幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第六章 新しい街の始まり・初日

第57話 300年前の回想っ!

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 2人はルンルン歩く雨子と一緒に、城の2階に上がってきた。
 たくさんの部屋が作りかけられているみたいだ、廊下を歩くと、次から次に部屋が見えていく。 すごい……本当に王様にでもなった気分だ。

 雨子と一緒に、私たちは一つの部屋に入っていった。
 部屋は広く、私たちがいてもちっぽけに見えるぐらい大きかった。 一人では使えきれないぐらいだ。
 外側の壁には、窓のような穴が開いていて、昼間の日の光が差してきている。
 窓の近くには、スズネと小春の姿があった。 2人は窓際の辺りに座って、ご飯を一緒に食べているみたいだ。
 スズネがこっちに気づいて、手を振ってくる。

「歌子。 一緒に食べよー」

 小春もおにぎりを手に持って、もぐもぐ食べてるみたい。 あぁ小春、あなたもご飯を食べることにしたのね。 味がしないってぼやいてたけど、みんなと一緒に食べたいのかも。

「ねえ歌子、300年前の話は、どうなったの?」

 おにぎりを手に持ったスズネが、思い出したように聞いてくる。

 2人が食事をしている辺りの床には、文字が書かれた石ころや紙切れが散らばっていた。 見た感じ、300年前の『時のはざま』についての資料のようだ。
 300年前……。 降霊能力を持った一族が一つの家にまとまって住んだり、夢見酒ゆめみざけの噂が流れたり……。 失踪しっそう者が出たりなど、一番情報がぐちゃぐちゃしている時代だった。

 そういえば昨日の混乱の中でも、降霊洞穴こうれいほらあなに探検したな。
 300年前の情報を憶え屋で募集してたら、『時のはざま』を知ってるという人が口座の中に現れて、降霊洞穴の地下深くに、殺された2人分の骨があると話したんだっけ。
 実際に私たちも見に行ったけど、深い地下の部屋で、2人分の骨が掘り出されてた。

 後から聞いた話では、情報提供してくれた人は、なんと降霊能力を持った一族の一人だったんだって。 名前は『コガネさん』とか言ったっけ……。 一族の家で、10代の少年として実際に生きていた人だって。
 怪しい一族の人が、怪しい事件にかかわっている……。 これはなんだか、面白いなぞの予感がするっ!!

 雨子は床に座っていくと、思い出したように話しだした。

「あ! またコガネさんが、新しい話を、入れてたよ」
「誰、コガネさんて」

 おにぎりを食べていた小春が、ぼそっと呟く。

「その、骨のことを話してた人」
「あぁ。 ……え?! そいつ、大丈夫なの?」

 その『コガネさん』が情報提供者だから、殺人の犯人である可能性は、たしかにある。
 雨子は、手元の資料を見ながら頷いた。

「うん、多分。 ……っていうか、一応、入ってきた人は、みんな検査したんでしょ?」
「うん、大丈夫だよ」

 私は頷いて答えると、そこに置いてあったおにぎりを手に取って、食べ始めた。 さっき汁物しるものだけ道で買ってきたから、おにぎりがあってちょうどよかった。

 街に誰が入ってきたのかを確認する……。 昨日は誰もかれも大慌てだったけど、身元のチェックはしっかりやったみたいだ。 犯罪者が紛れ込んでたなんてことになったら、大変だしね。

 ……でも、よく考えたら、身元のチェックなんて意味があるんだろうか?

 だって、この話は『時のはざま』だ。

 もしこのコガネさんという人が犯人だとしても、時のはざまで人を殺したのなら、他の人がそれを知らなくてもおかしくはない。 隠された殺人なら、犯人は犯罪者とすら知られてないことになるからだ。

 私はおにぎりを食べながら、近くにあった紙きれを、一つつまんで目を通してみる。 やっぱり300年前の資料のようだ、結構細かく調べてる。 雨子はいったい、どこからこんな情報を持ってきたんだろう?
 雨子はもう、食事は終えているようだった。 床に散らばった資料を手に取って眺めている。 みんなに聞いて欲しい内容があるみたいだ、一つの石ころを手に持つと、そこに書いてあるメモを読み始めた。
 300年前の、『コガネさん』の視点の、一族の家の様子の回想かいそうのようだ。

「『……家の玄関に、入っていく。 ハナが、ちょうど家の中から出てきて、お互いに気づく。 ちょっとだけ目を合わせるけど、ほとんど話さない』」

 ハナ……一族の、別の人だろうか? 初めて聞く名前だ。 玄関で出会ったけど、目が合っても話さない……ふむふむ。
 ……もしかして、家の中の空気は良くないのかな? この一族は、いくつもの家族が一つの家にまとまって住んでいたと聞いた。 なんだか、嫌な予感がする。

 食べ終わってゴロゴロしていた小春が、きょとんとした顔をした。

「え、何それ」
「その人の、300年前の回想。 事件以外のことも、話してくれてるみたいでね。 ……『通り過ぎて、廊下を歩いて行く。 隣の部屋から、怒声どせいが聞こえる。 また、怒っているようだ。』」

 ひーっ!! ほらやっぱり、険悪けんあく雰囲気ふんいきだよ。
 ……やっぱりねえ。 複数の家族がまとまって住んでる家なんて、おかしいと思ったんだ。 ぜったい、ヤバいことが起こってる。
 あんまり話さない家族(?)どうしに、怒鳴どなり声が響く家の中……。 一気にダークな感じになってきた。
 これから一体、どうなるんだろう? 扉を開けたら、いきなり包丁を振り上げてたりとか……ひぃっ! こわいこわい。
 こんな状況なら、この『コガネさん』も心労しんろうが絶えないだろうな……。

「『そんなことより、今日の晩飯は何だろう。 イワシが大量にとれたらしいから、それを楽しみにしよう。』」

 そんなことより……って、気にしてないんかーいっっ!!
 晩ごはん……イワシ? 空気が悪い家庭かと思ったら、いきなりけろっとしてて拍子抜ひょうしぬけする。 コガネさんは、ちょっぴり楽天家なのか?

 私はふと目を落とすと、私が持っている紙にその続きが書かれていた。
 手に持った紙を渡していくと、雨子は今まで読んでいた石ころを床に置いて、受け取って続きを読み始める。

「……『新しい地図が、完成した。 今日は、先生が来ていた。 イトちゃんとハルちゃんも一緒だ。 玄関で会うと、新しい薬草が見つかったのだと、2人が楽しそうに話してくれた。』」

 あ! イト、来たっ!!w ……そうか、300年前だからイトが生きてた時期なんだ。
 遠い日の出来事を聞いてたのに、いきなり親近感がわいてくる。 また時間の感覚がぐちゃぐちゃになるっ!

 『時のはざま』の事件が起きる前には、イトはすでに死んでたと言っていたから、事件が起こる、いくらか前の時期の回想なんだろう。
 どうやら一族の家に、医者の先生が来たようだ。 一族には病気の人が何人もいるから、診察しんさつに来たんだろう。
 イトと一緒にいたのは、『ハルちゃん』……? この街の長と一緒に働いていたと言っていたから、これは長の名前なのかな。 へー。

 話す横で、小春は退屈そうにしていた。 ブラブラと体を揺らしながら、適当に相槌あいづちを打っていく。

「ふーん。 ……なんか、そいつ楽しそうね」

 確かに、そうかもしれないw
 家の中の人間関係は、一見そんなに良くはない。 だけどこの『コガネさん』は、そんな中でも生活を楽しんでるようにも見えるからだ。
 ……でも、私だったらやだな。 ギスギスした家で、生活していくなんて……。 やっぱり家族は、仲良くなきゃ。

 スズネは、さっそく推理するように頭をひねってるみたいだ。 情報を整理しようと、雨子に聞いていく。

「え、その人が? ……何?」
「この人は、その一族の子供の一人だって。 ……こんな感じ」

 雨子はそういって、別の紙を引っ張ってきた。 どうやら家系図かけいずのようだ。

<i850092|43886>

 1つ目の家族に、玄関で会ったハナさん……。 2つ目の家族には、情報提供者の『コガネさん』。
 村の一番の権力者はハナさんの父親で、コガネさんの上には兄弟がいる……そんな具合のようだ。

「はー……えっと?」
「家族は2つ同居してて、……あ、3つ目の家族の人も、一人いるね」

 外れたところに、1人だけ従兄弟いとこの人がぽつんといるのが見える。

「やまい……病気なの?」
「あ、そう。 この人は病気にかかってて、医者の先生にてもらってたみたいだね」
「この人……コガネさんの、父親も?」
「そう。 その2人が病気で、家の奥のほうで寝てたんだって」

