幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第五章 混乱

第40話 白骨死体っ?!

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 街の歴史所では、相変わらずにぎやかな状態が続いていた。 住民登録などの手続きを待っている人たちが、廊下にもあふれ出している。
 新たな幽霊はやることがないから、廊下の端に座り込んで、退屈そうに暇を持て余しているみたいだ。 現代人とは着ている服装が違うから、通り過ぎていく現代人を興味深そうに見つめたりしている。
 そんな中を、歌子が歩いてきた。 外から戻ってきて、廊下をスタスタと歩いている。 トイレか憶え屋にでも行ってたのだろうか。

「歌子ちゃん! ちょっと、確認してほしいことが、あるんだけど」

 バタバタと廊下を走ってきた人が、慌てた様子で告げてきた。 歴史所の職員の人だ、何かあったのだろうか?

「はい、何ですか?」
「ちょっと、来て!」

 手招きして身をひるがえしていく職員を追って、歌子は走っていく。
 歴史所はすごく大きいから、廊下に沿って、出入り口がいくつもある。 端から端まで何十メートルもあって、行き来するだけでも面倒だ。
 騒がしい廊下の中を、人をよけながら進んでいく。 辺りは幽霊の人であふれていて、ほとんど生身の人がいない。
 私はもう慣れっこだけど、幽霊の人は足音が立たないから、見た目はしっかりあるのに存在感が薄いんだ。 生身の人に比べると、注意を怠るとぶつかりそうになってしまう。

 別の出入り口から入っていき、職員の人の後についていく。 この場所も人が多く、どこを見ても新しい幽霊を処理しているのが目に入った。
 歴史所の職員だけだと足りないから、臨時で働いている人もいるみたいだ。 知らない人が職員の人と連携しながら動いていて、事態の異常さが伝わってくる。
 歌子は人をよけながら、奥へと向かっていった。

「えーっと、こっち」

 手招きされて進んでいくと……あれ? 向こうに見覚えのある後姿があった。 椅子に座って、事件の被疑者のように、しゅんと背中を丸めている。

「イト?」
「あ! 歌子っ!」

 岩の椅子に座って、うなだれていたイトが振り返った。 ぱあっと顔を輝かせて、女神でも見るような目でこっちを見てくる。 どうしたの? そんなに嬉しそうな顔して。
 ……というか、イトは昨日お酒を作ったあと、降霊研究所で降霊を解除されたんじゃなかったっけ? だったら今は、死者の国にいるはずだけど……。 新しく降霊された人たちに混じって、一緒に降霊されちゃったとかかな。

 その近くには、取調官とりしらべかんみたいな人が座っていた。 私の姿を見て言ってくる。

「本当にイトさん本人かどうか、確認してもらってもいいですか? 別の人が変装してる可能性があるので」

 新しい幽霊が、イトの姿に変装しているかもってこと? なるほど、だから私に本人かどうかを確認してもらいたいってことか。
 犯罪を犯したことのある人が、もともと街にいた住人に変装して、街に紛れ込んでくるかもしれない。 そういう可能性を、疑ってるってことだろう。

 ……でも、今は余裕がないから、普通はそこまで厳しく調べないはずだけど。
 イト、なんか変なことしたの? 新しい幽霊と間違われるような、不審な行動でもしたのかな。
 降霊を解除された直後だったから、ここを幽世かくりよだと勘違いして意味不明な妄言もうげんわめき散らしたとか……。 ムフフっ、さすがにそんな馬鹿なこと、あるわけないかw フフフッww むふはっ!!www
 歌子は笑いながら、自分たちの友達かどうかを判別できるような、適当な質問を考えてみる。

「あぁ。 ……えーっと、私たちが普段、やってることは?」
「変なこと、探すの」

 イトが間髪かんぱつ入れずに、答える。
 変なことって……まあ確かにそうだけど。 でもあなたもそのメンバーに入ってるの、分かってる?
 釈然しゃくぜんとしないながらも、私は取調官の人のほうを見て頷いた。

「大丈夫です、本人です」
「じゃあ、いいですよ」

 どうやらこれで解放されたらしい、職員の人は立ち上がり、別のほうへと歩いていく。 安全確認は終わったようだ、リストにチェックでも入れに行くんだろう。

「はー……」

 そばでは、イトが疲れたように立ち上がっていく。
 動きが鈍くて、もう寝る前みたいに疲れてる感じだ。 目もしょぼしょぼしてるし、一体何があったんだろう?
 ……あっ! こんなこと考えてても、しょうがない。 私は歴史所の職員だから、やることがたくさんあるのだ。

