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第二章 船上の証明
第三十一話 溺れる
しおりを挟む☆アル視点
日中の修行を終えて船の中を探索し終えて、僕はアリス姉さんと一緒に甲板に出て来ていた。
昨日、アリス姉さんにイメージを教えて貰った所までは覚えているけれど…僕は前後の記憶が曖昧になっていた。
何か、とても気持ちの良い事をした様な記憶だけが曖昧に残っていた。
ただ甲板に出ただけなのに、僕はアリス姉さんを見ると変に胸がドキドキした。怖いとか、好きだとか、そういう感情じゃ無くて…何だか、落ち着かなくなったんだ。
「アル…おいで」
不思議と、僕はその言葉に逆らう事が出来なかった。
いや、逆らうという事を考えもしなかった。ただそれが当り前であると、アリス姉さんの言葉は僕に抵抗を全く感じさせない…どうしてだろう。
小走りで目の前まで行くと、アリス姉さんは僕の頬を撫でてくれた。温かい手の感触が、甲板に出て冷えた頬を暖めてくれる。
「良い子ね…ねぇ、アル…私は貴方に謝らないといけないわ」
「え…?」
アリス姉さんは綺麗な姿勢で僕に一礼をした。きっとそれは謝罪の印だ。頭を、下げたんだ。
だけど僕にはまるで身に覚えが無かった。どうして僕は謝られているの?そう尋ねたかった。
「私…昨日あなたの知識レベルが低下する魔法を掛けたの、だから貴方は昨日の事をイメージの部分以外ほとんど覚えていないんじゃないかしら?」
「…うん、そういう事だったんだね」
少しだけ、アリス姉さんが怖くなった。
どうして僕にそんな魔法を掛けたのか分からなかったから、だけど、言わなければ気付かない事を言ってくれたのは…何故?
「今日からは…全部覚えたまま、イメージの伝達までを行うわ、だから覚悟して―――」
「わっ」
突然、強く肩を掴まれた。痛みを覚える程に強く。
「―――あなたは絶対に、殺さないから」
眼が、語っていた。
その言葉に嘘が無い事と、その言葉が焦燥の中から出てきた物だっていうことを…。
僕と、誰かを重ねてる?
だとしたらその誰かは、今の言葉からして…。
「んっ―――!?」
突然、アリス姉さんの指が僕の口に挿れられた。
細くて白い、まるで造り物みたいに綺麗な指先だ。
「いいことアル…イメージの伝達に至るまでに、もう一つの魔法戦闘で必要な部分を鍛えてあげる」
いきなり口に指が入って来た事もあって、僕の脳内は混乱していた。
僕はどうにも、他人に自分の中に入られるのが得意じゃ無い、それは嫌悪感を覚えるという意味じゃ無くって、今みたいに口の中に指を入れられると…自然と、息が荒くなってしまうんだ。
舌先が指に挨拶、そこに指がある事を認識して、指に舌が歓迎を示す。
「あっ…ふふ、駄目よアル、赤ちゃんじゃないんだから口に入ってきた物なんでも舐めたりしないの」
そんな風に注意を促されるけれど、恥ずかしさよりも本能的に舌が動いてしまう。
「もう…いいわ、そのまま舐めていなさい」
アリス姉さんが何かを呟いて、舐めている指が少し…変わった気がした。何が変わったのかと聞かれると答えに困るけれど、それまで舐めている指よりも、これは…。
魔力を感じる?
「いい?口の中にだけ集中しなさい、それで、私の魔力を自分の魔力に見立てて、喉を通して飲み込む事をイメージするの、魔力伝達の練習方法の一つよ」
身体の真ん中にある魔力を感じ取って掬い出す事を僕はまだ出来ない、けれど、口の中から喉を通して身体に落とすのなら、出来るかもしれない。
集中すると、自分の口の中に指を挿れられてしまっている事に思わず意識が熱を帯びそうになるけれど、修行何だと意識して何とか魔力を感じ取る方に集中する。
「口の中を開発する事は魔力伝達の修行で順調にステップを踏める様になるわ」
口の中、それは閉鎖的空間で、身体の中と同じ様にアリス姉さんのお陰で自分の内側に魔力がある。身体の中心に在る魔力を感じるよりも近い距離だからなのか、それともアリス姉さんの言う様に開発?してもらっているお陰だからなのか、とても…分かり易い。
これが魔力なんだ。
アリス姉さんの魔力を、僕は確かに感じ取った。
それを嚥下する様に喉を鳴らして身体の内に落とすと、自分の魔力の存在もこれまで以上に大きく感じ取る事が出来た。
「ふふ…出来たみたいね、それなら…」
アリス姉さんは僕の口から指を抜いて、自分の口元に持って行ってぺロリと舌先で舐めた。
な、なんだかエッチな動作だなって思っちゃった。
アリス姉さんは僕の頬に手を添えて、顔を近づけてきた。
あ、口付けされちゃう…キス、されちゃう…。
だけど、どうしよう、嫌じゃないどころか…僕の身体が、拒む事を忘れちゃってる。
「んっ…んん…んぁ…ふっ…ぁ…」
僕は知らないのに、僕の身体は知っているみたいで、キスするの好きで、大好きで。
考えがまとまらなくなってきちゃっているけれど、キス好きなのは本当で。
唇の柔らかさも、アリス姉さんと身を重ねている柔らかさも、ふわりと当たるアリス姉さんのワインレッドの髪の柔らかさも、全部全部…柔らかくて。心まで、その柔らかさに埋もれてしまいそうな。
「んっ…ちゅ…ぴちゅ…」
キス好き、キス好きぃ…。
拒むなんて無理だよぉ…キス気持ちいよぉ…
「んんっ…んん!?」
それまで体験した事が無いキスがきた。
舌を絡めたり、歯を沿うのでは無く。
強引に僕の頬や、口の中の壁を這うキス。
アリス姉さんの長い舌が僕の口の中を犯して…侵されちゃって…。
「それじゃあ…イメージを伝えっ…ん…!?」
やだぁ、まだ嫌だ!もっとキスしたい、アリス姉さんとキスしたい!
