幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第五章 混乱

第38話 50年前と、同じ感じ……?

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 街は、いつもとは違う空気に染まっていた。

 聞いた話では、もともと街に住んでいた幽霊たちの場所が移動したのと、新たな幽霊がたくさん降霊されたのは、間違いないらしい。 他の変な出来事は、今のところ起こっていないようだ。

 小春やスズネたちは、山の中で目が覚めたが、それは人によって違ったようだ。 森の中で目が覚めた人もいて、イトのように地下で目が覚めた人もいるなど、島の中で広く散らばっていたらしい。
 原因はまだ分からないらしく、街では長が中心となって、巫女みこを総動員して原因の解明にあたっているらしい。 一体だれが、こんなことを引き起こすんだろう?

 街ではあちこちで人を呼ぶ声が聞こえて、人々が慌ただしく道を行きかっていた。 安全確認をしたり、新たに降ろされた人たちの案内をしているようだ。
 歴史所の中も、普段とは違う雰囲気で包まれていた。 ここはひときわ騒がしいようだ、いつもは静かな部屋の中に、人の声が満ちている。

「はい、次の方ー!」
「さっきの700年前の人、どこー?」

 ごった返した人の中で、歴史所の職員たちが忙しそうに走り回っている。 その中には、歌子の姿もあった。 岩の机に座り、素早く紙に筆を動かしていき、次々に書類を作り上げているようだ。

「はい、いいですよ!」
「次の方!」

 降霊された幽霊は、歴史所に来なければいけないことになっている。
 まずは新しく降霊された人が、どんな人なのかを調べなきゃいけない。 ここにはあらゆる歴史の記録があるから、資料を引っ張り出してきて、問題のある人なのかどうかを確認するのだ。
 もし、犯罪を犯していた人だったとしたらどうなるだろう……。
 幽霊は体が透けていて、物を通り抜けてしまう。 手錠をつないでも、牢屋ろうやに入れても、簡単に出て行ってしまう。
 最初からそういう危ない人は、降霊してはいけないことになっているのだ。

 街に新たに加わる幽霊は、『住民登録』もする必要がある。 名前を決めたり、顔を登録したり……。 そういったことも、歴史所の仕事なのだ。 だからこういうことが起こると、ここは特に忙しい。

 一人分の書類を作り終わった歌子は、その書類を雑に放り投げた。 筆を休めて、はあとため息をつきながら、外の景色に目をやる。
 あぁ、青空が気持ちよさそうだ。 いま外に出たら、気持ちいいだろうなぁ。
 ……でも、まだやることがたくさんあるんだ。 よっし、もう一発、頑張るぞっっ!!!



 場面は変わって、山の中。 勉強会お姉さんのミツエダが、木々の中を歩いていた。
 隣には見たことのない、誰か別の人が一緒に歩いている。 生身なまみの女の人のようだ、背中にはバックパックのように、布の包みを背負っている。 足取りが軽くて鍛えられている感じで、ふだん体を動かす仕事でもやっているような歩き方だ。

「……じゃあ、みんなの安全確認も、歴史所に伝えんといかんのやな?」
「はい。 あと、島の外は、海の警備隊が捜索そうさくしてるみたいです」

 どうやら現状の確認でもしているようだ。 島の外には海しかないから、海の中でおぼれている幽霊でもいないか、探している人たちがいるんだろう。 死んだと思って、気づいたら海の中にいた……というのも、それはそれで怖い。

 ミツエダはふうんと理解するように頷いていると、ふと前のほうに目を止めた。

「ミツエダー!」
「……ん?」

 なにやら向こうから、走ってくる人たちがいる。 ……幽霊だ、体が透けている男たちが、親し気にこっちに手を振ってくる。 ミツエダは足を止め、不審そうに眉をひそめた。

「……誰?」

 走ってくる2人は、幽霊のようだった。 体が透けているが、どこか生き生きとした様子だ。 おっさん臭い顔をキラキラさせて、『まぼろし』の汗を振りまいて走ってくる。 ……いや、誰?!

 やがて男たちは、目の前で立ち止まった。 ハアハアと息を切らしながら、意味不明な質問を投げてくる。

「今、いつ?」
「……は?」

 今、いつ? どういうこと? ……あんたら結局、誰なん?
 ミツエダは何が何やらさっぱり分からず、きょとんとした表情を浮かべる。 そんな様子を見て、男の一人は大げさな身振りをしてみせた。

「この時代だよ! 今、何年たった?」
「……あっ、お前、ススキか!」

 ようやく思い出したミツエダは、驚いて声を上げる。 50年前に冒険隊としてこの島を出発して、大陸を横断していった旅……。 その途中で出会った仲間たちが、いま目の前にいた。
 あぁ、昨日のことのように思い出す。 あの騒乱そうらんの中を、一緒にくぐっていった日々……。 私はその時は生きとったからもちろん生身やけど、幽霊の奴も一緒についてきて大変やったなぁ。
 幽霊とか知らん連中の街で、堂々と歩いてたら目立つから、生身の私たちに重なるように隠れて、フードをかぶって身を隠しながら街を歩いたりしてなw 一歩一歩合わせないかんから、大変やったわ。
 この2人もノリが良すぎてなー、元気なのはいいけどさあ。 偉い人たちのいるところに変装して忍び込んで、ヤバい会議に出席したりとか……。 私の体に隠れてた奴が、くしゃみしようとしたり、おならしようとしたりとかなwww あいつ、馬鹿やろっww ほははっっ!!ww ごはっ……wげふっw……。

