に目の前でイチャイチャとされるのは気分が悪い。
自分だってクレイの事は大好きなのだ。
クレイの気持ちを尊重してロックウェルには譲ったが、ロイドには絶対に譲りたくはないし負けたくない。
今黙って見ているくらいなら、少しくらいは自分をクレイにアピールしてもいいのではないかとさえ思った。
「あ…あのね?今日のカードゲームの罰ゲームなんだけど……」
「ん?」
突然言い出した自分にクレイが不思議そうに首を傾げたが、ここで言わなきゃ女が廃ると言わんばかりに思い切ってその言葉を口にする。
「私の書いた紙…一つだけ書きかえてもいいかしら?」
「どれだ?」
「嫌いな人にキスをするって書いたのを…好きな人にキスを教えてもらうって言うのに変えたいな…と」
「?それだと罰ゲームにならないんじゃ…」
そこまで言ったところでロイドとリーネがすかさず何の問題もないと言って間に入ってくる。
「大丈夫だ。問題ない」
「そうよ!好きな人にね。OKよ!」
「…まあ二人がそう言うなら…いいのか?」
「いいのよ。臨機応変に行きましょう!」
こうしてその日も楽しい夜が始まった────。
***
【ヒュース…すまない】
【ロイドは油断がならないから仕方がないですよ】
眷属達がそっと影で話し合う。
【クレイ様は相当お気持ちが不安定なご様子】
【それはそうだろう。あんなにもロックウェル様を愛しておられたのにこんな風に引き離されたのだから…】
こればかりは仕方がないが、このまま黙ってロイドやアベルの手に主を渡すわけにはいかない。
【こちらはシュバルツを味方に引き入れたが、これがどう転ぶかはまだこれからだ】
【こっちもロックウェル様がフローリアを陥落しましたよ。本当に見事なお手際で…】
【もしかしてあの女とまた寝たのか?!】
【レオ。寝たといってもこれは浮気ではなくただの遊びだ。シュバルツに対するロイドと同じだと思え】
【そうだ。本気なら我々も本気で怒るが、ロックウェル様はクレイ様しかお好きではないからな】
【でも…クレイ様は泣いてらっしゃったぞ?】
主を傷つける行為はいかがなものかと他の眷属も物申す。
【…しかしこればかりは仕方あるまい。二人を押さえておけば敵はアベルただ一人になる】
【そうだ。アベル一人ならいくらでもやりようはある。今はただロックウェル様を取り戻すのが先決だ】
【なに…ロックウェル様に傷つけられたというのならまた嫌と言うほど癒してもらえばいいのだ】
【確かに。クレイ様を癒すのはロイドの役目ではなく、ロックウェル様のお役目。あんな黒魔道士、さっさとお払い箱にしてしまうに限る】
【とは言え今は大事な役どころ…。無碍にはできまい】
【ふっ…そんなもの、利用してやればいいんですよ。本人の望むように】
【ヒュース…】
【いちいちあんな男に振り回されず、我々は我々の本来の役目を果たせばそれでいい】
利用できるものは何でも利用して主を守ればいいのだ。
【クレイ様の心を守るためにロイドを傍に置き、クレイ様の望むようにロックウェル様以外の者に襲われないようにする。それだけを忘れなければ問題ないでしょう】
アベルだろうとロイドだろうと、クレイを抱こうとした時点で攻撃して問題ないとヒュースは冷たく笑った。
【全てはクレイ様のために】
そんな言葉に眷属達が一斉に頷きを落とす。
【さて、ロックウェル様の方ももう少し煽っておきますかね~】
そしていつもの様に飄々とした姿で消えていったヒュースに、やっぱり一番怖い眷属だなと皆はそっと思ったのだった。
***
「取りあえず明日はまず間違いなくアベルが結果を聞きにクレイの所へやってくるだろう」
「そうだな。その時にロックウェルも連れてきて揺さ振りをかけてくるはずだ」
「あの姫もロックウェル様にベタベタくっついていそうだから、クレイはあまり見ない方がいいわよ」
「…わかっている」
皆で酒を酌み交わしながら明日の事について話し合うが、どうやらクレイの気持ちはまた沈んでしまったようだ。
「大丈夫だ。クレイには私が付いているし、あっちが見せつけてきたらこっちも見せつけてやればいいだけの事だ。心配ない」
ロイドがそう言いながらクレイを抱き寄せ心配するなと口にする。
「そんなことより、シュバルツをどう使うかだな」
