やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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隣の馬車がマーティのものであると、先に気が付いたのはアリスの方だった。
ちょうど、ひとしきり話し終えてスッキリしていた彼女は、シェイマスの肩越しにマーティの馬車を見ながらニンマリとした。

それを敏感に感じ取ったらしいシェイマスが、首を傾げた。

「どうかした?」

そしてアリスの視線を追って振り返り、窓の向こうに目を向けたまま、固まった。
だが、それもほんの数秒のこと。
すぐに

「……そういえばさ、来月から父が旅行をするって言ってるんだ。
親戚の結婚式に招待されていて、そのついでにね」

と、今までの話の流れとは全く関係のないことを話し始めたのである。

アリスはすぐに、シェイマスもマーティの馬車に気が付いたのだと悟った。
その上で、アリスの気を逸らそうと努めているのだと。

それを全部分かっていて、あえてアリスは平然を装って答えた。

「へえ、そうなの。
結婚式にお呼ばれするのは、私も大好きよ」

これにはシェイマスも、アリスの気を引けたと安心したのだろう。
そっと息を吐き出したのを、アリスは見逃がさなかった。

そしてその隙に、

「あら!お隣にいるのは、マーティの馬車だわ!」

と、わざとらしいほど楽し気な声を出すと、シェイマスが止める間も与えずに、甲高い声を上げたのである。

「マーティ!ネリー様!」

隣ではシェイマスが、大きくため息をついているが、そんなことは関係ない。

今夜は散々マーティにちょっかいを出して、ネリーとの間にしっかり亀裂を入れておいたけれど、帰りの馬車の中で仲直りされてしまっては、せっかくの努力が水の泡になるではないか。
ここはひとつ、仲直りの時間までもを奪っておこう、と考えたのである。

シェイマスは顔をしかめて

「アリス、静かに。
こんなところで大声を出すと、皆が見るだろう」

とかなんとか言っているが、アリスは聞く耳を持たなかった。

「だってえ。
さっきからちっとも馬車が動かないから、退屈しちゃったんですもの。
マーティとネリー様だって、きっと同じに決まっているわ」

と言いながら、返事のないマーティの馬車に向かって、再度声を張り上げた。
すると、しばらくして

「アリス?」

とマーティの声がしたかと思うと、隣の馬車の窓が開いて、ひょっこりと彼が顔を出した。

「マーティ!隣にいたなんて、ちっとも気が付かなかったわ。
混んでるわねえ。全然進まないわ」

アリスが言いながら中を覗き込むと、奥に座るネリーが暗い顔をしているのが見えた。
どうせまた邪魔をされたことを悲しんでいるのだろうと思うと、ニヤニヤ笑いが止まらない。

しかし意外なことに、マーティはアリスを見ても、いつものように笑顔にはならなかった。

「うん……」

と言って、黙り込んでしまったのである。

これは、ネリーと何かあったのだろうか。
だとしたら、ここでまた邪魔をしておかなければ、とアリスは口を開きかけたのだったが。

「ちょっと、ごめん」

と、突然マーティがネリーに向かって言ったものだから、アリスは口を半開きにしたまま固まってしまった。

どういうことか分からず、ネリーもシェイマスもぽかんとしている。
それはもちろんアリスも同じだった。

しかし、彼の言葉の意味を皆が理解するよりも前に、マーティが動いたのである。
素早く馬車を降りて、シェイマスの馬車の扉を開くなり

「ごめん、シェイマス。
ちょっと俺の馬車の方に行っててくれるか?
アリスに話があるんだ」

と、彼の腕をつかんで、馬車から下ろしてしまったのだ。
これは、さすがのアリスも予想外で、唖然としてしまった。
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