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第5話 継承
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「ギイイイイ。」
「おっ!空いてるぞ!!」
中に入った三人がいたのは台所であった。 そこには料理をした形跡があり、作られた食事は残骸からみて、一人分だろうとわかる量であった。
「カツッ!カツッ!」
三人が辺りを見回している中、こちらに向かってくる足音が聴こえた。
「なっ!!」
「誰か来る!」
向かって来る足音に、アギトも戸惑いを隠せなかった。
「くそっ!どうするっ!」
「上だ!!」
ニケが周囲を見渡すとそこには通気口があり、すかさずニケが動く。ニケはキッチンテーブルの上にのぼり、両手を合わせる。ニケは両手に足を置けるように、手を組む形となっていたのだ。すかさずアギトはニケの手に足をかけ、通気口の柵を外した。その間メルは地面に耳を着けて、足音を探った。
「あと四十秒くらいかも!」
「よし!空いたぞ!」
アギトの報告を聞いたニケが、すぐさまメルに声をかける。
「メルっ!!」
メルはニケの両手を踏み台にして通気口の中に入る。メルがニケに手を伸ばしている間、アギトは通気口の柵を隠していた。
ニケが無事に登り終えると、アギトも二人に支えられ体を入れていく。
「ガチャンッ!!」
ドアの開く音が辺りを包み込む。三人は息を殺して柵越しに下を見ていた。ドアを開けたのは執事の格好をした年配の男であった。男は辺りを見回したが、そこで起きた変化に気付く事はできなかった。
「何もないか……。今日だけは、何もあってくれるなよ……。」
何のことかさっぱりわからない三人は、顔を見合せ頷いた後、四つん這いになって通気口を進む。
「なあ……。ナインにはどんな奇跡が起きるんだろうな……。」
アギトの突拍子のない質問に、メルが答える。
「うーん……。その人に必要なモノと言われてるわよね……。なんだろう?」
「ナイン……。何故かはわからないけど……彼女は特別な気がするんだ……。」
ニケは何の根拠もないが、ナインに何か特別なものを感じていた。
「おいおい、告白か!?」
アギトはニヤニヤしながら、ニケを挑発するような言葉をぶつけた。
「えっ!!そうなの!?」
興味津々のメルは頬を少し赤く染め、興奮したようにニケに問いかけた。
「メル!しっー!!」
声を上げるメルに対して、ニケは声の音量を小さくするように促した。
「わぷっ!」
メルはこれ以上喋らないように、慌てて自分の口を手でふさいだ。
「アギトもこんなところで変な事を言わないでよ!」
ニケはアギトにも注意するよう伝えた。
「そうよ!こんなよくわからない状況で、変な事を言わないで!」
「悪い悪い!まあそれもこれも行けばわかることだろ。」
三人はどこにいるかわからないナインを探し出す為、しばらくの間ほふく前進を続けた。
「見えた!」
小さい光がだんだんと見えはじめ、その光は徐々に大きくなっていった。三人は通気口の出口を見つけたのだった。
通気口を出たそこは、三人が入った建物からは想像も出来ない程の大きさを持つ聖堂であった。三人は地面から五メートルくらいに位置する穴に出ていた。
「なっなんだここ!?」
アギトは天井と地面を見て呟いた。
「嘘でしょ……。」
ニケとメルモもあっけにとられ、呆然としている。
「すごい……。」
聖堂の真ん中には祭壇があり、ナインは白いドレスに包まれ祭壇に横たわっていた。その近くに王妃ロックフィールド・クロノス・マーレが立ち、それを魔導師と神官の服を着た者の計四人が囲んでいる。さらに離れた位置には、王国騎士団が円になりナイン達を守護していた。
どうやらナイン達の近くにいる神官と魔導師は、呪文を唱えているようであった。
「ナイン!?」
三人が身を乗り出して祭壇を見つめる。
「何やってるんだろう……。」
メルは不思議そうに下を向いて呟いた。
