エニグマ(王道ファンタジーを目指した小説です。)

sirosai

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第3話 秘密

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「森にこんな綺麗な所があったんだね~。」

 ナインは目をキラキラと輝かせて、あたりを見渡しながら歩いていく。それに続くニケもそこに広がる景色に目が釘付けになっていた。

「そうだね~みんなにも見せてあげたいよ。」

 しばらくの間歩き続けた四人は、若いとはいえど疲れが出始めていた。
 
「ずいぶん奥まで来たわね……。」

 メルは両手を膝に乗せて前かがみになる。

「そういえばアギト。僕たちは今どこに向かってるの?」

 ニケから質問を受けたアギトは、これまでに見せたこともないような満面な笑みで、三人の方を向いた。

「ぐっ!なっ……何!?」

 三人はアギトの勢いを受けて、同じタイミングで後ろに仰け反る。

「知りたいか?」

「いや、別に。」

 メルはすかさず返事を返すが、アギトは全く聞いておらず話を続ける。

「そうかそうか、そんなに知りたいか!」

 三人はゆっくりと顔を見合わせた。

「おい!何だその面倒くさいみたいな顔は!!」

 メルが目をキラキラと輝かせ、アギトに向けて応える。

「アギトっ!どっどうしたの?!ひっ…人の心が、よっ…読めるの!?」

「うっ!こっのっ!……まあいい。これから見せるものを見たら、みんな声が出なくなるからな。」

 アギトが腕を組みながら目をつむる横を、メルが素通りする。

「はいはーい。ちゃっちゃと行くわよ。」

「っておい!俺が先頭だ!!」

 アギトは急いでみんなの先頭に立ち、歩き始める。道中生い茂る大きな葉を手で避けて進み続けたアギトが突然大きな声で叫んだ。。

「ここだ!!」

 そこはまさに秘境と呼ぶにふさわしい場所であった。

「何、ここ……。」

 そこには小さな浅瀬があった。滝の水が池を作り、溜まった水は少しずつ下流に流れていく。しかし、不自然なことに水回りの砂は海の砂浜にあるものであった。
そして三人の視界に一番に入って来たものは、その砂浜に打ち上げられた舟であった。その舟は中心から十字架の形をした柱が立ついわゆる帆船である。舟は明らかにその景色とは違和感があり、そこに広がる風景は三人を釘付けにした。

 「キッ!!レーイ!!!」

 メルは満面の笑みで叫んだ後、ナインの腕を掴み飛び出す。それに続くニケとアギト。四人は一心不乱に池に飛び込んだ。

「気持ちいいいい!」

 メルは幸せいっぱいという顔で池を堪能し、横にはニンマリと笑うナインが浮かんでいる。

「ふあああ…。いいね~。」

 十歳になる前の子供達では、この魅力に逆らうことなんて到底できるはずもなく、四人は力尽きるまで泳ぎ続けた。
 ニケ達は川の字になって、打ち上げられた魚のようにぐったりとしている。

「うえええ。もうダメだ。動けない……。」

 遊び疲れたアギトに、メルが珍しく同意する。

「私も……。」

「もう帰りたくな~い。」

「うん、泊まりたい!」

 メルに続き、ナインとニケも同意見だと言う事を主張した。横になっていた四人は沈黙し、目線を近くにある巨大なものへと向けた。

 波と共に揺れるその舟は、何年もそこにいたような風格があった。四人は黙って顔を見合わせた。

「何あれ……。」

「舟だろ……。」

「げしっ!」

 静かな時が流れていたと思いきや、メルの足がアギトの太ももにクリーンヒットした為、叫び声が辺りに響いた。

「うがっ!!」

 声も出せないほど痛がるアギトを横目に、二人は苦笑いをする。

「そういえば……アギトは中に入ったことあるの?」

 ニケがアギトに質問をした。

「んあ?ないよー。」

「何でよ?」

 メルが不満そうにアギトに告げた。

「別に……皆と来た時でもいいかなって。」

「もしかして……。」

   メルはニコリと笑いながらアギトを見た。不意に近くまで来ていたメルの顔を見たアギトは、少し顔を赤らめムスッとした表情で見返す。

「なっ……何だよ……。」

「怖かったっんでしょ?!」

「はっ、はあっ!?ちっ!ちがうわい!」

 メルとアギトは手足をバタバタさせじゃれ合う。ニケは舟を見ながら皆に提案を持ちかける。

「今はまだ明るいけど、来るまでに時間がかかったし、今日は少し早めに帰ろうか。」

「うん。そうね。」

「そうだな。舟探検はまた明日だ!」

 メルとアギトはニケの提案に乗ることにした。

「ドキッ!」

 アギトはメルから向けられていた視線に気付き、人が近づいて来た時の猫のようにギクッと跳ねた。アギトはおそるおそるメルの方を向くと、メルの手の平がアギトの顔面にかぶさる。

