25 / 72
第二章 船上の証明
第二十二話 船室魔法教室
しおりを挟む
今日最後の更新です!
-----------------
立ちあがったギル兄は人差し指を立てた。
「さてアル、魔法ってのは書籍に書かれた修行方法だと意思を鍛えるだの自我をコントロールするだの頭に光が宿る姿をイメージだの下らない事が書いてあるがあれは参考にするな」
「う…うん」
「いや、先人の残した貴重な教えではあるんだが、理論的に学ぶのが苦手な奴には向かない書き方がされているからな、剣の稽古を付けている時にも感じたが、アルは戦闘方面に関しては感覚派の人間だと思うぞ」
確かに…本で剣の振り方を見て真似てみたけど良く分からなくて、自分で一番振り易いやり方でやっていたんだよね…結果的に成長につれて一番最初に覚えた振り方は合わなくなっていて、クリッケの町でギル兄に矯正されたんだけども…。
「本来、魔法ってのは言葉に出す必要も無く使える物でな、使用する際の助けになるから魔法を型に嵌めて色々と名前を付けたりはしているが、正直使い方は千差万別、Stgが高ければ高い程、でけぇ魔法が使えるようにるって覚えておけばいい」
「えっと、それじゃあファイアボールとかサンダーボルトは…」
「あぁ、ありゃ格好付けたいか想像力の乏しい奴等が派手に叫んで自分に自信を付けようとしてるだけだ」
「うわぁ…バッサリだ」
僕が憧れた英雄物語の登場人物への幻想が…。
苦笑いをする僕に、ギル兄は人差し指の先端を少しだけ揺らして注目を促した。
「俺に使えるのは闇と影と空間、基本的に一人の人間が使う事が出来るようになる魔法は二つだと言われているからこれでも凄い方なんだが…アルは規格外だな、それは出来るだけ隠した方が良いぞ」
「うぐ…やっぱりそうなんだ」
「基本的に魔法を使う時は自分の中にある魔力を使う…こんな風にな」
ギル兄の指先に黒い靄があつまり、すっかりと人差し指を隠してしまった。
「魔力ってのは認識さえすればすぐにでも引っ張り出せる…と思うんだが、コツがあってな」
「コツ?」
「あぁ、他人のでもいいから一度直接魔力を感じちまうのが手っ取り早いんだよ、てなわけで」
「ふぐっ…ふぁ、うぁ?」
ギル兄の人差し指を口に入れられて、僕は驚いて変な声を出してしまった。
その人差し指は何かを探すように口の中を動き、僕の舌を見つけると表面に添えられた。
「ほら、舐めろ」
「むぐっ…んぅ…ぴちゃっ」
何か言ってからやってくれても良かったじゃないかと思いながらも、ギル兄の指先を舌で舐める。
舌先にふわふわした物が当たって、それを掬い取って嚥下する。
ふわふわは喉を通って胃に落ちて、僕の身体に溶けて行った。
何故か溶けたはずのふわふわが身体全体に行きわたるのが感じられて、頭の先から足の爪先まで行きわたったのを感じた瞬間、僕は自分の体内にある魔力を感じた。
魔力が何処にあるか…と聞かれたら全身と答えるほか無い、何処を起点に広がっているのかと聞かれれば…多分、これはお腹の真ん中を起点としている。
おへそ…より少し上、なんだか、身体の中に穴みたいなのがあって、そこから魔力が溢れて来ているみたいだ。
「おし、魔力感知が出来たみたいだな」
「うん、多分…なんだか、ずっと溢れて来ているけど…」
「あぁ、感知したことで許容量が増えたんだろうな、アルの器が魔力を溜めておける様に適応したのさ」
「これ、止まるの?」
「あぁ、許容量を超える程に出てくる事は…本来無い、自分の意思で無理やり引き出しでもしない限りな」
何かを思い出すように遠い目をして教えてくれた。
魔力の溢れが止まった後、僕はギル兄に魔力の使い方を習った。