「ああ、そうだな。交渉の途中に動かすのは難しいから、ある程度作戦を固めておいてアベルとの接触前に予め伝えておいた方がいいだろうな」
「それなんだけど、本当に上手くいくの?こっちの作戦が筒抜けになってしまうんじゃないかしら?」
どうにもシュバルツが信用ならないとリーネが言うが、それに対してクレイとロイドは大丈夫だと自信ありげだ。
「あいつはもうロイドに夢中だからな」
「そうなの?」
「ああ。私の為なら喜んで動く犬同然だ」
「うわぁ…鬼畜発言ね。性格悪いわよ?ロイド」
「ふっ…クレイ以外はどうでもいいからな。何とでも言え」
そんな発言にはさすがのクレイも苦笑せざるを得ない。
「ロイド…主も大事だろう?」
「ああ、勿論ライアード様は別だぞ?ライアード様とお前以外はどうでもいいという意味だ」
「本当にお前は変わらないな」
「まあこれが私だしな。お前さえ手に入れられたらそれでいい」
「ふぅん?折角のチャンスなんだから、シュバルツを恋人にしてしまえばいいのに」
「そんなつれないお前が好きだと言っているだろうに」
「さっさと諦めろとも忠告はしてやっただろう?」
そんなやり取りをしながらも二人の距離はやけに近い。
「クレイ…明日ロックウェルを取り戻せたら、私への成功報酬はお前がいい」
あまりにもつれないクレイに、ロイドがここぞとばかりに大きく出た。
「そんな口説き方は反則だな。アベルよりタチが悪いぞ?」
「シュバルツを使えるのはお前ではなく私だぞ?交渉材料にうってつけだろう?」
そんな風にニッと笑うロイドは本当に油断も隙もなくシリィとリーネは蒼白になったが、対するクレイは余裕の顔だ。
「なるほどな。本当にお前は可愛い奴だ。俺を楽しませるのが上手い」
「逃げ場はないぞ?」
「ふっ…逃げる必要などないだろう?そうだな…今日のカードゲームの結果次第で考えてやってもいい」
「どういう意味だ?」
「お前が勝者で俺が敗者になったら考えてやると言っている。俺は強い奴が好きだからな」
「なるほど…」
そんな言葉にロイドも俄然やる気が出たようだ。
「そう言うことなら喜んで乗ろう」
「決まりだな」
「ちょっと…!待ってよ、クレイ!」
それを聞いたリーネが慌てて間に入り、当然自分もゲームには加わると割り込む。
それを受けてシリィもハッと我に返り自分も参加を表明した。
このまま二人がくっつくのを黙って見ているわけにはいかない。
こうしてカードゲームが今夜も始まったのだが……。
「フッ…今日は絶好調だな」
ロイドが嬉しそうにカードを見つめる。
対するクレイはどこか面白くなさ気だ。
もしや良いカードが来なかったのではないだろうかと不安になる。
(ど、どうしよう?)
このままではクレイがロイドの物になってしまうのではないかと言う不安ばかりが押し寄せてしまった。
もうこうなったら自分が勝者になる以外に手はない。
「私も今日はツイてるわよ!」
負けないとばかりにジッとカードを見つめる。
現在スリーカードは確実だ。
あとはフルハウスを狙うかフォーカードを狙うかの二択。
(よし!)
フォーカード狙いだとばかりに一枚めくると…。
「うぅ…しまった…」
スリーカードで勝負が決まってしまった。
対するロイドはフルハウス。
リーネはフラッシュだ。
後はクレイのオープンを待つだけ────。
そっとクレイを窺うと、クレイはニッと笑った。
「ストレートフラッシュ」
と言うことは、クレイが勝者だ。
「残念だったな、ロイド」
そんなクレイにロイドは悔しそうだ。
「くそっ!もう一回だ!」
そんな言葉にクレイが余裕の表情でまだ待てと言ってくる。
「罰ゲームのくじ引きがまだだぞ?」
「そうよ!ほら、シリィ!引いて引いて!」
そんな言葉にハッと我に返る。
そうだ、よく考えたらスリーカードはこの中で一番弱い。
「うぅ…」
勝てると思ったのに敗者になるとは居た堪れない。
どうか変なくじに当たりませんようにと思いながらそっとくじを引くと、なんと好きな人にキスを教えてもらうという当たりくじだった。
勝者はクレイだ。
何と言う幸せなシチュエーションなのだろうか────。
「シリィ。それで?どうするんだ?」
「クレイ!お願いします!」
「え?」
「だから!クレイにキスを教えてほしいの!」
「…いいのか?」
これはもしや相手が自分とは思ってなかった感じなのだろうか?
