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夜の街編
1.出会い
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大学卒業まであと少し────そんな中、会社を経営する父親が急に亡くなった。
車で移動中事故に巻き込まれたとのことで、本当に呆気ないほど急な出来事だった。
母はその一報を受けて倒れ、俺が喪主なども全部引き受け関係者達に連絡も取った。
幸い弟や妹達も手伝ってくれたので何とかなったけど、一人だったらきっともっと大変だっただろう。
それよりもなによりも、突然トップを失った会社の方も大変だった。
俺はある程度の内部情報はわかっていたし、会社についての勉強だってちゃんとやってはいたけど、父に教わりながらやるのと自分一人で何とかするのは大きな差だった。
だからそこから必死に頑張ったんだ。
幸い父が優秀な幹部達を揃えていたからこそ何とかなったと言っても過言ではない。
そしてある程度社長としての体裁を保てそうだというところまで来たので、大学卒業と共に社長に就任。
若造が本当にいいのかなとも思ったけど、皆に望まれたのでもうやるしかなかった。
基本真面目な俺は来る日も来る日も仕事に励んだ。
与えられた仕事をこなしながら勉強し、早く一人前の社長として認められるようにと頑張ったんだ。
でも────。
「あ~~~!!くそっ!!」
正直ストレスMax!ストレスフル!!
これまで大学生活満喫してた俺には本当に耐えられないほどの激務で、ここはブラック企業かとデスクに突っ伏しながら俺は呻いた。
義務はわかってるしやる気だってある。
でも、でも──────。
「いい加減、やってられっかーーーーー!!」
流石に休みなく働き過ぎて、疲れから限界を迎えてしまった俺はやけくそになって家に帰ると大学時代に買った服を着て、髪形を変え、眼鏡をはずして夜遊びスタイルに大変身してやった。
「今日くらい社長ってことは忘れて遊んでやる…!!」
土曜の夜に遊んで何が悪いとばかりに俺は勢いのままに夜の街へと飛び出した。
仕事は明日やったらいい。
気分転換くらいしたっていいじゃないか。
そんなやさぐれた気分で飛び出したんだけど────。
カラン…とグラスの中で崩れる氷の音を聞きながら俺は結局カウンター席でぐったりしていた。
そりゃそうだ。
疲れが溜まってるところに酒を飲んだらこうなることくらいわかり切っていた。
でも…それでも今日はどうしようもなく飲みたい気分だったんだ。
「うぅ…最悪」
そんな俺の隣の席に同い年くらいの男が座る。
「いつもので」
バーテンにそう声を掛けているからきっと常連なのだろう。
そう思いながら俺はそっと身を起こして相手の方を見る。すると相手も俺の方を見ていて、ニコッと笑いかけてきた。
「見ない顔だけど、もしかしてここ、今日は初めて?」
そう聞かれて俺は素直にコクリと頷く。
「そうなんだ。俺はセイ。宜しく」
「宜しく。俺は……カナデ」
本当の名前は羽風 奏(はねかぜ そう)って言うんだけど、そのままだと身バレしそうで俺はつい嘘を吐いた。
でもそんなのは相手に分かりっこないので、カナデって言うんだと素直に受け取ってもらえる。
「じゃあ今日の出会いに、乾杯」
そしてセイはバーテンに言って俺の酒も頼むと、それを受け取るや否や乾杯を促してきた。
チンッと軽い音を立ててグラスが鳴るのを聞きながら、ああこういう出会いも悪くないなと思った。
***
「うぅ~…頭がガンガンする~……」
昨日は結局セイと二人で何だかんだと楽しい時間を過ごした。
そう。酒を飲むだけではなく…………。
「カナデ。大丈夫か?」
「うん。まあ……」
するりと腰に巻きつく腕はそのセイのもの。
つまりは出会ったその日に寝てしまったのだ。
誘ってきたのはセイだけど、それに流されたのは俺だ。
俺は別にゲイじゃないけど、ちょっと色々あって女に嫌気が差していたこともあり試しに寝てみてもいいかなと思ってそのまま抱かれてしまった。
セイは俺が初めてだと知っても別に面倒臭がらずに丁寧に慣らして抱いてくれたし、結構なテクニシャンだったから初めてでも気持ち良くなれた。
一番嬉しかったのは、疲れている俺を癒したいからって甘やかすように抱いてくれたこと。
それでここ最近張りつめていた気持ちがフッと緩んで、素の俺に戻れたような気がしたんだ。
だから正直セイには感謝してる。
「セイ。昨日はありがとな」
そんな俺にセイがどこか余裕を見せながらクスリと笑う。
「いや?カナデの処女、貰っちゃって悪かったな」
「俺はセイが初めてでよかったけど?」
「……それって気持ち良かったってこと?」
「まあな。それ以外でも……セイには感謝してる」
何と言っていいかはわからないけど、単なるセックスじゃなく、身も心も気持ちよくされて癒されたって感じ?
