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第五章 混乱
第41話 降霊洞穴!
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この街には、ものすごく大きな岩がいくつか立っている。 大岩は、どれも中身がくりぬかれたようになっていて、内部が空洞になっているんだ。 もともと自然にそうなってたのをそのまま利用して、そのうちの一つに降霊洞穴を作ったんだって。
内部には人の手が加わっていて、複雑な構造になってるみたい。 空洞部分があって、さらに地下の方まで部屋を作ってて……。 最も霊力が強い場所……『源』っていうところにも、階段なんかで繋がってるらしいんだ。
普段は、降霊洞穴は入ってはいけないことになってる。
……だけどこの騒ぎだし、ちょっとぐらい入っても言い訳できそうな気がする。 『白骨死体』の話もまだ分からないし、本当に事件なんだったら、生身の私がやらなきゃいけないこともあるはずだしっ! うんうんっ!
大岩のそばに来ると、降霊洞穴に入るための入り口があった。 入り口の足場も、岩を組み合わせて作られているみたいだ。 高さがある場所だから、辺りには街の景色が見えていて、風がひゅうひゅうと吹いている。
「歌子ー!」
入り口に近づくと、またもや聞きなれた声が聞こえてきた。 見ると、別のほうから雨子が走ってきていた。 手を振って、なんだか生き生きしている。
「雨子!」
「歌子たちも、骨を見に来たのっ?」
あぁ、やっぱり。 妙にウキウキしていると思ったら、雨子も、白骨の噂を聞いてきたんだな。
雨子は降霊研究所の研究員でもあるんだから、今は忙しいはずなのに……。 相変わらず、適当だなあ。 仕事もぜんぶ放り出して、遊びにきたんだろうか? よーっし、みんなで一緒に探検しようっ!!ww
歌子はノリで考えながら、合流して、一緒に降霊洞穴の中へ入っていく。
洞穴の中は、巨大な薄暗い空間だった。 火がたくさんついていて、周囲を見渡せるほどには明るい。
今ここは高い場所のようで、下のほうへと続く階段があった。 階段を下りた先には、低い平地のような場所が広がっているのが見える。
雨子が先頭になって、3人は階段を軽快に下りていく。
横には小さな部屋のようなものが、階段に沿って続いていた。 部屋というよりは、壁に掘られた『くぼみ』のような感じだ。
「ねえ、それって、どういうことなの? 今、死んだ人?」
歌子は階段を下りていきながら、『白骨死体』の話を切り出していく。 いま死んだ人なの? 昔のこと? 小春が持っていた情報が少なすぎて、まだ何もわかってない。
先を下りていく雨子は、背中を向けたまま答えた。
「300年前の話を募集してたところに、時のはざまについて知ってるって人が現れてね。 その人がここの洞穴の奥深くに、2人分骨があるって言ってて」
あっ! 来たっ! 私たちの口座に、また書き込んでくれた人が現れたみたい。 300年前の情報提供をしてやるぜ!ってことかな。 ふむふむ……。
300年前といえば、降霊能力を持つ一族が栄えていた時期だった。 同じ時期に、夢見酒の噂が流れたり、一族以外からも能力者が出てきたり……。 失踪者の多発なんて噂も、あったっけ。
まだ何もわかってないけど、やたら出来事が重なってる、変な時期のことだ。
『時のはざま』も、その時期だったとイトが言ってたのを思い出す。
うーん、ってことは……え?! 『時のはざま』の中で本当に殺人があって、そこで殺された人の骨ってこと?!
