36 / 65
五性 女子会
35
しおりを挟む
それから数分……。
「着きました、お嬢様」
「ありがとう、じーや」
「みんな降りましょ!」
無理矢理テンションを上げる真心。
「そうだね! 今日は歓迎会! 楽しもう!」
「ほら、カスミ! 降りるよ! 笑顔笑顔!」
それに便乗して二人もハイテンションで私を励ます。
「う、うん。もう大丈夫、ごめんね」
そう言うと三人は笑顔で頷いた。
「「「「「「おかえりなさいませ、お嬢様とご友人方!」」」」」」
六人のメイドが左右に分かれて歓迎する。
本物のメイド! 可愛いヒラヒラスカート! これはテンション上がる!
って、いつもならなるけど、今はそんな気分にはなれなかった。
「真心の部屋はこっちだよ!」
「千心はまた先行くし……。私の家なんだから私が案内するのに」
「そ、それにしても凄い家だね。真心の家ってお城みたい」
本当に凄い、いや、凄いの上の言葉があるならそれで表したいぐらいだ。
玄関を開けた瞬間、シンデレラの世界に入ったかと思ったよ。だけど、やはり気持ちはあまり乗らない。
ハァ……。
豪華そうな絨毯、天井にぶら下がる大きなシャンデリア、壁の至るところに飾られた高そうな絵画、あり得ない数の扉。
何を見ても心が高ぶらない。最悪だ。
私は今、どんな表情をしているのだろうか?
「そうかな? 普通だと思うけど」
「普通ではないと思うけど」
頭が回らない。次の言葉が浮かばない。
「みんなー早く!」
「すぐ行くから静かに待ってなさい」
階段を上って廊下を軽く歩いた先に千心が笑顔で立っていた。
「もー、遅いよ! じゃあ、開けるよ! カスミン!」
「う、うん」
ニヤニヤする千心がゆっくり扉を開ける。
「な、何これ……」
広くて可愛い白の部屋に、折り紙や風船で飾り付けがされた光景が目に入る。
色鮮やかな折り紙で星や花、風船で動物。
目の前の壁には文字の風船で作られた『ようこそ、スタンダードクラスへ』。
「カスミン!」
「カスミさん!」
「カスミ!」
「「「スタンダードクラスへ、ようこそ!」」」
可愛いらしい三人の笑顔が輝きを放ちこっちを見ている。
正直、ここまでされるとは思っていなかったから嬉しい。
人生で私のために何かしてくれる友達なんかいなかったからね。
「あ、ありがとう! 嬉しいよ!」
「やっと、カスミンが笑ったよ!」
「サプライズは大成功みたいね」
「ほら、カスミ! 主役がボーっとしてどうするの! ほら、こっち!」
「あー、行くから! 手を離してよ!」
「カスミの手は私がもらった」
「あー、ずるい! 私もカスミンの手がほしい!」
「もう! 二人は行動が早いんだから! 私もカスミさんの手をもらうわ!」
三人は私の手を掴み、奪い合う。まるで、ハーレム状態。
「さ、三人ともくっつきすぎ!」
けど、なんか楽しい。最高に楽しい。分からないけど楽しい。
こんな感情は私にはなかった。これが……これが友情なのかな。
本当に三人と出会えて良かった。この瞬間、そう思えた。
このカスミ争奪戦はその後、数分続き、みんな席に座った。
「じゃあ、乾杯しよ!」
「そうね」
「誰が言うの?」
「そら、カスミンだよ!」
「え、私?」
「当たり前だよ! ここはやっぱりカスミン!」
完全に確定だね。まぁいいけど。
「じゃあ、か、乾杯!」
「「「乾杯」」」
みんなは叫び過ぎたのか、グラスに入ったジュースを一気飲みする。
もちろん、私もだ。
「あ、カスミン! さっきの男は何なの!」
「こら、千心! それは聞かないの!」
「千心は何で分からないのかな? ハァ……」
千心の質問に呆れる二人。
まぁ、そらそうだ。さっきの男のせいで私のテンションが下がったからね。
普通に考えて質問は完全にタブーだ。
「けど、カスミンになんかあったら嫌だもん!」
千心は意外と優しい部分もあるようだ。
「それだけなの? 千心?」
「いや、真心様。あの元カレについて知りたいと思っております」
真心の鬼の表情にビビったのか、あっさりと白状する千心。
おい、さっき優しいと思った私がバカみたいじゃん。
ゆ、許さんぞ! 朝立千ん心!
あ、朝立千心だった! 間違えて『ん』を入れてしまったよ!
「べ、別に気にしないで」
「でも、カスミ……」
気を使ってくれるのはありがたい。本当にありがたい。
けど、私はこのことは言うべきだと思う。いや、言わなくてはいけない。
「あ、あの男を見た三人に、あの男のことを隠すのはもう無理だよ。だから、私もこれについては言おうと思う。それに言ってスッキリしたいしね!」
「やった! カスミンの元カレ話!」
「千心ったら……」
「カスミ、無理しないでね」
千ん心はもう隠す気ないな。あ、つい『ん』を入れてしまった。
「じゃ、じゃあ、話す前に一つお願い。絶対に暗い空気にならないで」
「はい、はーい!」
「わかったわ」
「わかったよ」
千心以外の二人は乗り気ではなさそう。けど、話すと決めたら話す。
「着きました、お嬢様」
「ありがとう、じーや」
「みんな降りましょ!」
無理矢理テンションを上げる真心。
「そうだね! 今日は歓迎会! 楽しもう!」
「ほら、カスミ! 降りるよ! 笑顔笑顔!」
それに便乗して二人もハイテンションで私を励ます。
「う、うん。もう大丈夫、ごめんね」
そう言うと三人は笑顔で頷いた。
「「「「「「おかえりなさいませ、お嬢様とご友人方!」」」」」」
六人のメイドが左右に分かれて歓迎する。
本物のメイド! 可愛いヒラヒラスカート! これはテンション上がる!
