魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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五性 女子会

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 それから数分……。

「着きました、お嬢様」
「ありがとう、じーや」
「みんな降りましょ!」

 無理矢理テンションを上げる真心。

「そうだね! 今日は歓迎会! 楽しもう!」
「ほら、カスミ! 降りるよ! 笑顔笑顔!」

 それに便乗して二人もハイテンションで私を励ます。

「う、うん。もう大丈夫、ごめんね」

 そう言うと三人は笑顔で頷いた。

「「「「「「おかえりなさいませ、お嬢様とご友人方!」」」」」」

 六人のメイドが左右に分かれて歓迎する。
 本物のメイド! 可愛いヒラヒラスカート! これはテンション上がる!
 って、いつもならなるけど、今はそんな気分にはなれなかった。

「真心の部屋はこっちだよ!」
「千心はまた先行くし……。私の家なんだから私が案内するのに」
「そ、それにしても凄い家だね。真心の家ってお城みたい」

 本当に凄い、いや、凄いの上の言葉があるならそれで表したいぐらいだ。
 玄関を開けた瞬間、シンデレラの世界に入ったかと思ったよ。だけど、やはり気持ちはあまり乗らない。
 ハァ……。
 豪華そうな絨毯、天井にぶら下がる大きなシャンデリア、壁の至るところに飾られた高そうな絵画、あり得ない数の扉。
 何を見ても心が高ぶらない。最悪だ。
 私は今、どんな表情をしているのだろうか?

「そうかな? 普通だと思うけど」
「普通ではないと思うけど」

 頭が回らない。次の言葉が浮かばない。

「みんなー早く!」
「すぐ行くから静かに待ってなさい」

 階段を上って廊下を軽く歩いた先に千心が笑顔で立っていた。

「もー、遅いよ! じゃあ、開けるよ! カスミン!」
「う、うん」

 ニヤニヤする千心がゆっくり扉を開ける。

「な、何これ……」

 広くて可愛い白の部屋に、折り紙や風船で飾り付けがされた光景が目に入る。
 色鮮やかな折り紙で星や花、風船で動物。
 目の前の壁には文字の風船で作られた『ようこそ、スタンダードクラスへ』。

「カスミン!」
「カスミさん!」
「カスミ!」
「「「スタンダードクラスへ、ようこそ!」」」

 可愛いらしい三人の笑顔が輝きを放ちこっちを見ている。
 正直、ここまでされるとは思っていなかったから嬉しい。
 人生で私のために何かしてくれる友達なんかいなかったからね。

「あ、ありがとう! 嬉しいよ!」
「やっと、カスミンが笑ったよ!」
「サプライズは大成功みたいね」
「ほら、カスミ! 主役がボーっとしてどうするの! ほら、こっち!」
「あー、行くから! 手を離してよ!」
「カスミの手は私がもらった」
「あー、ずるい! 私もカスミンの手がほしい!」
「もう! 二人は行動が早いんだから! 私もカスミさんの手をもらうわ!」

 三人は私の手を掴み、奪い合う。まるで、ハーレム状態。

「さ、三人ともくっつきすぎ!」

 けど、なんか楽しい。最高に楽しい。分からないけど楽しい。
 こんな感情は私にはなかった。これが……これが友情なのかな。
 本当に三人と出会えて良かった。この瞬間、そう思えた。
 このカスミ争奪戦はその後、数分続き、みんな席に座った。

「じゃあ、乾杯しよ!」
「そうね」
「誰が言うの?」
「そら、カスミンだよ!」
「え、私?」
「当たり前だよ! ここはやっぱりカスミン!」

 完全に確定だね。まぁいいけど。

「じゃあ、か、乾杯!」
「「「乾杯」」」

 みんなは叫び過ぎたのか、グラスに入ったジュースを一気飲みする。
 もちろん、私もだ。

「あ、カスミン! さっきの男は何なの!」
「こら、千心! それは聞かないの!」
「千心は何で分からないのかな? ハァ……」

 千心の質問に呆れる二人。
 まぁ、そらそうだ。さっきの男のせいで私のテンションが下がったからね。
 普通に考えて質問は完全にタブーだ。

「けど、カスミンになんかあったら嫌だもん!」

 千心は意外と優しい部分もあるようだ。

「それだけなの? 千心?」
「いや、真心様。あの元カレについて知りたいと思っております」

 真心の鬼の表情にビビったのか、あっさりと白状する千心。
 おい、さっき優しいと思った私がバカみたいじゃん。
 ゆ、許さんぞ! 朝立千ん心!
 あ、朝立千心だった! 間違えて『ん』を入れてしまったよ!

「べ、別に気にしないで」
「でも、カスミ……」

 気を使ってくれるのはありがたい。本当にありがたい。
 けど、私はこのことは言うべきだと思う。いや、言わなくてはいけない。

「あ、あの男を見た三人に、あの男のことを隠すのはもう無理だよ。だから、私もこれについては言おうと思う。それに言ってスッキリしたいしね!」
「やった! カスミンの元カレ話!」
「千心ったら……」
「カスミ、無理しないでね」

 千ん心はもう隠す気ないな。あ、つい『ん』を入れてしまった。

「じゃ、じゃあ、話す前に一つお願い。絶対に暗い空気にならないで」
「はい、はーい!」
「わかったわ」
「わかったよ」

 千心以外の二人は乗り気ではなさそう。けど、話すと決めたら話す。
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