「え?! 時のはざま?」
「そう。 まだ私も、よく分からないんだけど、本当にあったのかもっ!」
雨子はウキウキしながら、ステップを踏むように階段を下りていく。
相変わらず楽しそうだなあ、雨子。 はりきりすぎて、変なことしなきゃいいけど。 ……いや、どんどん変なことしていこうっ! よっしゃーっっ!!!www
階段を降り切ると、広がった平地のような場所に出た。 入り口のような大きな穴がいくつもあり、この場所から色んなところへ繋がっているようだ。
「……へー、ここって、こんな風になってたんだ」
周りを見回している2人とは対照的に、前を歩く雨子は、まったく周囲を見ようとはしていない。 50年前はここで修行してたらしいから、降霊洞穴の構造はよく知ってるんだろう。
「そうだね。 私も、入ったの初めて。 ……そっちが、下方向?」
歌子の問いに、雨子はそうだよと頷きながら、一つの入り口をくぐっていった。 あとに続く2人も入っていき、そこから続く暗い道を歩き始めた。
道は岩や土で覆われており、トンネルのような感じだった。 おお、来たっ! ついに、降霊洞穴の深部へ行くよーっ!!w 気分が上がってきながら、歌子は跳ねるように歩いていく。
少し歩くと、下へと続いていく階段があった。 明かりはついているが、火の数は少なく、全体的に薄暗い。
「ひー、何、ここ! ……えらく、使われてないわね」
どうやら、あまりここには人は来ないらしい。 階段は形がいびつだし、妙に湿っているようにも見える。
足元を工夫しながら階段を下りていると、ふと洞窟探検をしたときのことを思い出した。
ホナミに連れられて原っぱに出て行って……。 海のほうから洞窟に入っていって、地下道を歩いていって……。 地下道の途中に、たしか降霊洞穴に繋がるってところが無かったっけ。
小春が行こうとしたけど、雨子に止められて、爆発してキレ散らかしたような……。 あれ? そんなことあったっけ? ……まあいいや。
適当に記憶をさかのぼりながら、前を歩く雨子に聞いてみる。
「ここって、どれぐらい下まであるの? 地下を探検した時に行った、あそこに繋がるの?」
「うん、あそこより、もっと深くまで行くよ。 昔は、深いところまで、使ってたみたいでね」
聞いた話では、昔はここの降霊洞穴の地下に、色んな部屋などを作っていたらしい。 儀式をするための部屋があったり、こんな地下深くで生活する空間まであったり……。 地下深くのほうが霊力が強いから、しょうがなかったらしいんだけど。
大昔に遡るほど、深い場所の部屋を使ってたんだとか。 ……こんな場所で儀式をして、生活までして……。 昔の人は、どれだけ大変だったんだろう。
……いや、最高に楽しい生活かもしれない。 毎日ワクワクしてかくれんぼ出来るじゃんっっ!!!ww やったっ!!ww
ノリに乗って階段を下りていくと、ふと見覚えのある景色が目に入ってきた。 洞窟探検をしたときに来た、地下道みたいなところだ。
あの時、覗き込んだけど行かなかった階段に、まさに今から下りていくことができるっ!
小春も辺りを見回しながら、あぁここね、みたいな顔をしてる。
前回来たときは真っ暗だったが、今は火がともされていた。 ここまで来た道にも火がついていたし、もしかしたら先に行ってる人がいるのかも。
明かりで足元を確かめながら、歌子は階段を降り始めると、ふと別のことが頭をよぎった。 私たちの口座で、骨の話を情報提供してくれた人のことだ。
「……なんで、その人は骨のこと、知ってるんだろう?」
歌子の前で、進んでいく2人が振り返った。
「あぁ、さっきの?」
「うん」
だって、変だ。 『時のはざま』の中で起きた殺人の被害者……。 今まで誰も知らなかったその骨の情報を、なぜその人は知ってるんだろう?
それに、その情報が本当なら『時のはざま』はおとぎ話ではなく、実際に存在したってことになる。 その中で人が殺されて……?
殺人が起こったのなら、その人はどんな立場だったことになるんだろう? この街は幽霊がいるから、殺された本人の可能性はある。 ただの傍観者の可能性もあるし、それとも……?