眼中になかったと言われたようでちょっと悲しい。
「ダメかしら?」
「まあ別にいいが…」
そう言ってそっとクレイが手を引いて膝に乗せてくれる。
「初心なシリィにどれだけしたらいいのか迷うところだな」
どうやらそれで困っていたらしい。
「お…大人のキスで…」
「ふぅん?」
そんな言葉と共に口づけが降ってくる。
そっとこちらの反応を確かめるようにゆっくりと舌を絡められ、優しくあやすように口内をクレイの舌が蹂躙していく。
「んっ…んんっ…」
(気持ちいい…)
そっと頭を支えられてどんどんと思考が溶かされていく。
時折強めに吸い上げられる舌が心地いい。
「はぁ…っ!」
そうこうしている内に体が熱くなって身を委ねたくなってきた。
「んっ…クレイ…」
真っ赤な顔でクレイを見つめるとフッと柔らかく微笑まれた。
「これくらいにしておかないとダメそうだな」
そしてそっと抱き上げ向かいのソファへと運ばれてしまう。
「さ、次に行こうか」
どうやらこれ以上はまずいと判断されてしまったようだ。
既に身体に力が入らない。
「シリィはそのまま休んでおけ」
そんな状況なら参加するのは無理だろうと言われてしまい、そっと他の面々を窺うとどこか嬉しそうにしている。
自分が抜けたらクレイと当たる確率は上がると踏んだのだろう。
これはまずい。
「だ、大丈夫よ?!私も参加するわ!」
「あら、無理はしなくてもいいじゃない。シリィは今いい思いをしたんだから次は譲ってちょうだい」
「そうだな。無理はしなくていい。最後の勝負には加えてやるからこの一回は休んでおけ」
リーネもロイドも容赦がない。
優しいのはクレイだけだ。
「シリィ。ロイドの言う通り最後のカードゲームに加わればいい。俺の事は心配しなくても大丈夫だから」
「クレイ…」
見ておけと笑顔で言ってくれたクレイに大人しく引き下がって、そっとその勝負の行く末に胸を弾ませる。
どうか変なカードがきませんように────そう願いながら。
「仕方がないだろう?クレイがアベルのせいで不安になったんだから」
リーネとシリィがクレイの部屋に入ると、そこにはソファで寄り添いながら嬉しそうにクレイに口づけるロイドの姿があり、思わず叫んでしまった。
クレイが全く抵抗していないばかりか、何故かされるがままなのが心配で仕方がない。
「クレイ!アベル王子に何かまた傷つくようなことを言われたの?!」
シリィが心配そうに尋ねるとすぐさま聞いてやるなとロイドは牽制してくる。
どうやら思い出させたくないほど酷いことを言われたらしい。
「あんな最悪な白魔道士にクレイを渡す気はないから追い払った。問題ない」
「ロイド……」
「ほら、クレイ。まだ暫く寄り添っておけ」
「……すまない」
そんな風に大人しくロイドに従うクレイの姿に余計に心配が募る。
「クレイ…大丈夫?ちょっと待ってね。すぐに魔法を掛けるから」
そう言ってそっと精神安定の魔法を掛けてみると、どこかホッとしたように安堵の笑みを浮かべてくれた。
「シリィ…ありがとう」
「いいのよ。そんなことより、ロックウェル様の嫉妬、かなり煽れたみたいよ」
「え?」
「実は交流会の終わり頃に私の所まで慌ててやってきて、今日のカードゲームに参加させてほしいって言いに来たのよ」
事情を眷属から聞いたらしいと口にするとクレイは急に表情を引き締めた。
「…ヒュース」
クレイがそっと呼びかけると、暫くしてすぐにその眷属が姿を現す。
【お呼びでしょうか?】
「ロックウェルに…余計なことを言ったのはお前か?」
どこか冷たいその声にその場にいる誰もが口を出すことができない。
【そうでございます】