「魔力ってのは要するに干渉するための材料だと思えばいい、魔法を使おうとすると勝手に消費されるが、それを抑える事で威力の調整とかも行える」
「えっと…魔法は想像力だったよね…うむむむむ」
僕は目を瞑って想像力を働かせて、すぐに想像する事が出来た自分が下から風を受けるというのを実践してみた。
髪の毛がふわりと浮きあがり、魔法の発動に成功したのだと分かった。
それと同時に、僕の中にあった魔力が少しだけ減っているのに気が付いた。
うむむむむ、これは魔力の総量を増やす方法も知りたいぞ…。
「あー、アル、考えている事が凄く分かりやすいから言わせてもらうが、多分お前の魔力、まだまだ増えるぞ」
「え?どういうことなの?」
「まぁ簡単に言えばアルは使用可能な魔法が多い、器ってのは本来その人が使える魔法に合わせて広がっていくものだからな、勿論、魔力の総量を高める修行もあるし、船の中じゃそれ以外にやりようが無いからそれをする予定だけどな」
「えっと…なんだかギル兄には僕の魔力の総量が見えている様に感じるんだけど」
「そりゃあなぁ、俺の魔力感知はStg.2だからな、そのくらいは出来るさ、まぁ魔力感知に関しても鍛える事が出来るから安心しろ」
その後、ギル兄から魔力感知を鍛える方法(目を閉じて自分の体内の魔力の動きに集中すること、これは魔力操作の修行にも繋がるらしい)と、魔力の総量を鍛える方法(一定量の魔力を消費し続けて常に魔力が湧き出る様にしておくこと、これも魔力操作の修行になるとか)を教えてもらって、僕はひたすらに目を閉じて右人差し指の先っぽに火を灯していた。
「よしよし…良い感じに集中出来てるな、それじゃあ俺は潮風にでも当たってくるから疲れたら休むようにしろよな?」
「…」
「すごい集中力だな…よし、頑張れよアル」
ギル兄が何かを言って部屋から出たのは分かったけれど、何を言っていたのかまでは分からなかった。
-----------------
立ちあがったギル兄は人差し指を立てた。
「さてアル、魔法ってのは書籍に書かれた修行方法だと意思を鍛えるだの自我をコントロールするだの頭に光が宿る姿をイメージだの下らない事が書いてあるがあれは参考にするな」
「う…うん」
「いや、先人の残した貴重な教えではあるんだが、理論的に学ぶのが苦手な奴には向かない書き方がされているからな、剣の稽古を付けている時にも感じたが、アルは戦闘方面に関しては感覚派の人間だと思うぞ」
確かに…本で剣の振り方を見て真似てみたけど良く分からなくて、自分で一番振り易いやり方でやっていたんだよね…結果的に成長につれて一番最初に覚えた振り方は合わなくなっていて、クリッケの町でギル兄に矯正されたんだけども…。
「本来、魔法ってのは言葉に出す必要も無く使える物でな、使用する際の助けになるから魔法を型に嵌めて色々と名前を付けたりはしているが、正直使い方は千差万別、Stgが高ければ高い程、でけぇ魔法が使えるようにるって覚えておけばいい」
「えっと、それじゃあファイアボールとかサンダーボルトは…」
「あぁ、ありゃ格好付けたいか想像力の乏しい奴等が派手に叫んで自分に自信を付けようとしてるだけだ」
「うわぁ…バッサリだ」
僕が憧れた英雄物語の登場人物への幻想が…。
苦笑いをする僕に、ギル兄は人差し指の先端を少しだけ揺らして注目を促した。
「俺に使えるのは闇と影と空間、基本的に一人の人間が使う事が出来るようになる魔法は二つだと言われているからこれでも凄い方なんだが…アルは規格外だな、それは出来るだけ隠した方が良いぞ」
「うぐ…やっぱりそうなんだ」
「基本的に魔法を使う時は自分の中にある魔力を使う…こんな風にな」
ギル兄の指先に黒い靄があつまり、すっかりと人差し指を隠してしまった。