だから俺は笑顔で礼を言って服を着た。
そんな俺にセイが後ろから抱きついてきて、そっと耳元に甘い囁きを落としてくる。
「じゃあ…また今度会った時も抱いていいか?」
「そうだな。また…次に会えたら考えるよ」
そしてチュッとキスを交わして俺はあっさりとセイに別れを告げた。
きっともう会うこともないだろう────そう思いながら…。
車で移動中事故に巻き込まれたとのことで、本当に呆気ないほど急な出来事だった。
母はその一報を受けて倒れ、俺が喪主なども全部引き受け関係者達に連絡も取った。
幸い弟や妹達も手伝ってくれたので何とかなったけど、一人だったらきっともっと大変だっただろう。
それよりもなによりも、突然トップを失った会社の方も大変だった。
俺はある程度の内部情報はわかっていたし、会社についての勉強だってちゃんとやってはいたけど、父に教わりながらやるのと自分一人で何とかするのは大きな差だった。
だからそこから必死に頑張ったんだ。
幸い父が優秀な幹部達を揃えていたからこそ何とかなったと言っても過言ではない。
そしてある程度社長としての体裁を保てそうだというところまで来たので、大学卒業と共に社長に就任。
若造が本当にいいのかなとも思ったけど、皆に望まれたのでもうやるしかなかった。
基本真面目な俺は来る日も来る日も仕事に励んだ。
与えられた仕事をこなしながら勉強し、早く一人前の社長として認められるようにと頑張ったんだ。
でも────。
「あ~~~!!くそっ!!」
正直ストレスMax!ストレスフル!!
これまで大学生活満喫してた俺には本当に耐えられないほどの激務で、ここはブラック企業かとデスクに突っ伏しながら俺は呻いた。
義務はわかってるしやる気だってある。
でも、でも──────。
「いい加減、やってられっかーーーーー!!」
流石に休みなく働き過ぎて、疲れから限界を迎えてしまった俺はやけくそになって家に帰ると大学時代に買った服を着て、髪形を変え、眼鏡をはずして夜遊びスタイルに大変身してやった。
「今日くらい社長ってことは忘れて遊んでやる…!!」
土曜の夜に遊んで何が悪いとばかりに俺は勢いのままに夜の街へと飛び出した。
仕事は明日やったらいい。
気分転換くらいしたっていいじゃないか。
そんなやさぐれた気分で飛び出したんだけど────。
カラン…とグラスの中で崩れる氷の音を聞きながら俺は結局カウンター席でぐったりしていた。
そりゃそうだ。
疲れが溜まってるところに酒を飲んだらこうなることくらいわかり切っていた。
でも…それでも今日はどうしようもなく飲みたい気分だったんだ。
「うぅ…最悪」
そんな俺の隣の席に同い年くらいの男が座る。
「いつもので」
バーテンにそう声を掛けているからきっと常連なのだろう。
そう思いながら俺はそっと身を起こして相手の方を見る。すると相手も俺の方を見ていて、ニコッと笑いかけてきた。
「見ない顔だけど、もしかしてここ、今日は初めて?」
そう聞かれて俺は素直にコクリと頷く。
「そうなんだ。俺はセイ。宜しく」
「宜しく。俺は……カナデ」
本当の名前は羽風 奏(はねかぜ そう)って言うんだけど、そのままだと身バレしそうで俺はつい嘘を吐いた。
でもそんなのは相手に分かりっこないので、カナデって言うんだと素直に受け取ってもらえる。
「じゃあ今日の出会いに、乾杯」
そしてセイはバーテンに言って俺の酒も頼むと、それを受け取るや否や乾杯を促してきた。
チンッと軽い音を立ててグラスが鳴るのを聞きながら、ああこういう出会いも悪くないなと思った。
***
「うぅ~…頭がガンガンする~……」
昨日は結局セイと二人で何だかんだと楽しい時間を過ごした。
そう。酒を飲むだけではなく…………。
「カナデ。大丈夫か?」
「うん。まあ……」
するりと腰に巻きつく腕はそのセイのもの。
つまりは出会ったその日に寝てしまったのだ。
誘ってきたのはセイだけど、それに流されたのは俺だ。
俺は別にゲイじゃないけど、ちょっと色々あって女に嫌気が差していたこともあり試しに寝てみてもいいかなと思ってそのまま抱かれてしまった。
セイは俺が初めてだと知っても別に面倒臭がらずに丁寧に慣らして抱いてくれたし、結構なテクニシャンだったから初めてでも気持ち良くなれた。
一番嬉しかったのは、疲れている俺を癒したいからって甘やかすように抱いてくれたこと。
それでここ最近張りつめていた気持ちがフッと緩んで、素の俺に戻れたような気がしたんだ。
だから正直セイには感謝してる。
「セイ。昨日はありがとな」
そんな俺にセイがどこか余裕を見せながらクスリと笑う。
「いや?カナデの処女、貰っちゃって悪かったな」
「俺はセイが初めてでよかったけど?」
「……それって気持ち良かったってこと?」
「まあな。それ以外でも……セイには感謝してる」
何と言っていいかはわからないけど、単なるセックスじゃなく、身も心も気持ちよくされて癒されたって感じ?
だから俺は笑顔で礼を言って服を着た。
そんな俺にセイが後ろから抱きついてきて、そっと耳元に甘い囁きを落としてくる。
「じゃあ…また今度会った時も抱いていいか?」
「そうだな。また…次に会えたら考えるよ」
そしてチュッとキスを交わして俺はあっさりとセイに別れを告げた。
きっともう会うこともないだろう────そう思いながら…。
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