アリス姉さんは僕の暴走気味な所を察してか、優しく髪を梳いてくれた。
それが気持ち良くて…さっきは抵抗した心を蝕む熱を、僕は受け入れちゃって…。
キスが気持ち良過ぎて、それだけで僕は―――。
「ふっ…ふぁ…んんやぁ…あっ…」
髪を梳いたまま、唇から離れたアリス姉さんは僕の肌を突くようなキスを降らせた。
頬にキスされて、少し安心を覚えたかと思えば、首元にキスされて、舌を這わされて身が震えて、そのまま舌に、鎖骨を吸われてもっと下に、僕の乳首を口に含んだ。
「やっ…だめっ…まってアリスねえしゃ…ゃん…あっ、あぁあぁあ!」
乳首を吸われて、背を走り、腰を狂わせる快楽が僕の体を暴れまわる。
アリス姉さんの頭頂部が丁度僕の口元に来ていたから、僕もそこにキスをする。
「ねえさっ…アリス姉さん駄目っ…そこ、おかしくなるよ…おかしくなっちゃうよぉ…」
固くなった僕のぽっちをアリス姉さんが舌で転がす。上下に何度も往復されて大きな波が何度も訪れる。
波は僕のおちんちんを大きくして、腰の奥から押し出す様に快楽を運び出す。
「アル駄目よ?お姉さんの話は聞かないと…じゃないと、唇が与える快楽の全部」
身を戻して、僕の耳元に唇を近付ける。
その時、僅かに見えたアリス姉さんの艶やかな唇を見ただけで、僕は快楽を感じてしまった。覚え、込まされてしまっている。
「おしえちゃうわよ?」
耳元で囁かれた言葉が、膝を震わせる。
立っていられなくなって、思わずアリス姉さんの肩を掴んだ。
もう…もう。すぐにでも射精してしまいそうな、そんな状態。
「駄目よアル…もう。顔に書いてあるわ、出ちゃいそうです~出したいです~ってね」
その時感じたのは確かに羞恥心のはずなのに、僕の胸は突かれた様に跳ねた。
「…だからお預け、一杯一杯、私といる時はエッチな事で頭を一杯にしちゃいなさい、最後にはちゃんと元に戻してあげるから、この船旅の間はだけ」
そんな、甘くも地獄への誘いの様な言葉だと理解したのに、僕は何度も頷いた。
「ほら、早くイメージを伝達するわよ、口を…開いて」
少しだけ開けた口に、アリス姉さんの唇が重ねられる。
そして、イメージが流れ込んできた。
―――光、真っ暗な中に光。段々と輝きを増して、闇を消し飛ばした。
―――その光を包む闇、段々と浸食し、槍の様な鋭さで光を突き刺した。
―――それらを見る人が居た。その人には影が、その影が段々と立体的になっていく。そして最後には、人の形を持ち影の持ち主である人間を刺した。
―――それら一連の出来事が起きた場所を見守る人が居る。その人は、手を向けるとその場所を握りつぶしてしまった。人も、光も、闇も一緒に…。
―――だけど、握りつぶされる瞬間、影の主で刺された男性はその場所からいなくなり、握りつぶした男性のすぐ隣に立った。そして、何も無い場所を示すとまるで階段があるかのように登り、何処かへ去って行った。
…今のは。
それまでは、アリス姉さんに色々な事をして欲しいと思っていた頭から煩悩が弾きだされた。
そして、イメージが鮮烈に刻み込まれたんだ。
「っ…今のが」
「えぇ、光魔法、闇魔法、影魔法に重力魔法、それと空間魔法のイメージよ」
頭の中のイメージを何度も見返していると、アリス姉さんの声がして、凄く恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。
キスをしていた時の自分があまりにも甘えたい衝動に駆られていたのを僕は思い出していた。
「そのイメージだけじゃ、きっと強くはなれないわ…だけど、努力を怠らなければ絶対に強くなれるから、諦めちゃ駄目よ」
そうして、その日の修行は終わった。
きっと眠る前、イメージを思い返す様な事をすればよかったのに…僕はただただ。アリス姉さんとのキスを思い出してしまっていた。
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