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18:ダニエルのキス②
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「い、いやだ!」
思わずダニエルは叫んだ。
そして続けて
「まだルイーズともキスしていないっていうのに!
今すぐにでもキスしたいのに、上手くいかないせいで……」
と、つい本音がそのまま口から零れ落ちてしまって、はっとした。
視界の隅で、ケインが必死に笑いを堪えて、体を震わせているのが見える。
しかし今のダニエルには、ケインを怒鳴りつけている余裕はなかった。
「あ、あの……ルイーズ。
違うんだよ。
今のは……えーと、その、ほら……」
なんとか上手い言い訳をしたいのに、焦るあまり、頭が働かない。
しどろもどろになりながらも、なんとかルイーズの誤解を解こうと、俯いてしまった彼女の顔を覗き込んだのだったが。
思いがけず、顔を上げてこちらをまっすぐに見上げたルイーズは、にっこりと微笑んでいたのである。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ、ダニエル。
むしろ、私とキスしたいと思ってくれていて、嬉しいわ」
「ほ、本当に!?」
「ええ、もちろん」
ルイーズの言葉に、ダニエルはすっかり舞い上がってしまった。
だったら、今ここでキスをしてもいいってことなのか!?
我慢できずに勢いよく両手を広げると、感情のままに彼女を抱きしめようと、前へと進み出る。
しかし、ルイーズはそれを、ひょいとかわして数歩先へと進むと、くるりと振り返った。
「だからね、本当は私だって……あなたがジュリアにキスをするなんて嫌よ?
でもね、これは作戦なの。
ジュリアに嫌われる為の、ね」
「で、でも……」
ダニエルは手をブラブラさせながら弱々しい声を上げたが、ルイーズは聞いていないのか、単に無視しているのか。
その声には構わずに、言葉を続けた。
「いくら婚約者だとしても、軽々しくキスをしてこようとする男性には、ジュリアも幻滅するに違いないわ。
だって誠実な男性なら、結婚式まで手は出さないのが当然ですもの」
またしてもダニエルの心臓は大きく飛び跳ねた。
や、やっぱりルイーズは僕に幻滅しているんじゃ……。
しかしルイーズは片目をつぶってみせると
「だからダニエルも、私にキスしたい気持ちを押さえて、我慢してくれているんでしょう?
嬉しい……」
と、頬を染めたのである。
このあまりに可愛らしい表情を見れば、隙あらばキスしようとしていたなどという自分の行いを告白する気など、完全に失せてしまって。
「そ、そうだよ!
ずっと我慢してきたんだ」
と、適当なことを言ってしまう。
「そうでしょう?
そんな誠実なあなただから、私は好きになってしまったのよ」
ルイーズは、うっとりと目を細めながら、ダニエルに近づいてくる。
彼女の甘い声が、ダニエルの脳を痺れさせた。
「ジュリアにキスをするのが嫌なのは、分かるわ。
私だって、してほしくないもの。
でもね、しようとするフリだけでも充分よ」
「それはそうだけど……。
フリだけでも、僕には……」
「これは必要なことなのよ。
私とあなたが結婚するために、ね?」
大丈夫、あなたなら上手くやれるわ」
ルイーズはダニエルの両手を取ると、ぎゅうっと握りしめてきた。
あたたかく、柔らかい指の感触。
そして、じっとこちらを見つめてくる、潤んだ瞳。
これに、ダニエルが逆らえるはずがなかった。
気が付けば
「分かったよ……やってみる」
と言ってしまっていた。
ルイーズが満足そうに微笑む傍らで、ケインが
「僕にも出来なかったのに、ダニエルにできるかな?」
とニヤニヤ笑っているのが聞こえていたけれど、そんなものは無視することにした。
なにしろ、愛するルイーズが期待してくれているのである。
ジュリアにキスをするのは、たとえフリだけでも気が進まなかったが、やらないわけにはいかない。
ダニエルは気合を込めて、ルイーズの両手を強く握り、重々しく頷いて見せたのだった。
思わずダニエルは叫んだ。
そして続けて
「まだルイーズともキスしていないっていうのに!
