幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第六章 新しい街の始まり・初日

第56話 城!

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 歌子は憶え屋に寄った後、歴史所に出社していた。 元気な声を出して、歴史所の中へと入っていく。

「おっはようございまーす!」

 歴史所は、いつもの様子に戻っていた。 昨日の騒がしい雰囲気は消え失せ、新しく降霊された人たちの姿は見えない。 もう昼時だし、処理は全て終わったようだ。
 混乱は、結局1日で終わった。
 あぁよかった、心からほっとする。 昨日働いてるときは、永遠に混乱が続いていくような気さえしたんだよね。 次から次に変な出来事が起こっていって、歴史所に戻って仕事をして……。 うーん、もうあんなことは、これから先は無くてもいいなw

 入り口に入ると、近くにいた人から声をかけられた。 仕事の関係者の人だ、くずれた巫女みこ服みたいな恰好かっこうの人が話しかけてくる。 手には紙束をどっさりと抱えている。

「これ、受け渡しに来ました」

 新しい紙を届けに来てくれる人だ! 歴史所は紙を買う契約けいやくをしているから、こうやって定期的に届けに来てくれるんだ。
 ちなみにこの人は、生身なまみの巫女が多くつとめている『旧祈祷所きゅうきとうじょ』の人だよ。
 旧祈祷所っていう施設には、生身の人のための仕事がたくさんある。 糸を作ったり、道具を作ったり、お酒なんかも造ったりするんだけど、紙も大量に製造してるんだ。
 歴史所は公的な機関として、旧祈祷所から紙を購入する契約をしてるの。

「ありがとうございますっ!」

 私は笑顔であいさつしながら、紙を受け取っていく。 腕に抱えると、ずっしりとした重みを感じる。 歴史所は毎日たくさん紙を使うんだ。
 歴史所の中に進んでいくと、休憩を取っている職員の人が辺りに見えた。 もう昼休みなのかな? 椅子に座って談笑している人たちが、そこらに見える。

「歌子ちゃん。 後で頼みたいことがあるんだけど、いい?」
「分かりましたっ!」

 あぁ、さっそく忙しいなあ。 昨日も大変だったのに、日常に戻ったと思ったらこれだ。
 私は部屋の奥へ行くと、紙を置く場所を探していく。 えーっと、紙を置くところ……この辺りでいいかな。 ふーう。

「歌子ちゃん、今、昼休みだよ。 さっき、ツムギちゃんが、来てたよ」
「そうですか! わかりました」

 ツムギちゃんっていうのは、私の友達だよ。 歴史所の隣の『ことば所』で働いてる、女の子なんだ。
 私とほとんと年齢が同じでね。 生身って言う境遇きょうぐうも同じだから、仕事の合間の昼休みに、よく一緒にご飯を食べるの。
 勉強会の『言語研究会』に参加してる子なんだ。 前に、洞窟どうくつから大量の石ころを持って帰ったとき、実はミツエダ先生の部屋に一緒にいたんだけどね。

 ……ところで、やっぱり今は昼休みなんだ。 朝の間ずっと寝てて、起きたら日が高く上ってたんだよね。
 今日は、朝の料理を家族で作るのも、手伝ってない。 お母さんたち、気をつかって起こさないでくれたのかな?
 起きてから何も食べてないから、お腹がペコペコだ。 隣のことば所に行って、ツムギちゃんを誘っていこう。
 紙の束をどさっと置くと、私は引き返して入口へと戻っていった。


 隣のことば所も、騒ぎはなくなり落ち着いていた。 昨日は人が多かったみたいだけど、今はそうでもない。 たまにその辺に、古い格好をした人たちがいて、職員の人に話を聞いているのが見える。
 私は部屋に入ると、ことば所の所長しょちょう挨拶あいさつをしていった。

「こんにちはー! ツムギちゃん、いますか?」
「あぁ、いるよ。 ……ツムギちゃーん! 歌子ちゃんだよー!」

 中のほうに進んでいくと、ツムギちゃんを見つけた。
 資料を入れてる棚の前で、脚立きゃたつみたいに台に乗って作業しているみたいだ。 うーんと背を伸ばして、上のほうに資料を積み上げている。