って、いつもならなるけど、今はそんな気分にはなれなかった。
「真心の部屋はこっちだよ!」
「千心はまた先行くし……。私の家なんだから私が案内するのに」
「そ、それにしても凄い家だね。真心の家ってお城みたい」
本当に凄い、いや、凄いの上の言葉があるならそれで表したいぐらいだ。
玄関を開けた瞬間、シンデレラの世界に入ったかと思ったよ。だけど、やはり気持ちはあまり乗らない。
ハァ……。
豪華そうな絨毯、天井にぶら下がる大きなシャンデリア、壁の至るところに飾られた高そうな絵画、あり得ない数の扉。
何を見ても心が高ぶらない。最悪だ。
私は今、どんな表情をしているのだろうか?
「そうかな? 普通だと思うけど」
「普通ではないと思うけど」
頭が回らない。次の言葉が浮かばない。
「みんなー早く!」
「すぐ行くから静かに待ってなさい」
階段を上って廊下を軽く歩いた先に千心が笑顔で立っていた。
「もー、遅いよ! じゃあ、開けるよ! カスミン!」
「う、うん」
ニヤニヤする千心がゆっくり扉を開ける。
「な、何これ……」
広くて可愛い白の部屋に、折り紙や風船で飾り付けがされた光景が目に入る。
色鮮やかな折り紙で星や花、風船で動物。
目の前の壁には文字の風船で作られた『ようこそ、スタンダードクラスへ』。
「カスミン!」
「カスミさん!」
「カスミ!」
「「「スタンダードクラスへ、ようこそ!」」」
可愛いらしい三人の笑顔が輝きを放ちこっちを見ている。
正直、ここまでされるとは思っていなかったから嬉しい。
人生で私のために何かしてくれる友達なんかいなかったからね。
「あ、ありがとう! 嬉しいよ!」
「やっと、カスミンが笑ったよ!」
「サプライズは大成功みたいね」
「ほら、カスミ! 主役がボーっとしてどうするの! ほら、こっち!」
「あー、行くから! 手を離してよ!」
「カスミの手は私がもらった」
「あー、ずるい! 私もカスミンの手がほしい!」
「もう! 二人は行動が早いんだから! 私もカスミさんの手をもらうわ!」
三人は私の手を掴み、奪い合う。まるで、ハーレム状態。
「さ、三人ともくっつきすぎ!」
けど、なんか楽しい。最高に楽しい。分からないけど楽しい。
こんな感情は私にはなかった。これが……これが友情なのかな。
本当に三人と出会えて良かった。この瞬間、そう思えた。
このカスミ争奪戦はその後、数分続き、みんな席に座った。
「じゃあ、乾杯しよ!」
「そうね」
「誰が言うの?」
「そら、カスミンだよ!」
「え、私?」
「当たり前だよ! ここはやっぱりカスミン!」
完全に確定だね。まぁいいけど。
「じゃあ、か、乾杯!」
「「「乾杯」」」
みんなは叫び過ぎたのか、グラスに入ったジュースを一気飲みする。
もちろん、私もだ。
「あ、カスミン! さっきの男は何なの!」
「こら、千心! それは聞かないの!」
「千心は何で分からないのかな? ハァ……」
千心の質問に呆れる二人。
まぁ、そらそうだ。さっきの男のせいで私のテンションが下がったからね。
普通に考えて質問は完全にタブーだ。
「けど、カスミンになんかあったら嫌だもん!」
千心は意外と優しい部分もあるようだ。
「それだけなの? 千心?」
「いや、真心様。あの元カレについて知りたいと思っております」
真心の鬼の表情にビビったのか、あっさりと白状する千心。
おい、さっき優しいと思った私がバカみたいじゃん。
ゆ、許さんぞ! 朝立千ん心!
あ、朝立千心だった! 間違えて『ん』を入れてしまったよ!
「べ、別に気にしないで」
「でも、カスミ……」
気を使ってくれるのはありがたい。本当にありがたい。
けど、私はこのことは言うべきだと思う。いや、言わなくてはいけない。
「あ、あの男を見た三人に、あの男のことを隠すのはもう無理だよ。だから、私もこれについては言おうと思う。それに言ってスッキリしたいしね!」
「やった! カスミンの元カレ話!」
「千心ったら……」
「カスミ、無理しないでね」
千ん心はもう隠す気ないな。あ、つい『ん』を入れてしまった。
「じゃ、じゃあ、話す前に一つお願い。絶対に暗い空気にならないで」
「はい、はーい!」
「わかったわ」
「わかったよ」
千心以外の二人は乗り気ではなさそう。けど、話すと決めたら話す。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる