勇者として生きる道の上で(R-18)

ちゃめしごと

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第一章 島からの旅立ち

第十六話 お風呂は怖い by アル お風呂は色々不味い by ギル

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――――――――――
湯浴み宿にて

「むー」
「だから悪かったって、そんな気にすることでも無いだろ?」
「ぶくぶくぶくぶくぶく」
「お湯の中でぶくぶくするなって」

…………

※ギルバート視点


 しまったなぁ、変なミスをしちまった。
 湯浴み宿に着いて、さぁ風呂場にいざ行かん!と脱衣所で服を脱いでいる時だ。

 アルが俺の身体を見て硬直していたもんだから何かと思った。
「ど、どうした?」
「ギル兄…その…」

 そこで俺は自分の身体を見下ろしてみて、深い傷や浅い傷が所々にあることを思い出した。
 そうだよな…見ていて気分の良い物じゃないよな。

「すまねぇなアル、それでも俺はこいつを隠すわけにはいかないんだ」

 この傷の一つ一つに思い出がある。
 この傷の一つ一つに散って行った命が宿っている。

 その思い出と命を隠す様な真似を俺はしたくない。

「これは、勲章なんだよ」
「ギル兄…」

 真新しい傷も幾つかある。
 それは他でも無い、アルの未来の為に出来た傷だ。

 よく見て、覚えていて欲しい、お前の為に身体を張れる男だってことを、お前は誰かに、身体を張ってもらえるだけの価値がある男なんだって事を。

「わりぃな」

 自然と零れた笑みが恥ずかしくて、俺はアルを脱衣所に残して先に湯浴み場へと向かった。





「そう…だよね」
 僕は納得していた。
「あれだけ大きければ、勲章だよね…」
 自分のおちんちんと見比べて、ギル兄の物がどれだけ大きいかということを…。


……………

※アル視点


「んっ…はぁ~~~、良いお湯だったなぁ」
「……お風呂、怖い」

 隣で腕を広げて背を伸ばし、身体から湯気を立ち上らせてホカホカしているギル兄とは対照的に、僕は肩を落として眉を下げ、意気消沈していた。

「そう落ち込むなって、胸元までタオルで隠してたお前も悪いんだぜ?」
「うぅ…だからって…だからって女の子と間違われるなんて!」

『僕と一緒に夜釣りにでも行かないかい?』
『この港町では湯浴み場でも釣りが行われるのさ、僕に釣られてみないかい?』
『お嬢さん、もしよろしければこの後シュランプスープでも一緒に如何ですか?』

 なんて、思わず砂糖を吐きだしたくなる様な言葉を連発され、

『ねぇねぇ君ぃ、僕のおうちでメイドさんやらない?』
『おほほほっ、ど、ど、どうして男湯に女児が迷い込んでるですかぁ!?』
『ぐふ、ぐふふ、ねぇねぇ、もしよかったら、僕が少し変わった味のする飴ちゃんをあげるよ?』

 なんて、思わず食べ物を嘔吐しそうになる様な言葉を連発され、

『テメェらぁ!!アルに何をしようってんだぁ!!?』

 と、結果として彼らはギル兄の裸拳が連発された。

 どうしたこんな事になったのか、それは一人の変態さんがとても丁寧に解説してくれていた。

『げふぇ、げふぇふぇ、君は…男の子だね?だけど、身体を洗って節々が暖まった事でほんのりと朱に染まっていることや、恥ずかしげに胸元と股間をタオルで隠していること、銀色の髪の艶やかさと中性的ながらも可愛らしさが際立つ顔立ち、無駄な脂肪が付いていないから…だけれども引き締まった筋肉が為か逆に女児によく居る成長の過程でスラッとしたスタイルに成長途中の様にも見える…何より、この状況に困惑して眉を下げて少し瞳を潤ませている事がそれらに拍車を掛けて君という素材を最大限まで魅力的に魅せているんだ』

 早口にまくしたてられた事で怖くなって涙目になってしまったのは仕方ないと思う。
 
 そんな事があったから、僕はお風呂の中でずっとギル兄の背中に張り付いていた。
 ゴツゴツとしていたけれど、筋肉の割れ目や筋を触ると安心出来て頼りになった。

 時折ギル兄が「くっ…」とか、「んっ…」と声を漏らしていたけれど筋肉に力を入れていたのかもしれない、たまにピクピクと動いていたから、湯浴み場でも修行をするのは流石だと思う。

「まぁ湯浴み場でのバカ騒ぎはクリッケの華だから許してやってくれよ、あいつら、俺に殴られても笑ってただろ、そういう場所なんだよ此処は」
「むぅ…分かったよ…」

 外の涼風を浴びても寒さを感じないくらいに身体が暖まっている。

 ギル兄と一緒に歩いて宿屋へと向かう途中、僕は最早習慣化している町の散策へと乗り出た。
「んー、そしたら俺は先に戻ってるぜ」
「うん」

 そして、海岸線が見える場所へと行く。
 空と海の交わる景色、内陸部に住んでいる時は見られなかった景色だ。

 潮風の運んでくる香りが海の町、港町であることを伝えてくるかのようだった。

「あと…二日…」
 剣の腕も上がってきた。
 覚悟も決まってきた。

 あと、僕がするべきことは…。

「こんばんは、アル」

 クレア姉さんとの話し合いに決着を付けることだ。










※作者です。

まずは謝罪を、続けてみて下さっている方で15時時点で16話を投降した際に投降が上手くいっておらず。表示がおかしなことになっていたかと思います。

大変不快な思いをさせてしまった方もいらっしゃるかと思います。

再度投降をさせていただきましたが、ご覧頂いている皆様にこの場を借りて謝罪をさせていただきます。大変申し訳ございませんでした。


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