「よっしょー……ふう。 あ、歌子ちゃんっ!」

 紙を整理していたツムギちゃんは、こっちに気づいた。 台の上から手を振ってきて、急いで床へと下りていく。
 私たちは合流すると、一緒に走りだした。 ツムギちゃんは部屋の向こうのほうにいる所長へ、大声で叫ぶ。

「所長、休んできまーす!」

 よーっし、ご飯を食べようっ!! 私たちは勢いよく足音を鳴らし、ことば所から廊下へと飛び出していく。

「どこで食べる?」
「あ! 『城』に行ってみようよ。 今、建築してるんでしょ?」

 『城』……? あぁ、あの話かっ!
 私もさっき聞いたんだけど、どうやら私たちの『城』を建築するって話になってるみたいなの!

 昨日の夜から今日の朝にかけて、私が眠っている間に、街ではずいぶん色んなことがあったらしい。
 夜の間、多くの人は興奮してずっと起きてたらしくてね。 小春やスズネたちも、夜中ずっと起きて、遊んだり話したりしてたんだって。 もう、みんな元気いいなあっ!w 私、幽霊の人にはついていけないよ。
 ツムギちゃんも、生身なのに起きてたらしいんだw じつは今まで私たちの都市伝説の活動をこっそり見てて、参加したかったとか、話してたんだって。

 街の長をはじめとする公的な人たちも、夜中じゅう起きてたみたい。
 この混乱があって、考えなきゃいけないことが山ほどあったみたいでね。
 最初は、新しい人たちが住む家を、どこに作ろうかとかを真面目に話し合ってたらしいんだけど……。 途中から深夜テンションでおかしくなったのか、『この機会に今までの建物も一新しちゃおうぜ! イェイ!!ww』みたいなノリになったらしいんだ。

 それに乗じて、小春やスズネたちもノリで名乗りを上げたんだって。 『都市伝説を探すメンバーで、自分たちの城を建築するわよっ!!』『よしきた、私もいっちょ手伝ってやるぜ!!』みたいな。
 ユメもテンションがおかしくなったのか、気前が良くなってね。 『私のお金で作っていいよ!! ドッカーンと派手に作ろうっ!!』って半分寝ぼけて叫んでくれたらしいんだ。 今回の混乱で稼ぎまくったから、嬉しくて調子に乗ってるのかも。
 城を作って、みんなで集まって、自分たちの個室を作ったり……おぉ、想像が膨らんで、ワクワクするっ!!
 私はムフフと笑いながら、頷いた。

「そうだね! 行ってみようっ」

 昼時の街中に出てくると、辺りには料理を売っている人たちが歩いていた。 客も大勢いて、昼ごはんのにおいがただよってくる。
 今日はなんだかみんなウキウキしている。 普段の挨拶をかわすのも、世間話せけんばなしをするのも、声が一段浮ついていて元気さ3割増しだ。 昨日みたいなことがあると、いつもの日常がこんなに平和だったんだなって、改めて感じるよね。
 煙があちこちから上がっていて、どれも美味しそうっ!! うーん、今日は何を食べるかな……?
 2人で食べる料理を物色ぶっしょくしていると、ツムギちゃんが思い出したように言った。

「そうだ、新しい都市伝説が、色々入っててね」
「え、ほんと?」

 新しい都市伝説っ! 私が眠ってた間に、そっちの話も進んでいたのか。
 ツムギちゃんは懐から、文字が書かれた石ころを取り出した。

「うん。 ……えーっと、『憶え屋の口座の中を徘徊はいかいする鬼……何でも食らい、人の血を求めて、さまよう鬼がいる?!』」

 あ! ついに来た、憶え屋がらみの話っ!!
 憶え屋が出来た時から、いつか出ると思ってたんだよね。 憶え屋って自由で、色んな可能性に満ちてるから、ワクワクすることが起こりそうじゃんっ?

