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次の瞬間、ネロが見たのは綺麗な星空だった
満天の美しい情景に息を呑む
死んだのか?
そう思ったが、身体が軋み痛みを伴う
喉が焼けるように痛い
手に砂を掴む感覚で、生きている事を知る
痛む身体を起こすと、死ぬ前に見た曲がった脚や手は元通りになっており、喉を触ると、胸にまで達した傷跡がミミズ腫れのように醜く、顔にまで走っていた
「……ぅ、う、あ、あ?」
声が出ない。振り返ると、洞窟は見るも無惨に壊されていた
そして、その前には横たわる巨大な大百足の死骸があった
ネロの近くでは、火が起こされており先程まで人が居たのが判る
震える脚で起き上がり、大百足を見上げる
大百足は、ネロを殺せたと思ったのか満足そうな死に顔に苛立ち、蹴りを入れる
大百足が死んだのに、ステータス異常は続いており、おばけ大百足の呪いの文字はそのままだった
へなへなと座り込む
チートだったから今までやってこれた
しかし、素手だけでは、この森で生きていけないだろう
しかも、顔の傷からして、バツの形に傷が入っていて引きつれている
ミネルバは、こんなネロを見ても、好きだと言ってくれるだろうか
不安で嫌な音を心臓が刻む
「あ、寝とかなあかんよー、大丈夫?」
不意に後ろから声をかけられて、振り向くと、赤髪赤目の大きな美形の男と、金髪青目の小さな可愛い男の子、そしてネロを見て不愉快そうな顔をした銀髪茶目の物凄い美人な男がいた
RPGの中の冒険者のような出立ちの一行は、赤髪が大きな剣を背負い、銀髪は弓矢を携え、金髪が魔法使いのロッドを持っている
「あー、俺はクー、この銀髪はパーチェス、金髪の坊主はグリフォンや。大丈夫かあ?君、めっちゃ大百足に食われてたんやでぇー」
クーと名乗った筋肉赤髪が親しげに話しかけてくる
「死ななかったのは悪運かもしれないな?私の回復ではそれが限界だった、恨まないでくれよ」
さらりと長い銀髪をかきあげ、憂鬱そうに銀髪美人のパーチェスが言う
「即死かと思ったのぉ。お兄ちゃん運良かったねぇ。たまたま僕らクエスト受けた所だったのぉ」
金髪ちびっ子のグリフォンが舌ったらずにネロに駆け寄ってくる
グリフォンが抱きついたまま、ネロは呆然と一行を見る
涙がぱたぱた溢れて、頭を下げた
「あれ?にいちゃん喋られへん?喉がやられてたからかな?あちゃー」
「私の回復では無理だ。ぐちゃぐちゃになっていたのを治すのが精一杯だ」
「鑑定するのぉ、お名前教えてねぇ」
グリフォンが言うや否や体から金粉が舞い、名前や情報が抜かれていく
しかし、おばけ百足の呪いが鑑定を阻害するように割り込み、名前をかき消していく
「あちゃ?お兄ちゃん、もしかしてオバケ百足のパートナー殺しちゃった?同時に殺さないと呪われるんだよぉ。でも、クー、これでクエスト完了だねぇ。パートナー死んでるから待機しなくていいよぉー」
グリフォンが、クーに駆け寄り頭を撫でてもらっている。まるで親子みたいなやりとりに身体の力を抜く
「オバケ百足の呪いは解けないよぉ。名前がないのねぇ、街に入れないよ、どうしよ、クー、パーチェス」
「仮の名前を与えてあげれば良かろう。黒髪が綺麗だな、クロはどうだ?」
喋れないし、呼び名がないと呼びにくいから了承した一字違いの名に頷くと、ステータスに、クロの名前が加わった
「ぼくら、冒険者なのっ。一緒に街まで行くの。教会で呪いを解いてもらえるかもなの」
「…せめて声帯か、傷跡が治せる術者も探そう。ちょっとそのままじゃ外見が化け物じみてるし。一緒に来るか?クロ?」
パーチェスが心配そうに話しかけてきて、グリフォンに手を引かれる
ミネルバを此処で待たないといけないけれど、このまま会うのは躊躇われる
迷う素振りを見せるネロにグリフォンが好奇心いっぱいのキラキラした瞳で頷く
呪いを解けば、自動回復で治る
おずおずと頭を下げると、クーとグリフォンとパーチェスは安心したようにニカっと笑う
「任せとき!街まで連れて行ってやる!」
「最後までクロをお助けしましょう」
「クロちゃんも一緒に行くのっ」
三者三様の笑顔に感謝を現すために何度も頭を下げる
クーがその筋肉質の腕を上げて魔法陣が浮かぶ
黄色の花びらを撒き散らかして視界が覆われていく
花吹雪に囲まれて、思わず目を瞑ると、次に開いた時には街の中にいた
酒場や中世のヨーロッパのような雰囲気の下街は人で溢れ、本当にRPGの世界に入りこんでしまったかのような風景だった
こっちこっちとグリフォンが纏わり付いて手を引くのについて行く
すれ違う人が、ネロの顔を見て、ギョッとしたり、目を逸らすのでよっぽど傷が酷いのだとわかった
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