雨子が、いつもの調子で言う。
「うーん……。 まあ、普通に考えれば、その人が殺した犯人だからじゃない?」
「え?! それ、ヤバいじゃない」
小春がぴたりと、立ち止まった。 前の雨子が振り返って、きょとんとした顔で聞き返す。
「なんで?」
「だって、人殺しが、ここにいるってことでしょ?」
小春が慌てて、変にドキドキしたような感じで言う。 現代の街を人殺しがさまよってて、血眼でナイフ持ってブラブラしてるかもしれないじゃないっっ!!! ヤバいわよ、それ。
そんな小春とは対照的に、雨子は落ち着いているようだ。 いつものように適当な表情で、うーんと首をひねった。
「まあそうだけど……300年前に生きてた人なら、今いたとしても、霊だから、もう人は殺せないけど」
殺すために持つナイフは、幽霊の体じゃもう持てない。 気づいたように、あっと声を出して小春は体を緩めた。
「あ、そっか。 ……そうよ! なにビビってんの、私!」
自分の腕をぱしんと叩いて、再び歩き出す。
……でも、実際のところはどうなんだろう? 歌子は階段を下りていきながら考える。
もしその犯人がシリアルキラー的なヤバいやつだったとしたら、幽霊の体とか生身とか、関係あるんだろうか? 現代に降霊されても、なんやかんや人を苦しめそうな気がする。
……いや、あんまり怖いことは言わないようにしよう。 小春は意外とこういう話には弱いから、また怖がらせてしまうかも。
階段を降り切っていくと、今度はぐるっと円方向へ、道が続いていた。
「あそこかな」
3人は道に沿って歩いていくと、明かりが見えてきた。 どうやら人がいるようだ、声も聞こえてくる。
明かりのついた部屋に入ると、中には人が何人かいた。 壁のほうで、一か所に群がって話している。 一人だけ生身の人がいるようで、道具を使って土を掘り返していたようだ。
どうやらこの人たちも、噂を聞きつけて来たみたいだ。 3人が来たのに気づいて、こっちに振り返る。
「見つかったの?」
「あぁ、うん」
3人が近づいていくと、生身の人は体をよけてくれた。 そこには確かに2人分の骨があった。 掘り出されたばかりのようだ、近くには土の山が積まれている。
「あ、ほんとだ」
……さて、何か変なところはあるかな? 殺人なんだったら、首がもげてたり、腕が変な方向に曲がっていたり、何らかの異常があるかも。
……そう思いながら眺めていくが、変なところは何もない。 ただ2人分、そこに転がってるって感じだ。
「……これ、イトに見せたら、誰か分かるかな」
「うーん、どうだろ」
そんな会話をしながら歌子は立ち上がり、今度は辺りを眺めてみる。
その場所は、部屋というには変な形だった。 ひしゃげているような、斜めになっているような……?
「ここって、埋もれてるの?」
もともと四角っぽかった部屋が、土で半分ほど埋まっているように見えるのだ。 一緒になって辺りを眺めていた雨子が、同意するように頷いた。
「あぁ、そうみたいだね。 ……元々は、何かの部屋だったみたい」
雨子は降霊洞穴に詳しいけど、この場所のことは知らないのかな? ずいぶん深いところにある場所だから、せいぜい50年前の雨子には分からないのかも。
『時のはざま』は300年前の話だ。 この場所で殺人が起こったとすれば、最低でも300年前には使われていたことになる。
追いかけられて逃げてきて、ここまで追い詰めて、グサッと殺したとかだろうか? 辺りは血の海になって、2人は意識が遠くなっていって……。 犯人はそのまま殺した2人をここに埋めた……。
……でも、分かったことは『時のはざま』で実際に殺人が起こって、その被害者の骨が埋まっていたってことだけだ。 300年前の他の出来事との関係も、相変わらず分からない……。
うーんと歌子は考えていると、突然大事なことを思い出した。
「あっそうだ! 歴史所、忙しいんだった! こんなことしてる暇ないじゃん、戻ろ」
歴史所はいま大忙しだ。 いま起こった事件ってわけじゃないなら、ここにいる意味は無いんだった!
歌子は慌てたように叫んで、急いで部屋を出ていき、一人で元の道を戻っていく。
「歌子ーっ!!」
スタスタと暗い道を歩いていると、後から小春が追うように部屋を出てきて、呼び止めてきた。 歌子は振り返って立ち止まる。
「何?」
「その前に、ここ、探検していかない? 入れるときなんて、無いんだし」
小春はワクワクするように笑いながら、ちょいちょいっと手招きする。
……あぁ、もう! 私がそういうのに弱いの、知ってるくせに!
