幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第八章 混ざっていく世界、『時のはざま』

第87話 解決編ー3っっ!!!

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 ハナは話を聞き終えると、力が抜けたように息を大きく吐きだした。

「……はー、そっか。 ……良かった」

 安堵あんどしたようにぐったりと力を抜いて、つぶやいている。 自分が殺人をおかしていなかったことに、心底ほっとしたような感じだ。 やはりハナは、殺人を望んでいなかったんだろう。
 しかしまだ表情がかたく、苦しい気持ちが残っているようにも見える。

「ほら、やっぱり違うじゃないっ! ……あー良かった、なんか、すっきりしたわ」

 一方で小春は、心から安堵したようだ。 胸をなでおろすようにして清々すがすがしい表情だ。
 小春はずっと元気が無かったし、本当にこのことを気にしていたんだろう。

 そんな様子を見て、ナツミがからかうように言った。

「小春、めっちゃ疑ってたじゃんw」
「そんなこと、ないわよ! 私はずっと……。 うーん、そうね……ハナ、疑って、ごめんw」

 そういって、座り込んだハナに向けて笑いかける。
 ハナは周囲の反応が聞こえていないようで、床を見つめてうつむいていた。 力が抜けたようにぼうっとしている。 本当に今までずっと、自分が殺人犯だと思っていたような感じだ。

「でも、眠り薬入れたのはダメだね。 あと、ソラの姿になりすましてたのも」
「そうね。 ……それは、まだどうなるか分からないけど」

 これから偉い人たちを集めて、裁判のようなことをやるらしい。 そこで話し合って、罪をどう裁くかを決めるようだ。

 話を聞き終えても、ハナは床を見つめたまま黙っていた。 まだまゆをひそめて苦しそうな表情を浮かべていて、じっと何かを考えているようだ。
 やがて静かに、ハナは言葉を漏らすように言った。

「……違うんだよ。 私、実際あの2人を殺すことを考えてたの。 ……そのつもりで、あの地下道を歩いてたの」

 本当に殺すつもりだったら、実際に殺したのと変わらないと言いたいんだろうか。 少し極端だが、そういう考え方もあるのかもしれない。
 力なく話すハナの前に、イトがしゃがんでいった。

「ねえ、ハナ。 あの2人、別に神隠かみかくしをわざと作ってたってことは、ないんだよ」

 そういって、イトはさとすように話し始める。 ハナの認識には、いくつかの間違いがあると指摘しているようだ。

 もともとこの島では、失踪者がたまに出る。 原因は不明だが、どの時代でも失踪する人は一定数いる。 病気なのか元々の性格なのかは分からないが、突然野山を走り回ったり海に出ていったりして死ぬ人が、たまにいる。
 300年前には、失踪者が多いという話だった。 それは、医者の先生がその症状を治療しようとして、薬を作ったが失敗したからだ。
 間違った薬を飲んで、逆にひどくなって失踪してしまったのだ。 医者は、悪気があったわけではないらしい。

 一族は、島の外から来た人たちと貿易を繰り返し、値打ちのある物をたくさんため込んでいた。 それを仕舞しまっていたのが、一族の家の中心にあった蔵だ。
 また最先端の建築技術を取り入れたり、酒を輸入したりして、新しいものが好きなのと同時に、一族の人たちは自分たちの権力を高めることにも熱心だった。

 失踪事件を『神隠かみかくし』などと言っておおごとにして、『まつり』を演出することなどもした。 『まつり』は家の正面にある豪華な祭祀場さいしじょうで行われ、村の人々が次々とやって来て、熱心に頭を垂《た》れてひれ伏していたのだとか。
 それを目の当たりにしたハナは、一連の失踪事件は一族が自分たちの権力の誇示こじのために作り出した、でまかせだと考えたらしい。
 能力者が一族以外から出てくると、一族の威信いしんが揺らぐ……。 そう考えたハナの父親などが、能力が現れそうな子供を次々とさらい、殺していったのだと考えたようだ。

