エニグマ(王道ファンタジーを目指した小説です。)

sirosai

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第4話 開始

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 ナインが十歳になる日の前日。三人はナインの誘いを断り、集まっていた。

「よし! !ナインの正体を暴こうぜ!」

「ええええ?!」

 アギトは少し悪い顔をしてニケとメルに提案をするが、それに驚く二人は嫌そうに声を出した。

「えっ!?暴くってどうゆうこと?!」

 ニケは冗談で言っているのだろうと思いながらも、アギトに確認をした。

「帰る時間になったら、ナインの後をつける!」

「やめなさいよ!ナインがかわいそうじゃない!」

 メルも乗り気ではない事をアギトに伝えるが、アギトはなかなか諦めようとはしない。

「うっ……。やっぱりそうかな~。」

「しかも明後日は、ナインが十歳になる大切な日よ!ナインの父さんや母さんも許さないわよ!」

 メルも口ではやめるように促してはいるが、心の中では気になっていた。それはニケも同様であった。何よりも、三人はナインのことが心配だった。そんな中、アギトは二人に疑問をなげかける。

「でもさ……。ナインのお父さんとお母さん……。知ってるか?」

 二人は固まってしまった。メルはアギトの質問に答えようと一生懸命に記憶を辿るが、一向に返す言葉がみつからない。

「それは……知らないけど……。」

「確かに……。会ったことない。」

 ニケも思い出そうと試みたが出来なかった。ナインの親や親しい人に、会ったことや見たこともないことにその時初めて気づいた。

――そうか……。僕達はずっとナインと遊んで来たけど、ナインのことは何も知らなかったんだ……。

 ニケ達は後悔に苛まれたが、知らないのも無理はなかった。本人からは家が遠いと言われ招かれたことはなく、自身の事はあまり話そうとしない子だったからだ。

 三人が黙ったまま二十分ほどが過ぎただろうか。アギトが口を開いた。

「大丈夫!そんな遅くまでは行かないよ。家を見て帰るだけさ!」

「怪しいわね……。」

 アギトは必死になってメルへの説得を試みるが、メルの疑念をはらすのにとても苦労をしているようだった。そんな空気を、ニケが断ち切るように発言する。

「僕も気になる……。」

 アギトとメルは一瞬黙り込み、ニケを見つめる。普段のニケからは想像も出来ない言動だった為、二人は呆然と立っている事しか出来なかった。

「えっ!?ニケまでどうしたのよ!」

「たしかに心配なんだ。ナインが……。」

「んっ……。」

 メルはニケの答えに対して、言い返す言葉が見つからなかった。

「メル……。」

「わかったわよ! もしバレて嫌がったら、すぐにやめるのよ!」

 メルは乗り気ではなかったが、しぶしぶアギト達の話に乗ることとなった。

「よし!決まりだなっ!!  」

 アギトの掛け声と共に決行が決まる。

――もしバレたらちゃんと謝ろう……。ちゃんと説明すればナインもわかってくれるよね……。

 ニケは、自分の行動がナインの為という気持ちからくるものであって、それは決して悪行ではないと自分に強く言い聞かせた。

※∮※⌘※∞※⁂※§※∮※⌘※∞※⁂※§※

 ナインが十歳になる日がやってきた。

「今日でナインも十歳か~。ナインの奇跡ってなんだろうな~。」

 アギトのこの会話は、十歳を前にした子供達にとって、お決まりの会話ベストワンになるだろう。なんて言ったって、人生が決まると言っても過言ではないのだから。気にならない子供なんているはずはなかった。そして、十歳になったら奇跡が送られる、これは残酷な運命を、十歳という若さで認めなければならないという事を意味していた。

「なんだろうね……。なんかドキドキしてきた……。」

 少し暗くなっているナインの気持ちを察したニケは、場を和ませようと努力する。

「死んじゃったりする訳ではないんだしさ、気楽に待とうよ。」

「だなっ!」

「そうよねっ!」

 アギトもメルもナインを心配してか、ナインに対して優しく接している。そうこうしている内に空はオレンジ色に染まり始め、ナインの帰宅するタイミングになっていた。

「バイバーイ!」

 ナインは元気に別れを告げ、帰路につく。

「バッ…バイバイ……。」

 ナイン以外の三人は、煮え切らない感情で別れを告げるが、そんな事を知らないナインは普段と変わらずいつもの方向へ歩き始める。

 三人は舟に戻り、数分後に行動を開始した。
この行動が、後に彼らを激動の冒険へと誘う幕開けになるとも知らずに。

「よし! 行くぞ!」

「うん!」

 三人は静かに覚悟を決めた。

 街は夕方から年齢層が少しずつ変わりはじめ、大通りは陽気で明るい者達で溢れかえる。そんな中、ナインは周りの店など一切気にも止めず、引っ張られるかのように歩いていった。
街は色とりどりの光に溢れ、まるで無数の花が咲き誇るような光景を作り出していた。

 ナインはしばらく歩くと、店と店の間にある狭い道に入っていった。三人は急いでナインの入っていった通路の入り口まで近づき、そーっと顔を覗かせる。
単なる所有地の境界。道中には猫が数匹、ゴミ箱の上や家の屋根などに寝そべっている。道を漂う空気はジメッとしており、まるで顔に張り付くように三人を覆った。奥には数人の人影が地面に写されおり、それはすぐにそこから離れていく。

「なにここ……。こんな道あったっけ?」

 メルは通路を見て、あまり進みたくないという顔をしながら、道を覗きこんでいる。

「普段は、ここら辺に来ないからなー。」

「そうだね……。」

 アギト、ニケもメルと同様の気持ちであった。そうこうしているうちに、ナインはぼんやりとした光が漏れている奥の通りに出ようとしていた。

「やばっ!行くぞ!見失っちまう!」

「あっ、うんっ!」

 アギトの合図で、三人は駆け足で道を進んでいく。
ニケには、時折聞こえる猫の泣き声や虫の羽音が、自分達に何かを語り掛けているようにも聴こえていた。

「ナインの家って、こんなところを通るのね……。」

「おい!おいてかれるぞ!」

 アギトは怯えているそぶりを見せるメルに声をかける。
通りを抜けると普段のエルミナス王国では見られない歓楽街が広がっていた。そこはお酒に呑まれた者たちで溢れており、そこはまるで国の裏の顔の様であった。くだらない冗談を言いあうひょうきん者。周りを気にしながら悪巧みをしているもの。絶望に打ちひしがれているもの。
どう見ても十歳になる前の子供には似つかわしくない場所だった。

 ナインは騒がしい道を歩き、街の外れへと向かっていく。段々と人通りは少なくりやがて街を抜ける。

「そろそろか……。」

――ドクンッ!!!――

「バッ!!!」  

 ニケは慌てて振り返った。前を行くアギトの声がしたと思った直後、後ろから何かが自分を呼んだような気配をニケは感じたのだった。

「どうした!?」

 ニケの突然の行動にアギトが驚いていた。

「いや、ごめん、誰かに見られていた気がして……。」

「ちょっと!怖いこと言わないでよ!ニケ!!」

「ごっごめん……。」

 三人は離れすぎずナインを追いかけていたが、ついていくのが精一杯だった。周りの店でたむろする者たちは、相変わらずはしゃいでいる。

 ナインは歩き続け、やがて人気がなくなっていく。ふと立ち止まると、すぐ横の門をゆっくりと開け中に入っていった。

「入った!!」

 ニケはすぐさま合図を送るが、すぐに唖然としてしまった。

「なっ!!ここ!?」

 メルも自分の目を疑った。

「ほっ…ほほおう……なかなか……。」

 アギトも平静を装うが、誰から見ても驚いているのは一目瞭然であった。

 ナインは誰も生活をしていなそうな、年季の入った建物に入っていった。ただし、ただの古い建物ではなく、この国で暮らす一般人にしては、かなり作りが立派な建物だった。

「何ものなの?」

 メルは建物を見ながら二人に問いかける。三人は、少しの間建物を見て戸惑っていた。

「よし!いくぞ!」

 アギトの掛け声に、メルが待ったをする。

「ちょっと!もういいじゃない!」

「えぇー!ここまで来て帰るのかよ?!」

 メルとアギトの言い合いが続き、そうこうしてるうちに三十分ほどが経っていた。メルもアギトとのやりとりに疲れはじめ、アギトは最後の一押しと言わんばかりに声を張る。

「せっかくここまで来たんだ!ひきかえせるか!」

「そうだね!」

「もおお!」

 行く気満々のニケを見たメルは、地団駄を踏みながら諦めたようだ。正面以外の入り口を探していた三人は、裏口を見つけゆっくりとドアを引いた。

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読んでいただきありがとうございます。

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