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夜の街編
2.出会い Side.セイ
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俺は姫野 誠(ひめの まこと)。
某大手メーカーの社長の息子で、将来を期待された御曹司というやつだ。
これが地味に面倒臭いことこの上ない。
人付き合いは多いし、女は寄ってくるしでうんざりしていた。
だからいつも週末は遊び歩いてストレスを発散させていたりする。
でも流石に本名で遊んだりはする気がなくて、専ら夜の街ではセイと名乗っていた。
万が一にでも金持ちと思われたら鬱陶しい女が寄ってきてうざいからだ。
俺は男が好きだから、遊んでいる時にまで女に言い寄られたくはない。
そうやって適度に遊び、適度にストレスを発散する日々に俺は満足していたし、適度に男を引っかけて抱くことだって多々あった。
正に充実した日々と言えるかもしれない。
そんな日々を送っていたところ、いつものように行きつけのバーへと足を運ぶと、初めて見る男がバーカウンターで疲れたように突っ伏しているのが目に入った。
最初は失恋でもしたのかとも思ったけど、近づいたら死にかけのサラリーマンかって感じで疲れ果てた空気を醸し出していたからすぐに違うと気づいた。
きっとブラック企業勤めで、やっともぎ取った時間に飲みに出て、そのまま酔いが回ってしまったパターンなんだろう。
ご愁傷様。
せめて一杯だけでもおごってやるかと思い隣の席に座ると、その男は気丈にも身体を起こしてそっと俺の方を窺ってきた。
(うわ…。結構タイプかも)
確かに疲れ果てた顔はしているけど、よく見ると自分好みのベイビーフェイス。
どこか幼さを感じさせる柔和な顔はドストライクと言ってもいいかもしれない。
もうそれだけで抱きたくて仕方がなくなってしまった。
(今日はこの男にしよう)
絶対に持ち帰ってやると思いながら笑顔で酒を酌み交わし、適度に水も勧めながら色々と男の情報を引き出していく。
それによると、やはり思った通り働き詰めでいい加減限界がきて飲みに飛び出したのだということが分かった。
ビンゴだ。
それならそれで自分が癒してやればいい。
身も心も疲れ切っているところで優しくしてやればあっという間に落ちてくれるはずとそっとほくそ笑む。
案の定カナデと名乗った男は誘いに乗ってきて、あっさりと俺のものになってくれた。
しかも狙った通りの処女だ。
美味しすぎてたまらない。
酔って火照った身体で弱々しく身悶え、俺の腕の中で喘ぐ姿は思った以上にそそられるもので、何度も大丈夫だと声を掛けて優しく抱いてやった。
こんな姿、これまで抱いてきた相手に見られたら『誰だよお前?』って驚かれるかもしれない。
それくらい甘い声で名前を呼んで、丁寧に愛した。
だからなのか、最中に「セイ…」って呼ばれて抱きつきながら「もっと突いて」って甘えたように言われた時は爆発するかと思った。
(ヤバい。何これ。可愛すぎ…!)
滅茶苦茶タイプの男にそんな甘え方をされたら張りきるどころの騒ぎじゃない。
結局カナデは初めてだったというのに、三ラウンドも楽しんでしまった。
もう恋人にしてもいいかな?
いいよな?
そう思っていたのに、朝起きたらするりと逃げられてしまった。
向こうの方から依存してきてくれるかと思ったのに、連絡先の交換すらせずカナデはあっさりと帰ってしまったのだ。
また会ったら抱いてもいいと言ってくれたのがせめてもの救いか?
次の週末もまたあの店に行ってみようか?
カナデが来てくれていたらまた抱けばいいし、今度こそ連絡先を交換しよう。
そう思っていたのに……次の週末にカナデの姿はそこにはなくて、俺の何かに火がついた。
(カナデ……)
絶対に見つけて今度こそ連絡先をゲットしてやる!
