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一章
10、石鹸①
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あけましておめでとうございます。
今年もどうぞ、安蒜佑香をヨロシクお願いします!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイリアは無言でコトリと何か四角い白い物体をテーブルに乗せた。
見たことの無いそれにアルベルトは首を傾げる。
「何だ?これ?」
思わずつぶやいてレイリアに問うと、レイリアはすぐには答えず、仕草で触ってみるように促してきた。
丁寧に表面が整えられたそれの表面はツルツルしていて、でも陶器などを触ったのとは違う不思議な感じがする。
5分程触ったり光に透かしてみたりと色々試したが、さっぱりわからない。
「降参だ。さっぱりわからん。本当に何なんだ?」
おどけて両手を挙げて問いながら、右手に持ったままのそれを見て再び首を傾げた。
「それは、石鹸だ。」
「へえー、石鹸かぁ~、これが、ふ~ん………………ッて、えええぇぇぇ!!! これが!? 石鹸!?」
「そう、石鹸。」
「え!? だって石鹸ってあれだろ? 液状の物凄く臭いやつだろ? それとこれが同じって……」
普通、ここらで使われている石鹸は固体ではなく液体だ。
しかも、臭い。
とてつもなく、臭い。
だから、「ここらで使われている」と言っても実質ほとんど使っている人はいない。
清潔だ何だと言われても、あの臭いの方がよっぽど健康に悪いと思う。
そんな『普通の石鹸』と『今持っている固体』が同じ役目を果たす物だとは到底思えない。
目の前に座る少年は「やっぱりそういう反応になるよな」と言いたげな顔をしつつも、アルベルトに質問する。
「そもそも、この国で使われている石鹸が何からできているかは知ってるか?」
「いや、知らん。考えた事すらないな。」
アルベルトは本当に知らなかったので素直にそう答える。
ちなみに、この時レイリアが若干呆れた顔をした事にアルベルトは気づいていない。
レイリアも気づかれなかったのをいい事に何事も無かったかのように話を進める。
「この国で使われている石鹸には2種類ある。1つは体を洗う、主に魚油と植物灰を使ったもの。もう1つは洗濯とかをする用の動物油脂で作られたもので、どちらも液状だ。ここまではいいか?」
「おう。」
「実はこの石鹸はほとんど他の国では使われて無くてな。他の国はオリーブオイルで作られたやつを使ってる。そして、そっちの方が格段に品質が良い。」
品質が良いものを何故この国では使わないのだろう? 良いものを使った方が皆の為になるに決まっているのに。
そうアルベルトは不思議だったが、それはすぐにレイリアの言葉によって解決される事となる。
「ところで、思い出してみてくれ。この国、ルナリア王国と隣り合っているのはどこの国だ?」
「どこって…フレンス王国とガイアナ公国とエルサルータ王国だろ?」
「そう。その三国のうち、フレンスとエルサルータとは常に交戦中のようなもの。ガイアナとは工芸品くらいしかやり取りがない。すると、どうなると思う?」
ここまで言われたら、大陸地図を思い浮かべなくてもわかる。
答えは明白だ。
「「石鹸はルナリアに入って来ない。」」
声を揃えて、顔を見合わせて、アルベルトとレイリアは答えを出す。
結論が出たのはいいが、その結果としてアルベルトが得られたのは絶望感だけだった。
フレンス、エルサルータ両国との戦は100年以上前から繰り返されて来た。よって交易は不可能。
ガイアナとは交易している。しているが、入って来るのは工芸品だけ。そして交渉しようにもガイアナは中立を貫いており、山地の厳しい気候の民故かとても頑固なのだ。
てっきり輸入品で稼ぐ算段かと思っていたアルベルトは当然絶望する。
レイリアはどうしてこんな出来ないとわかりきった事を提案してきたのか。その真意を確かめるべくアルベルトは口を開く。
「なあ、レイ。輸入ができないのに、一体どうやって商売なんてするんだよ。それとも何かツテがあるのか?」
「何言ってるんだ?そんなもの、あるわけないだろう。」
「ですよね~」
じゃあどうすればいいんだと頭を抱えるアルベルトにレイリアは変なものを見るような目を向けた。
「アル、君は何を勘違いしているんだ?」
「え?」
「輸入出来ないのなら、作ればいいだろう?君が持ってるその石鹸だって、僕が作ったものだぞ?」