どうしようかと迷っていると、横に雨子も出てきて、とどめの一言をいってくる。
「源とかも、あるよ」
「え?! 源、見てみたいっ!」
思わず好奇心が抑えられず、言葉が口走ってしまう。 小春は魚を捕獲したように、ぱっと顔を明るくさせた。
「ほらきたっ! 時間、かけなきゃいいのよ。 さくっと行くわよ」
もう、どうにでもなれーーーっっ!!www 3人はバタバタと、上の洞穴部分へ戻っていく。
内部には人の手が加わっていて、複雑な構造になってるみたい。 空洞部分があって、さらに地下の方まで部屋を作ってて……。 最も霊力が強い場所……『源』っていうところにも、階段なんかで繋がってるらしいんだ。
普段は、降霊洞穴は入ってはいけないことになってる。
……だけどこの騒ぎだし、ちょっとぐらい入っても言い訳できそうな気がする。 『白骨死体』の話もまだ分からないし、本当に事件なんだったら、生身の私がやらなきゃいけないこともあるはずだしっ! うんうんっ!
大岩のそばに来ると、降霊洞穴に入るための入り口があった。 入り口の足場も、岩を組み合わせて作られているみたいだ。 高さがある場所だから、辺りには街の景色が見えていて、風がひゅうひゅうと吹いている。
「歌子ー!」
入り口に近づくと、またもや聞きなれた声が聞こえてきた。 見ると、別のほうから雨子が走ってきていた。 手を振って、なんだか生き生きしている。
「雨子!」
「歌子たちも、骨を見に来たのっ?」
あぁ、やっぱり。 妙にウキウキしていると思ったら、雨子も、白骨の噂を聞いてきたんだな。
雨子は降霊研究所の研究員でもあるんだから、今は忙しいはずなのに……。 相変わらず、適当だなあ。 仕事もぜんぶ放り出して、遊びにきたんだろうか? よーっし、みんなで一緒に探検しようっ!!ww
歌子はノリで考えながら、合流して、一緒に降霊洞穴の中へ入っていく。
洞穴の中は、巨大な薄暗い空間だった。 火がたくさんついていて、周囲を見渡せるほどには明るい。
今ここは高い場所のようで、下のほうへと続く階段があった。 階段を下りた先には、低い平地のような場所が広がっているのが見える。
雨子が先頭になって、3人は階段を軽快に下りていく。
横には小さな部屋のようなものが、階段に沿って続いていた。 部屋というよりは、壁に掘られた『くぼみ』のような感じだ。
「ねえ、それって、どういうことなの? 今、死んだ人?」
歌子は階段を下りていきながら、『白骨死体』の話を切り出していく。 いま死んだ人なの? 昔のこと? 小春が持っていた情報が少なすぎて、まだ何もわかってない。
先を下りていく雨子は、背中を向けたまま答えた。
「300年前の話を募集してたところに、時のはざまについて知ってるって人が現れてね。 その人がここの洞穴の奥深くに、2人分骨があるって言ってて」
あっ! 来たっ! 私たちの口座に、また書き込んでくれた人が現れたみたい。 300年前の情報提供をしてやるぜ!ってことかな。 ふむふむ……。
300年前といえば、降霊能力を持つ一族が栄えていた時期だった。 同じ時期に、夢見酒の噂が流れたり、一族以外からも能力者が出てきたり……。 失踪者の多発なんて噂も、あったっけ。
まだ何もわかってないけど、やたら出来事が重なってる、変な時期のことだ。
『時のはざま』も、その時期だったとイトが言ってたのを思い出す。
うーん、ってことは……え?! 『時のはざま』の中で本当に殺人があって、そこで殺された人の骨ってこと?!
