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キャンディスは、チラリとセオドアの隣の女性に目を向けた。
すると彼女も、こちらを見てにっこりと微笑んだ。
その表情の美しいこと。
セオドアの笑顔は眩しいほどだと常々思っていたキャンディスだが、彼女の微笑みにも全く同じ感想を抱いたほどである。
艶々とした栗色の髪。
髪と同じ色の大きな瞳。
陶器のような白い肌。
全てが完璧に思えて、思わず気後れしてしまったキャンディスに、セオドアが彼女を紹介してくれた。
「こちらはグレース・ローガン侯爵令嬢。
僕の婚約者だ」
「こんにちは、キャンディス様。
どうぞよろしくお願い致します」
グレースに頭を下げられて動揺したキャンディスは、すっかり早口になりながらもなんとか答えた。
「こ、こちらこそ、よろしくお願い致します!」
こんなに美しい女性に見つめられていると思うだけで、変な汗が浮かんでくる。
しかしそんな中でも、隣に立つセオドアがさりげなくグレースの腰に手を当てるのを、キャンディスは見逃さなかった。
そしてグレースが嬉しそうに微笑みながら、チラリとセオドアに顔を向けたのも。
なんてお似合いな2人だろう。
キャンディスは、セオドアの隣に立つ自分の姿を想像しただけで、居た堪れなくなってしまった。
セオドアは自分の憧れだ。
しかし隣に立つことを夢には見ても、実際に立てば不釣り合いだということくらい分かっている。
それを改めて実感させられた気がして、キャンディスはどんよりとした気分になってしまった。
「じゃあ、僕らはそろそろ行くよ。
キャンディス、ドミニクと仲良くしてやってね」
「は、はい!もちろんです」
セオドアとグレースが連れ立って行ってしまうのを、キャンディスはいつまでも、うっとりと眺めていた。
まるで絵に描いたよう、というのは、この2人の為につくられた言葉ではないか、とさえ思える美しさだ。
あまりにお似合いで、悔しいと思うことすら出来ない。
完全に目をハートマークにして彼らの背中を見つめていたキャンディス。
しかし背後でボソリと
「だから、見すぎなんだよ。
まったく、いつもいつも」
と声がしたものだから、ビクリと肩を揺らした。
振り向くまで、完全に忘れていたのである。
ドミニクが隣にいたことを。
ドミニクはそれを知ってか知らずか、わざとらしく大きなため息をついてから言った。
「本当に飽きないなあ、お前も。
あんな奴のどこがそんなに良いわけ?」
「あんな奴だなんて!
セオドア様の良いところなんて、数えきれないくらいあるじゃないですか!
まず……」
と人差し指をピンと立て、意気揚々と言葉を続けようとする。
ところがドミニクが、しかめ面で手をヒラヒラと振り、それを遮った。
「あーあーあー!
分かったよ!そんなの聞きたくないから。
ストップ、ストップ!」
「質問してきたのはそっちでしょう!?」
キャンディスは呆れて、肩をすくめた。
が、ピンときてニヤリとすると、俯き加減の彼の顔を覗き込むようにしながら言ったのである。
「だったら聞きますけど、ドミニク様はどんな女性がお好きなのですか?
やっぱりグレース様みたいに素敵な方に憧れたりして?」
こんな質問をしても、ひねくれもののドミニクが素直に答えるとは思えなかった。
それでも、少しでも彼に、いつも意地悪ばかりされているお返しをしてやりたかったのである。
だから、グッと顔を寄せて、彼の表情のほんの些細な変化も見逃さぬように努めたのだったが……
「え?は?」
思いがけず彼が、目をぱちぱちっとさせながら、妙な声を上げたものだから、キャンディスの方が驚いてしまった。
ドミニクは慌てて後ずさると、再びそっぽを向いた。
「え……なんでそんなに動揺するんですか?