その言葉にアルベルトは絶句する。
いや、作れないからこの国で作られてないんじゃないか、とか、そもそもどうやって作り方を知ったんだ、とか、色々な疑問が頭をぐるぐると回っているうちに、レイリアは詳しい説明を始めていた。
「他国の石鹸の材料になるオリーブオイルはその名の通りオリーブという木になる実から作られるんだが、オリーブが育つのは大陸の中でも南だけだ。国で言うとルナリアの南方、フレンスの北部以外、それとククルシアの南方のごく一部だな。ここまではいいか?」
「ちょっと待ってくれ。それを聞く限り、ルナリアにもオリーブは生えているんだろう?なら、石鹸だって作られててもいいんじゃないか?」
「まぁ、そうなんだがな。これには歴史が深く関わっていてだな…」
レイリア曰く、戦争で基地だの何だのと建てる時に必要な木材がルナリア国内で必要にもなった時、その場しのぎとして海沿いに沢山生えていたオリーブの木を使い、その跡地に加工しにくいオリーブではなくて木材として使えるユーカリを大量に植えたと。
また、かなり昔に「梅毒」という病気が大流行したという。
これはただの…せ、性病なんだそうだが、当時は大衆入浴場が原因だと考えられたらしく、一度風呂文化が廃れた。
それもオリーブの伐採に一役買ったらしい。「どっちにしろ、そんなに使わないだろう」と。
今は裕福な貴族なら毎日入るくらいだし、平民が使う大衆入浴場も数は少ないがある。
だが、今更石鹸の製造法など入って来ない。それで昔ながらの液体石鹸のままらしい。
ならば話は早い。
需要があるのなら作ればいいじゃないか。
ところがそうはいかない。
先程も言ったようにオリーブの生える場所は多く杉が植わっているし、作り方が伝わって来ない。実は海外から渡ってくる石鹸がオリーブから作られていることも知られてないと言う。
「じゃあ、オリーブはどこから仕入れるんだよ。それに作り方は?」
「オリーブが生えている場所はあるんだよ。最近は食用としても注目されてきてるから、どうにかなるだろうし。作り方は僕が知ってるから問題ない。」
なら、商品は石鹸で決定でもいいんじゃないかとアルベルトは思ったが、問題はそれだけではないらしい。
説明するべく、レイリアは再び口を開いた。
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設定が載っているページを見れば、地図や各国関係図があります。
参考にどうぞ~
今年もどうぞ、安蒜佑香をヨロシクお願いします!!
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レイリアは無言でコトリと何か四角い白い物体をテーブルに乗せた。
見たことの無いそれにアルベルトは首を傾げる。
「何だ?これ?」
思わずつぶやいてレイリアに問うと、レイリアはすぐには答えず、仕草で触ってみるように促してきた。
丁寧に表面が整えられたそれの表面はツルツルしていて、でも陶器などを触ったのとは違う不思議な感じがする。
5分程触ったり光に透かしてみたりと色々試したが、さっぱりわからない。
「降参だ。さっぱりわからん。本当に何なんだ?」
おどけて両手を挙げて問いながら、右手に持ったままのそれを見て再び首を傾げた。
「それは、石鹸だ。」
「へえー、石鹸かぁ~、これが、ふ~ん………………ッて、えええぇぇぇ!!! これが!? 石鹸!?」
「そう、石鹸。」
「え!? だって石鹸ってあれだろ? 液状の物凄く臭いやつだろ? それとこれが同じって……」
普通、ここらで使われている石鹸は固体ではなく液体だ。
しかも、臭い。
とてつもなく、臭い。
だから、「ここらで使われている」と言っても実質ほとんど使っている人はいない。
清潔だ何だと言われても、あの臭いの方がよっぽど健康に悪いと思う。
そんな『普通の石鹸』と『今持っている固体』が同じ役目を果たす物だとは到底思えない。
目の前に座る少年は「やっぱりそういう反応になるよな」と言いたげな顔をしつつも、アルベルトに質問する。
「そもそも、この国で使われている石鹸が何からできているかは知ってるか?」
「いや、知らん。考えた事すらないな。」
アルベルトは本当に知らなかったので素直にそう答える。
ちなみに、この時レイリアが若干呆れた顔をした事にアルベルトは気づいていない。
レイリアも気づかれなかったのをいい事に何事も無かったかのように話を進める。
