魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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八性 終わりの始まり

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「……誰だぁ! 離せ、離せって! 邪魔するんじゃねぇ!」

 目を開けるとそこには……

「おい。今、本気で刺しにいっただろ?」

 学校では静かで私に興味を持たない人間――刹那輝琉がいた。

「だから何だ! てか、離せって!」

 暴れるように輝琉の手を振り払う。
 その瞬間、大志君の右手からはナイフが離れ、輝琉のメガネも大志君の手があったようでその場に落ちた。

「おっと、動くなよ? ゆっくり離れろ!」

 腰に隠し持っていた拳銃を輝琉に向ける。
 私の方は首を捕まれて、全く動けない状態。だが、輝琉の足がゆっくり下がっていくのは目に映った。

「ヨイショっと! これでお前のメガネはもうない。どうする?」

 落ちた眼鏡は大志君に踏まれ、パキという音を鳴らして粉々になる。
 つまり、今の輝琉は眼鏡がないので視界がぼやけているか、目が見えない。

「どうするって?」
「逃げるか?」
「悪いがそれはできない。こっちにも事情があるからな」
「そうか。でも、お前は眼鏡を失った。そんな状況でお前に何ができる?」
「それは心配ない。だって、アレは……伊達だからな」
「「え?」」

 思わず、私まで声が出てしまった。
 だって、ずっと付けていたのに伊達メガネって、驚かない方がおかしい。

「まぁ、いい。見えたとしても関係ない。それよりこの女を助けに来たんだろ?」
「そうだ。それ以外に理由なんかあるはずがない」

 助けにきてくれたのは嬉しいけど、他に理由がないってひどいな。
 好きだから来たとか言えないかな? あの口は!

「だよな! じゃあ、何で冷静なんだ? 今の状況を分かっているのか?」

 ん? 今の状況って……私って人質?
 てか、首を捕まれているからずっと視界が地面なんですけど。

「もちろん。だから、カスミをこっちに渡してくれ」
「それは難しい要求だな」
「じゃあ、力ずくで――」
『パンッ、パンッ、パンッ!』
「これは忠告だ。次動けば、この女を殺す」
「チッ……分かった」

 あぁー死ぬかと思ったよ。大志君の銃は本物みたいだし。
 頼むから輝琉はそこから動かないでね……怖いから。

「あ、てか、お前ってあの時の男じゃねぇーか! お前もこの女に騙されているのか?」
「いや、騙されてはいない」
「そうか。それよりこの女はもう少しで死ぬ。だから、最後に楽しく三人で話でもしないか?」
「……あー痛い!」

 髪を捕まれ、拳銃を顔に向けられる。

「動くなよ? 動いたらこいつで頭をバーンだ。分かったか?」

 拳銃を横目に二度縦に首を振る。

「イイ子だ。じゃあ、話を始めようか」

 正直、私は怖すぎて話ができる状態ではない。
 側に拳銃を持った男がいるのだから当たり前だ。

「話はしよう。だが、カスミにはまだ手を出すな」
「お前達が動かない限りは何もしない。約束するよ」

 輝琉ってこんなこと言う男だっけ?
 まぁ、眼鏡男子に言われてもな~って眼鏡ないんだった。
 まだ輝琉の顔を見ていない。一体どんな顔をしているのだろうか?
 恐る恐る、自分の視界を地面から上へと上げていく。
 そしてついに目線が首の上に辿り着いた。

 ――カッコイイ。

 珍しく、いや、初めて男をそう思った。
 二度見、三度見することなく、私はガン見する。
 思わず瞬きを忘れるほど、見とれてしまった。
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