勇者として生きる道の上で(R-18)

ちゃめしごと

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第二章 船上の証明

第二十二話 船室魔法教室

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今日最後の更新です!

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 立ちあがったギル兄は人差し指を立てた。

「さてアル、魔法ってのは書籍に書かれた修行方法だと意思を鍛えるだの自我をコントロールするだの頭に光が宿る姿をイメージだの下らない事が書いてあるがあれは参考にするな」
「う…うん」
「いや、先人の残した貴重な教えではあるんだが、理論的に学ぶのが苦手な奴には向かない書き方がされているからな、剣の稽古を付けている時にも感じたが、アルは戦闘方面に関しては感覚派の人間だと思うぞ」

 確かに…本で剣の振り方を見て真似てみたけど良く分からなくて、自分で一番振り易いやり方でやっていたんだよね…結果的に成長につれて一番最初に覚えた振り方は合わなくなっていて、クリッケの町でギル兄に矯正されたんだけども…。

「本来、魔法ってのは言葉に出す必要も無く使える物でな、使用する際の助けになるから魔法を型に嵌めて色々と名前を付けたりはしているが、正直使い方は千差万別、Stgが高ければ高い程、でけぇ魔法が使えるようにるって覚えておけばいい」
「えっと、それじゃあファイアボールとかサンダーボルトは…」
「あぁ、ありゃ格好付けたいか想像力の乏しい奴等が派手に叫んで自分に自信を付けようとしてるだけだ」
「うわぁ…バッサリだ」

 僕が憧れた英雄物語の登場人物への幻想が…。
 苦笑いをする僕に、ギル兄は人差し指の先端を少しだけ揺らして注目を促した。
 
「俺に使えるのは闇と影と空間、基本的に一人の人間が使う事が出来るようになる魔法は二つだと言われているからこれでも凄い方なんだが…アルは規格外だな、それは出来るだけ隠した方が良いぞ」
「うぐ…やっぱりそうなんだ」
「基本的に魔法を使う時は自分の中にある魔力を使う…こんな風にな」

 ギル兄の指先に黒い靄があつまり、すっかりと人差し指を隠してしまった。

「魔力ってのは認識さえすればすぐにでも引っ張り出せる…と思うんだが、コツがあってな」
「コツ?」
「あぁ、他人のでもいいから一度直接魔力を感じちまうのが手っ取り早いんだよ、てなわけで」
「ふぐっ…ふぁ、うぁ?」

 ギル兄の人差し指を口に入れられて、僕は驚いて変な声を出してしまった。
 その人差し指は何かを探すように口の中を動き、僕の舌を見つけると表面に添えられた。

「ほら、舐めろ」
「むぐっ…んぅ…ぴちゃっ」

 何か言ってからやってくれても良かったじゃないかと思いながらも、ギル兄の指先を舌で舐める。
 舌先にふわふわした物が当たって、それを掬い取って嚥下する。
 
 ふわふわは喉を通って胃に落ちて、僕の身体に溶けて行った。
 何故か溶けたはずのふわふわが身体全体に行きわたるのが感じられて、頭の先から足の爪先まで行きわたったのを感じた瞬間、僕は自分の体内にある魔力を感じた。

 魔力が何処にあるか…と聞かれたら全身と答えるほか無い、何処を起点に広がっているのかと聞かれれば…多分、これはお腹の真ん中を起点としている。
 おへそ…より少し上、なんだか、身体の中に穴みたいなのがあって、そこから魔力が溢れて来ているみたいだ。

「おし、魔力感知が出来たみたいだな」
「うん、多分…なんだか、ずっと溢れて来ているけど…」
「あぁ、感知したことで許容量が増えたんだろうな、アルの器が魔力を溜めておける様に適応したのさ」
「これ、止まるの?」
「あぁ、許容量を超える程に出てくる事は…本来無い、自分の意思で無理やり引き出しでもしない限りな」

 何かを思い出すように遠い目をして教えてくれた。
 魔力の溢れが止まった後、僕はギル兄に魔力の使い方を習った。

「魔力ってのは要するに干渉するための材料だと思えばいい、魔法を使おうとすると勝手に消費されるが、それを抑える事で威力の調整とかも行える」
「えっと…魔法は想像力だったよね…うむむむむ」

 僕は目を瞑って想像力を働かせて、すぐに想像する事が出来た自分が下から風を受けるというのを実践してみた。
 髪の毛がふわりと浮きあがり、魔法の発動に成功したのだと分かった。

 それと同時に、僕の中にあった魔力が少しだけ減っているのに気が付いた。
 うむむむむ、これは魔力の総量を増やす方法も知りたいぞ…。

「あー、アル、考えている事が凄く分かりやすいから言わせてもらうが、多分お前の魔力、まだまだ増えるぞ」
「え?どういうことなの?」
「まぁ簡単に言えばアルは使用可能な魔法が多い、器ってのは本来その人が使える魔法に合わせて広がっていくものだからな、勿論、魔力の総量を高める修行もあるし、船の中じゃそれ以外にやりようが無いからそれをする予定だけどな」
「えっと…なんだかギル兄には僕の魔力の総量が見えている様に感じるんだけど」
「そりゃあなぁ、俺の魔力感知はStg.2だからな、そのくらいは出来るさ、まぁ魔力感知に関しても鍛える事が出来るから安心しろ」

 その後、ギル兄から魔力感知を鍛える方法(目を閉じて自分の体内の魔力の動きに集中すること、これは魔力操作の修行にも繋がるらしい)と、魔力の総量を鍛える方法(一定量の魔力を消費し続けて常に魔力が湧き出る様にしておくこと、これも魔力操作の修行になるとか)を教えてもらって、僕はひたすらに目を閉じて右人差し指の先っぽに火を灯していた。

「よしよし…良い感じに集中出来てるな、それじゃあ俺は潮風にでも当たってくるから疲れたら休むようにしろよな?」
「…」
「すごい集中力だな…よし、頑張れよアル」

 ギル兄が何かを言って部屋から出たのは分かったけれど、何を言っていたのかまでは分からなかった。
 



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