今すぐにでもキスしたいのに、上手くいかないせいで……」
と、つい本音がそのまま口から零れ落ちてしまって、はっとした。
視界の隅で、ケインが必死に笑いを堪えて、体を震わせているのが見える。
しかし今のダニエルには、ケインを怒鳴りつけている余裕はなかった。
「あ、あの……ルイーズ。
違うんだよ。
今のは……えーと、その、ほら……」
なんとか上手い言い訳をしたいのに、焦るあまり、頭が働かない。
しどろもどろになりながらも、なんとかルイーズの誤解を解こうと、俯いてしまった彼女の顔を覗き込んだのだったが。
思いがけず、顔を上げてこちらをまっすぐに見上げたルイーズは、にっこりと微笑んでいたのである。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ、ダニエル。
むしろ、私とキスしたいと思ってくれていて、嬉しいわ」
「ほ、本当に!?」
「ええ、もちろん」
ルイーズの言葉に、ダニエルはすっかり舞い上がってしまった。
だったら、今ここでキスをしてもいいってことなのか!?
我慢できずに勢いよく両手を広げると、感情のままに彼女を抱きしめようと、前へと進み出る。
しかし、ルイーズはそれを、ひょいとかわして数歩先へと進むと、くるりと振り返った。
「だからね、本当は私だって……あなたがジュリアにキスをするなんて嫌よ?
でもね、これは作戦なの。
ジュリアに嫌われる為の、ね」
「で、でも……」
ダニエルは手をブラブラさせながら弱々しい声を上げたが、ルイーズは聞いていないのか、単に無視しているのか。
その声には構わずに、言葉を続けた。
「いくら婚約者だとしても、軽々しくキスをしてこようとする男性には、ジュリアも幻滅するに違いないわ。
だって誠実な男性なら、結婚式まで手は出さないのが当然ですもの」
またしてもダニエルの心臓は大きく飛び跳ねた。
や、やっぱりルイーズは僕に幻滅しているんじゃ……。
しかしルイーズは片目をつぶってみせると
「だからダニエルも、私にキスしたい気持ちを押さえて、我慢してくれているんでしょう?
嬉しい……」
と、頬を染めたのである。
このあまりに可愛らしい表情を見れば、隙あらばキスしようとしていたなどという自分の行いを告白する気など、完全に失せてしまって。
「そ、そうだよ!
ずっと我慢してきたんだ」
と、適当なことを言ってしまう。
「そうでしょう?
そんな誠実なあなただから、私は好きになってしまったのよ」
ルイーズは、うっとりと目を細めながら、ダニエルに近づいてくる。
彼女の甘い声が、ダニエルの脳を痺れさせた。
「ジュリアにキスをするのが嫌なのは、分かるわ。
私だって、してほしくないもの。
でもね、しようとするフリだけでも充分よ」
「それはそうだけど……。
フリだけでも、僕には……」
「これは必要なことなのよ。
私とあなたが結婚するために、ね?」
大丈夫、あなたなら上手くやれるわ」
ルイーズはダニエルの両手を取ると、ぎゅうっと握りしめてきた。
あたたかく、柔らかい指の感触。
そして、じっとこちらを見つめてくる、潤んだ瞳。
これに、ダニエルが逆らえるはずがなかった。
気が付けば
「分かったよ……やってみる」
と言ってしまっていた。
ルイーズが満足そうに微笑む傍らで、ケインが
「僕にも出来なかったのに、ダニエルにできるかな?」
とニヤニヤ笑っているのが聞こえていたけれど、そんなものは無視することにした。
なにしろ、愛するルイーズが期待してくれているのである。
ジュリアにキスをするのは、たとえフリだけでも気が進まなかったが、やらないわけにはいかない。
ダニエルは気合を込めて、ルイーズの両手を強く握り、重々しく頷いて見せたのだった。
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