「ごめん、私仕事があるから。 じゃあ」
「……あぁ、うん」

 それだけ言うと、歌子は動きだした。 トボトボと歩いていくイトは置いておき、走って廊下に出ていく。
 廊下に出て、ふたたび人の多い廊下の中を、かいくぐりながら歩いていく。
 手刀しゅとうをしながらシュシュっと進んでいると、聞き覚えのある元気な声が、向こうのほうから飛んできた。

「歌子! 歌子ーっ!」
「小春っ?」

 顔を上げると向こうのほうに、ちらっと小春が見えた。 人ごみの頭上からアピールするように、手をブンブンと振っている。 どうしたんだろう、何かあったんだろうか? 並々ならぬ雰囲気ふんいきを感じるけど。
 人ごみをよけながら互いに近づくと、顔を見せた小春はちょいちょいっと手招きして、ワクワクした顔で言ってきた。

「ちょっと、ちょっとっ! ねえ、白骨死体が、見つかったってよっ!」
「……え? 白骨?」
「そう!」

 小春はそれだけ言って、くるっと引き返してまた向こうへと走っていく。 ちょっと待って小春っ!! 説明が足りないんだけどっ! 私は慌てて、後を追って走りだす。


 小春を追って、私は街を走っていく。 先を走っていく小春の背中は、異常な速さで遠ざかっていく。
 こういう時、小春は自分でも知らず知らずのうちに、普通じゃないレベルの速さで走ったりする。
 幽霊の体って、走る速さに限度は無いらしいんだ。 普段は生きてた頃の記憶があるから、無理だって思い込んでるけど、知らず知らずのうちに限界突破しちゃってるのかも。
 歌子は苦しそうな顔で、ぜえぜえと息を上下しながら、小春を追って階段を駆け下りていく。

「ねえ、ちょっと待ってっ! 何か、いま事件が起きたのっ?」

 先に階段を飛ぶように下りていく小春は、こっちを振り返りもしない。 軽快に駆け下りながら、背中を見せたまま答える。

「さあ。 降霊用の洞穴で、死体が見つかったって。 ……あっそうだ、未来人が降霊されたって、ほんと?」
「え?! なにそれ?」

 ちょっと! まだ頭が追いついてないんだけどっ!! そんな私を置いて、小春はぽんぽん話を変えていく。

「なんか、山の方で、新しいような変なような、不思議な感じの装いを着た女の子がいたって……」

 なにその、変な形容のしかた。 ……ん? あれ、それって……。

「え? それ、ソラちゃんのことじゃ、ないの?」

 そう言うと、小春は足を遅くして、思い出すように頭をひねった。

「……あぁ、最近口座に出入りしてる、あの子?」

 ソラちゃんなら、元々この街にいる。 ……姿を直接見たことは、まだないけど。 みんなと同じように、山に移動してたってだけじゃないの?
 そう思いながら、歌子は言う。

「うん。 ソラちゃんなら元々いるんだから、新しく降霊されたわけじゃないけど……」
「あ! 歌子!」

 走っていると、今度は別のほうから声がかかってきた。 あぁ、もう忙しいなあっ! ただでさえ混乱した状況なのに、色んな動きが混じってくる。
 声のほうを見ると、知り合いの生身の女の子だった。 髪の毛や服を、風にバタバタさせながら階段を駆け上ってきて、話しかけてくる。

「アマネ、どこにいるか知ってる?」

 女の子の表情は、どこか不安な感じだ。
 ……って、アマネ? 強力な霊力を持った、生身の、現役巫女みこのアマネが、見当たらないの?

「いや、知らないけど」
「え、なんで? いないの?」

 横の小春が、驚きと不安が混じったような表情で聞いていく。 女の子は頷いた。

「うん。 研究所の人が、巫女の確認を一応取ってるんだけど、アマネちゃんだけいないらしくて」
「え?! アマネがやったの? これ」

 小春が大声で、びっくりしたように聞き返す。 みんなが移動して、勝手に新しい幽霊が降ろされて……。 やったのが全部アマネで、一人で逃げ回ってるってことっ?!
 不安な表情を浮かべたまま、女の子は首を振った。

「いや、まだ分かんないけど……ま、いいや、じゃあね」

 すれ違っていき、女の子は階段を上って立ち去っていく。 残された2人は顔を見合わせた。 ……アマネが、この事件の犯人……?

「……あいつ、どこでなにやってんのよ」

 小春は不安そうな、苛立いらだつような顔で、どこか遠くのほうをじっと見つめる。
 ……小春は心配なんだろう。 でも、私は大丈夫だと思うけどな。
 この島には、アマネみたいに元気が良すぎる子はたまにいる。 突発的にどこかに飛び出していって、それきり帰ってこなくなった人の話などもあるぐらいだしね。 ……って、なんじゃそりゃっっ!!!ww

「まあいいや、とりあえず、行こう」

 歌子がうながして再び2人は走り始め、降霊洞穴へと向かった。
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