「ロックウェルがあちらで下手な動きをしたらどうする!」
【私は嫉妬を煽るお手伝いをしたまででございます】
「本当にそれだけだと?」
【ええ。そこの…ロイドが傷心のクレイ様をお支えしてくれているようなので、これ以上勘違いさせるのも申し訳ないですし早めに決着をつけようと思っただけにございます】
その言葉にクレイは気まずげにしたが、ロイドの方は壮絶な笑みを浮かべた。
「さすが優秀な眷属だな。傷心のクレイを支えるのは私の好きでやっていることだ。気にする必要はないぞ?」
そう言いながらクレイは自分の物だと言わんばかりに自分の方へと引き寄せる。
【…今回の件において早期解決は重要事項ですしね。一刻も早くクレイ様のお心に平穏を取り戻すべく、眷属一同尽力させていただきますよ】
けれど眷属の方が一枚上手のようで、飄々と答えたヒュースにロイドが苦々しげに顔を歪めた。
どうやら優位に立てると思っていたのに失敗したらしい。
(さすが、クレイがわざわざロックウェル様につけているだけある眷属ね)
そんな風にシリィが思っていると、クレイもどこかホッとしたようにヒュースへと声を掛けた。
「すまない。頼りにしている」
【あちらはお任せください。悪いようには致しません】
その言葉にクレイがコクリと頷くと同時にヒュースは満足げに下がっていく。
それはまさに信頼関係のある主従そのものの姿だった。
けれどそんな眷属にロイドは不満げだ。
掌で転がされたようなものだから仕方がない。
「クレイは私が守ってやると言ったのに……」
「お前は守ってくれているだろう?お前が傍に居てくれて本当に助かった。感謝している」
「クレイ……」
笑顔でそう言われ、ロイドの怒りはあっさりと治まったらしい。
この辺りのクレイの天然っぷりはさすがだと思う。
眷属の牽制がほぼ台無しだ。
「ヒュース達は優秀だからな。きっとあっちは任せても大丈夫だ。後は明日、どう動くかにかかっているが……」
シュバルツは既にこちらの味方だが、どう動くのがベストだろうかとクレイが思案し始める。
ロイドを喜ばせるのはいただけないが、どうやら気持ちの切り替えはできたようだ。
眷属の仕事も無駄ではなかった。
お蔭で少し元気が出たようで良かったと、シリィは安堵の息を吐く。
「じゃあ作戦会議をしながら夕飯にしましょう!」
そんな言葉と共にリーネも動いた。
「いいわね。ほら、準備準備!」
そう言ってクレイとロイドをバリッと引き離す。
「クレイ!何が食べたい?」
「え?」
「今日はクレイが食べたいものにしようってリーネと二人で話してたの」
「元気出してもらわないと困るしね」
そう言って笑う二人にクレイも柔らかく笑ってくれた。
「…本当に皆優しいな」
「そうでしょう?ロイドだけじゃないのよ?もっと周りにも目を向けてちょうだい!」
「そうよ?クレイはモテるんだから、ロイドで妥協なんてしないで!」
「……酷い言われようだな」
「抜け駆けするような人に優しくできる程私達は大人じゃないのよ」
ふふんと笑うリーネにクレイが楽しげに笑う。
「ははっ…!言われたな、ロイド」
「笑うな。本当に腹が立つ…!」
「そう言うな。好きなだけ口づけてやっただろう?」
「まあな」
「ちょっと!またイチャついて!」
「別にイチャついてはいないが?」
リーネの指摘にクレイはわかっていないのか、きょとんと返すだけだ。
「ク…クレイ…」
「どうした?シリィ」
「どうしてそんなにロイドと口づけしてたの?」
どうしてもそこが引っ掛かる。
もしやロイドに何か弱みでも握られたのだろうか?
それともロックウェルのいない隙を突かれ、欲求不満を解消してやるとでも言われたのだろうか?