「家族のお話…っていう訳ではなさそうだな。」
アギトも真剣な顔をして下を見ている。
「~~この者に永遠の栄光を!永久なる勝利を!天使の祝福を!」
魔導師と神官が呪文を唱え終わった瞬間、聖堂の頂上から一筋の光が降り注ぐ。光はナインの胸に当たり、衝撃波が生まれた。光の大きさは徐々に大きくなり、ナインを囲み込んだ。すると何人もの子供達の声が聞こえ始め、王妃の胸から光の球体が現れた。
「今まで本当にありがとう。この子のこと……。お願いね。」
王妃は光の球体に向けて、優しい顔つきで話しかけた。光の球体は少しの間停滞すると、素早く頂上まで上昇した。それを見届けた神官の一人は、さらに呪文を唱え続ける。
「我らが聖女。ロックフィールド・クロノス・サーガ に天使のご加護を!」
神官の詠唱が終わると、頂上から放たれる光はさらに大きくなっていった。そして、光の中から純白の大きい羽を持った絶世の美女が姿を現し、ゆっくりと下降をはじめた。
彼女の体は人間の約三倍くらいの大きさで、そこにいた者達皆が彼女を見て、その美しさに言葉を失った。それはニケ達三人も同様であった。
「おっおおお!!」
騎士達は皆上を見上げ、脱力していた。
「すっ素晴らしい!」
神官は一言喋り、涙を流した。
彼女は頭上から降りて来ている際中に、少し顔を傾けニケ達を横目で見ていた。彼女と目があったニケ達は、驚き後ずさりをしたが彼女は顔色を変えずうっすらと笑みを浮かべた。そんな彼女の存在は、不思議とその場にいるもの全員に癒しを与えていた。
――こっ、この人は……一体何なんだ!? これは、もしかして……奇跡……なのか……。
聖堂に出たと思ったらナインが祭壇で横たわっていて、上からはいきなり大きな女性が降りてくる。ニケの頭の中が混乱するのも無理はなかった。
――けど……。何だろう……。この心が安らいでいく感覚は……。
皆が女性に見とれ、聖堂は静けさに包まれていた。
そんな中、その時は唐突に訪れた。
「ズドオオオオオオオオーン!!!」
聖堂の端で爆発が起き壁が破壊され、黒いマントを身に纏った者が侵入してきた。
「姫を見つけ、亡き者にしろ!!」
「おおおおおおお!!!」
黒マントの掛け声とともに黒服の男達が一気に攻め入ってきた。
至る所で剣と剣の接触音が鳴り響く。すぐに魔法使い達による詠唱も始まり、魔法攻撃が上空を飛び交うようになった。
「なっ!?」
ニケは呆気にとられ、口を開けたまま動けなかった。
「おいおい!なんかよくわかんないけど、やばいぞ!!」
アギトとメルも上から見下ろすことしかできずにいた。
まだ事の次第を理解出来ていない王国騎士達はざわつき慌てふためいているが、二人の騎士だけは周りの者とは違い冷静であった。
「王妃と姫様を守れえええええ!!」
王国騎士イグニスの言葉で、兵士達は我に帰り構えを取った。そこから黒服の者達との本格的な戦いが始まった。
「うおおおおおおおお!!!」
王国騎士団と黒服の激しい戦いが繰り広げられていく。
「あーあ、やな予感がしてたけど、まさかこんなことになるとはね。」
騎士団副団長のレクサスは、憂鬱さを顔に浮かべながら剣を抜き、光のような速さで黒服の中に突っ込んだ。
「くっ!団長クラスが二人もいるなんて聞いてないぞ!」
黒服が抱いた不安通り、イグニスとレクサスは次々と敵を退ける。騎士団長のイグニスは、魔法と剣撃の両方をこなすが、レクサスは剣撃メインの戦闘スタイルである。王国の者でも彼の奇跡を見た者はいない。見たとしても、その瞬間は早すぎて把握することさえ難しいと言われている。レクサスは黒服の剣撃を受け止めるように見せ、素早く受け流し敵を斬り払っていく。その姿は、優雅に水を切っていくようであった。
しかし、人数こそ大差はないが、建物を崩れさせる訳にはいかない騎士団は、大きな攻撃をする事が出来ない為、劣勢にたたされていた。
「くっ、こいつら!そこまで強くはないが、ここでは……。」
レクサスも敵を倒していくが、敵との密集状態により思うように動けずにいた。
