フィアンセは、婚約破棄されようと必死です

ゆきな

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31:ジュリアの赤面①

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「まあっ……これを、私に?」

ジュリアは呆然として、目の前に差し出された真紅のバラの花束を見つめた。
ジュリアの言葉を聞くと、その本数のあまりの多さに、顔が半分隠れてしまっているダニエルの顔が曇った。

「あれ、もしかしてバラ……お嫌いでしたか?」
「え!?あ、いえ!
そんなことはないです!」

ジュリアは慌てて両手をブンブン振ると、恐る恐る花束を受け取った。
触れた途端に消えてしまうんじゃないかという気さえして、指が震える。

やけに強張った顔をしていたせいだろう。
こちらを見るダニエルが、心配そうな顔をしているのに気がつくと、ジュリアはぎこちない笑顔を浮かべた。

「す、すみません。違うんです。
ああ……嬉しくて、嬉しくて……。
夢をみているみたいというのは、こういうことを言うんですね」

そう言っているうちに、うっすらと涙まで浮かんできてしまって。
ジュリアはそっと目の端を拭った。

いつしかすっかり周りには人が集まってきていた。
ダンスをしていた人達も、自然と足を止めて、2人を取り囲んでいる。

明らかに今夜の舞踏会の主役だと言わんばかりに視線を浴びて、ジュリアの頬はバラと同じくらいに赤らんでいる。
しかし彼女は少しも恥ずかしくはなかった。

恥ずかしさよりも、喜びの方が圧倒的に大きかったのである。

「あんなにたくさんのバラをプレゼントされるなんて、素敵ね。
私もされてみたいわ」
「もうとっくに婚約は済んでいらっしゃるお二人だというのに……。
本当に仲がよろしいんですのね。
羨ましい!」

周りでヒソヒソ交わされる声が、ますますジュリアを有頂天にさせる。
ジュリアはそっと花束を胸に抱いて、微笑んだ。

「ありがとうございます。
嬉しいです、とっても!
あなたのような方と結婚できるなんて……私は幸せ者ですわ」
「そ、そんなこと……あなたと結婚できる私の方こそ、幸せですよ。
花束くらいで、こんなにも喜んでくれるのでしたら、またいつでもプレゼント致しましょう」

騒ぎ続ける心臓の音が、うるさくて、うるさくて。
ダニエルは平静を保つのがやっとだった。

ルイーズの笑顔を見ても、こんなに胸が締め付けられることはなかったのに。
ジュリアといると、今まで感じたことのない何かを感じる。

それは明らかに彼を戸惑わせたが、決して嫌なものではなかった。
それどころか、体の芯から温かくなるような心地よささえ感じるのだった。

ダニエルは、ジュリアの笑顔から目が離せないまま、ふらふらと彼女に近づいた。
そして考えるよりも前に、ジュリアの手を取り、その甲に唇を当てていた。

「……これからも、どうぞよろしくお願いします」
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