そう思って尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。
「ああ、シュバルツを垂らしこむのにロイドが魔力交流をしてくれたんだが、あいつはどうも口づけが下手だったそうでな」
「え?」
「口直しに俺に口づけたいって言うから…」
「そ、そんな理由で?!」
「そうだが?」
「うぅ…黒魔道士の人って良くわからないわ…」
どうやらクレイの心の隙をついたというよりは、黒魔道士にしかわからない理屈の方だったらしい。
それならそれで安心(?)したが、自分には理解不能だと溢すとロイドから馬鹿だなと言われてしまった。
「どうせシリィはクレイとの魔力交流の時にディープキスをしなかったんだろう?クレイの口づけは本当に最高だぞ?」
「……っ!た、確かにクレイとの口づけは甘くて気持ち良くてとっても素敵だったけど……!あの時はただ翻弄されてたし…っ!」
真っ赤になってそう言い始めた自分にリーネがまあまあと止めに入ってくれる。
「ロイド、初心なシリィをからかったら可哀想よ?」
「そうだぞ?ロイド。シリィは純情なんだ。酷いことを言うな」
「うぅ…クレイ…」
泣きそうな気分になっていると、クレイがそっとロイドから庇うように抱き寄せて優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫だ。それより、悪かったな。何度も唇を奪って…」
そんな言葉に確かに自分は何度もクレイと口づけをしていると思い至って真っ赤になってしまった。
けれどこれはチャンスとも言えるのではないだろうか?
正直昨日今日で二人の仲を見せつけられて悔しいと思う自分がいた。
作戦だけなら仕方がないが、こうして作戦が関係ない時に目の前でイチャイチャとされるのは気分が悪い。
自分だってクレイの事は大好きなのだ。
クレイの気持ちを尊重してロックウェルには譲ったが、ロイドには絶対に譲りたくはないし負けたくない。
今黙って見ているくらいなら、少しくらいは自分をクレイにアピールしてもいいのではないかとさえ思った。
「あ…あのね?今日のカードゲームの罰ゲームなんだけど……」
「ん?」
突然言い出した自分にクレイが不思議そうに首を傾げたが、ここで言わなきゃ女が廃ると言わんばかりに思い切ってその言葉を口にする。
「私の書いた紙…一つだけ書きかえてもいいかしら?」
「どれだ?」
「嫌いな人にキスをするって書いたのを…好きな人にキスを教えてもらうって言うのに変えたいな…と」
「?それだと罰ゲームにならないんじゃ…」
そこまで言ったところでロイドとリーネがすかさず何の問題もないと言って間に入ってくる。
「大丈夫だ。問題ない」
「そうよ!好きな人にね。OKよ!」
「…まあ二人がそう言うなら…いいのか?」
「いいのよ。臨機応変に行きましょう!」
こうしてその日も楽しい夜が始まった────。
***
【ヒュース…すまない】
【ロイドは油断がならないから仕方がないですよ】
眷属達がそっと影で話し合う。
【クレイ様は相当お気持ちが不安定なご様子】
【それはそうだろう。あんなにもロックウェル様を愛しておられたのにこんな風に引き離されたのだから…】
こればかりは仕方がないが、このまま黙ってロイドやアベルの手に主を渡すわけにはいかない。
【こちらはシュバルツを味方に引き入れたが、これがどう転ぶかはまだこれからだ】
【こっちもロックウェル様がフローリアを陥落しましたよ。本当に見事なお手際で…】
【もしかしてあの女とまた寝たのか?!】
【レオ。寝たといってもこれは浮気ではなくただの遊びだ。シュバルツに対するロイドと同じだと思え】
【そうだ。本気なら我々も本気で怒るが、ロックウェル様はクレイ様しかお好きではないからな】
【でも…クレイ様は泣いてらっしゃったぞ?】
主を傷つける行為はいかがなものかと他の眷属も物申す。
【…しかしこればかりは仕方あるまい。二人を押さえておけば敵はアベルただ一人になる】
【そうだ。アベル一人ならいくらでもやりようはある。今はただロックウェル様を取り戻すのが先決だ】
【なに…ロックウェル様に傷つけられたというのならまた嫌と言うほど癒してもらえばいいのだ】
【確かに。クレイ様を癒すのはロイドの役目ではなく、ロックウェル様のお役目。あんな黒魔道士、さっさとお払い箱にしてしまうに限る】
