幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第六章 新しい街の始まり・初日

第55話 小春とマツリ!

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 小春が男を探して、街の中を歩き始めると、5分もしないうちに見つけた。

「あ、いた。 ……ねえ、あんた!」

 男は相変わらずボサボサの長髪で、何をするわけでもなく、街の道をフラフラと歩いていた。
 ……というか、あなたの髪の毛、あんまりにもボサボサすぎない? すごく目立ってるの、気づいてないのかしら。

「……あぁ、お前か」

 男は振り返るとこっちを見て、興味なさそうに呟いた。 ふたたび前を向いて、何事も無かったかのように歩きだす。 きーっ!!! やっぱりムカつくーっ!!
 ……まあいいわ、ここまではり込み済みよ。 こんな程度でイラついてどうすんのよ、わたし。 むはははっ!!ww
 隣に行って、一緒に歩きながら話しかけてみる。

「あんた、何してんのよ? この真昼間まっぴるまから」
「別に、なんもしてねえよ」

 男は前を向いたまま、退屈そうに答える。 私のことを見もしないし、本当にムカつくわね。 でも、今回はキレないわよ。
 決意を胸にして、粘り強く話し続ける。

「なら、仕事やらない? 人手が足りないところがあるんだけど」
「なんでだよ。 何が面白いんだよ、そんなことして」

 男は相変わらず前だけを見て、ひとり言のように返事をしていく。 こっち、見なさいよっ! 私のこと、馬鹿にしてるでしょっ!!! あ”ーーーっっっ!!!! ほんっとムカつくわっっ!!!

「何がって……やってみなきゃ、分かんないでしょっ!」

 私は思い切って、男の前に飛び出していった。 仁王立におうだちして、腰に手を当てて立ちふさがって見せる。
 しかし男は私を見もせずに、すっとけていった。

「あっ! ちょっと!」

 通り過ぎようとした男の目の前に、バタバタと無意味に手を動かしていく。 こうすれば生身なまみだろうが幽霊だろうが、無視はできない。
 この街での、最大級の攻撃法の一つだ。 ここに来て1年ぐらいで修得したのよ。
 男は鬱陶うっとうしそうにしながら、吐き捨てるように言った。

「うるせえなっ。 なんだ、お前」
「絶対面白いって! たぶん、あんた向いてるし」

 そうよ、どんどんめていかなきゃ。 褒める子ほどよく育つって言うでしょ。

「はあ……何の、仕事だって?」

 男は根負こんまけしたように立ち止まると、ようやくこっちを向いた。
 来たっ!w しめしめ、わなにはまってるとは知らずにww ブヒヒと笑いながら、私は説明を始める。

「憶え屋っていうところの、仕事なんだけどね。 憶え屋って、知ってる?」
「いや」
「あら、知らないの? あなたw へーwww」

 偉そうな態度して、そんなことも知らないのwwww あwwなwwwwたwww この情報化社会で、情報弱者にもほどがあるじゃないwww ははっ!!w
 ……え? 私が昨日、説明しなかったって? そうだったっけ、わたし記憶力悪いから、もう忘れたわww むははっ!!ww
 男はつられて笑いながら、イラついたようにツッコミを入れてくる。

「なんなんだよ、お前?w」
「いや、ごめんごめんw ……えっと、霊って、何か文字で書き留めようと思っても、できないしょ?」

 気分を落ち着けて、丁寧ていねいに説明してみる。 男は、当然だというように答えた。

「そりゃそうだろ、物がさわれないんだから。 ……あぁ、それをおぎなうってことか」
「あら、やっぱりあなた、物分かりがいいわねえ。 フゥう~!!」

 生身の人が代わりに書けば、幽霊でも文字を書けるのと、同じことになるって? そうそう、そうなのよ。
 私はやりすぎなぐらいに、手振りを使って盛り上げてみせる。 男は思わず笑った。

「馬鹿にしてんのか? お前w」
「いや、ほめてんのよ。 ……憶え屋がやることって、それだけじゃなくてね。 伝言を預かって届けたり、文字の記録を丸々写して2つにしたり……。 最近だと、そんなこともやってるらしいの」

 伝言に、記録のコピーを代行するサービスに……。 800年前には、こんな妙ちくりんなサービスは考えられなかった。 ユメ、あなた、ずいぶん羽を伸ばしてるみたいね。 楽しそうで、よかったわ。
 目の前の男は、話を整理しているようだ。 自分が何の仕事ができるかを考えながら、相槌を打っていく。