もしかして、本当にグレース様のこと……」
「そんなわけないだろう!」
ドミニクが強い口調で言うのを聞いて、キャンディスは黙り込んだ。
しかし素直に納得したわけではない。
明らかに怪しい。
すると彼女も、こちらを見てにっこりと微笑んだ。
その表情の美しいこと。
セオドアの笑顔は眩しいほどだと常々思っていたキャンディスだが、彼女の微笑みにも全く同じ感想を抱いたほどである。
艶々とした栗色の髪。
髪と同じ色の大きな瞳。
陶器のような白い肌。
全てが完璧に思えて、思わず気後れしてしまったキャンディスに、セオドアが彼女を紹介してくれた。
「こちらはグレース・ローガン侯爵令嬢。
僕の婚約者だ」
「こんにちは、キャンディス様。
どうぞよろしくお願い致します」
グレースに頭を下げられて動揺したキャンディスは、すっかり早口になりながらもなんとか答えた。
「こ、こちらこそ、よろしくお願い致します!」
こんなに美しい女性に見つめられていると思うだけで、変な汗が浮かんでくる。
しかしそんな中でも、隣に立つセオドアがさりげなくグレースの腰に手を当てるのを、キャンディスは見逃さなかった。
そしてグレースが嬉しそうに微笑みながら、チラリとセオドアに顔を向けたのも。
なんてお似合いな2人だろう。
キャンディスは、セオドアの隣に立つ自分の姿を想像しただけで、居た堪れなくなってしまった。
セオドアは自分の憧れだ。
しかし隣に立つことを夢には見ても、実際に立てば不釣り合いだということくらい分かっている。
それを改めて実感させられた気がして、キャンディスはどんよりとした気分になってしまった。
「じゃあ、僕らはそろそろ行くよ。
キャンディス、ドミニクと仲良くしてやってね」
「は、はい!もちろんです」
セオドアとグレースが連れ立って行ってしまうのを、キャンディスはいつまでも、うっとりと眺めていた。
まるで絵に描いたよう、というのは、この2人の為につくられた言葉ではないか、とさえ思える美しさだ。
あまりにお似合いで、悔しいと思うことすら出来ない。
完全に目をハートマークにして彼らの背中を見つめていたキャンディス。
しかし背後でボソリと
「だから、見すぎなんだよ。
まったく、いつもいつも」
と声がしたものだから、ビクリと肩を揺らした。
振り向くまで、完全に忘れていたのである。
ドミニクが隣にいたことを。
ドミニクはそれを知ってか知らずか、わざとらしく大きなため息をついてから言った。
「本当に飽きないなあ、お前も。
あんな奴のどこがそんなに良いわけ?」
「あんな奴だなんて!
セオドア様の良いところなんて、数えきれないくらいあるじゃないですか!
まず……」
と人差し指をピンと立て、意気揚々と言葉を続けようとする。
ところがドミニクが、しかめ面で手をヒラヒラと振り、それを遮った。
「あーあーあー!
分かったよ!そんなの聞きたくないから。
ストップ、ストップ!」
「質問してきたのはそっちでしょう!?」
キャンディスは呆れて、肩をすくめた。
が、ピンときてニヤリとすると、俯き加減の彼の顔を覗き込むようにしながら言ったのである。
「だったら聞きますけど、ドミニク様はどんな女性がお好きなのですか?
やっぱりグレース様みたいに素敵な方に憧れたりして?」
こんな質問をしても、ひねくれもののドミニクが素直に答えるとは思えなかった。
それでも、少しでも彼に、いつも意地悪ばかりされているお返しをしてやりたかったのである。
だから、グッと顔を寄せて、彼の表情のほんの些細な変化も見逃さぬように努めたのだったが……
「え?は?」
思いがけず彼が、目をぱちぱちっとさせながら、妙な声を上げたものだから、キャンディスの方が驚いてしまった。
ドミニクは慌てて後ずさると、再びそっぽを向いた。
「え……なんでそんなに動揺するんですか?
もしかして、本当にグレース様のこと……」
「そんなわけないだろう!」
ドミニクが強い口調で言うのを聞いて、キャンディスは黙り込んだ。
しかし素直に納得したわけではない。
明らかに怪しい。
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