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八性 終わりの始まり
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「た、大志君! もうこんなこと止めようよ!」
「うっせぇな! お前はあいつを殺す餌だ。だから、黙ってろ!」
「でも、大志君がこんなことをしてもマナは喜ばない! 明日、デートするんでしょ!」
これが私が大志君の怒りを収める唯一の方法だった。
大志君だって、マナのことを思い出せば我に返るはずだ。
それに私はこれ以上マナの悲しむ顔を見たくない。
「マナ? そんなやつどうでもいい!」
「彼女……。大志君の彼女でしょ! 好きなんでしょ!」
「あんなデカパイしか魅力のない女なんか好きなわけねぇーだろ?」
「……胸は評価しているのね。でも、付き合っているんだよね?」
大志君はマナの彼氏だよね?
マナの妄想彼氏だったとか? それはないと信じたいが……。
でも、ラブラブなメールをしているぐらいだ。それにマナはそんな嘘をつく子じゃない。
「一応、付き合っている。いや、付き合わされていると言った方が正しい」
「どういうこと?」
「マナは俺の……許嫁なんだ。父が会社を大きくするということで、マナの父が経営していた会社を買収した。その買収の代わりが許嫁ってこと。そのせいで俺はマナと付き合うことになったってわけ」
「それはマナも知っているんだよね?」
「いや、一切知らないだろうな」
「な、何で?」
「そんなのはマナの親に聞け。まず、大体推測はつくだろ?」
推測なんてつくはずがない。
それにマナがそんなこと知ったら、絶対に傷つく。
私からは絶対にこのことは言えない。
私からは言えない? 待てよ、それってつまり……
「……娘の気持ちを考えたら、親は言えなかったってこと?」
「多分な、それにマナの家は貧乏だ。その原因が自分だと知ったら、ショックはそれなりに大きいはずだからな」
確かに自分がその立場なら、家族に申し訳なさすぎる。
マナが知らないのも仕方ないと言えば仕方ない。
でも、マナを悲しませることはさせたくない。
「今からでもいい。だから、お願い! マナを好きになってあげて!」
「そんなことできるわけないだろ!」
「何で!」
「好きでもないやつのことを、急に好きになれるはずがない」
「マナは大志君のことを愛してる! ずっと、大志君のことを考えているよ!」
私は入学してから見てきた。
いきなり大志君に呼び出されて、笑顔で帰るマナ。
デートした思い出をウキウキしながら、声を弾ませて喋るマナ。
大志君と遊べなくて、別れの危機を恐れるマナ。
大志君からの久しぶりメールにテンションを爆発させるマナ。
他にもたくさんのマナの姿をこの一カ月間見てきた。
だから、私はマナに幸せになってほしい。
「それはマナだけだ。俺は何とも思っていない」
「大志君もちょっとずつ好きになるって! だから、こんなこと止めよう! そして二人で幸せになれば――」
「チッ、そんなこと言える立場かよ」
「え……」
私はマナの友達。そして私の数少ない大切な友達だ。
「いい加減気づけよ! お前が一番分かってるだろ! 好きでもない人からの好意は、自分にとっては興味のないことってことを!」
「……」
何も言葉が出なかった。まず何も言える言葉がなかったのだ。
分かっていたはずなのに、分かっていなかったみたいだ。
魔性持ちとして、好意を持たれるのは日常茶飯事。だけど、その好意にイエスと答えたことなんて一度もない。
それなのにマナの気持ちだけを考えて、大志君の気持ちは考えずに最低だ……。
「うっせぇな! お前はあいつを殺す餌だ。だから、黙ってろ!」
「でも、大志君がこんなことをしてもマナは喜ばない! 明日、デートするんでしょ!」
これが私が大志君の怒りを収める唯一の方法だった。
大志君だって、マナのことを思い出せば我に返るはずだ。
それに私はこれ以上マナの悲しむ顔を見たくない。
「マナ? そんなやつどうでもいい!」
「彼女……。大志君の彼女でしょ! 好きなんでしょ!」
「あんなデカパイしか魅力のない女なんか好きなわけねぇーだろ?」
「……胸は評価しているのね。でも、付き合っているんだよね?」
大志君はマナの彼氏だよね?
マナの妄想彼氏だったとか? それはないと信じたいが……。
でも、ラブラブなメールをしているぐらいだ。それにマナはそんな嘘をつく子じゃない。
「一応、付き合っている。いや、付き合わされていると言った方が正しい」
「どういうこと?」
「マナは俺の……許嫁なんだ。父が会社を大きくするということで、マナの父が経営していた会社を買収した。その買収の代わりが許嫁ってこと。そのせいで俺はマナと付き合うことになったってわけ」
「それはマナも知っているんだよね?」
「いや、一切知らないだろうな」
「な、何で?」
「そんなのはマナの親に聞け。まず、大体推測はつくだろ?」
推測なんてつくはずがない。
それにマナがそんなこと知ったら、絶対に傷つく。
私からは絶対にこのことは言えない。
私からは言えない? 待てよ、それってつまり……
「……娘の気持ちを考えたら、親は言えなかったってこと?」
「多分な、それにマナの家は貧乏だ。その原因が自分だと知ったら、ショックはそれなりに大きいはずだからな」
確かに自分がその立場なら、家族に申し訳なさすぎる。
マナが知らないのも仕方ないと言えば仕方ない。
でも、マナを悲しませることはさせたくない。
「今からでもいい。だから、お願い! マナを好きになってあげて!」
「そんなことできるわけないだろ!」
「何で!」
「好きでもないやつのことを、急に好きになれるはずがない」
「マナは大志君のことを愛してる! ずっと、大志君のことを考えているよ!」
私は入学してから見てきた。
いきなり大志君に呼び出されて、笑顔で帰るマナ。
デートした思い出をウキウキしながら、声を弾ませて喋るマナ。
大志君と遊べなくて、別れの危機を恐れるマナ。
大志君からの久しぶりメールにテンションを爆発させるマナ。
他にもたくさんのマナの姿をこの一カ月間見てきた。
だから、私はマナに幸せになってほしい。
「それはマナだけだ。俺は何とも思っていない」
「大志君もちょっとずつ好きになるって! だから、こんなこと止めよう! そして二人で幸せになれば――」
「チッ、そんなこと言える立場かよ」
「え……」
私はマナの友達。そして私の数少ない大切な友達だ。
「いい加減気づけよ! お前が一番分かってるだろ! 好きでもない人からの好意は、自分にとっては興味のないことってことを!」
「……」
何も言葉が出なかった。まず何も言える言葉がなかったのだ。
分かっていたはずなのに、分かっていなかったみたいだ。
魔性持ちとして、好意を持たれるのは日常茶飯事。だけど、その好意にイエスと答えたことなんて一度もない。
それなのにマナの気持ちだけを考えて、大志君の気持ちは考えずに最低だ……。
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