「この国で使われている石鹸には2種類ある。1つは体を洗う、主に魚油と植物灰を使ったもの。もう1つは洗濯とかをする用の動物油脂で作られたもので、どちらも液状だ。ここまではいいか?」
「おう。」
「実はこの石鹸はほとんど他の国では使われて無くてな。他の国はオリーブオイルで作られたやつを使ってる。そして、そっちの方が格段に品質が良い。」
品質が良いものを何故この国では使わないのだろう? 良いものを使った方が皆の為になるに決まっているのに。
そうアルベルトは不思議だったが、それはすぐにレイリアの言葉によって解決される事となる。
「ところで、思い出してみてくれ。この国、ルナリア王国と隣り合っているのはどこの国だ?」
「どこって…フレンス王国とガイアナ公国とエルサルータ王国だろ?」
「そう。その三国のうち、フレンスとエルサルータとは常に交戦中のようなもの。ガイアナとは工芸品くらいしかやり取りがない。すると、どうなると思う?」
ここまで言われたら、大陸地図を思い浮かべなくてもわかる。
答えは明白だ。
「「石鹸はルナリアに入って来ない。」」
声を揃えて、顔を見合わせて、アルベルトとレイリアは答えを出す。
結論が出たのはいいが、その結果としてアルベルトが得られたのは絶望感だけだった。
フレンス、エルサルータ両国との戦は100年以上前から繰り返されて来た。よって交易は不可能。
ガイアナとは交易している。しているが、入って来るのは工芸品だけ。そして交渉しようにもガイアナは中立を貫いており、山地の厳しい気候の民故かとても頑固なのだ。
てっきり輸入品で稼ぐ算段かと思っていたアルベルトは当然絶望する。
レイリアはどうしてこんな出来ないとわかりきった事を提案してきたのか。その真意を確かめるべくアルベルトは口を開く。
「なあ、レイ。輸入ができないのに、一体どうやって商売なんてするんだよ。それとも何かツテがあるのか?」
「何言ってるんだ?そんなもの、あるわけないだろう。」
「ですよね~」
じゃあどうすればいいんだと頭を抱えるアルベルトにレイリアは変なものを見るような目を向けた。
「アル、君は何を勘違いしているんだ?」
「え?」
「輸入出来ないのなら、作ればいいだろう?君が持ってるその石鹸だって、僕が作ったものだぞ?」
その言葉にアルベルトは絶句する。
いや、作れないからこの国で作られてないんじゃないか、とか、そもそもどうやって作り方を知ったんだ、とか、色々な疑問が頭をぐるぐると回っているうちに、レイリアは詳しい説明を始めていた。
「他国の石鹸の材料になるオリーブオイルはその名の通りオリーブという木になる実から作られるんだが、オリーブが育つのは大陸の中でも南だけだ。国で言うとルナリアの南方、フレンスの北部以外、それとククルシアの南方のごく一部だな。ここまではいいか?」
「ちょっと待ってくれ。それを聞く限り、ルナリアにもオリーブは生えているんだろう?なら、石鹸だって作られててもいいんじゃないか?」
「まぁ、そうなんだがな。これには歴史が深く関わっていてだな…」
レイリア曰く、戦争で基地だの何だのと建てる時に必要な木材がルナリア国内で必要にもなった時、その場しのぎとして海沿いに沢山生えていたオリーブの木を使い、その跡地に加工しにくいオリーブではなくて木材として使えるユーカリを大量に植えたと。
また、かなり昔に「梅毒」という病気が大流行したという。
これはただの…せ、性病なんだそうだが、当時は大衆入浴場が原因だと考えられたらしく、一度風呂文化が廃れた。
それもオリーブの伐採に一役買ったらしい。「どっちにしろ、そんなに使わないだろう」と。
今は裕福な貴族なら毎日入るくらいだし、平民が使う大衆入浴場も数は少ないがある。
だが、今更石鹸の製造法など入って来ない。それで昔ながらの液体石鹸のままらしい。
ならば話は早い。
需要があるのなら作ればいいじゃないか。
ところがそうはいかない。
先程も言ったようにオリーブの生える場所は多く杉が植わっているし、作り方が伝わって来ない。実は海外から渡ってくる石鹸がオリーブから作られていることも知られてないと言う。
「じゃあ、オリーブはどこから仕入れるんだよ。それに作り方は?」
「オリーブが生えている場所はあるんだよ。最近は食用としても注目されてきてるから、どうにかなるだろうし。作り方は僕が知ってるから問題ない。」
なら、商品は石鹸で決定でもいいんじゃないかとアルベルトは思ったが、問題はそれだけではないらしい。
説明するべく、レイリアは再び口を開いた。
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