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第H章:何故倒された魔物はお金を落とすのか
合理と非合理/2:彼女にカナリアを飼う必要はない
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魔物達は、自然な形でピラミッド型の階級社会を形成している。頂点に魔王が存在し、その1段下に上部支配層となる優れた力を持つ魔物があり、その他が広い下部使役層を形成する。この階級を区分する基準は明確である。上部支配層の魔物だけが、言語を持ち、戦略を操れるためだ。下部使役層の魔物は言語を持たず、ただ機械的に設定された単純なルーチンで行動し、魔王及び上部支配層からの指示を愚直に守る。これはつまり、魔王が研究開発主任であり、上部支配層が強いAIを搭載した人工知能内蔵型ロボット、下部使役層が弱いAIを搭載した工業用特化型機械といった形かもしれない。
上部支配層の数は極めて少なく、全世界に2桁の数しか存在しない。一方の下部使役層は概算ではあるが、おおよそ5000万。これが平時の魔王軍の全戦力となる。魔王はその気になればこの数を倍増させることが可能とされているが、上部支配層に関してはそれでも3桁に届くことはない。
その上部支配層の中でも、魔王の側近となる個体が7体。魔王の意図を最もよく理解し、魔王の命令で人類殲滅のための計画行動を取る彼らは、自らを七難と名乗る。残りの上部支配層の魔物は、基本的にこの7体のどれかの補佐にあたっており、加えてごく一部のはぐれものが独自の支配領域やダンジョンを形成する。
「フェラー様! 岩窟王フェラー様!」
露天掘りのダンジョン最下部に存在する岩の玉座。そこに座る17mの鉄の巨体こそ、七難にして岩窟王フェラーである。全身が高純度で強固な鉄鉱石で構成された魔物であり、その動きは鈍重なれど、七難最高の耐久力を持つ。口からは1300℃の炎を吐き、その拳を振り下ろせばダイヤモンドをも砕く破壊力を持つと自負する。そんな彼に付き従う数体の上部支配層の魔物達もまた鉱物由来の体をしている。
「どうした」
「侵入者です! 人間1体が、ダンジョン攻略にやってきています!」
フェラーはため息をつき、手の中でくるみのように弄んでいたルビー原石をつまんで眺めた。
「何を慌てている。いつも通り捨て置き、使役連中には採掘を続けさせろ。脆弱な炭素生命体は、この瘴気に満ちたダンジョンでは数分も生きてはいられまい」
「仰るとおり、既に死亡が5回確認されています!」
「ならば何を慌てて……うん?」
配下の言葉には無関心でルビーを眺めていたフェラーが、ここではじめて配下に視線を向ける。
「確かに、死亡が確認されているのです! それが何度も立ち上がり、ここ最深部を目指して侵攻しているのです!」
「冗談だろう? ならば、どれだけの力を見せる? 既に攻撃行動は取ったのか?」
「最下層の非戦闘型のワーカーが肉弾戦にて圧倒、それで追加で7回は殺しました!」
「はぁ。つまり、その、なんだ。その炭素生命体は、どうしようもないほど弱く、当然このダンジョン内の瘴気への耐久性もないが、ただ何故か殺しても蘇生する。それが、今ここに向かっていると?」
「そうなります!」
全身が鉄鉱石のフェラーに脳があるのかは不明だが、ともあれ彼は、まるで人間のように手を軽く頭に当てて頭痛をアピールした。
「目的は財宝か? 面倒だ、多少の持ち逃げは見逃せ」
「いえ、道中の宝箱はすべて無視しています!」
「では、それの目的はまさかこの私だというのか?」
「推測ですが……」
頭を抱えたまま、フェラーの足が小刻みに動き始める。所謂地団駄というものだ。
「貴様の客観的考察で聞くが、それが私を倒せる確率をどう予測する?」