「魔力ってのは認識さえすればすぐにでも引っ張り出せる…と思うんだが、コツがあってな」
「コツ?」
「あぁ、他人のでもいいから一度直接魔力を感じちまうのが手っ取り早いんだよ、てなわけで」
「ふぐっ…ふぁ、うぁ?」
ギル兄の人差し指を口に入れられて、僕は驚いて変な声を出してしまった。
その人差し指は何かを探すように口の中を動き、僕の舌を見つけると表面に添えられた。
「ほら、舐めろ」
「むぐっ…んぅ…ぴちゃっ」
何か言ってからやってくれても良かったじゃないかと思いながらも、ギル兄の指先を舌で舐める。
舌先にふわふわした物が当たって、それを掬い取って嚥下する。
ふわふわは喉を通って胃に落ちて、僕の身体に溶けて行った。
何故か溶けたはずのふわふわが身体全体に行きわたるのが感じられて、頭の先から足の爪先まで行きわたったのを感じた瞬間、僕は自分の体内にある魔力を感じた。
魔力が何処にあるか…と聞かれたら全身と答えるほか無い、何処を起点に広がっているのかと聞かれれば…多分、これはお腹の真ん中を起点としている。
おへそ…より少し上、なんだか、身体の中に穴みたいなのがあって、そこから魔力が溢れて来ているみたいだ。
「おし、魔力感知が出来たみたいだな」
「うん、多分…なんだか、ずっと溢れて来ているけど…」
「あぁ、感知したことで許容量が増えたんだろうな、アルの器が魔力を溜めておける様に適応したのさ」
「これ、止まるの?」
「あぁ、許容量を超える程に出てくる事は…本来無い、自分の意思で無理やり引き出しでもしない限りな」
何かを思い出すように遠い目をして教えてくれた。
魔力の溢れが止まった後、僕はギル兄に魔力の使い方を習った。
「魔力ってのは要するに干渉するための材料だと思えばいい、魔法を使おうとすると勝手に消費されるが、それを抑える事で威力の調整とかも行える」
「えっと…魔法は想像力だったよね…うむむむむ」
僕は目を瞑って想像力を働かせて、すぐに想像する事が出来た自分が下から風を受けるというのを実践してみた。
髪の毛がふわりと浮きあがり、魔法の発動に成功したのだと分かった。
それと同時に、僕の中にあった魔力が少しだけ減っているのに気が付いた。
うむむむむ、これは魔力の総量を増やす方法も知りたいぞ…。
「あー、アル、考えている事が凄く分かりやすいから言わせてもらうが、多分お前の魔力、まだまだ増えるぞ」
「え?どういうことなの?」
「まぁ簡単に言えばアルは使用可能な魔法が多い、器ってのは本来その人が使える魔法に合わせて広がっていくものだからな、勿論、魔力の総量を高める修行もあるし、船の中じゃそれ以外にやりようが無いからそれをする予定だけどな」
「えっと…なんだかギル兄には僕の魔力の総量が見えている様に感じるんだけど」
「そりゃあなぁ、俺の魔力感知はStg.2だからな、そのくらいは出来るさ、まぁ魔力感知に関しても鍛える事が出来るから安心しろ」
その後、ギル兄から魔力感知を鍛える方法(目を閉じて自分の体内の魔力の動きに集中すること、これは魔力操作の修行にも繋がるらしい)と、魔力の総量を鍛える方法(一定量の魔力を消費し続けて常に魔力が湧き出る様にしておくこと、これも魔力操作の修行になるとか)を教えてもらって、僕はひたすらに目を閉じて右人差し指の先っぽに火を灯していた。
「よしよし…良い感じに集中出来てるな、それじゃあ俺は潮風にでも当たってくるから疲れたら休むようにしろよな?」
「…」
「すごい集中力だな…よし、頑張れよアル」
ギル兄が何かを言って部屋から出たのは分かったけれど、何を言っていたのかまでは分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる