幸せを知る異世界転移

ちゃめしごと

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Prologue

盗賊団(次回予告的なお話)

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 正直な話、私は自分自身が馬鹿なのでは無いかと思う時がある。

 それは父の金を盗んだ時も後から思った事だが、今現在も自分で発言しておいて馬鹿な事を言ったと思っている。 

「しょ、正気かよレイシュール」

 思わずといった様子で言葉を漏らしたベンダルに、私は顔を向ける事が出来なかった。

 他の複数人の盗賊団の仲間達も、ある者は笑い、ある者はやる気を眼に灯し、ある者は呆れた眼で私を見ていた。

「も…もう一度言ってくれないか?何をしたいって?」

 ベンダルの問い掛けに、私は顔を背けるように、盗賊団の面々に背を向けた。

 もう一度言う事になるとは思ってもみなかったが、今度は言葉を考えて言えそうだ。


「…ユーマに、私の仕事ぶりを見せたいのだ」


 大きな音を誰かが立てて、一人、笑いを我慢して椅子ごと転げた様だ。

 あれは…ダイナーか、アジトの床を何度も拳で叩いて必死に笑いを堪えているが、口元から空気が抜ける音が何度もしている。

 後で笑えない様にしてやろう…。

「ユーマ二…ドウミセル?」

 ガネットからの指摘に、私は思わず黙り込んだ。

 …まるで考えていなかった。

 ただ単純に、ユーマに凄いと思われたいという願望が口から突いて出ただけ…という事実は隠しておこう。

「戦闘があると…ユーマが…危険」

 ジュネはユーマと最近良く遊んでいる所を見るし、ユーマを心から心配してくれての言葉だろう。あれからも何度かユーマに戦闘の雰囲気を教える為に頑張っている様だ。

 しかし、戦闘があると危険か…私が一番得意なのは盗みでは無く戦闘だが…ユーマを背負ったまま戦闘は出来ないしな。

「ん、それならアレは?ほらほら、廃城とか探索する奴」

 チャルチュが金の髪を試行錯誤しながらヘアスタイルを整えがてらに口を挟んできた。

財宝発掘トレジャーハントの事かなん?」
「そうそう!あれならユーマも危なくないし、大丈夫なんじゃないか?」

 ダイナーも乗り気の様だ。

 …だが、待て、確かにそれなら安全だしユーマも皆と共に行動が出来て楽しい時間を過ごせるだろう。

「そうだな…丁度、数日前にアジトから西の方角に地下遺跡を見付けたと団員の一人から報告が上がっている。そこに行ってみるか」

 あの団員には感謝だな、それにしても財宝発掘トレジャーハントか…ユーマ程の歳の頃は書物で読んだ物語にワクワクした物だ。

 そうと決まれば早速準備を…いや、待てよ…我が盗賊団で財宝発掘トレジャーハントを担当しているのは金猫の二つ名を持つチャルチュと、どんな宝箱でも開けて見せる凄腕の鍵足のダイナーだ。

 …私は、何も出来ないのではないか?

「トレジャーハントカ…」
財宝発掘トレジャーハントだと俺達は留守番だな」

 ガネットとマシェットがそう呟くのを聞いて、いつもであれば私も留守番組である事に思い至った。

 まさか、こうなる事が分かっていて…!?

「ふふ、ふふふふ、ふふふふふふふ」
「くく、くくく、くくくくくくく」

 チャルチュとダイナーが不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ていた。確実に、こいつらの作戦に嵌められたのか…!
 団長たる者、一度言葉にしたら覆る訳にはいかない、財宝発掘トレジャーハントは決行だ。

 果たして私に、財宝発掘トレジャーハントの場で父親として誇らしい姿を見せる事が出来るだろうか。

「チャルチュ、俺達は・・・明日の道具の整備とかしておくんよ」
「そうだなダイナー、私達は・・・明日ユーマにちゃんと良い所魅せられる様にな!」

 高笑いをしながら去って行く二人の姿を、私は悔しさから握り込んだ拳に視線を落として、見送る事も出来なかった。




 ベンダルからの一言

「ウチの盗賊団、ユーマが関わると一気に馬鹿になるし三人とも忘れてるみたいなんだけどよ、チャルチュは猫目で活躍するし、ダイナーも鍵開けで活躍するだろうけど、守る為に一番傍に居る事が出来るのってレイシュールなんだよな」
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