「ふーん。 ……じゃあ、伝言しろってことか? 記録は生身しか、できないんだからな」
「そこなのよ。 あなた、物覚えには自信あるの?」
「マツリ」
「……え?」

 いきなりぼそっと、男が言った。 何のことか分からず、私はきょとんとして聞き返す。

「俺の名前。 お前は?」

 あぁ、そういうこと。 私が変なこと言っちゃったかと思ったわよ。
 私も改めて、自己紹介をする。

「あぁ、私、小春ね」

 男は頷きながら、くるっと身を返して歩き始めた。 方向を変えて、元の道を引き返していく。
 ……え、戻るの? 憶え屋の仕事を、やる気になってるのかしら。 じゃあ、私も戻りましょう。
 一緒に元の道を歩き、幽霊の人ができる仕事の話に戻っていく。

「それでね、霊だからって口座を扱えないわけじゃなくてね。 物覚えがいい人は、記録の内容を全部憶えてて……」
「全部?」

 さすがにびっくりしたのか、マツリが聞き返す。

「あ、全部かは分かんないけど……いや、たぶん違うわね。 でも、結構な量の口座の内容を、憶えてる人なんかもいて、すごいのよ。 私なんか、昨日会った人の事も忘れるのに」

 昨日っていうか、5分前のことも忘れるわね。 ま、いっか。

「霊は基本的に伝言の仕事だけど、憶えられる人なら、伝言で街を回りながら、同時に街中で記録を受け付けたりするわけ」

 要は、街中でもネットが使えるってことよねえ。
 ……え、どんな感じか分かりにくい? あらごめん、わたし説明下手なのよw もう少ししたら実際にやってる所が見れるらしいから、ちょっと待ってなさい。

「はー。 ……なるほど」

 マツリは考えているようだ、腕を組んで、宙を見つめながら歩いている。
 ……どんなこと考えてるのかしら。 ちゃんと憶え屋のこと考えてる? 昼ごはんのことを考えてたら、わきをこちょこちょするわよ。
 私は顔をうかがいながら、聞いてみた。

「あんた……マツリ、どう? やってみる?」
「……話だけ、聞いてみるか」
「おっ! ほら、やっぱりっ! さっきから、元の道、引き返してると思ったらw」

 私はマツリの肩のあたりを、ぽんと叩くような動作をする。 マツリは顔をしかめた。

「いちいちうるせえな、お前w で? どこだ、それ?」
「じゃあ、ついてきて」

 小春は先に歩いていき、憶え屋へと向かう。



「まいどーっ!」

 よく分からない掛け声を上げながら、小春は憶え屋に入っていく。 中にいた職員の一人が振り返った。

「小春。 どうした?」

 いつも来ている本社だから、職員とは顔なじみだ。
 小春はマツリを連れて中に入っていくと、さっそく経緯けいいを説明した。

「この人、マツリっていうんだけど、ここで働きたいんだって」

 そういって小春は、横に立つマツリを紹介する。 マツリは憶え屋の中を眺めながら、刺々とげとげしいオーラを放って突っ立っていた。 めっちゃ偉そうで、とても新人には見えない。

「あーそう。 ……はあはあ、分かったー……」

 職員はそんなマツリを見て、不審そうな声で答える。
 偉そうで、髪の毛はありえないぐらいボサボサで……。 この人、まともに働けるのかしら。 職員は心の中で呟きつつも、仕事モードに入る。

「あ、じゃあ説明するから」


 職員は、憶え屋の仕事を一通り説明していった。 マツリは相変わらずぶっきらぼうで怖い顔だが、頷きながらちゃんと理解して聞いているようだ。
 説明を聞き終えると、マツリはさっそく入り口のほうへと動きだした。

「……なるほどな。 まあ、やってみるか」
「頑張ってねーっ。 ……あ! 顔づくりとか、知ってる?」

 小春が思い出したように、外に出ようとしていたマツリに聞いていく。 マツリは振り返って眉をひそめた。

「ん? なんだ、それ」

 どうやら仕事の説明が足りなかったようだ、職員が慌てたように補足ほそくした。

「あ、そうだった。 そういう人たちがいるんだ。 街の人の、名前と顔を憶えてる人たち。 分からない名前の人がいたら、その人に声をかけてみて」

「そう。 腕に赤い布を巻いてて、名前を聞いたら、その人の顔を目の前で作ってくれるの。 ……こうやって」

 小春はぐにゃっと顔をしかめて、変顔をして見せる。 名前と顔をセットで憶えていて、目の前で顔を変えてその人がどんな人かを見せてくれるのだ。

「ふーん、なるほどな」

 マツリは理解するように頷くと、外へ向かって再び歩き出した。 さあ、仕事の時間だぜっっ!!

「がんばれー! ファイトーっ!!」
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