【とは言え今は大事な役どころ…。無碍にはできまい】
【ふっ…そんなもの、利用してやればいいんですよ。本人の望むように】
【ヒュース…】
【いちいちあんな男に振り回されず、我々は我々の本来の役目を果たせばそれでいい】
利用できるものは何でも利用して主を守ればいいのだ。
【クレイ様の心を守るためにロイドを傍に置き、クレイ様の望むようにロックウェル様以外の者に襲われないようにする。それだけを忘れなければ問題ないでしょう】
アベルだろうとロイドだろうと、クレイを抱こうとした時点で攻撃して問題ないとヒュースは冷たく笑った。
【全てはクレイ様のために】
そんな言葉に眷属達が一斉に頷きを落とす。
【さて、ロックウェル様の方ももう少し煽っておきますかね~】
そしていつもの様に飄々とした姿で消えていったヒュースに、やっぱり一番怖い眷属だなと皆はそっと思ったのだった。
***
「取りあえず明日はまず間違いなくアベルが結果を聞きにクレイの所へやってくるだろう」
「そうだな。その時にロックウェルも連れてきて揺さ振りをかけてくるはずだ」
「あの姫もロックウェル様にベタベタくっついていそうだから、クレイはあまり見ない方がいいわよ」
「…わかっている」
皆で酒を酌み交わしながら明日の事について話し合うが、どうやらクレイの気持ちはまた沈んでしまったようだ。
「大丈夫だ。クレイには私が付いているし、あっちが見せつけてきたらこっちも見せつけてやればいいだけの事だ。心配ない」
ロイドがそう言いながらクレイを抱き寄せ心配するなと口にする。
「そんなことより、シュバルツをどう使うかだな」
「ああ、そうだな。交渉の途中に動かすのは難しいから、ある程度作戦を固めておいてアベルとの接触前に予め伝えておいた方がいいだろうな」
「それなんだけど、本当に上手くいくの?こっちの作戦が筒抜けになってしまうんじゃないかしら?」
どうにもシュバルツが信用ならないとリーネが言うが、それに対してクレイとロイドは大丈夫だと自信ありげだ。
「あいつはもうロイドに夢中だからな」
「そうなの?」
「ああ。私の為なら喜んで動く犬同然だ」
「うわぁ…鬼畜発言ね。性格悪いわよ?ロイド」
「ふっ…クレイ以外はどうでもいいからな。何とでも言え」
そんな発言にはさすがのクレイも苦笑せざるを得ない。
「ロイド…主も大事だろう?」
「ああ、勿論ライアード様は別だぞ?ライアード様とお前以外はどうでもいいという意味だ」
「本当にお前は変わらないな」
「まあこれが私だしな。お前さえ手に入れられたらそれでいい」
「ふぅん?折角のチャンスなんだから、シュバルツを恋人にしてしまえばいいのに」
「そんなつれないお前が好きだと言っているだろうに」
「さっさと諦めろとも忠告はしてやっただろう?」
そんなやり取りをしながらも二人の距離はやけに近い。
「クレイ…明日ロックウェルを取り戻せたら、私への成功報酬はお前がいい」
あまりにもつれないクレイに、ロイドがここぞとばかりに大きく出た。
「そんな口説き方は反則だな。アベルよりタチが悪いぞ?」
「シュバルツを使えるのはお前ではなく私だぞ?交渉材料にうってつけだろう?」
そんな風にニッと笑うロイドは本当に油断も隙もなくシリィとリーネは蒼白になったが、対するクレイは余裕の顔だ。
「なるほどな。本当にお前は可愛い奴だ。俺を楽しませるのが上手い」
「逃げ場はないぞ?」
「ふっ…逃げる必要などないだろう?そうだな…今日のカードゲームの結果次第で考えてやってもいい」
「どういう意味だ?」
「お前が勝者で俺が敗者になったら考えてやると言っている。俺は強い奴が好きだからな」
「なるほど…」
そんな言葉にロイドも俄然やる気が出たようだ。
「そう言うことなら喜んで乗ろう」
「決まりだな」
「ちょっと…!待ってよ、クレイ!」
それを聞いたリーネが慌てて間に入り、当然自分もゲームには加わると割り込む。
それを受けてシリィもハッと我に返り自分も参加を表明した。
このまま二人がくっつくのを黙って見ているわけにはいかない。
こうしてカードゲームが今夜も始まったのだが……。
「フッ…今日は絶好調だな」
ロイドが嬉しそうにカードを見つめる。
対するクレイはどこか面白くなさ気だ。
もしや良いカードが来なかったのではないだろうかと不安になる。
(ど、どうしよう?)