「へー! なにそれっ!w ……他には?」
「他には……あ、『まぼろしのお酒! ……夢見酒ゆめみざけは、実は憶え屋の中にあった?!』」

 ……あぁ、また夢見酒の話か。
 現実に物質的にあるんじゃなくて、情報的なものだったって言いたいのかな。 うーん、なるほど……。

「……ふーん」
「あれ、なんか、冷めた?」

 反応が薄い私の顔を、ツムギちゃんが不思議そうに覗き込んでくる。 私は最近作ったお酒のことを思い出しながら言った。

「だって前回の、一応作ったけどさ、どう考えても違うじゃん」

 実際に作らされた身としては、あんなのでまともなお酒ができるとは、とても思えない。 ……ミカンとヨモギを混ぜたら、夢見酒?
 小春じゃないけど、そんなに簡単に夢の世界がつながったら、なんにも退屈しないわよ。
 小春の真似をしてみせると、ツムギちゃんは楽しそうに笑った。



 街はずれの辺りに来ると、私たちの城が見えた。 少し高い場所に、巨大な建物がそびえたっているのが見える。
 来たーっ!! ついに私たちも、自分たちの場所が持てるのだ。 わらと木のしみったれた家に住んでたから、なんだか感慨かんがい深いなあ。 ……いや、私はあの家も好きだけどさ。

 城はまだ建築中で、建物は完成してなかった。 近くに来て建物の足元に立つと、その大きさがよく分かる。 城は見上げるほど高くて、大きな石を綺麗きれいに組み合わせて作ってあった。 緻密ちみつな岩でできたマンションの、巨大版って感じだ。

 正面には開け放された玄関があり、誰でも来いや!の構えだ。 うーん、なかなか様になってるじゃん。 名前は『ウタコ城』にしようかな。 ……ムフフッ、私の夢が広がるっ!!ww

 玄関から中に入っていくと、中も広くて大きかった。 1階、2階、3階と階層があって……。 廊下を歩けば、たくさんの個室が続いている。
 こんなに大きな建物を自由にできるなんて、まるで一国の主にでも、なった気分っ!!

 ……あぁ、何しようかな。 これだけ広くてたくさんの部屋があるなら、願うことは何でも出来そうだ。
 とりあえず、私のプライベートルームを作らねば。 年頃としごろの乙女なんだから、一人で感傷かんしょうひたりたいときぐらいあるのだ。
 それから、みんなで料理を食べる宴会場えんかいじょうでも作ろう。 厨房ちゅうぼうで料理を作って、私が笑顔で振舞うの。 熱々の料理をテーブルに持って行って、『できたよー』『歌子、ありがとうっ!』。 みんな私に感謝して、嬉しそうに料理を食べてくれて……。 あぁ、最高の毎日だっ!!w

 ムフヘと妄想もうそうしながら歩いて、玄関から中へと進んでいると、建物の奥から誰かが走ってきた。
 ……あ、雨子だ。 いつものようにただならぬ様子で、息を切らして走ってくる。 雨子も城に来てたんだ、昼時だから、ここでご飯でも食べてるのかな?

「歌子っ! 大変っ!! もう大変なのっ!」

 雨子は頭を振り乱して叫びながら、狂気きょうきを見せて走ってくる。
 あぁ、また変なものでも見つけたのかな。 ウキウキしていて、体が好奇心こうきしんのバネで飛び跳ねてる感じだ。

「雨子、どうしたの?」
「なんかね、異国の話が、どんどん見つかってね! ここに誰かが、置いていってるみたいなの!」

 異国の話?
 ……あぁ、洞窟で見つけた石ころみたいな話かな。 でも、あの石ころに書かれてたのは、悪戯いたずらだろうって話だったけど。
 それが今になってまた現れた? ……同じような石ころを、この城に持ち込んでくる人がいる……?

「ここに?」
「……誰なの?」

 ツムギちゃんも、怪訝けげんな顔だ。
 あの石ころに書かれた内容は、どう考えても空想のものだった。 宙に浮く技術とか、テレパシーとか……。
 私は都市伝説を探してるけど、現実的なものを探してるつもりだ。 明らかに変なものは、わたし個人は求めてないんだけど。
 疑うように考える私たちの前で、でも雨子はそんなの気にしてないようだ。

「さあ、知らないけど。 でもいいじゃん、こんなにワクワクするの、始めてっ!」

 いつものように早口で話すと、振り返ってウキウキした足取りで城の中へと戻っていく。

 ……まあいいか。 どうせ誰かの悪戯だとしても、証明する手段がない。 雨子はこんなに楽しそうだし、ほうっておこう。 イェイっっ!!!ww
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