幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第二章 洞窟探検

第11話 なぞの階段……。

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 しばらく歩くと、洞窟どうくつのさまが、少し変わってきた。 大きくて広い感じではなくなり、少し狭い道のように、なってくる。 洞窟というよりは、どっちかと言えば、地下道のような感じだ。

 スズネは変わっていく景色を眺めながら歩いていると、ふと変なことに気づいた。 近くに見える地形が、変だ。 別のところへ続いているような穴があるのだが、そこが人工的というか、くっきりと四角っぽい形になっているのだ。 歩くにしたがって近づくと、よく見ればそれは、階段のようだった。
 スズネは怪訝けげんな顔をして、ぼそっと呟く。

「……あれ? ……このあたりって……」

 横で歩いていた、歌子が振り向いた。 どうしたのかという顔で、聞き返す。

「ん? ……何?」
「いや、れいをおろすための、洞穴ほらあなあるじゃん? ……大岩おおいわの」

 スズネはそういって、説明を始める。

 大岩おおいわと呼ばれるすごく大きな岩が、この街の中に、いくつか立っている。 周囲には普通の家がたくさん建っている中で、大岩が巨大にそびえたつので、なかなか迫力のある景観けいかんなのだ。
 いくつか立っている大岩のうち、ある一つの大岩は、岩の中がくりぬかれていて、中に入れるようになっている。 そこを通って、地下へと続くようになっていて、その先には降霊こうれい儀式ぎしきを行う場所へと繋がっているのだ。 そこは、この街の中でも、最も重要な場所だ。

 この街で行われる降霊術というのは、『巫女みこ』と呼ばれる、特殊な能力を持った人たちが行う。 彼女らは霊感れいかんのような、不思議な力を持っていて、意識を集中させて、幽霊を死者の国から呼び寄せることが出来る。
 しかし、普通の場所では儀式はできず、特別な場所だけで、出来るのだ。(最近は、技術の発展で、別の場所でも降霊できたり……ちょっと事情が変わっているんだけど)

 大岩から繋がっている、地下の儀式の場所は、その中でも特に重要な場所だ。 みんなには、『降霊洞穴こうれいほらあな』と呼ばれている。 ……あまりに捻りのない、呼び方だけど。

 スズネはその大岩のことを、いま指しているようだ。 それを聞いて、歌子は理解したように頷く。

「うん」
「もしかして、あそこの近くなの?」

 大岩の近く? ……私たちは、ホナミに連れられて一度海のほうに行って、洞窟に入って折り返した。 少しずつ地下に潜っていって、ズンズンと島の内部へ進んできた。 確かに考えてみると、いま、場所的にはちょうど街の下なのかも……。

 歌子がそう思っていると、前をフワフワと浮いていたホナミが振り返って、代わりに答える。

「うん。 ここから、そのまま、中に行けるよ」

 やっぱり、そうなのか。 ……ってホナミ、『中に行ける』って言った? ……降霊洞穴の中に、この地下道から、直接行けるってこと?
 降霊洞穴は、すごく重要な場所だから、ふつうの人は立ち入り禁止だ。 もし本当にここから行けるのなら、誰にも気づかれずに、こっそり入ることもできるってこと……?

 小春がいきなり、元気な声を出して、跳ねるように動きだした。

「へー! ちょっと、行ってみましょうよっ!」

 満面の笑みを浮かべて、小春はズンズンと歩いていき、階段の中へ入っていこうとする。 それを見て、普段は軽いノリでおちゃらけてる雨子が、落ち着いて止めに入った。

「だめだよ、小春。 降霊洞穴は、関係ない人が、入っちゃいけないことになってるの」

 そういって、しっかりとした口調で、さとすように言う。 雨子は今は幽霊だが、生きていた時は、じつは巫女だったのだ。 だから、降霊に関わることには、すごく詳しい。
 ちなみに、生きていて、生身の体を持った人しか、降霊術は行えない。 一度死んで、幽霊になった雨子は、別の幽霊を下ろしたりすることは、できないんだ。

 階段にさっそく足を踏み入れかけていた小春は、雨子に止められて振り返る。 むすっとした顔を浮かべて、口をとがらせた。 なによ、私だって幽霊なんだから、一応、関係者でしょ。

