魔性少女カスミちゃん～隣の刹那君は私に惚れない～

三一五六（サイコロ）

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八性　終わりの始まり

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「なぁ、お前は何で父を殺した？」

　だが、犯人が輝琉と知った大志君は思っていた以上に冷静だった。
　銃を握る手には力が入っているが、表情にはどこか余裕がある。

「そんなことを知って何がある？　殺意が収まるのか？」
「それはない。だが、父が何故死ななければならなかったのかが知りたい。あの人の一人の息子として、知らなければならないことなんだ」

　さっきと打って変わって弱々しく、瞬きせずに見つめていた。
　子供からしたら、親の死はかなりつらい。
　それが病気なら、まだ覚悟ができていたかもしれない。だが、殺人だと話は違う。
　昨日まで元気に笑っていた親が死ぬ。そんな現実を受け入れられるわけがない。
　だが、殺された理由は気になるものだ。
　大志君が言う通り理由が分かれば許せるってことはないだろう。
　しかし、それを知らずに犯人を殺し、その理由が分からない方が一生つらいはずだ。
　おそらく、大志君もそうなのだろう。

「息子としてか。別に殺す理由はそこまで難しくはない。少し運が悪かっただけ、本当にそれだけの理由」
「もっと、具体的に話せ！　たまたま撃ったら、当たったってことじゃないだろ？」
「そら狙ったよ」

　殺しに運が悪かったなどない。
　それに輝琉は殺し屋だから……殺し屋？

「父がお前に何かしたのか？　家族や友人を殺したのか？」
「いや、だから……運が悪かった」
「……」
「君はもっと父の立場、自分の立場を知るべきだ」

　このホテルの経営者の立場？　それはそこまで偉いのだろうか？
　さっきから輝琉は理由をごまかしているようにしか見えない。
　だって、運が悪かった、立場、それは死ぬ理由になるはずがないのだから。

「俺の立場？」
「ああ、そうだ。君の名は？」

　大志君でしょ？　そんなことを本人に聞くとか馬鹿々々しいにも程がある。

「大志……四手大志だ」
「これで分かった？」
「……分からない。普通に考えてこんなので分かるはずがないだろ」

　……私は分かった。本当に理由は難しくはない。
　運が悪くて、そういう立場だっただけ。本当にそれだけだったんだ。
　それに私は大志君の父、その殺人事件もしていた。
　だって、殺された大志君の父はよくニュースになる有名な経営者兼社長――四手社長。
　殺されたというニュースも、私はあの日の朝に救った老人のニュースが印象的だったから完全に今まで忘れていたが、確かに入学式の日のニュースで報道されていた。

「いや、普通は分かる。なぁ、カスミ」

　その言葉を聞き、口に溜まっていた唾を飲み込む。
　そして小さく深呼吸して口を開いた。

「四手……四手という苗字が殺した理由ってことだよね」
「ああ、そうだ」
「どういうことだ？」
「四手――四十八手族に所属する名家。だが、それは表向き。裏では金と権力によって日本を操る一家だ。だから、俺は上の命令によって殺した。それだけだ」

　輝琉にとっての殺しは仕事だ。だから、恨みも憎しみもない。
　別に四手という苗字が違う人だったとしても、同じように殺していただろう。
　だから、輝琉にとって大志君の父の死は運が悪かった、それだけのことなのだ。

「そ、そんな理由で俺の父が……」

　大志君の髪を掴む力が強くなり、眉間にしわが寄る。
　この理由を聞いて怒るのは当たり前だ。誰もが怒るだろう。
　それに今の大志君には、もう輝琉を殺すことを拒む必要はなくなった。
　つまり殺し合いが始まる。

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