「姫さまと、王妃様さえ守れれればそれで良い!!」
「バンッ!!」
イグニスは手のひらを地面に付けた。イグニスの間合いを示すかのように現れたその炎は、間合いを広げるようにして周りに広がった。イグニスに向かってきた敵軍は、その炎に焼かれ悶え倒れていった。
ニケ達はただ見ることしか出来なかった。そんな中、ニケ達にしか見えない位置から、黒服がナインの元に近づいていた。
「あっ!!あいつっ!!」
黒服に気づいたニケは、身を乗り出した。
「ナッ…ナインを狙ってないか!」
「どっ!どうしよう!!」
アギトとメルも黒服の存在に気づき、慌てふためいた。
「そっそんなこと言ったって!」
アギトの発言と同じタイミングで、ニケは穴から飛び出していた。穴から飛び降り着地したニケは、近くに落ちていた剣を広い黒服に立ち向かって行った。
「はああああああ!!」
「なにっ!!」
ニケは剣を上段に構え、黒服へ向けて力強く振り下ろした。
「バキイーン!」
黒服はニケの存在に気づき、持っていた剣を横に振り回した。ニケと黒服の剣が交わり、二人の剣は悲鳴をあげるかのような音を発っした。
「邪魔だっ!どけっ!!」
「いっいやだっ!!」
ニケは黒服の怒号に震えながらも、引き下がろうとはしない。
「なら死ねえ!!」
「カアアアアン!!」
黒服は剣を振り下ろしたが、ニケはかろうじて敵の攻撃を防いだ。
「なっ!!こいつ!!」
黒服はニケに向けて剣を振ったが、ニケも負けじと剣を振るう。しかし、力の差は歴然であり、四度目の剣撃でニケの剣は弾かれてしまい、黒服の剣がニケの肩に傷を負わせた。
「があああああ!!」
――いっ痛い!いやだっ!!僕はこんなところで!!
ニケが最初に剣を振るった時の勇気は、あっという間に恐怖に変えられていた。
「お前などに構っている時間などない!!死ねええ!!」
黒服は何のためらいもなく、剣をニケの頭目掛けて振り下ろした。
「ニケエエェェ!!!」
メルの声がドームに響き渡った。
※∮※⌘※∞※⁂※§※∮※⌘※⁂※
読んでいただきありがとうございます。
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「おっ!空いてるぞ!!」
中に入った三人がいたのは台所であった。 そこには料理をした形跡があり、作られた食事は残骸からみて、一人分だろうとわかる量であった。
「カツッ!カツッ!」
三人が辺りを見回している中、こちらに向かってくる足音が聴こえた。
「なっ!!」
「誰か来る!」
向かって来る足音に、アギトも戸惑いを隠せなかった。
「くそっ!どうするっ!」
「上だ!!」
ニケが周囲を見渡すとそこには通気口があり、すかさずニケが動く。ニケはキッチンテーブルの上にのぼり、両手を合わせる。ニケは両手に足を置けるように、手を組む形となっていたのだ。すかさずアギトはニケの手に足をかけ、通気口の柵を外した。その間メルは地面に耳を着けて、足音を探った。
「あと四十秒くらいかも!」
「よし!空いたぞ!」
アギトの報告を聞いたニケが、すぐさまメルに声をかける。
「メルっ!!」
メルはニケの両手を踏み台にして通気口の中に入る。メルがニケに手を伸ばしている間、アギトは通気口の柵を隠していた。
ニケが無事に登り終えると、アギトも二人に支えられ体を入れていく。
「ガチャンッ!!」
ドアの開く音が辺りを包み込む。三人は息を殺して柵越しに下を見ていた。ドアを開けたのは執事の格好をした年配の男であった。男は辺りを見回したが、そこで起きた変化に気付く事はできなかった。
「何もないか……。今日だけは、何もあってくれるなよ……。」
何のことかさっぱりわからない三人は、顔を見合せ頷いた後、四つん這いになって通気口を進む。
「なあ……。ナインにはどんな奇跡が起きるんだろうな……。」
アギトの突拍子のない質問に、メルが答える。
「うーん……。その人に必要なモノと言われてるわよね……。なんだろう?」
「ナイン……。何故かはわからないけど……彼女は特別な気がするんだ……。」