「んぐっ!」

「まあっアギトにしてはいいとこ教えてくれたし、明日も来てあげる!」

「素直に来たいって言えー!」

「何よ!!そっちこそ来て欲しいって言いなさいよ!」

 メルとアギトは、再び手足をバタバタとさせてじゃれ合った。

※∮※⌘※∞※⁂※§※∮※⌘※∞※⁂※§※

 ~翌日~

「ギッギイイイイイイイイイイイ。」

 アギトがおそるおそる舟の入口に付いているドアに手をかける。

「お邪魔しまーす。」
 
「こんなとこ誰もいないわよ。」

 恐怖に駆られたアギトを、後ろから見ていたメルが焚きつける。

「わかんねえだろ!こわーい魔物が住んでるかもしれねえぞ!」

「ひっひええ!」

 ナインは顔を引きつらせメルにしがみつく。

「パコッ!」

「あだっ!だからすぐ叩くなっての!」

「ナインが怖がってるでしょ!」

 アギトとメルが言い争っている横を、ニケが通り過ぎる。

「僕が入って見るよ。」

「えっ!?」

 アギトとメルは、横で呆然と立っていた。

 ニケはすっと入口を開けて中を覗いた。舟の外観は若干痛んでおり、苔なども着いているほどであったが、中は何十年もそこにあったとは思えないような状態であった。
船内は思っていたほど広くはないが生活に必要なものはそれとなく揃っており、案外綺麗に整頓されている。

「きっ綺麗じゃん!」

「そっそうね!」

 アギトとメルは強がりながらも中に入ろうとしないが、ナインは舟の中に入りあたりを見回して壁に手を置く。

「すごいね、何でこんなものがこんなとこにあるんだろう……。」

 ニケは興味津々に船内を探索していく。

「うん、すごい不思議。なんか私たちを待っていたみたい……。」

「いいっ!怖いこと言うなよナイン。」

 アギトの腕には鳥肌が現れていた。

「あっごめん……。」

 少し冷たい空気を感じるメルは何かを感じ取るように身震いをする。

「今日はもう帰りましょ!」

「えええ!まだ来てからそんなにたってないぞ。」

「今日はもう……帰りたい……。」

 アギトは残念そうな顔をしながら、メルの説得を試みるが、メルは下を向いてうずくまっていた。時間が経過しても、メルの顔色は悪くなるばかりだった。

「アギト。メル、そんなに体調が良くないみたいだから、また違う日に来ない?」

 ニケに言われたアギトは、案外とすんなりニケの提案を飲んだ。

「んーしょうがないか。じゃあ今度はみんなで色々持って来ようぜ!」

「そうだね!今日からここは僕たちの秘密基地だ!」

「それっ俺が言おうと思ったのに!」

 ニケの発言に対してアギトは驚いた顔でツッコミを入れた。

※∮※⌘※∞※⁂※§※∮※⌘※∞※⁂※§※

 四人は毎日のように集まっていた為、秘密基地まで早く着ける道を探し出していた。舟の中は四人が持ち寄ったもので埋め尽くされていき、完全に四人の部屋とかしていた。

「カッ!カン!カコン!」

 アギトは王国騎士団に入るという夢の為に、ニケとよく木の棒で剣士の真似事をしている。ニケはたまったものじゃないというような顔をしながらも、なんだかんだで付き合っていた。ニケはアギトの為に付き合っていたが、決まっていつも勝利していたのはニケだった。

「二人とも!頑張れー!」

 ナインの応援が二人のやる気をさらにあげる。

「やあああああ!!」

 アギトは持っていた木の棒をニケの肩にめがけて振り下ろす。

「カコオオオオオオン!!!」

「またニケの勝ちー!」

アギトをバカにしたようなメルの声が、あたりを包み込んだ。

「ああああ!なんでだああ!」

「ふぅー!アギトはいつも爪が甘いんだよ。」

 虫の鳴く音や鳥の鳴き声が、四人の笑い声と混ざり合う。
四人は果物採りをしたり、森の探検もした。川で魚釣りをしたり、泳ぎで競争もした。
アギトとニケが競争しているところを、メルとナインは「男子はいつもいつも」のような雰囲気を出しつつ見守る。

穏やかな日々が続いていたが、ニケ、アギト、メルの三人には、四人の間柄で一つだけ気がかりな事があった。ある日の秘密基地には珍しくナインの姿はなく、他の三人が何か後ろめたそうに話していた。

「 でもさ、やっぱり少し変だよな、ナインって……。」

「え?」

メルとニケは、アギトの言葉にあまり驚かずに反応する。

「最近は四人でよく遊ぶようになったけどさ、初めて会った時みたいにあまり喋らないときもあったりすれば、凄く元気な日もある。」

「うん。」

 たしかに二人には思い当たる節があった。テンションが上がるという感じではなく、豹変という言葉が正しかった。

 ある日、四人が河辺で遊んでいた時のこと。ニケとアギトは池に入り、魚を取ろうとしていた。いつもと同じように何気なく遊んでいた四人だったが、ナインの一言が空気を変えた。

「いやああああああ!!!」

 ナインがいきなりニケの肩にしがみつく。

「えっ!?」

 三人は驚きながらもナインを心配して近づき、アギトが声をかける。

「どっどうした!?」

 ニケの肩にしがみついたナインは何かに怯えるように震えていた。

「あ、雨がっ……。」

「大丈夫だよ!ナイン! ただの水だ。」

 ニケはナインの震える体を支え、声をかけた。ナインは唐突に身体をビクっとさせ、いつものように振る舞う。

「ご、ごめんね……!なんか疲れちゃってるのかな!みんなっ、恥ずかしいからこっちみないで!」

 ナインは照れた表情を隠したいのか両手で顔を覆った。そのようなことが今日までに何度も起きていた。ある時は泣き、ある時は叫び、またある時は笑った。

 ナインの十歳の誕生日が迫っていた頃だった。

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読んでいただきありがとうございます。

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