ついでにブラック企業をやめさせて自社に引き抜いたってかまわないかもしれない。
その方がいつでも会えるしいいかもしれないとさえ思い始めている自分がいた。
でも────。
「初めまして。羽風コーポレーション社長に就任した羽風 奏(はねかぜ そう)と申します」
そう言ってにこやかに父に挨拶してきた男を見て俺は雷に打たれたようなショックを受けた。
(羽風…奏?カナデ…だよな?)
かっちりとした高級スーツに身を包み、ピシッと整え後ろに流した髪。
真面目そうな黒ぶち眼鏡を掛けたその男はあの日出会ったカナデとは全く違ういで立ちではあったけど、俺にはすぐにわかってしまった。
(そんな……)
まさかこんなに若いのに社長だったなんてと愕然としてしまう。
年も自分と同じくらいだし、絶対にブラック企業勤めだと思っていたのに……。
けれど後で父から聞いたところによると、カナデの父親は急な事故で亡くなってしまったらしく、そのせいで急遽カナデが社長として就任することになってしまったのだとか。
(それでか……)
それであんなに疲れ切っていたのだと納得がいった。
けれどそうなってくると話は別だ。
俺はカナデを手に入れるためにどうしたらいいんだろう?
向こうは俺に気づかなかったようだったから、それも正直気にくわない。
いくら見た目を変えてるからって酷くないだろうか?
こっちはすぐにわかったというのに……。
なんだか自分ばかりが一方的に向こうを求めているようで悔しくなった。
「…………どう捕まえてやろうか」
こうして再会できたのなら逃がす気なんて更々ない。
単にタイプの男と言うだけでなく、俺はカナデを手に入れたくて仕方がなくなっている自分に気がついた。
何が何でももう一度抱きたい。
絶対に捕まえて、あの熱を孕んだ目でもっとと言わせて啼かせてやりたかった。
「カナデ…」
(もうお前以外を抱いたりしないから、俺にお前を捕まえさせてくれ)
まずは友人から?
それとも…セフレ?
求める関係は恋人関係以外考えられないけど、逃がさないようしっかり捕まえよう。
「社長だってかまわない」
そう思いながら、俺はフッと悪い笑みを浮かべたのだった。
某大手メーカーの社長の息子で、将来を期待された御曹司というやつだ。
これが地味に面倒臭いことこの上ない。
人付き合いは多いし、女は寄ってくるしでうんざりしていた。
だからいつも週末は遊び歩いてストレスを発散させていたりする。
でも流石に本名で遊んだりはする気がなくて、専ら夜の街ではセイと名乗っていた。
万が一にでも金持ちと思われたら鬱陶しい女が寄ってきてうざいからだ。
俺は男が好きだから、遊んでいる時にまで女に言い寄られたくはない。
そうやって適度に遊び、適度にストレスを発散する日々に俺は満足していたし、適度に男を引っかけて抱くことだって多々あった。
正に充実した日々と言えるかもしれない。
そんな日々を送っていたところ、いつものように行きつけのバーへと足を運ぶと、初めて見る男がバーカウンターで疲れたように突っ伏しているのが目に入った。
最初は失恋でもしたのかとも思ったけど、近づいたら死にかけのサラリーマンかって感じで疲れ果てた空気を醸し出していたからすぐに違うと気づいた。
きっとブラック企業勤めで、やっともぎ取った時間に飲みに出て、そのまま酔いが回ってしまったパターンなんだろう。
ご愁傷様。
せめて一杯だけでもおごってやるかと思い隣の席に座ると、その男は気丈にも身体を起こしてそっと俺の方を窺ってきた。
(うわ…。結構タイプかも)
確かに疲れ果てた顔はしているけど、よく見ると自分好みのベイビーフェイス。
どこか幼さを感じさせる柔和な顔はドストライクと言ってもいいかもしれない。
もうそれだけで抱きたくて仕方がなくなってしまった。
(今日はこの男にしよう)
絶対に持ち帰ってやると思いながら笑顔で酒を酌み交わし、適度に水も勧めながら色々と男の情報を引き出していく。
それによると、やはり思った通り働き詰めでいい加減限界がきて飲みに飛び出したのだということが分かった。
ビンゴだ。
それならそれで自分が癒してやればいい。
身も心も疲れ切っているところで優しくしてやればあっという間に落ちてくれるはずとそっとほくそ笑む。
案の定カナデと名乗った男は誘いに乗ってきて、あっさりと俺のものになってくれた。
しかも狙った通りの処女だ。
美味しすぎてたまらない。
酔って火照った身体で弱々しく身悶え、俺の腕の中で喘ぐ姿は思った以上にそそられるもので、何度も大丈夫だと声を掛けて優しく抱いてやった。
こんな姿、これまで抱いてきた相手に見られたら『誰だよお前?』って驚かれるかもしれない。
それくらい甘い声で名前を呼んで、丁寧に愛した。
だからなのか、最中に「セイ…」って呼ばれて抱きつきながら「もっと突いて」って甘えたように言われた時は爆発するかと思った。
(ヤバい。何これ。可愛すぎ…!)
