幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第四章 動乱の前日

第26話 アマネのお母さんっ!

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 歌子の! 説明コーナー~~! イェイ! さあみんな、今日も元気に、この街のことを説明するね!

 私がふだんつとめてる歴史所は、広くて大きいんだけど、さらに大きな建物の、ごく一部なんだ。 その全体は『研究棟けんきゅうとう』って呼ばれてるの。
 みんなの世界の、日本の東京の都庁には、財務局とか環境局とか、あるみたいだね。 それと同じような感じで、『研究棟』の中には、いくつかの部署みたいなものがあるんだ。
 言語を研究するところに、降霊術こうれいじゅつを研究するところ、そして私の歴史所……。 多くの部署がまとまって、一つの大きな建物を作ってるんだ。

 そして! ここには、この街でいちばん偉い人も、住んでるんだ。 建物のずっと奥のほうに、ヤミコさんっていう人の、居室きょしつがあるの。
 私も、ふだんすぐそばの歴史所で働いてるわけだけど、直接見たことはないんだ。 どんな人なんだろう? ……すっごく強い霊力を持ってるらしいんだけど、昔は元気に山の中を走り回るような人だったんだって。 今はたまに、島の外から来た、外国の使者なんかと面会したりしてるみたい。

 ……そんなこと話してたら、ユメが一人で、研究棟の階段を上がっていってる。 仕事の休憩に入ったのかな。


 研究棟の廊下を歩いていくと、ある研究所の入り口が見えてきた。 降霊術を研究する『降霊研究所』だ。 降霊のあれこれを、科学的に(?)研究するところだ。
 ここには、未来降霊を試していた、強力な霊力を持つアマネが、研究員としてつとめている。 いつもはちゃめちゃに元気なアマネだが、普段は研究に貢献しているらしい。

「アマネー」

 ユメが名前を呼びながら、研究所に入っていく。

 研究所の部屋は、けっこう広かった。 そこかしこに、ホワイトボードのように木の板が立てられていて、紙が大量に貼ってあるようだ。
 幽霊は紙をさわれないから、研究用の資料などは、すぐに見て読めるところに貼っておく。 壁に貼るだけだと場所が足りないようで、資料を貼る板を、部屋の中にいくつも立てているらしい。

 研究者らしき人が、こっちに気づいて振り返った。

「あら、ユメちゃん」

 ここにはよく来るから、研究員の人たちとは顔なじみだ。 なにか生身の人にしてほしいことがある時、アマネを頼ってここに来るのだ。
 ユメは辺りを見回しながら、研究者の人に聞いていく。

「アマネ、います?」
「いや、いないわよ。 多分、お母さんのところに、行ってるんじゃないかな」

 あ、そうか。 いまは昼時だから、お母さんの働いてるところに行って、ごはんを届けに行っているんだ。 お母さんは忙しいらしいから、代わりにごはんを街中で買って届けるっていうのを、毎日してるみたいなんだよね。

 分かりましたと言って、ユメは踵を返した。 ……しょうがない、アマネのお母さんの職場に行ってみよう。


 アマネのお母さんは、『旧祈祷所きとうじょ』というところに勤めている。 降霊術を行うための施設のひとつで、中には降霊するための設備が整っている。 巫女みこたちはここで、一定時間ごとに集中する時間を設けることで、いまこの世にいる幽霊たちを、この世界にとどめることが出来るのだ。

 幽霊をとどめておくために、巫女たちは、ここにずっといる必要があったらしい。 だから、ここには巫女たちがやる仕事の設備も、整っている。 かいこで糸を作ったり、紙を作ったり、道具を作ったり……。 巫女は生きていて生身なまみの人しかなれないから、仕事も生身の人用のものばかりだ。 紙なんかは、街のほとんどの分が、ここで作られているらしい。

 最近では、降霊の技術の向上で、ここにいる必要はなくなった。 つい5年ほど前のことだが、ちょっとした技術革新が起きて、巫女たちは祈祷きとうをする必要からも解放されたのだ。 今では、ふつうに街中で生活する巫女などもいる。 『旧』とついているのは、そのためだ。

 とはいえこの施設には、生身の人のための仕事がたくさんあり、そのための設備が整っている。 巫女たちは、相変わらずここで働く人が多いらしい。


 旧祈祷所の中に、ユメが入っていく。 中は、生身の人があまりに多くて、空気がどこかむっとしていた。 生きている人の吐く息が、壁に反響する声が、足音が、生々しく辺りに満ちている。

 ここに来ると、いつも自分たちが、いかに『なまっぽくない』街で生きているかが、よく分かる。 だって、お笑いを見に行っても、舞台に上がる人も、客席で見ている人も、幽霊の人ばっかりだ。

 中を歩いていくと、アマネのお母さんの姿が見えてきた。 どうやらアマネも一緒らしい。

「アマネー」

 ユメは声をかけながら、近づいていく。 2人は何か話しているようだった、お母さんはアマネの手を握って、何か言っている。

「……だから、ちゃんと、先生たちの言うことは、聞きなさい」
「分かったって! もう……」

 どうやら、説教されていたようだ。 アマネが母親に説教されているのは、よく見る。 研究所の人たちの言うことを聞かずに、走り回ってしまうことがあるみたいだ。

 アマネは嫌がるように母親の手を振り払い、その場から走りだした。 ちょうどこっちへ向かってきて、避ける間もなく体ごと突っ込んでくる。 アマネはびっくりしたのか、うわっと叫びながら、ユメの幽霊の体を通り抜けていく。 ユメも思わず目をつむって、身を縮めた。

「アマネっ!!」

 母親が、大きな声で怒鳴どなった。 ユメの幽霊の体を通り抜けていき、アマネは小さく振り返りながら、そのまま走り去ろうとする。

「ユメ、ごめーん!」
「アマネ! ちょっと、待ちなさいっ!!!」

 幽霊は、体をすり抜けられる。 でも、実際に体をすり抜けると、気持ち悪くて不快だという人が、すごく多い。 道を歩く時も、生身の人と同じように、お互いによけて、歩こうとする。

 怒った声を聞いて、向こうのアマネが振り返った。 母親の怒りが分かったのか、立ち止まると、走って戻ってくる。

「あぁいや、大丈夫ですよ」

 気にしていないというように言うと、そばで座っている母親は、こっちを見て申し訳なさそうな顔をした。

「ユメちゃん、ごめんね。 ……ほら、ちゃんと、謝って」

 母親はそう言って、アマネのほうに向く。 そばに戻ってきたアマネは、謝ってきた。

「ユメ、ごめん」
「いいよ。 ……あ、ちょっと、アマネ、頼みたいことがあるんだけど、いい?」

 2人は、その場を一緒に離れていきながら話す。 先に跳ねるように歩いていくアマネは、自分のペースでたったっと軽快な足音を鳴らしながら答えた。

「んー、何?」
「ちょっと、来て」
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