ニケは何の根拠もないが、ナインに何か特別なものを感じていた。
「おいおい、告白か!?」
アギトはニヤニヤしながら、ニケを挑発するような言葉をぶつけた。
「えっ!!そうなの!?」
興味津々のメルは頬を少し赤く染め、興奮したようにニケに問いかけた。
「メル!しっー!!」
声を上げるメルに対して、ニケは声の音量を小さくするように促した。
「わぷっ!」
メルはこれ以上喋らないように、慌てて自分の口を手でふさいだ。
「アギトもこんなところで変な事を言わないでよ!」
ニケはアギトにも注意するよう伝えた。
「そうよ!こんなよくわからない状況で、変な事を言わないで!」
「悪い悪い!まあそれもこれも行けばわかることだろ。」
三人はどこにいるかわからないナインを探し出す為、しばらくの間ほふく前進を続けた。
「見えた!」
小さい光がだんだんと見えはじめ、その光は徐々に大きくなっていった。三人は通気口の出口を見つけたのだった。
通気口を出たそこは、三人が入った建物からは想像も出来ない程の大きさを持つ聖堂であった。三人は地面から五メートルくらいに位置する穴に出ていた。
「なっなんだここ!?」
アギトは天井と地面を見て呟いた。
「嘘でしょ……。」
ニケとメルモもあっけにとられ、呆然としている。
「すごい……。」
聖堂の真ん中には祭壇があり、ナインは白いドレスに包まれ祭壇に横たわっていた。その近くに王妃ロックフィールド・クロノス・マーレが立ち、それを魔導師と神官の服を着た者の計四人が囲んでいる。さらに離れた位置には、王国騎士団が円になりナイン達を守護していた。
どうやらナイン達の近くにいる神官と魔導師は、呪文を唱えているようであった。
「ナイン!?」
三人が身を乗り出して祭壇を見つめる。
「何やってるんだろう……。」
メルは不思議そうに下を向いて呟いた。
「家族のお話…っていう訳ではなさそうだな。」
アギトも真剣な顔をして下を見ている。
「~~この者に永遠の栄光を!永久なる勝利を!天使の祝福を!」
魔導師と神官が呪文を唱え終わった瞬間、聖堂の頂上から一筋の光が降り注ぐ。光はナインの胸に当たり、衝撃波が生まれた。光の大きさは徐々に大きくなり、ナインを囲み込んだ。すると何人もの子供達の声が聞こえ始め、王妃の胸から光の球体が現れた。
「今まで本当にありがとう。この子のこと……。お願いね。」
王妃は光の球体に向けて、優しい顔つきで話しかけた。光の球体は少しの間停滞すると、素早く頂上まで上昇した。それを見届けた神官の一人は、さらに呪文を唱え続ける。
「我らが聖女。ロックフィールド・クロノス・サーガ に天使のご加護を!」
神官の詠唱が終わると、頂上から放たれる光はさらに大きくなっていった。そして、光の中から純白の大きい羽を持った絶世の美女が姿を現し、ゆっくりと下降をはじめた。
彼女の体は人間の約三倍くらいの大きさで、そこにいた者達皆が彼女を見て、その美しさに言葉を失った。それはニケ達三人も同様であった。
「おっおおお!!」
騎士達は皆上を見上げ、脱力していた。
「すっ素晴らしい!」
神官は一言喋り、涙を流した。
彼女は頭上から降りて来ている際中に、少し顔を傾けニケ達を横目で見ていた。彼女と目があったニケ達は、驚き後ずさりをしたが彼女は顔色を変えずうっすらと笑みを浮かべた。そんな彼女の存在は、不思議とその場にいるもの全員に癒しを与えていた。
――こっ、この人は……一体何なんだ!? これは、もしかして……奇跡……なのか……。
聖堂に出たと思ったらナインが祭壇で横たわっていて、上からはいきなり大きな女性が降りてくる。ニケの頭の中が混乱するのも無理はなかった。
――けど……。何だろう……。この心が安らいでいく感覚は……。
皆が女性に見とれ、聖堂は静けさに包まれていた。
そんな中、その時は唐突に訪れた。
「ズドオオオオオオオオーン!!!」
聖堂の端で爆発が起き壁が破壊され、黒いマントを身に纏った者が侵入してきた。
