生死のサカイ

柴王

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35、黒く塗りつぶされた真実

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 わたしは、泣き叫んだ。やり場のない気持ちをどこにぶつければいいのかわからないまま、ただただ泣き叫んだ。

 わたしの頭の中が、一気に別の色で染め上げられていくように、わたしの知らなかった事実がわたしの存在をぐらぐらと歪めていく。

 わたしは、わたしは「なにか」に怒っている。わたしを殺そうとしたお母さんに? それとも、わたしに真実を隠してわたしを置き去りにして死んだお父さんに?

 …………ちがう。わたしは、10年前に起きたことを知らずに今まで生きてきた自分、その存在に怒っている。何も知らない、知らなかったまま時を重ねた自分が、何だか不完全なものに思えてきて…………。

 否定しようとしても、無かったことにはできない。わたしはもう、わたしとして生きてきて、今ここにいるんだから。それは、死者が生き返ることが無いのと同じ…………。

 でも、だったら、わたしはどうすればいいの? これからのわたしは…………。今までのわたしは…………。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 いやだ、いやだ。聞かなきゃよかった。わたしはもう、わたしじゃいられない…………。

「アカネ…………アカネ!」

 いやだ、わたしはもう、ぜんぶ投げ捨てて…………。

 その時、パァン!! という大きな音とともに、頬に痛みが走った。

「しっかりしろ! アカネ!」

「…………アオイ?」

 わたしはどうやら、アオイに頬を叩かれたみたいだ。

 そしてすぐさま、アオイはわたしの手を両手で握る。

「キミはキミだ。ボクの知ってるアカネだ。今までもこれからも、何も変わらない。それは、ボクが保証する」
「アオイ…………」

 涙がわたしの頬を伝う。さっき流した涙とはぜんぜんちがう。あったかい涙だ。

「わたし、わたしのままでいいのかな……?」

「いいもなにも、アカネはアカネだ。ボクの…………大切な友達だ」

「そっか…………そっか…………。」

 わたしはまた、アオイに、この小さな少女に救われた。

「お父さん、お母さん…………」

 お父さんとお母さんは、わたしをとても心配そうな顔で見つめていた。

「わたしは大丈夫。大丈夫だから。だから…………話の続きを聞かせて」

 思い出せ。なんでわたしがここにいるのか。わたしが、二人を救うんだ。

「ええ…………、ありがとう、茜。まだ私はあなたに伝えなくちゃいけないことがある。それは、あなた自身のことよ。そして私があなたを…………殺そうとした理由でもある…………」

 お母さんは目を伏せる。

「教えて。それって、一体…………」

 鼓動が速くなる。お父さんとお母さんの視線がまっすぐこちらに向く。

「落ち着いて聞いて、茜。あなたは…………。」

 お母さんは静かに目を閉じて、ゆっくり開く。

「あなたは…………私たちの実の子じゃないの」
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