魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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七性 みんな恋をしてる

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 それより自分の席に来れたのだから、今日こそ惚れさせるぞ。
 見とけよ。今週は頑張ると決めたのだから。

「刹那君は何しているの?」
「前の授業の復習です」

 おい、真面目か。勉強って休み時間にやるものなの?
 てか、勉強の話じゃ何も盛り上がらないよ。

「あ、さっきの見てた?」
「少しだけ。集中していても耳に入ってくるほどだったので」
「確かにそれぐらいうるさかったもんね」

 かなり丁寧に表現しているけど、実際は『お前ら騒がしすぎ!
 俺は忙しいから学校ぐらい静かに過ごさせろや』って感じかな?
 あー、怖い怖い!

「それでさっきのやつ見て、どう思った?」
「机の角に頭を打たなくて良かったと思いました。それは良かったのですが、朝立さんは何故か意識を失っていたみいですけど、大丈夫でしたか?」

 殺しをしている人から出る言葉じゃないよね?
 人を殺すくせに『机の角に頭を打たなくて良かったと思いました』ってよくそんな言葉がスラスラと出てくるものだな。あー、恐ろし。
 それより全くないパイ乙に触ったのはスルーかよ。
 それと意識を失った理由も分からないなんて勘が鈍い。
 まぁ、私のパイ乙を揉んでも『脂肪の塊』って言った男だ。気付かなくて当然か。

「意識を失ったのはちょっと頭を打ったみたいだよ」

 実際は胸部君との距離感が近すぎて、緊張して意識を失ったみたいだけど。
 勘が鈍い輝琉には教えないよーだ。

「そうでしたか。激しく打ってなくて良かったです」

 それにしても、こっちの輝琉って話しにくいよね。
 それに隠していることを話の話題にしたら盛り上がるけど、学校では盛り上がる話題が全くなくて話が続かない。
 そもそも男子と話す時は、男子から積極的に話してくるのが当たり前だったから、私から何を話せばいいのか全く分からない。
 いつもは無意識に惚れさせているだけであって、実際私から惚れさせようとするのはかなり難しい。
 それにあっちも反応はしてくれるけど、話題を作ろうとはしてくれないんだよね。
 私を好きになった人達は、どうやって話を盛り上げていたのかな?
 ……私にはできないよ。
 まぁ、好きでもない人を惚れさせようとしているからできないのかな?
 はぁー、全く分からない。

「あの……工口さん?」
「は、はい」

 輝琉のいきなりの呼びかけに驚いて声が裏返った。
 それにしても、なんか太った? 聞かないけど。

「驚かせてごめんなさい」
「大丈夫大丈夫!」
「今日は工口さんに渡したいものがあります」

 こ、こ、これは念願のプレゼント!
 ここまでの道のりは長かった。
 大きな壁ばかりが立ち塞がっていたけど、頑張って良かった。
 惚れさせると決めたあの日以来、頭のどこかにいつも輝琉の名前があった。
 けど、今日を最後に惚れさせるということを考えなくて済みそうだ。
 だって、プレゼントだよ? プレゼント! あの輝琉がプレゼント!
 惚れた以外に考えられない。努力は報われるってこういうことなんだね。

「はい、プレゼントです」
「あ、ありがとう」

 って、なんじゃこりゃ! 嘘でしょ?
 本当にあり得ない。だって『渡したいもの』って消しゴムだよ?
 つまり、『渡したいもの』は『渡したいMONO』だったんだよ。
 ひどくない? 期待させて消しゴムって……。

「前に工口さんが消しゴムを落とした時に無くなりそうだったから」
「え?」

 輝琉は私の消しゴムがもう少しで無くなると思ったから、あげようと思ってくれたわけ?
 そんな消しゴムなんか目立たない文房具なのに……。
 これって私のことを隅々まで見てくれているってことよね?
 ついに、ついに! 惚れさすまではいかないけど、少しは私に興味を持たせることはできたのかもしれない。
 こんなに嬉しいのは久しぶり。達成感が半端ないって!

「いらなかったら使わなくてもいいですよ?」
「使う! 絶対に使うよ!」
「良かった……。喜んでもらえて良かったです」

 そう言って珍しく口を緩ませた。

「感謝するのは私だよ!」

 本当に感謝。私に興味を持ってくれて感謝感激雨嵐。
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