このままではクレイがロイドの物になってしまうのではないかと言う不安ばかりが押し寄せてしまった。
もうこうなったら自分が勝者になる以外に手はない。
「私も今日はツイてるわよ!」
負けないとばかりにジッとカードを見つめる。
現在スリーカードは確実だ。
あとはフルハウスを狙うかフォーカードを狙うかの二択。
(よし!)
フォーカード狙いだとばかりに一枚めくると…。
「うぅ…しまった…」
スリーカードで勝負が決まってしまった。
対するロイドはフルハウス。
リーネはフラッシュだ。
後はクレイのオープンを待つだけ────。
そっとクレイを窺うと、クレイはニッと笑った。
「ストレートフラッシュ」
と言うことは、クレイが勝者だ。
「残念だったな、ロイド」
そんなクレイにロイドは悔しそうだ。
「くそっ!もう一回だ!」
そんな言葉にクレイが余裕の表情でまだ待てと言ってくる。
「罰ゲームのくじ引きがまだだぞ?」
「そうよ!ほら、シリィ!引いて引いて!」
そんな言葉にハッと我に返る。
そうだ、よく考えたらスリーカードはこの中で一番弱い。
「うぅ…」
勝てると思ったのに敗者になるとは居た堪れない。
どうか変なくじに当たりませんようにと思いながらそっとくじを引くと、なんと好きな人にキスを教えてもらうという当たりくじだった。
勝者はクレイだ。
何と言う幸せなシチュエーションなのだろうか────。
「シリィ。それで?どうするんだ?」
「クレイ!お願いします!」
「え?」
「だから!クレイにキスを教えてほしいの!」
「…いいのか?」
これはもしや相手が自分とは思ってなかった感じなのだろうか?
眼中になかったと言われたようでちょっと悲しい。
「ダメかしら?」
「まあ別にいいが…」
そう言ってそっとクレイが手を引いて膝に乗せてくれる。
「初心なシリィにどれだけしたらいいのか迷うところだな」
どうやらそれで困っていたらしい。
「お…大人のキスで…」
「ふぅん?」
そんな言葉と共に口づけが降ってくる。
そっとこちらの反応を確かめるようにゆっくりと舌を絡められ、優しくあやすように口内をクレイの舌が蹂躙していく。
「んっ…んんっ…」
(気持ちいい…)
そっと頭を支えられてどんどんと思考が溶かされていく。
時折強めに吸い上げられる舌が心地いい。
「はぁ…っ!」
そうこうしている内に体が熱くなって身を委ねたくなってきた。
「んっ…クレイ…」
真っ赤な顔でクレイを見つめるとフッと柔らかく微笑まれた。
「これくらいにしておかないとダメそうだな」
そしてそっと抱き上げ向かいのソファへと運ばれてしまう。
「さ、次に行こうか」
どうやらこれ以上はまずいと判断されてしまったようだ。
既に身体に力が入らない。
「シリィはそのまま休んでおけ」
そんな状況なら参加するのは無理だろうと言われてしまい、そっと他の面々を窺うとどこか嬉しそうにしている。
自分が抜けたらクレイと当たる確率は上がると踏んだのだろう。
これはまずい。
「だ、大丈夫よ?!私も参加するわ!」
「あら、無理はしなくてもいいじゃない。シリィは今いい思いをしたんだから次は譲ってちょうだい」
「そうだな。無理はしなくていい。最後の勝負には加えてやるからこの一回は休んでおけ」
リーネもロイドも容赦がない。
優しいのはクレイだけだ。
「シリィ。ロイドの言う通り最後のカードゲームに加わればいい。俺の事は心配しなくても大丈夫だから」
「クレイ…」
見ておけと笑顔で言ってくれたクレイに大人しく引き下がって、そっとその勝負の行く末に胸を弾ませる。
どうか変なカードがきませんように────そう願いながら。
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