「え?! 時のはざま?」
「そう。 まだ私も、よく分からないんだけど、本当にあったのかもっ!」
雨子はウキウキしながら、ステップを踏むように階段を下りていく。
相変わらず楽しそうだなあ、雨子。 はりきりすぎて、変なことしなきゃいいけど。 ……いや、どんどん変なことしていこうっ! よっしゃーっっ!!!www
階段を降り切ると、広がった平地のような場所に出た。 入り口のような大きな穴がいくつもあり、この場所から色んなところへ繋がっているようだ。
「……へー、ここって、こんな風になってたんだ」
周りを見回している2人とは対照的に、前を歩く雨子は、まったく周囲を見ようとはしていない。 50年前はここで修行してたらしいから、降霊洞穴の構造はよく知ってるんだろう。
「そうだね。 私も、入ったの初めて。 ……そっちが、下方向?」
歌子の問いに、雨子はそうだよと頷きながら、一つの入り口をくぐっていった。 あとに続く2人も入っていき、そこから続く暗い道を歩き始めた。
道は岩や土で覆われており、トンネルのような感じだった。 おお、来たっ! ついに、降霊洞穴の深部へ行くよーっ!!w 気分が上がってきながら、歌子は跳ねるように歩いていく。
少し歩くと、下へと続いていく階段があった。 明かりはついているが、火の数は少なく、全体的に薄暗い。
「ひー、何、ここ! ……えらく、使われてないわね」
どうやら、あまりここには人は来ないらしい。 階段は形がいびつだし、妙に湿っているようにも見える。
足元を工夫しながら階段を下りていると、ふと洞窟探検をしたときのことを思い出した。
ホナミに連れられて原っぱに出て行って……。 海のほうから洞窟に入っていって、地下道を歩いていって……。 地下道の途中に、たしか降霊洞穴に繋がるってところが無かったっけ。
小春が行こうとしたけど、雨子に止められて、爆発してキレ散らかしたような……。 あれ? そんなことあったっけ? ……まあいいや。
適当に記憶をさかのぼりながら、前を歩く雨子に聞いてみる。
「ここって、どれぐらい下まであるの? 地下を探検した時に行った、あそこに繋がるの?」
「うん、あそこより、もっと深くまで行くよ。 昔は、深いところまで、使ってたみたいでね」
聞いた話では、昔はここの降霊洞穴の地下に、色んな部屋などを作っていたらしい。 儀式をするための部屋があったり、こんな地下深くで生活する空間まであったり……。 地下深くのほうが霊力が強いから、しょうがなかったらしいんだけど。
大昔に遡るほど、深い場所の部屋を使ってたんだとか。 ……こんな場所で儀式をして、生活までして……。 昔の人は、どれだけ大変だったんだろう。
……いや、最高に楽しい生活かもしれない。 毎日ワクワクしてかくれんぼ出来るじゃんっっ!!!ww やったっ!!ww
ノリに乗って階段を下りていくと、ふと見覚えのある景色が目に入ってきた。 洞窟探検をしたときに来た、地下道みたいなところだ。
あの時、覗き込んだけど行かなかった階段に、まさに今から下りていくことができるっ!
小春も辺りを見回しながら、あぁここね、みたいな顔をしてる。
前回来たときは真っ暗だったが、今は火がともされていた。 ここまで来た道にも火がついていたし、もしかしたら先に行ってる人がいるのかも。
明かりで足元を確かめながら、歌子は階段を降り始めると、ふと別のことが頭をよぎった。 私たちの口座で、骨の話を情報提供してくれた人のことだ。
「……なんで、その人は骨のこと、知ってるんだろう?」
歌子の前で、進んでいく2人が振り返った。
「あぁ、さっきの?」
「うん」
だって、変だ。 『時のはざま』の中で起きた殺人の被害者……。 今まで誰も知らなかったその骨の情報を、なぜその人は知ってるんだろう?
それに、その情報が本当なら『時のはざま』はおとぎ話ではなく、実際に存在したってことになる。 その中で人が殺されて……?
殺人が起こったのなら、その人はどんな立場だったことになるんだろう? この街は幽霊がいるから、殺された本人の可能性はある。 ただの傍観者の可能性もあるし、それとも……?