「私たちだって、関係あるじゃん」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「……ていうか、なんだ? ここ。 かなり、入り組んでんな」

 後ろから、大きな体のミツバが来て、松明たいまつの明かりで階段が照らされる。 階段は一つではなく、いくつもあるようだった。 雨子は、ミツバと一緒に覗き込みながら説明する。

「昔は、かなり深い所まで、部屋を作ってたみたい。 大岩の横の、祈祷所きとうじょとかにも、繋がってるしね」

 祈祷所きとうじょ? なにそれ。 小春が、どうでもいいような顔で、鼻をほじりながら相槌あいづちを打つ。

「ふーん。 そこは、入っていいの?」
「いや、多分、だめだけど」

 雨子は真面目な顔で、首を振る。 それを聞いて、小春はあからさまにげんなりした顔になった。 ……そこも、だめなの? まったく、しょうがないわね、現代人は。 決まりごと、決まりごとってっ!!

 小春は苛立いらだちながら、腕を上げた。

「あー! もうっ。 なんか、本当に面白そうなの、無いわけ?」

 そういって、くるっと階段に背を向けて、元の道へ戻っていく。 他の人も続いて、再び地下道を歩き始めた。
 歌子も、ちらっと横目に、階段を見ながら通り過ぎていく。 本当は入ってみたいけど……。 でも決まりだったら、仕方ないよね……。

 歌子は名残惜しそうに、ちらちらと後ろを振り返っていると、ふと、別の話を思い出した。 そうだ、『死者と話せるサービス』の話だ。 たしか雨子が、そんなのを見つけたって、聞いたけど、私はまだ詳しくは知らないんだ。

「そうだ、雨子、さっきの話、どうなったの? 『死者と話せる手伝いをします』のやつ」

 今朝、歴史所で働いているときに雨子が来て、そんな話をしたのだ。 臨時出勤で忙しいというのに、まずユメが来て『憶え屋』の話を長々と語っていった後に、雨子が飛び込んできて、1分も満たずに話しまくって、何が何やらよく分からないうちに去っていった。 まあ、忙しかったからありがたいけど。

 聞く話では、雨子が街を歩いていたら、いきなり声をかけられて、『死者と話せるけど、どう?』みたいなことを言われたらしい。 死者って……私も死者だけど、とか、雨子は返したんだろうか。
 実は、こういう『死者と話せる系』サービスの話は、今回が初めてというわけではないんだよね。 今までも、何回かあったんだ。 ……全部、デタラメだったけど。

 雨子は振り向いて、楽しそうに答えた。

「明日、行くって約束してみたよ!」

 雨子は都市伝説の話になって、またウキウキし始めた。 後ろをゆっくりと、周りを見ながら歩くミツバは、あぁその話か……つまんねえな、みたいな顔で、適当に聞き流している。 今までのがデタラメだったのを、ミツバも見てきたから、少し飽きてきてるのかも。
 一方、歌子は声をおどらせて、一緒にウキウキしだした。

「へー! 今回は、どんなのなんだろう? 本物かなっ」

 前を歩いていた小春が、つまらなさそうな声で、水を差すように言う。

「そんなの、詐欺さぎに決まってるじゃない。 なに、死者と話せますって。 降霊術があるのに、そんなの意味ないじゃん」

 横で歩いていたスズネが、笑顔を浮かべて、ははっと軽やかに笑った。

「確かにね」
「まあ、そりゃそうだ」

 ミツバも同意して、笑う。

 ……でも、実際の所、どうなんだろう? 歌子の頭には、少し疑問が残る。 だって、降霊術があるといっても、使うのは制限されている。 誰でも、好きな人を降ろせるわけではないのだ。

 そして、詳しい理由は分からないが、降霊にかかわる制限は、時代を経るごとに、強くなっているらしい。

 もし、自分の、生身の親や友達が死んで、会いたいと思った時……私たちは、降霊術を使えるのに、その願いが叶えられない……ということになる。

 それに、幽霊の人もだ。 自分がいた時代に、好きな人がいたら? ……会いたいと思っても、公的な人が、それ相応そうおうの理由を見つけて降ろしてくれない限り、その人に会って話をすることはできない。

 そう考えると、死者と話せるサービス、というのは、案外、まともなのかもしれない。
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