能ある元令嬢は爪を隠す

安蒜佑香

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一章

3、幕間 ウィンターソン家、屋敷にて

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 今日もいつもと変わらない日のはずでした。でも、残念ながらそうではありませんでした。



私、メイはウィンターソン家の次男であるレイン様付のメイドです。

 いつも通り朝5時に起きて、身支度や様々な用事を済ませた後、いつも通り朝7時にレイン様を起こしに行きました。


「レイン様、お目覚めのお時間でございます。」


 ノックをして声をかけても起きて来ないのも、いつも通り。でも、張り詰めたような雰囲気がする気がして、いつもよりゆっくりと恐る恐るドアを開けました。


 そこで見たものは、一生忘れることはないでしょう。


 血まみれで倒れているレイン様とレオン様。
 その脇で震えている、裸のメイドの同僚。

 私が悲鳴を上げているのに気がついたのは、上司や同僚が駆けつけてからでした。

 それからの事は、あまり覚えていません。上司にいわれるがまま走り回って、この家の当主であるクリス様や、その奥様、亡くなっていた2人の御兄妹を皆で手分けして起こしました。

 私はレイリア様を起こしに行きました。


「レイリア様、レイリア様! 起きていらっしゃいますか!?」


 私はドアをドンドン叩きました。でも、レイリア様は出て来て下さいません。

 レイリア様付のメイドによると、毎日起こしに行くと、着替えも済ませた状態でドアを開けてくださるそうです。


「レイリア様? 開けますよ?」


 私は心配になってドアを開けました。
 ですが、部屋には誰もいませんでした。心なしか、いつもより少し物が減っている気がします。
 窓は開いていて、繋げられたカーテンが地面まで伸びていました。
 

 
 まさか、レイリア様が? いえ、そんな訳はありません。確かに兄妹仲は悪かったですけど、レイリア様は使用人である私達にも親切な、優しいお方なのです。

 レイリア様がなるとしたら、加害者ではなく、被害者のような気がします。

でも、とても頭がよく、武術までできるあの方が被害者になるとも考えられません。



 自問自答しながら歩くうちに、レイン様の部屋の前に戻ってきました。


「あ、セバスさん、レイリア様が………」


 上司である執事のセバスチャンさんの姿が見えたので、報告をしようとしたのです。


 しかし、振り向いたセバスさんの手には、血まみれの短剣がありました。その柄には、三日月と菫をあしらった紋章が。

 このルナリア王国の貴族は、一人ひとり別々の紋章を持っています。
 この家ならば、ウィンターソン家の紋である三日月とそれぞれが決めた模様が入ります。
 そして、自分の持ち物には必ず自分の紋章を入れるのです。

 三日月と菫はレイリア様の紋章でした。
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