「姫を見つけ、亡き者にしろ!!」
「おおおおおおお!!!」
黒マントの掛け声とともに黒服の男達が一気に攻め入ってきた。
至る所で剣と剣の接触音が鳴り響く。すぐに魔法使い達による詠唱も始まり、魔法攻撃が上空を飛び交うようになった。
「なっ!?」
ニケは呆気にとられ、口を開けたまま動けなかった。
「おいおい!なんかよくわかんないけど、やばいぞ!!」
アギトとメルも上から見下ろすことしかできずにいた。
まだ事の次第を理解出来ていない王国騎士達はざわつき慌てふためいているが、二人の騎士だけは周りの者とは違い冷静であった。
「王妃と姫様を守れえええええ!!」
王国騎士イグニスの言葉で、兵士達は我に帰り構えを取った。そこから黒服の者達との本格的な戦いが始まった。
「うおおおおおおおお!!!」
王国騎士団と黒服の激しい戦いが繰り広げられていく。
「あーあ、やな予感がしてたけど、まさかこんなことになるとはね。」
騎士団副団長のレクサスは、憂鬱さを顔に浮かべながら剣を抜き、光のような速さで黒服の中に突っ込んだ。
「くっ!団長クラスが二人もいるなんて聞いてないぞ!」
黒服が抱いた不安通り、イグニスとレクサスは次々と敵を退ける。騎士団長のイグニスは、魔法と剣撃の両方をこなすが、レクサスは剣撃メインの戦闘スタイルである。王国の者でも彼の奇跡を見た者はいない。見たとしても、その瞬間は早すぎて把握することさえ難しいと言われている。レクサスは黒服の剣撃を受け止めるように見せ、素早く受け流し敵を斬り払っていく。その姿は、優雅に水を切っていくようであった。
しかし、人数こそ大差はないが、建物を崩れさせる訳にはいかない騎士団は、大きな攻撃をする事が出来ない為、劣勢にたたされていた。
「くっ、こいつら!そこまで強くはないが、ここでは……。」
レクサスも敵を倒していくが、敵との密集状態により思うように動けずにいた。
「姫さまと、王妃様さえ守れれればそれで良い!!」
「バンッ!!」
イグニスは手のひらを地面に付けた。イグニスの間合いを示すかのように現れたその炎は、間合いを広げるようにして周りに広がった。イグニスに向かってきた敵軍は、その炎に焼かれ悶え倒れていった。
ニケ達はただ見ることしか出来なかった。そんな中、ニケ達にしか見えない位置から、黒服がナインの元に近づいていた。
「あっ!!あいつっ!!」
黒服に気づいたニケは、身を乗り出した。
「ナッ…ナインを狙ってないか!」
「どっ!どうしよう!!」
アギトとメルも黒服の存在に気づき、慌てふためいた。
「そっそんなこと言ったって!」
アギトの発言と同じタイミングで、ニケは穴から飛び出していた。穴から飛び降り着地したニケは、近くに落ちていた剣を広い黒服に立ち向かって行った。
「はああああああ!!」
「なにっ!!」
ニケは剣を上段に構え、黒服へ向けて力強く振り下ろした。
「バキイーン!」
黒服はニケの存在に気づき、持っていた剣を横に振り回した。ニケと黒服の剣が交わり、二人の剣は悲鳴をあげるかのような音を発っした。
「邪魔だっ!どけっ!!」
「いっいやだっ!!」
ニケは黒服の怒号に震えながらも、引き下がろうとはしない。
「なら死ねえ!!」
「カアアアアン!!」
黒服は剣を振り下ろしたが、ニケはかろうじて敵の攻撃を防いだ。
「なっ!!こいつ!!」
黒服はニケに向けて剣を振ったが、ニケも負けじと剣を振るう。しかし、力の差は歴然であり、四度目の剣撃でニケの剣は弾かれてしまい、黒服の剣がニケの肩に傷を負わせた。
「があああああ!!」
――いっ痛い!いやだっ!!僕はこんなところで!!
ニケが最初に剣を振るった時の勇気は、あっという間に恐怖に変えられていた。
「お前などに構っている時間などない!!死ねええ!!」
黒服は何のためらいもなく、剣をニケの頭目掛けて振り下ろした。
「ニケエエェェ!!!」
メルの声がドームに響き渡った。
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