 しかし、実際には違った。 降霊能力を持った人は、少し後に一族以外からも出てくることになるが、それは偶然なのだ。
 大きな目で見れば、どのみち一族は先が長くなかったということだろう。


 ところで、一族の家の中では奇妙な病気があった。 若いのに早くに老化現象が始まる病気だ。
 現代の街の最新の医療によると、この病気は血縁けつえんの近い者同士から生まれた子供に起こりやすいという。
 聞くところによれば、一族はあの大きな家の中に住み、一族の内部で結婚を繰り返していたらしい。
 権力の流出を防ぐためもあったが、それだけでなく単に好きになる人が近しい人である場合も多かったのだという。
 そういった理由で、一族の人はこの病気になりやすかったのだろう。

 一族にいた2人の病人のうち、1人はこの病気だった。 千代ちよが部屋に入った時に、横に伏せていた老人のような人は、実はハナのいとこで、3つ目の家族に1人だけ残った人だ。
 そして、ハナはこの病気を、偉ぶっている一族への天罰だと考えていたようだ。
 いとこが老人のような姿で寝ている部屋で、ハナは苦しそうな表情をしていた。 あの時ハナは、一族の限界を、強く感じていたのかもしれない。

 この病気は一族特有のものだったので、医者も頭を悩ませていたようだ。
 病人たちは、同時に不眠症にもなっていたから、その治療として睡眠薬を飲ませていた。 夢見酒ゆめみざけの噂として広まったのは、やはりこの睡眠薬のことである。


 また、ハナの両親は不和ふわだった。
 ハナの母親は、父親にいじめられていた。 些細ささいなことで怒られて、母親はどんどん元気がなくなっていって……。 加えて父親は、そんな母をないがしろにして、コガネの母親のほうを愛していたらしい。
 ハナは自分の母親が好きだったこともあり、そんな状況を見て、ますますまともな思考が出来なくなっていったのかもしれない。


 イトは腰を下ろしたまま、ハナに向かって話し続ける。

「そういう風に見えたのは、偶然なんだ。 ……あの2人、確かに嫌な人たちだったし、色んな値打ちのあるものを一族だけで集めてたりしたらしいんだけど、でも、自分たちの利益のために人を殺すことまではしなかったの。 ……だから、それもハナの思い込み」

 話を聞きながら、ハナは言葉を失って呆然ぼうぜんとしているようだった。
 最初のほうで考えた推理があったが、ハナはそっくりそのままあの推理のように考えていたことになる。 そして、思い込んだ挙句あげくに殺人まで実行しようとした……。

 よく考えてみれば、失踪したのは子供というだけで、それが能力者だったと示すものは何もない。 ハナの父親たちが『まつり』をしたのは事実だが、その原因となる失踪事件をわざと引き起こした証拠も何も無いのだ。
 しかし、状況を見てみれば、いかにも理屈がつながって見える。 ただの『印象』だけで、勝手に話を組み立ててはいけないということだろう。

 腕を組んで聞いていた小春が、ふんと息を吐きながら言った。

「なんだ、あんた、すごい勘違いする人ねえ。 逆に、ちょっと怖いわよ」
「……なんでそんなに、勝手に想像をふくらませんの?」

 ナツミは不思議そうに言う。 街の長のハルは落ち着いた口調で、少し分析ぶんせきするように言った。

「ハナは、当時の村長の一人娘だから。 神隠しが起きて、一族にだけ変な病気が出てきて……。 何とかしなきゃって、必死だったんでしょ。 はたから見ても、周りが見えてないのが、分かったよ」