雨子が、いつもの調子で言う。
「うーん……。 まあ、普通に考えれば、その人が殺した犯人だからじゃない?」
「え?! それ、ヤバいじゃない」
小春がぴたりと、立ち止まった。 前の雨子が振り返って、きょとんとした顔で聞き返す。
「なんで?」
「だって、人殺しが、ここにいるってことでしょ?」
小春が慌てて、変にドキドキしたような感じで言う。 現代の街を人殺しがさまよってて、血眼でナイフ持ってブラブラしてるかもしれないじゃないっっ!!! ヤバいわよ、それ。
そんな小春とは対照的に、雨子は落ち着いているようだ。 いつものように適当な表情で、うーんと首をひねった。
「まあそうだけど……300年前に生きてた人なら、今いたとしても、霊だから、もう人は殺せないけど」
殺すために持つナイフは、幽霊の体じゃもう持てない。 気づいたように、あっと声を出して小春は体を緩めた。
「あ、そっか。 ……そうよ! なにビビってんの、私!」
自分の腕をぱしんと叩いて、再び歩き出す。
……でも、実際のところはどうなんだろう? 歌子は階段を下りていきながら考える。
もしその犯人がシリアルキラー的なヤバいやつだったとしたら、幽霊の体とか生身とか、関係あるんだろうか? 現代に降霊されても、なんやかんや人を苦しめそうな気がする。
……いや、あんまり怖いことは言わないようにしよう。 小春は意外とこういう話には弱いから、また怖がらせてしまうかも。
階段を降り切っていくと、今度はぐるっと円方向へ、道が続いていた。
「あそこかな」
3人は道に沿って歩いていくと、明かりが見えてきた。 どうやら人がいるようだ、声も聞こえてくる。
明かりのついた部屋に入ると、中には人が何人かいた。 壁のほうで、一か所に群がって話している。 一人だけ生身の人がいるようで、道具を使って土を掘り返していたようだ。
どうやらこの人たちも、噂を聞きつけて来たみたいだ。 3人が来たのに気づいて、こっちに振り返る。
「見つかったの?」
「あぁ、うん」
3人が近づいていくと、生身の人は体をよけてくれた。 そこには確かに2人分の骨があった。 掘り出されたばかりのようだ、近くには土の山が積まれている。
「あ、ほんとだ」
……さて、何か変なところはあるかな? 殺人なんだったら、首がもげてたり、腕が変な方向に曲がっていたり、何らかの異常があるかも。
……そう思いながら眺めていくが、変なところは何もない。 ただ2人分、そこに転がってるって感じだ。
「……これ、イトに見せたら、誰か分かるかな」
「うーん、どうだろ」
そんな会話をしながら歌子は立ち上がり、今度は辺りを眺めてみる。
その場所は、部屋というには変な形だった。 ひしゃげているような、斜めになっているような……?
「ここって、埋もれてるの?」
もともと四角っぽかった部屋が、土で半分ほど埋まっているように見えるのだ。 一緒になって辺りを眺めていた雨子が、同意するように頷いた。
「あぁ、そうみたいだね。 ……元々は、何かの部屋だったみたい」
雨子は降霊洞穴に詳しいけど、この場所のことは知らないのかな? ずいぶん深いところにある場所だから、せいぜい50年前の雨子には分からないのかも。
『時のはざま』は300年前の話だ。 この場所で殺人が起こったとすれば、最低でも300年前には使われていたことになる。
追いかけられて逃げてきて、ここまで追い詰めて、グサッと殺したとかだろうか? 辺りは血の海になって、2人は意識が遠くなっていって……。 犯人はそのまま殺した2人をここに埋めた……。
……でも、分かったことは『時のはざま』で実際に殺人が起こって、その被害者の骨が埋まっていたってことだけだ。 300年前の他の出来事との関係も、相変わらず分からない……。
うーんと歌子は考えていると、突然大事なことを思い出した。
「あっそうだ! 歴史所、忙しいんだった! こんなことしてる暇ないじゃん、戻ろ」
歴史所はいま大忙しだ。 いま起こった事件ってわけじゃないなら、ここにいる意味は無いんだった!
歌子は慌てたように叫んで、急いで部屋を出ていき、一人で元の道を戻っていく。
「歌子ーっ!!」
スタスタと暗い道を歩いていると、後から小春が追うように部屋を出てきて、呼び止めてきた。 歌子は振り返って立ち止まる。
「何?」
「その前に、ここ、探検していかない? 入れるときなんて、無いんだし」
小春はワクワクするように笑いながら、ちょいちょいっと手招きする。
……あぁ、もう! 私がそういうのに弱いの、知ってるくせに!
どうしようかと迷っていると、横に雨子も出てきて、とどめの一言をいってくる。
「源とかも、あるよ」
「え?! 源、見てみたいっ!」
思わず好奇心が抑えられず、言葉が口走ってしまう。 小春は魚を捕獲したように、ぱっと顔を明るくさせた。
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