「0%、かと。かの人間は、非戦闘型ワーカーすら打ち倒せておりません。尤も、現状で相手側を倒す手段がわからないため、倒せる確率も0%です」
「歯に物着せぬ冷静な分析だ。だが、話を聞く限り私もそうとしか思えん」
「いかが致しますか?」
地団駄が大きくなっていったが、ある程度のところで諦めたように足の動きが止まる。
「致し方あるまい。私は魔王様より、言葉を授かっている。それを用いての平和的解決を模索しようではないか」
人間の根絶を目的とする魔王。その魔王が作り出した魔物が語る平和。その言葉がどういった意味を持ち、どのように翻訳されて彼女に伝わるのかは、今はまだわからない。
上部支配層の数は極めて少なく、全世界に2桁の数しか存在しない。一方の下部使役層は概算ではあるが、おおよそ5000万。これが平時の魔王軍の全戦力となる。魔王はその気になればこの数を倍増させることが可能とされているが、上部支配層に関してはそれでも3桁に届くことはない。
その上部支配層の中でも、魔王の側近となる個体が7体。魔王の意図を最もよく理解し、魔王の命令で人類殲滅のための計画行動を取る彼らは、自らを七難と名乗る。残りの上部支配層の魔物は、基本的にこの7体のどれかの補佐にあたっており、加えてごく一部のはぐれものが独自の支配領域やダンジョンを形成する。
「フェラー様! 岩窟王フェラー様!」
露天掘りのダンジョン最下部に存在する岩の玉座。そこに座る17mの鉄の巨体こそ、七難にして岩窟王フェラーである。全身が高純度で強固な鉄鉱石で構成された魔物であり、その動きは鈍重なれど、七難最高の耐久力を持つ。口からは1300℃の炎を吐き、その拳を振り下ろせばダイヤモンドをも砕く破壊力を持つと自負する。そんな彼に付き従う数体の上部支配層の魔物達もまた鉱物由来の体をしている。
「どうした」
「侵入者です! 人間1体が、ダンジョン攻略にやってきています!」
フェラーはため息をつき、手の中でくるみのように弄んでいたルビー原石をつまんで眺めた。
「何を慌てている。いつも通り捨て置き、使役連中には採掘を続けさせろ。脆弱な炭素生命体は、この瘴気に満ちたダンジョンでは数分も生きてはいられまい」
「仰るとおり、既に死亡が5回確認されています!」
「ならば何を慌てて……うん?」
配下の言葉には無関心でルビーを眺めていたフェラーが、ここではじめて配下に視線を向ける。
「確かに、死亡が確認されているのです! それが何度も立ち上がり、ここ最深部を目指して侵攻しているのです!」
「冗談だろう? ならば、どれだけの力を見せる? 既に攻撃行動は取ったのか?」
「最下層の非戦闘型のワーカーが肉弾戦にて圧倒、それで追加で7回は殺しました!」
「はぁ。つまり、その、なんだ。その炭素生命体は、どうしようもないほど弱く、当然このダンジョン内の瘴気への耐久性もないが、ただ何故か殺しても蘇生する。それが、今ここに向かっていると?」
「そうなります!」
全身が鉄鉱石のフェラーに脳があるのかは不明だが、ともあれ彼は、まるで人間のように手を軽く頭に当てて頭痛をアピールした。
「目的は財宝か? 面倒だ、多少の持ち逃げは見逃せ」
「いえ、道中の宝箱はすべて無視しています!」
「では、それの目的はまさかこの私だというのか?」
「推測ですが……」
頭を抱えたまま、フェラーの足が小刻みに動き始める。所謂地団駄というものだ。
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「0%、かと。かの人間は、非戦闘型ワーカーすら打ち倒せておりません。尤も、現状で相手側を倒す手段がわからないため、倒せる確率も0%です」
「歯に物着せぬ冷静な分析だ。だが、話を聞く限り私もそうとしか思えん」
「いかが致しますか?」
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