 分かったんかいっ!!ww なら、相談を聞いてやればいいじゃん……。 言わないが、ナツミは心の中でツッコむ。

 ……考えてみれば、ハルもおかしい。 子供の失踪事件は、イトが死んでから起こり始めたという。 それは、元気すぎる人を治療ちりょうしようとする医者の先生を、ハルが止めなかったということじゃないか?
 連続で失踪したということは、少なくとも1人では止まらなかったということだ。 結局何人も失踪するまで薬の開発を続けて、神隠しとまで言われるようになってしまった。
 そして現代で街の長にまでなって、いまは結局のらりくらりと傍観者ぼうかんしゃみたいな顔をして……。 ……もしかしたら、一番ヤバいのはこの人だったりしてw

 周りの視線を受けながら、ハナは黙ってうつむいていた。 いきなりすぎて、情報の処理が追いつかないんだろうか。 まだ抵抗するように、ぼそっと呟く。

「……でも……」
「あんた、さっきから、でもでもって言うわね。 ……でも何?」

 面倒くさくなって若干イライラしつつも、小春は一応聞いてあげる。 小春はなんだかんだ優しい。
 ハナはうつむいたまま、考えるようにして続けた。

「……私、昔から、人と違って、ちょっと変で……」

 自分の性格が変? ……なんの話だろう、事件の話ではなかったんだろうか。 今度は自分の性格の話に変わっていっているように見える。
 ナツミはよく分からないように眉をひそめながらも、話の続きをうながす。

「どういう風に?」
「うーん……よく分かんないけど、なんか、気づかずに人を傷つけてしまったりとか……」

 そういって、ハナは床を見つめたまま、しぼり出すようにして言う。

 結局ハナは、自分の性格のずるがしこい部分が受け入れられないのかもしれない。 苦しんでいたとはいえ、人を殺すことを考えたり、物を盗んだり、うそをついたりしたのだ。
 300年前の妄想もうそうの夜の話を聞いても、ハナの強い自己嫌悪が感じられる。
 自分が殺人を犯したのだと思い込んでいたのも、それが原因なんだろう。

 しかし、人を傷つけることに関して言えば、それは誰にでもある。
 小春は気が抜けたのか、少しあきれたような顔になった。

「そんなこと、誰でもあるじゃない! 私だってあるわよ」

 その横では、ナツミが顔をしかめていた。 くちびるをかみしめて、苦いものを食ったみたいな顔をしている。
 自分にも思い当たるふしがあるのか、ナツミも力なく切り出した。

「……うーん、私もあるよ。 その時はめっちゃイラっときて、でも後から考えたら、だいたい自分が悪いみたいな……。 ……ほんと、嫌になるけど」

 そう言いながら、ナツミは少し顔をおおっている。
 自分の間違いを指摘されてキレたり、義務を人に押し付けたり……。 ナツミは自己中なふるまいをしてしまうが、一応自分でも分かっているみたいだ。

 ハナははあとため息をつくと、ぼんやりしながら呟いた。

「……私、どうすればいいんだろう……」

 少し、弱気に流れたみたいだ。 他の人に肯定こうていしてもらいたくて、こぼれた言葉に見える。
 それを敏感に感じ取ったのか、小春はさっと真剣な顔になった。

「それは、自分で決めなさい。 あんたが言うのは、自分の意思でしょ」

 そういって、ビシッといましめるように言う。 強い口調で言われたのに、ハナは一瞬顔をしかめた。 しかしすぐに気を引き締めたのか、理解したように小さく頷く。
 自分の性質など、自分でどうにかするしかない。 そんなこと、誰だってそうだろう。 どんなに自分が嫌いな性質を持っていようと、意思を持って向き合うしかないのだ。

 話を終えて、小春は大きく息を吐きだした。

「ふう! じゃあ、こっから出ましょう。 なによここ、せまっくるしいわね」
「なんで6人もいんの? なんか、暑いんだけど」

 みんなが話し始めると、場の空気がゆるみ、日常の雰囲気に戻っていった。 バタンと扉が開くと、外の店の様子が見えて、重苦しかった室内の空気が消えていく。

 部屋の中に、ハナは座り込んで、少し一人で考えるようにうつむいていた。 やがて気持ちを決めたように、ぐっと力を入れて立ち上がっていった。
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