 家系図をのぞき込みながら、みんなで口々に情報を整理していく。 小春は横からぼうっと眺めながら、相変わらず退屈そうだ。 他人事みたいに、ぼそっと呟く。

「ふーん、大変ねえ」

 ……でも確かに、大変そうではある。 家の中にいくつもの家族が同居していて、病気の人が何人もいて……。 家の中は、雰囲気が悪かったんだから。

「それで、コガネさんには2人お兄さんがいて。 で、もう一つの家族の父親が、村全体の一番の権力者で……その子供が、さっきのハナさんって人」
「……一人っ子なんだ」

 スズネが、ぼそっと呟く。 兄弟の話を聞いたことがないから、もしかしてスズネも一人っ子なのかな。 ちょっと親近感を持ったのかも。

「それで、殺された2人っていうのは?」
「それはまだ、分からない。 イトも、色々調べてるみたいだよ」

 殺された2人が、果たしてこの中の誰なのか……? それは重要な情報だ。 それが分かれば、犯人の推測もしやすくなる。

 雨子は話を終えて、フムウと手をあごに当てて、探偵のように家系図を見つめている。 どうやら今回の情報はこれぐらいみたいだ。

 分かったのは、情報提供者のコガネさんが一族の人ということと、家の中の雰囲気が悪かったこと。 家の中には病気の人がいて、医者の先生が一族の家に診察に来ていたこと……。
 うーん、でも、まだ事件の全体像は分からない。
 家の中の雰囲気を見ると、殺人が起こったというのはありえるのかもしれないけど、『時のはざま』っていうのはまだ見えない。
 夢見酒の姿かたちも見えないし、失踪者というのも繋がらない。 うーん、どういうことなんだろう……。

 小春は飽きたのか、体を放り出していった。

「はー! ……なんか、難しいわねえ、最近の世の中は」

 ごろんと寝転がって、天を仰いで、腕を広げる。 もう面倒くさくなったみたいだ。
 横から雨子が、ツッコミを入れる。

「これ、300年前だけどね」
「300年前も変わんないわよ。 私が生きてた頃は、もっと簡単だったけどなー……」

 小春が生きていた頃は、800年前だ。 600年前にこの島にコメが入って来てから、社会が大きく変わったから、その前の時代のことを言ってるんだろう。
 小春は床に仰向けになったまま、目を閉じて、静かに呼吸をする。 ちょうど顔の部分だけ日陰にかくれていて、気持ちよさそうだ。

「……でもユメは、死ぬほど退屈だったって、言ってたよ」

 ユメと小春だと、性格が違う。 面白くてワクワクすることを求めてるのは同じだけど……。 口には出さないけど、ユメのほうがもっと激しく求めてる気がする。
 いつかのユメとの会話を思い出す。 『ユメ、自分の生きてた時に戻りたいって、思う?』『絶対嫌だ』。 即答だったから、びっくりした。
 そんなに自分が生きてた時代が、退屈だったんだろうか。 親や兄弟は、現代にはいないんだし……ちょっとは懐かしむ気持ちとか無いのかな。
 小春は目を開けると、気の抜けたように笑って答えた。

「あぁそう? ……うーん、まあ、退屈だったわねw」

 小春はいつも、正反対のことばかり言ってる気がする。 面白いと言ったら、つまらないと言ったり。 退屈だと言ったら、ワクワクすると言ったり……。
 そんな小春を見つめていると、ふと、ぜんぜん関係ないことが頭によぎった。

「あ、そうだ、さっき言ってた人、どうなった? ……あの、嫌なやつとかっていう……」

 さっき憶え屋の記録室での、小春とのやりとりを思い出す。 憶え屋の職員に向いてる人……とか言ってたっけ? 嫌なやつとだけ言ってたが、それ以上の情報は知らない。
 ……でも、小春がそんなに嫌がる人なんて、私は見たことがない。 ちょっと珍しいし、興味があるかも?
 小春は寝っ転がったまま、思い出すようにして答えた。

「もう、ばりばり仕事してるわよ」
「え、誰?」

 雨子も知らなかったようだ、アンテナに引っかかったように、ピピンと反応する。

「なんか、憶え屋の職員として、いい感じの人がいたって……」
「へえ! ……ん? なんか、面白そうっw」

 雨子は突然ウキウキしだすと、素早く立ち上がった。 歩いて、部屋の外へと向かっていく。 また変なことして引っかき回すんだろうか? いいよ、ドンドン引っかき回していこうっ!!ww
 小春は寝ころんだまま、追うように大声を出した。

「雨子ー! あいつ探すのー?」
「うん、ちょっと見てくる」

 背中を向けたまま答えて、雨子は部屋の外へと消えていった。
 ……雨子はいいなあ、楽しそうで。 昼ご飯を食べて、ブラブラ散歩に行って……。

「……っていうか、雨子って、ふだん何してんの?」
「さあ。 無職なんじゃない?」

 スズネの問いに、小春が寝そべったまま適当に答える。

「いや、研究所の研究員なんだよ、雨子」

 汁物をすすっていたツムギちゃんが、訂正を入れた。 ことば所も研究棟の中にあるから、廊下を歩いている雨子の姿を時々見かけるのだ。
 小春はだらしない格好をしたまま、どうでもいいように呟いた。

「あ、そうなの? ……へえ、ちゃんとやることやってんのね、あの子も」
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