 ……おっと、話がそれてしまった。 ともかく、波乱はらんの大陸横断を一緒にくぐった奴らなのだ。 友情の度合いが、違うのよ。
 まあ私は、この島に戻ると言ったこいつらを置いて、一人で抜け出していったけどなw ははっ!!!ww

 そんなことを考えていると、今まで喋ってなかった大陸風の格好の男が、辺りを見回しながらぼそっと言う。

「……50年ぐらい?」

 そう、50年たったんよ……っていうか、すごいな、ヨウ。 お前、なんで分かるんや。 この周り、森しかないけど。
 ……あぁ、このもう一人の男は、ヨウっていう名前な。 漢字で『葉』って書くらしいけど、まあどうでもいいな。 別に気にせんでいいで、こんなやつ。

「あぁ、そうよ。 50年後」

 それを聞き、隣のススキが驚いたような顔をした。 ……こいつは、ススキっていう名前な。 こいつもどうでもいいから、気にせんでいいで。
 大陸に行く途中で知り合ったやつでな。 私らに興味を持って、勝手についてきただけの奴よ。
 ススキは、驚いた顔をして言う。

「50か! ……意外とたったな」

 意外とって、なんやねん。 2人でまた、未来の予測でもしとったんか。
 自分たちが、何年後に降霊されるんだろうねって、死ぬ間際にお手々つないで、話でもしたんかな。 島に戻ったこいつらのことなんか、私はちらりとも知らんしなw そんな想像したら、なんかウケるわwww

 ミツエダは一人で笑っていると、今度は知ってる女の子がこっちへ走ってきた。 スポーティーで元気よさげな……お、スズネやん。 どうしたん?
 ……と思ってたら、私と一緒にいたバックパック女子のほうに近づいていく。

「あ! 軍の人ですか?」

 そう、このバックパックの人は軍の人な。 生身の人で、幽霊を探したりするのに手伝ってくれとるんよ。

「じゃあ、のろしをお願いして、いいですか?」

 あぁ、のろしな。 ここ数時間は、こうやって通信とっとるんよ。 火を使ってのろしを上げて、歴史所と直接通信するの。
 歴史所の中で、憶え屋が臨時りんじに店を作ったらしくてな。 一緒に協力して、のろしの信号を受けつけてるみたいなんよ。 こうすれば街まで戻らんでも、新たに降霊された人の情報を伝えられるってわけやな。

 ……え? 火を使うために、生身の人が必要じゃんって? 幽霊だけだとダメじゃんって?
 まあ、そうやな。 でも、新たに降霊された人がヤバいやつかどうかぐらいは、すぐ結果が分かって便利なのよ。

 ……言い忘れとった。 ユメと未来研究所のやつらが『手信号てしんごう』ってやつを作ったらしいな。 私は知らんかったけど、さっき聞いてな。
 軍も、最近それを採用したらしいんよ。 だから軍人の生身の人が一人でもいれば、火も起こせるし、信号も伝えられるしっていうことやな。

 バックパック女子は返事をすると、スズネと一緒に走っていった。 どうやら向こうには、さらに別の人たちがいるらしい。 数人が固まって、何やら話しているのが見える。
 その場所は見晴らしが良くて、街の姿が見えるみたいだ。 軍の人はその場に着くと、火を起こして、通信の準備を始めている。 スズネはやることなくて、ぼーっと立っとるだけやけど。

「あ! そうだ、これって、またヤミコちゃんの、仕業しわざ?」

 3人もその場所へ向かって歩きだすと、ススキが聞いてくる。
 ……ヤミコ? あーいや、それはないやろ。 だってあいつ、もう60超えてるらしいで。 60超えてこんなことやってんのは、さすがにヤバいわ。

「それはまだ、分からんみたいやけど」
「おい、50年たっても、まだそんなことやってんのか、あいつ」

 ヨウはあきれたような口調だが、でも少し楽しそうだ。
 たぶんこいつらは、50年前にヤミコが悪戯いたずらで色んな人を降霊しまくってた時期から、いきなりここに飛んできたんやろうな。 だから、そのまま50年前の状況が、続いてるように見えるんやろ。
 新しい人がめちゃくちゃに降霊されて、村が大騒ぎで混乱して、みんなでヤミコ探して……。 うーん、確かに、50年前の状況にそっくりやな。

「……じゃあ、一応探した方が、いいか?」

 ヤミコを探すんか、また50年前みたいに? ……そうやなあ、確かにヤミコなら、やりかねんけど……。

「うーん、ちょっと、待っといて」

 ミツエダはそう言うと、スズネたちの場所へと向かっていった。
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