滅茶苦茶タイプの男にそんな甘え方をされたら張りきるどころの騒ぎじゃない。
結局カナデは初めてだったというのに、三ラウンドも楽しんでしまった。
もう恋人にしてもいいかな?
いいよな?
そう思っていたのに、朝起きたらするりと逃げられてしまった。
向こうの方から依存してきてくれるかと思ったのに、連絡先の交換すらせずカナデはあっさりと帰ってしまったのだ。
また会ったら抱いてもいいと言ってくれたのがせめてもの救いか?
次の週末もまたあの店に行ってみようか?
カナデが来てくれていたらまた抱けばいいし、今度こそ連絡先を交換しよう。
そう思っていたのに……次の週末にカナデの姿はそこにはなくて、俺の何かに火がついた。
(カナデ……)
絶対に見つけて今度こそ連絡先をゲットしてやる!
ついでにブラック企業をやめさせて自社に引き抜いたってかまわないかもしれない。
その方がいつでも会えるしいいかもしれないとさえ思い始めている自分がいた。
でも────。
「初めまして。羽風コーポレーション社長に就任した羽風 奏(はねかぜ そう)と申します」
そう言ってにこやかに父に挨拶してきた男を見て俺は雷に打たれたようなショックを受けた。
(羽風…奏?カナデ…だよな?)
かっちりとした高級スーツに身を包み、ピシッと整え後ろに流した髪。
真面目そうな黒ぶち眼鏡を掛けたその男はあの日出会ったカナデとは全く違ういで立ちではあったけど、俺にはすぐにわかってしまった。
(そんな……)
まさかこんなに若いのに社長だったなんてと愕然としてしまう。
年も自分と同じくらいだし、絶対にブラック企業勤めだと思っていたのに……。
けれど後で父から聞いたところによると、カナデの父親は急な事故で亡くなってしまったらしく、そのせいで急遽カナデが社長として就任することになってしまったのだとか。
(それでか……)
それであんなに疲れ切っていたのだと納得がいった。
けれどそうなってくると話は別だ。
俺はカナデを手に入れるためにどうしたらいいんだろう?
向こうは俺に気づかなかったようだったから、それも正直気にくわない。
いくら見た目を変えてるからって酷くないだろうか?
こっちはすぐにわかったというのに……。
なんだか自分ばかりが一方的に向こうを求めているようで悔しくなった。
「…………どう捕まえてやろうか」
こうして再会できたのなら逃がす気なんて更々ない。
単にタイプの男と言うだけでなく、俺はカナデを手に入れたくて仕方がなくなっている自分に気がついた。
何が何でももう一度抱きたい。
絶対に捕まえて、あの熱を孕んだ目でもっとと言わせて啼かせてやりたかった。
「カナデ…」
(もうお前以外を抱いたりしないから、俺にお前を捕まえさせてくれ)
まずは友人から?
それとも…セフレ?
求める関係は恋人関係以外考えられないけど、逃がさないようしっかり捕まえよう。
「社長だってかまわない」
そう思いながら、俺はフッと悪い笑みを浮かべたのだった。
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